落ちてきた地球外高度知的生命体とヒーローやることになった件について   作:緑茶山

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第一章-4「雷の神登場」

「君の予想が当たっているかもしれないな、ユーリ」

 ロキを座らせたクインジェットの座席から少し離れた操縦席の近くで、ロジャースが口を開いた。ロキは借りてきた猫のように大人しくしている。

 予想って言うのは、この任務の直前に私が語った、今回の騒動に関してのロキの目的についてのことだろう。

「何の話だ?」

 スタークが首を傾げた。そりゃ、あの時その場にいなかったのだから話が通じないだろうな。

「この今回の襲撃には、他に何か目的があるんじゃないかと彼女は言っていた。事実、あまりにもあっけなく奴は捕まった。本当に何か目的があるんじゃないか」

「ま、奴があっけなく捕まったのは、あんたが年のわりに動けたってのもあるだろ。ピラティスでもやってんの?」

「何?」

「運動の一種だよ。物を知らないね。長年、キャプテン・アイスだったからかな」

 皮肉というか不躾な言葉に、ロジャースがむっとする。

 飛び火はやだな、と思ってそっとその場を離れた。しかし離れると言っても狭いクインジェットの中だ。逃げ場所など後方のロキの近くくらいである。

「こんばんは、お嬢さん」

「どうも」

 近くに行ったら声を掛けられたので一応応える。

 挨拶はしたものの、話すようなことがないし、そもそも話とかしないほうが良いんだろうなってのは分かっている。尋問とかそういうのは、その道のプロに任せるべきだ。

 その時、クインジェットの外で雷鳴が響いた。フロントガラスの向こうで、稲妻が夜空にヒビを入れる。音を聞いてロキがそわそわと辺りを見回した。

「雷怖いの? おへそを守ると良いよ」

「この後に来るヤツが嫌いでね」

 展開は知っているものの一応声は掛けておく。

 ロキが答えてすぐ後に、一際大きな雷鳴が響き、クインジェットが大きく揺れた。何かがクインジェットの上に降り立った。なんとか踏ん張って転ばないように体勢を整える。

「〔君は下がっていろ〕」

 マスクを付け直したアイアンマンが私の肩に手を置いて前に出ていく。アイアンマンはハッチの開閉ボタンを押して、ハッチを開いてしまった。風がクインジェットの中に入ってきた。

「何をする気だ!」

 キャプテンが尋ねるが、アイアンマンは答えない。開いたハッチに、男が降り立つ。金髪に赤いマント、手にはハンマー。雷神ソー。

 問答無用でリパルサーを撃とうとするアイアンマンに、ソーはハンマーを投げつける。

 アイアンマンがハンマーによってすっ飛んで来るのを、私は半ば尻もちをつくように避け、キャプテンはアイアンマンに巻き込まれて倒れ込む。その隙に、ソーはロキを掴んでクインジェットから飛び降りていった。

「マスター、平気か?」

「お尻痛い」

 心配そうに見上げるシロに答えながら、私はなんとか立ち上がる。

「〔また一人来たか〕」

「あれは味方か?」

 アイアンマンとキャプテンも立ち上がる。アイアンマンはすぐさまハッチの方へと歩いていく。

「〔関係ない。奴がロキを逃がすか、殺すかすれば、キューブは失われる〕」

「それなら計画を練らないと」

「〔計画ならある。戦う〕」

 言うが早いか、アイアンマンはクインジェットから飛び立っていく。

「ユーリ、飛べるか?」

「うえぇ……キャプテンの頼みならぁ」

 キャプテンの言葉に、私はキャプテンのベルトと自分のベルトを繋げる安全帯を作る。シロはその間に小さくなって、私の服の懐に潜り込んだ。

 私は寄ってきたキャプテンの腕を取り、ハッチの向こうを見る。見たことのないスピードで過ぎ去る雲に心臓が嫌な音を立てるが、キャプテンの腕を引きながら「南無三っ!」と身を投げ出した。

 能力を使って、ほうきを出す。空中でそれに跨れば、キャプテンも後ろに乗って私のお腹に手を回した。

 某魔法学校のシーカーも目じゃない速さで飛ぶ。飛び始めた瞬間に寒さと目の渇きを感じたので、すぐに魔法で私とキャプテンの目を保護し、体の保温をした。

 少し飛んでから、視覚を強化して周囲を見回せば、ソーがアイアンマンに吹っ飛ばされるのが見えた。ソーが突然フレームアウトするの好きよね。

 誰もいなくなった前方に、「聞いてるぞ」と言っているのであろうロキが一人取り残された。

「見つけました、キャプテン。ロキだけですけど」

「そこに降りてくれ」

 指を差せば後ろから声が返ってきた。私たちは地面に降り立つ。

 少し離れた森の中ではアイアンマンとソーが壮絶なバトルを繰り広げているようで、森林破壊の音がする。

「どうも」

「やあ、お嬢さん」

 私は杖を出現させてひと振り。捕縛呪文(インカーセラス)だ。ロキの体に縄が巻き付き、その体を拘束する。

 杖が無くても魔法は使えるが、雰囲気だ、雰囲気。今度から杖使うようにしようかな。ちょっとしたブラフにもなるし。

「ユーリたちはロキの監視を。僕はスタークたちの方へ行く」

「分かりました」

 キャプテンの指示に頷く。キャプテンはそれを見届けて、アイアンマンたちの戦う森の方向へと駆けて行った。

 私はそれを見送り、ロキへと視線を戻す。ロキは自身の体に巻付いた縄を見ている。

「これは、これは。ミッドガルドの魔術師か? いや、違うな。……それか。なるほど、イマジェンを使いこなす人間とは。驚きだな」

 ロキはそう言いながら、私に向けていた視線を、懐から出て元の大きさへ戻ったシロに向けた。ロキはイマジェンを知っているのか。

「似非ラシューカの兵器、こんなところで出会えるとはな」

「似非? 兵器?」

 聞き慣れない言葉に首を傾げて、シロを見る。シロもまた首を傾げていた。

「何のことだ?」

「己のことも知らずにいるとは。強大な力を秘めながら他者に支配されるを良しとする。実に度し難い。……そいつは可愛く忠実な飼い犬だろう、娘。せいぜい上手く使うと良い」

 シロ自身も、イマジェンのことを詳しく知るわけではないのか。ロキの言う兵器というのが、真実であるという確証もないが。

「待て、言い逃げをする気か、説明を……」

 シロが更にロキに尋ねようとしたところで、森の方からものすごい衝撃波というか、強風が吹きつけた。

 『となりのト○ロ』で夜にサツキちゃんが外に出て森がザワザワしているのを不気味に感じるシーンのような強風だ。たとえがわかりにくい? わかる。

 多分この風は、ソーがキャプテンの盾にハンマーを叩きつけたときの衝撃によるものだろう。つまり、彼らの話し合い(物理)が終わったということだ。

「シロさん、その話はあとで……他の人を当たろう」

 ぽんとシロを軽く叩いて、杖を振る。イモビラスでロキの口が開けないようにしてから、みんな大好きウィンガーディアムでふわりと浮き上げる。レビオサーじゃなくてレビオーサな。

 ロキを連れて私はほうきに乗り、暴れ回っていた三人のところへ向かった。

「おじさんたち、お話終わりました?」

 地面に降り立ち、ロキも下ろす。あとで恨みに思われても嫌なので、そっと優しく下ろしてあげた。

「俺の弟を手荒に扱うな、ミッドガルドの魔女よ」

「精一杯努力させていただいてますよ」

 ミッドガルドの魔女だって、大仰な言い方だ。

 ロキに関しては本当にちゃんと、手荒にしていない。魔法で喋れないようにしたり動けないようにしたりしているけど、ちゃんと両足で立たせてあげているし。

 ソーも私の言葉とロキの姿を見て納得したのか、それ以上何も言わなかった。

「とにかく、そいつをヘリキャリアへ連れて行こう」

 キャプテンの言葉に、みんな異論なく頷いた。

 

 ◇

 

 ヘリキャリアに連行されたロキは、ガラス張りの独房に入れられた。私たちは独房でのロキとフューリーの会話を艦橋に集まって見ている。

 私とシロはそれを見ながら、途中の休憩室で貰って来たドーナツを頬張る。

「〔一応忠告しておくが、逃げられはしないぞ。そのガラスを引っ掻きでもしたら……〕」

 画面の中のフューリーは言いながら操作パネルのスイッチを押す。すると独房の床下が音を立てて口を開けた。

「〔その穴から真っ逆さまだ。ここは高度一万メートル。どうなるか分かるな?〕」

「〔よく出来た檻だな。だが、私のためのものではないだろう?〕」

「〔ああ、お前よりもっと強いもののために作った〕」

「〔ああ、あのケダモノ。人間のフリをしている〕」

 艦橋にはロジャース、バナー、ソー、ロマノフが集まっていた。

 ロキはばっちりカメラ目線で、ケダモノ――バナーが見ていることを知っているとでも言うかのような表情だ。

「〔あんたもどれだけ必死なんだ。あんな化け物どもを集めて身を守るとは〕」

 アベンジャーズが化け物集団という認識はやはりあるのだな、とその言葉を聞いて思う。いや、だからこそ仲間割れさせようとしているのだけど。

「〔どれだけ必死かって? お前は戦争を仕掛け、制御不能なエネルギーを盗み、安らぎと言いながら面白半分に人を殺す。我々としても必死にならざるを得ないだろう。自分のしたことを後悔させてやる〕」

「〔ほう……あとちょっとだったのに惜しかったな。もう少しで四次元キューブの力が手に入った。無限のパワーがな。だが何に使う? 全人類を照らし温めるためか? パワーは王が持ってこそ価値がある〕」

 ロキはフューリーを嘲笑うかのように言った。

 私達が聞いていると知って、ロキは喋っている。フューリーに対する疑念を植え付けようとしている。その思惑も、この後の展開を知っているからこそ、分かることなんだけど。

「〔ではその王とやらが雑誌でも読みたくなったら呼んでくれ〕」

 フューリーはそう言うと、ロキに背を向けて立ち去った。やがて、テーブルに出ていた独房の画面は消えた。

 

 

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