落ちてきた地球外高度知的生命体とヒーローやることになった件について   作:緑茶山

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終章
終章「落ちてきた地球外高度知的生命体と、これからもヒーローをする件について」


 

 アベンジャーズ基地の敷地内にある森。湖畔の近くに、機材が用意されていた。

 サノス軍との戦いで壊滅状態に陥った基地は、現在瓦礫の撤去作業が行われている。森の方は被害が少なく、タイムマシンの機材を置くのにちょうど良い場所と判断されてここが選ばれた。

「いいか。ストーンは正確に元あった場所に戻せ。でないと別の現実が生まれてしまうからな」

 言って、頑丈そうなアタッシュケースを開けたのは、バナー……ではなく、トニーだった。そしてその説明を受けているのは私とシロ。

 なんとこの世界線では、スティーブではなく私たちが過去へ行き、石を返してくることとなった。

 選抜の理由は、私たちなら魔法の利用で比較的自由に行動できるから、とのことだ。正直驚いて、スティーブに良いのかと聞いたけど、彼はけろりとしたものだった。お前がそう言うなら俺ぁ良いんだけどよ。

 ソーが持ってきたハンマーは、勿論私が持ち上げられるようになっていたりはしないので、量子魔術で作った空間に収納して運ぶ。扱うことはできなくても、運ぶ分なら問題ないのであーる。

「気を付けて、二人とも」

「うん。行ってきます」

「行ってくる」

 ナターシャとハグをして、私はシロとタイムトラベル装置の台の上へ立った。ストーンを集めるときに使ったものと比べると、装置は小さい。二人と一匹が立つには丁度よい大きさだが。

 ナノマシン技術によって一瞬で展開するタイムトラベルスーツを纏い、左腕のGPSを起動する。

「かかる時間は?」

 スティーブが尋ねた。

「向こうに何年いようと、こっちじゃ五秒だ」

 バナーが答えながら、装置を動かす。

 そこへ、ネビュラやガーディアンズの面々と話をしていたガモーラがやってきた。

 このガモーラは2014年のガモーラだ。サノスを始めとするサノス軍も、妹のネビュラ(2014年から来た方)も亡くなったが、ガモーラは戻ると言った。元の世界で出会うかもしれない仲間と出会うため。

「準備はいいか? 今度は寄り道せずに帰ってくるんだぞ」

 トニーの言葉に私は苦笑いに似た笑みを浮かべ、頷いた。スーツのマスクが展開し、頭を覆う。ガモーラも同様だ。

「量子の世界へ……」

 バナーがカウントダウンを始める。

「三……二……一……」

 そして、私たちは再び、量子世界へと吸い込まれた。

 

 ◇

 

 まず向かった先は、2014年のモラグ。早速だが、ガモーラとはここでお別れだ。彼女は2018年の天才たちが作った小さな宇宙船を出す。

「これから、どうするの?」

 私は尋ねる。ガモーラは首を振った。

「決めてないわ。私はクイルってヤツと出会うらしいけど……何にせよ、あなた達の知る未来と、私の未来は違うわ」

「そうだね……。何はともあれ、気を付けて」

「達者でな」

「ええ。あなた達も」

 厳しそうなガモーラの無表情が、ふっと和らいだ。

 彼女は赤色混じりの黒髪を揺らして、宇宙船のハッチへと歩き出す。ピンと伸びた背は、彼女の強さを現すようだった。

 こちらを振り向くことなく宇宙船に乗り込んだ彼女は、操縦席の窓から軽くこちらへ手を挙げて、モラグを去っていった。

「マスター、仕事を始めよう」

「うん」

 モラグの〝ストーン神殿〟の前に、クイルが倒れていた。それを起こさないように、〝神殿〟の中にストーンを戻す。入口の鍵も元通りにして、パワー・ストーンは完了だ。

 次はヴォーミア。こちらは時間的に、今から魔法で瞬間移動すれば問題なく行けると判断し、量子魔法で飛んだ。おそらく私が死んでソウル・ストーンを手に入れた直後のタイミングへ行き、赤いドクロの吸魂鬼にストーンを返却する。これで二つ完了だ。

 再びタイムトラベルのGPSをセットする。

 今度は2013年のアスガルドへ。仮眠中のソーの彼女――ジェーン・フォスター女史に近付き、アライグマに抜かれたばかりのリアリティ・ストーンを再びお返しする。

 ソーのハンマーは適当に空に放せば勝手にご主人のところへ戻るだろう。最後に持ち上げチャレンジしたけどやっぱり駄目だった。

 あと三つ。

 簡単な方から行こうぜってことで、1970年のS.H.I.E.L.D.基地へ。

 S.H.I.E.L.D.の研究者に変身して施設内に潜入し、スペース・ストーンの入ったキューブを元の場所に戻すだけの簡単なお仕事。廊下でペギー・カーターとすれ違って、思わずまじまじと見そうになってしまった。

 残るは2012年、ニューヨークだ。ボロボロになったスタークタワーへ行き、床に転がってアメリカのケツをさらすキャップ(2012年)の横にマインド・ストーン入りの杖を置いた。

 最後はタイム・ストーンだ。スタークタワーから、ニューヨークのサンクタムへと姿現しする。屋上に出れば、そこにはエンシェント・ワンの姿があった。

「成功したのですね」

 彼女は微笑んだ。私は「はい」と頷いて、アタッシュケースを開けた。緑色のストーンが残っている。

 私が差し出したそれを、エンシェント・ワンは摘み上げ、目の形を模したペンダントの中へと戻す。タイム・ストーンが収まり、ペンダントが閉じるのを見守った私は、静かに息を吐いた。

 これで、ストーンを戻す作業は終わった。ピム粒子は、ヴォーミアへ行く分を節約できたので、一個余った。何はともあれ、無事に終わったので何よりである。

「あなたの悲願は、叶いましたか?」

 空のアタッシュケースを閉じて量子空間へとしまった私に、エンシェント・ワンが尋ねる。私はへへっと笑って頷いた。

「何事も平穏無事に、とはいきませんでしたけど」

「一度死んだからな」

 口を挟んだシロに、私は肩を竦める。エンシェント・ワンは「まぁ」と微かな驚きを見せて笑った。

「でも、まあ、これでほんとに終わりです。〝私〟を突き動かしていた未来の記憶は、私の中から消えましたから」

「そうですか。では、これからあなたは、ただあなた自身として生きていくのですね」

 エンシェント・ワンの言葉に、私は虚を突かれたように一瞬、惚けてしまった。目を瞬いて、エンシェント・ワンを見つめ、そして苦笑いを浮かべる。

「そんなこと、全然考えてませんでした」

 すべてが終わった、その後のことなんて。今まで、その後に行けたことがなかったから。

「では、これから考えなくてはなりませんね」

 エンシェント・ワンは微笑んで言う。「そうします」と私は笑って、足元のシロを見下ろした。シロは私を見上げていて、目が合うと頷き返した。ともに考えよう、とでも言うように。

 「それでは」と挨拶をし、エンシェント・ワンに見守られながらGPSをセットする。私はスイッチを押し込んだ。

 

 ◇

 

 私たちは無事、現代へ帰った。バナーが言っていた通り、現代はたったの五秒しか経っておらず、時を越える旅は、そうしてあっさりと幕を下ろした。

 サノスとの戦いが終わったからと言って、アベンジャーズ(ヒーロー)の仕事が無くなるわけではない。ヒーローは365日、年中無休。24時間戦えますか、だ。

 私は一つの岐路に立っていた。

 私の大きな目標の一つだった、ヒーローたちの救済。それを完遂したのだ。ある意味では、私のヒーローとしての、自分で自分に課した役目が終わったとも言える。

 そこで出てくる問題が、これからどうするか、ということだ。母の言っていた〝正しいこと〟は、私にとってヒーローとして生きることだ。誰かを助けることは、私にとってすべきことだ。

 でも、ヒーローとして生きるとは別に、私にはきっと、追っていい私自身の生がある。

 これからどこへ行こう。

 なにせ地球での国際指名手配は今回の功績で帳消しとなった。まっさらの綺麗な身である。どこへ行くも自由だ。

 本部の湖畔に座り、私とシロは湖を眺めていた。

 サノスとの戦いで全壊した本部の建物は、スタークの財力(まほう)によって急ピッチで修復がされている。残骸の撤去や抉れた地面の舗装なんかもあって、やっぱり建物を完全に建て直すのには時間が掛かるらしい。

「これからどうするか、浮かんだか?」

 シロが湖を眺め、尋ねた。

「ぜーんぜん」

 私はシロを一度ちらりと見やってから、また湖へと視線を向けて答えた。

 これまでずっと、何かのためだけに突っ走っていたから、それが無くなると、いきなり宙ぶらりんにされた気分だ。でもきっと、それが当たり前なのだろう。

「やりたいことをやり終えたら、また新しいことを探して、見つけて、またそのやりたいことを目標にする……。言うのは簡単だけど、難しいもんだね」

「〝君〟にとって、ずっと長い間目的だったものがなくなったのだ。仕方あるまい」

 みんなを救うこと。一度は諦めかけて、それでも諦めきれなかった夢。目的。目標。それが、なくなった。

 いや、この先もきっと、誰かのピンチがどこかにあるのだろう。誰かが死ぬかもしれない。でも私がそれを事前に知ることはできないし、対策を取ることもできない。私はその時の私にできることをするしかない。この世界に生きる、誰しもと同じように。

「あ、全然とは言ったけど、一つはやり続けるって決めてること、あるよ」

 私はシロを振り向く。シロがそれは何だと聞くように、こちらを見上げた。

「ヒーロー。ヒーローは続けるよ。私はアベンジャーズのレディ&テディのレディの方。君はどうだい、シロさん?」

 私の問いに、シロはにやりと口角を上げた。

「愚問だな。俺はテディだ。レディの隣を、どこまでも共に行く。……もう置いて行かないでくれよ、〝相棒〟」

 シロがこちらにもたれて、地面へついた私の腕に、シロの重みが掛かる。

 シロは私が死んで戻ってから、その件に関しては触れていなかった。シロが何も思っていない、とは私も思ってはいなかったけど、まあそりゃあ、思うところはあるよな。何も言わずに、一人勝手に死ぬ覚悟を決めていたのだから。

 怒られても仕方ないって思ってたのに、シロは結局、怒ることもしなかった。

「約束は出来ない。けど、努力はするよ」

「ああ、絶対などないからな。そうしてくれ」

 人はいずれ死ぬ。私もそうなる。いつかと同じ言葉を返せば、シロも同じ言葉を返した。

「また旅もしたいな」

「そうだな」

「そうだ、シロさんの行きたい場所はないの? 今度はそこへ行こうよ」

「良いのか? 俺は君をあちこち連れ回すぞ」

「付き合うよ、どこへでも。これまでは私が散々連れ回して来たんだから」

 いろんな土地を、星を巡って、その場所でしか味わえない空気を楽しむ。巡った場所の歴史を学び、文化に触れる。そして時々、困り事の解決という名のヒーロー活動をする。……うん、悪くない。

 ポケットに入れた端末が音を立てた。アベンジャーズの誰かが呼んでいる。行こうか、とシロに目で合図した。

 立ち上がり、湖に背を向けて歩き出す。

「どこへでも一緒に行こうよ、シロさん」

 歩きながら、シロを振り向き、見下ろして言う。シロはちょっと驚いたように私を見上げて、笑った。

「ああ、どこへでも」

 そうしてまた一歩。私たちは新たに、足を踏み出す。

 

 

 








Lady & Teddy will not return.










たぶんユーリとシロは今後、宇宙旅行配信をするユーチューバー(兼ヒーロー)になる。



ともあれ、二人の物語はこれでおしまいです。最後まで読んでくれてありがとサンクス。
感想評価誤字報告マジ感謝。


私が最も読みたいのは、私以外の誰かが書いたMCU二次オリの全員生存ENDものなので、この小説を読み終えた者は、各々が考えた『おれのかんがえたさいきょうのMCU二次オリ(全員生存ENDにします)』を書き、ハーメルンに投稿すること。頼むぜ。ほんとに。マジで。お願いします。

 
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