落ちてきた地球外高度知的生命体とヒーローやることになった件について   作:緑茶山

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ロキを脅し中のトニー・スターク氏
「チームがまとまるには時間がかかる。だが頭数は多いぞ。神もどきのあんたの兄貴だろ。蘇り生きた伝説となった超人兵士。怒ると暴走しちゃう男。日本から来た魔法少女とマスコットに、腕利き殺し屋カップル。それをあんたは、よくもまあ……一人残らず怒らせたもんだ」



 


第一章-8「チタウリ襲来」

 クインジェットの中で、私は視界にエネルギー残量を表示させた。さっきのヘリキャリアでの戦闘が一段落ついたときに、軽食はとって回復はした。

 そう言えば以前、イマジェンの能力について語ったが、語り忘れていたことや新たに分かったことがあった。それほど数は多くないが、今のうちに話しておこう。

 先程言ったエネルギー残量は分かる通り、その時点で使える魔力の量だ。

 ド○クエの魔法使い風に表すならば、MP(マジックパワー)である。MPが残っていなければ、いくら強力な呪文を覚えていても魔法を使えないように、これがないと能力は行使できない。……これに関しては、日本でミルファン星の巨大メカと戦ったときに思い知ったが。

 術式を構築していたとしても、その場に剣をはじめとした物質を作り出すのはエネルギーの消費が多く、自己の強化はそれほど消費がない。また、その場に視認できる物として作り出すより、見えない何かとして作り出す方がコストは低い。

 まあ、さっきみたいにヘリキャリアを浮かすなんて大事になれば、たとえ見えていなくともエネルギーの消費は大きくなるが。

 それから、これが最重要事項。シロがある程度近くにいないと、能力は使えない。以上。

 私はクインジェットの後ろの席に座って、エネルギーを十秒でチャージできると謳われたゼリーを食べる。一応エネルギーのゲージはあるが、ゲージを超えての余剰回復も可能である。食える時に食っとかないとね。

「それ、なんだい?」

「ん? キャプテン、食べたことないです? ウ〇ダーイ〇ゼリー。十秒チャージ、二時間キープ。日本が誇る……かは知らんけど、創業百年を超える老舗、森〇製菓から出ているエネルギー補給に特化したゼリーですよ」

 食べます? とポーチにストックしてある口付きパウチを差し出してみるが、大丈夫だと首を振られた。

「日本のレーションは製菓会社が作ってるのか?」

「これレーションじゃないですよ。コンビニでも売ってる栄養食品。これはamaz○nで買ったやつですけど」

「? 日本の製品を、ブラジルまで買いに行ったのか?」

 キャプテンの言葉に、操縦席の二人が吹き出した。きさまら! 聞いているなッ! その反応にキャプテンが首を傾げる。

「amaz○nってのは、ネット通販サイトのこと。アマゾン川のことじゃあないですよ」

「あ、そうなのか」

 キャプテンは頷いて、腰のポーチから小さな手帳を取り出し、アマゾン(ネット通販)、〇永製菓、ウィ〇ーイン〇リーと書き込む。勿論すべて英語で。私はその様子をゼリーを吸い込みながら眺めている。シロが少しくれと言ってきたので、少し分けてやった。

「それにしても、君は小柄なのによく食べるね」

 手帳をポーチに戻しながら、キャプテンは言った。緊急事態に備えてこまめに補給していたから、そう言えばよくキャプテンの前でドーナツとか食べていた気がする。

「能力使うのにエネルギー使うので。キャプテンは血清で超人になったわけですけど、燃費悪くなったりしなかったんですか?」

「うーん……元々血清を打つ前の僕は病弱で食も細かったから……健康体になって食べられるようになったのか、超人になったからなのか……よく分からないな」

「そっかぁ」

 比較対象にあまりに差があるなら、そりゃ分かんないよな。でも筋肉が増えれば基礎代謝も上がるだろうし、超人兵士になればやっぱり燃費悪くなるんじゃないかとも思う。超人兵士は普通の人の四倍すごいらしいし。

「二人とも、お喋りはその辺にして。そろそろ着くわよ」

 そんなこんな話をしていれば、クインジェットがマンハッタンに辿り着いたらしい。

「スターク、こっちは三時の方向」

 ロマノフが無線機でアイアンマンに呼びかける。

「〔どっか寄り道してたのか?〕」

 からかいと皮肉混じりの声が答える。確かこの場面は、スタークがロキとお喋りしたあとだろう。「てめーは俺たちを怒らせた」(意訳)ってスタークがロキに宣言する場面だ。

 アベンジャーズのイカれたメンバーを紹介するあのシーン。神様もどきの兄貴と、蘇り生きる伝説となった超人兵士、怒ると暴走しちゃう男、腕利き殺し屋カップル……だったっけ? 私とシロのことはなんて言ったんだろう。ちょっと気になる。

「〔パーク・アベニューへ行け。奴らを引き連れて行く〕」

 見たことのある建物が見えてくる。確かあれはグランド・セントラル駅だ。その目の前をアイアンマンが通り抜け、それを追いかけるチタウリをクインジェットの機関銃が一掃した。

 クインジェットはグランド・セントラル駅を避けて上空へ。その後ろにそびえ立つスターク・タワーの周りを旋回して昇っていく。

 タワーの屋上ではソーとロキが取っ組み合いの兄弟喧嘩をしていた。クインジェットはソーの援護のため近付いて機関銃を撃つが、ロキが杖を向けて閃光を放つ。

 青い光が左翼を貫き、機体は大きく揺れた。みるみるうちに高度を失い、クインジェットはビルの谷間を縫うように落下して、敷石を砕きながらなんとか不時着した。

「急げ、行くぞ!」

 キャプテンを先頭に、私たちはクインジェットを飛び出した。そしてスターク・タワーの上空を見上げて立ち尽くす。空にポッカリと開いた穴から、凶悪な鱗を付けた鯨のような大きなモンスターが姿を現したのだ。

「何だ、あれは……」

 シロがつぶやく。空飛ぶ巨大鯨――リヴァイアサンは体をくねらせながら宙を泳ぎ、地上へと近付いてくる。その腹から、無数のチタウリが飛び出してはビルへと飛び移っていった。

「スターク、見てるか?」

「〔見てる。目を疑ってる。バナーは? まだ来ないのか?〕」

 無線機の向こうで、キャプテンの声にアイアンマンが応えた。アイアンマンから尋ねられたキャプテンは、訝しげに首を傾げる。

「バナー?」

「〔来たら教えろ〕」

 アイアンマンとの無線はそこで一旦途切れる。アイアンマンは、トニー・スタークは、この戦いの勝敗の鍵を、ハルクが握っていると信じているのだ。

 

 ◇

 

 キャプテンは州警察に指示を出しに行き、残った私たちはチタウリを引きつけるべく派手に戦う。こんな時は『NieR Replicant』の黒の魔法が便利だ。黒の処刑という魔法を使えば、地面から生えた黒い槍がチタウリを片っ端から突き刺していく。

 バートンとロマノフがバスに取り残された人々を誘導するのを広範囲攻撃で援護し、上空からのチタウリの攻撃は魔法陣の防御壁(黒の轟壁)で防ぐ。

 大好きなセリフである「なんだかブダペストを思い出すわね」「君と俺じゃ、思い出が違うけどな」を聞くことが出来た。ありがとう。

 出来ることなら州警察のキャプテンに対する熱い手のひら返しも見たかったけど。残念ながらこの体は一つしかない。

「〔とりあえず引き付けたけど、次はどうする?〕」

 アイアンマンの無線が再び繋がる。

 私たちが戦っているところへ、キャプテンが戻ってきた。

 稲妻が周辺のチタウリを一掃し、ソーが勢いよく着地する。ヒーロー着地は膝に悪いよって思ったけど、ヒーロー着地してなかった。でも脚がビリビリしてそう。ちょっとよろめいていたし。

「上はどうなってる?」

 キャプテンがソーに尋ねる。

「キューブを囲ってるバリアが破れない」

「〔ああ、だがまずはこいつらだ〕」

 ソーの言葉に、アイアンマンが答える。

「作戦は?」

「チームワークだ」

 ロマノフの言葉にキャプテンがきっぱりと答えた。

「俺はロキだ」

「ああ? ロキは俺がやる」

「待て。ロキを先に倒せば、軍隊に歯止めが効かなくなり、更に被害が拡大する。上にいるスタークを援護しないと……」

 まだまだ噛み合わない急造チームを、キャプテンがなだめる。優先事項を伝えようとしたところで、場違いなエンジン音が聞こえてきた。その場にいた全員がそちらを見れば、瓦礫の中、ボロ臭いバイクに乗ってバナーがやって来た。

「いやぁ、酷いことをする奴もいたもんだ」

 バナーはバイクから降りると、辺りを見回して言った。

「もっと酷いのもいた」

「すまない」

「いえ、待ってたの。そういう酷いのをね」

 ロマノフの返答に、バナーは少し興味深げな表情を見せた。

「スターク、バナーが来たぞ」

 キャプテンはアイアンマンに伝える。

「〔スーツを着ろって言え。愉快な仲間を連れて行く〕」

 なんだと訝しがる暇もなく、ビルの間からアイアンマンが現れた。その後ろには、リヴァイアサンを引き連れている。

「どこが愉快な仲間なのよ」

 ロマノフが迷惑そうにつぶやいた。アイアンマンはリヴァイアサンをおびき寄せながらこちらへ飛んでくる。バナーは何をすべきか自ずと理解したらしい。何も言わずに歩き出した。

「バナー博士、今なら思いっきり怒ってもいいぞ」

「僕の秘密を教えようか」

 キャプテンの言葉にバナーは振り返り、肩越しに言った。

「いつも怒ってる」

 瞬間、バナーの肌が緑に変わり、筋肉は肥大化していく。バナーは一気にハルクへと変身して、その大きな拳を、突っ込んできたリヴァイアサンの頭部に叩き込んだ。

 リヴァイアサンの体は動きを止められた頭部を支点に、尾の方が上へと持ち上がっていき、その厚い装甲を剥がしながら地面と垂直の角度で動きを停止する。

「〔そのまま〕」

 アイアンマンが、装甲の中の弱い部分へとミサイルを撃ち込んだ。轟音とともに、リヴァイアサンは地面に崩れ落ちる。

 私は爆発し飛散する鉄くずを、みんなの頭上に魔法の防御壁を展開することで防いだ。こうやって防いじゃったけど、あのシーンでさり気なくロマノフを守るキャプテンがとても好きです(唐突な告白)。

 チタウリたちが一斉に叫び声を上げる。それに対抗するように、ハルクが声の限り雄叫びを上げた。誰に指示されるでもなく、みんなが背中を合わせて円形の陣を組む。

 えっ、やば、私あの超絶名シーンにいない? あのぐるーって回るカメラワークで撮られてるやつじゃん。頑張れ私の表情筋。ここでにやけちゃ締まらないぞ。

 いや、失礼。仕切り直そう。

 今ここに、ヒーローたちの心は一つになった。アベンジャーズが立ち上がった。侵略者へ、復讐(アベンジ)の開始だ。

 

 

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