変わり者のホド旅   作:benitubaki

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遅くなりました済まねえ……!
分割予定だった話を統合したので少し長めです


12話 上層 大瀑布

-大瀑布

 

-ストークの隣の水槽にある巨大な滝

-幾つかある還流水路の起点のうちの一つであり、十分な飛行能力があれば各層へ繋がるショートカットのようにも使用可能

-下層まで続く巨大な送水管が瓦礫で破損しているほか、時折暴風に流された大量の異形が吸い込まれていく光景が見られる

 

・・・

 

ドオオオォォォォ…………

 

バシュッ バシュッ スタッ

 

おお~ここが滝……! 浄水層とかでもちょこちょこ滝は見るけど、この大きさ(ナイアガラ級)は初めてだ!

 

「炭素生物に倣って『大瀑布』って呼んでるんだ。なんでもここからホド全域に(液体資源)を行き渡らせているらしいよ。」

 

この光景見たら納得だねぇ~。こんなに水が流れ込んでるのに、まだこれだけの水を湛えて居るのも地味に凄いね!

 

これってどこまで続いてるんだろ……誰か通ったことある?

 

「昔は宣教師達が中層へ降りる際に利用していたな。ガーディナ辺りまで通じているのは確認済みだ。」

 

なるほどねぇ……なら下層まで通じてるかも知れないなぁ……よいしょ、おー結構風がある。今も通れるには通れるんだ?

 

「どうだろうな。中継地点として使っていた構造物があるが、監視が置かれるようになってからは別ルートを使うようにしたからな……。」

 

ふーむ……。しばらく使ってないなら、今は手薄になってるかもしれないか。

 

「姉上……まさかとは思うが、見に行くつもりじゃないだろうな?」

 

ギクッ いやあまさか、そんな危ない場所にわざわざ行かないよぉ、アハハ……。

 

その反応は行く気満々の奴だろう。ダメだ、許可できない。」

 

「私もお勧めしないかな。このルートは水だけじゃなく循環大気の通り道でもあるみたいなんだ。ここに吹いてる風はこれでも静かな方で、さっきも言った最上層の暴風が、定期的にここに吹き込むんだよ?」

 

「それに偵察兵を何度か送り込んだ事があるが、そのタイミングで降りた者たちは全員帰らなかったぞ。」

 

うう~んなるほど……止めとくかあ。

 

「丸腰のニンフ単体では容易く浚われるほどの風になる。吹き始めれば鎧殻のバランサー無しには立つこともままならん。わかったら縁から離れるんだ、姉上。」グイグイ

 

「二人ともこっちこっち。この小屋(管理室)の中で観るよ。」パシュン

 

はーい。

 

・・・

 

鎧殻はもう脱いで良いの?

 

「うんいいよ。ここは頑丈な密閉空間だからね。」ガチャガチャ

 

「脱いだら向こうのベッドに行くぞ。丁度天窓があるからな。」カチャ、シュン

 

あ、ホントだ。ねえねえ、此処ってなんの建物なの? 急ごしらえの小屋って感じでもないし。

 

「資料から推測するに、この貯水湖の管理施設の一つみたい。滝の制御もしてたらしいけどどれもエラー表示?ばっかりで、私たちが復旧した通信設備しかまともに使えないんだよねぇ。」

 

ほうほう、その資料はどの辺にあるの?

 

「そこの棚。あとで見てみると良いよ。シーディならいろいろ読み取れるかも。」

 

おっけ~。また今度来た時にでも読んでみるかあ。

 

「それじゃあ……(カチカチ)『こほん。みんな聞こえてるかな? ライエだ。まずは日々……』」

 

「ほう? ……姉上。」

 

え、いきなり何何? まさか……。ガシッ ちょ、イーデンちゃん!?

 

「ククク……逃がさんぞ。観念するんだな、姉上。」

 

「『……本人から自己紹介してもらおう。』」

 

ちょちょちょ、わたし何も聞いてない……。

 

「所属と名前だけでもいいから、ほらほら!」

 

 

ガヤガヤ……

 

「隊長!! 今回の作戦は!?」

……高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応する!!!

行き当たりばったりという事じゃないですかヤダー!!!

 

「これが今回の『差し入れ』だって?」

「アルカンドが武器持ってくるなんて珍しいな。」

「ほー……これは使えそうだ。」

「私にはちと重いな。パス。」

 

「こっちあたしが使う~。」

あっずりぃぞテメー!

「へへん、早い者勝ちだよ~!」

ちくしょー!

 

もう時間になるぞ!! 最終チェックは済ませたのか!!?

「やべっ、監督だ!」

 

「パラメータチェック……ぎゃっ!ギリギリ重量過多しちゃった!」

「おいおい、欲張り過ぎだぜ。」

「いーもん! これ無しでもアンタよりは票稼いでやるから!」

言ったなぁ~!?

 

「こらこら、喧嘩しないの!」

「あんたらいつもやってて飽きねーのか?」

 

「喧嘩するほど仲がいいってやつ?」

「「誰がコイツと仲良いって!?」」

「あはは、息ピッタリじゃん。」

 

うおおりゃあああ! 間に合った! 誰か俺っちの特技背嚢(追加ブースター)使わねえかい!?」

「アンタそれ昼間に小屋ぶっ飛ばしてたって聞いたよ! そんなの嫌だよ!」

「アレは限界負荷試験だから爆発していいの! 通常使用の耐久性は120%までクリアしてるよ!」

「じゃああたし使おうかな~。」

「マジかよ!?」

「毎度ぉ! Takemikazuchi比で装備負荷据え置き、推力1割・消費1割増だ! 管理ミスってガス欠こくなよ!」

「まっかせなさい、伊達に二等空士やってないよ~。」

 

「エイト、今回は少し離れて飛んでくれ。」

「んあ、なんか試すんですかナインさん。」

「ああ……今回はコレを使おうと思う。」

「あー、光波ブレードですか。了解です。」

 

 

「いやあ賑やか賑やか。この光景見ると帰ってきたって感じしますね。」

 

「ああ。今回も全員で参加できそうだな。」

 

『カタパルト1-1から20-2、チェック終了。』

 

『打ち上げ予定時刻まで残り5分、総員、通信チャンネル0番に合わせ待機せよ。』

 

「珍しいっすね。いつもは打ち上げまで大人しくしてろって言うのに。しかも全員って。」

 

「恐らく昼間の来客絡みだろう。ヴィシクも臨時配達で来ていたらしいから、アルカンドのお偉方の挨拶でもあるんじゃないのか?」

 

「そう考えると今日は客が多いっすね。いつもはハティちゃんが来る程度なのに。」

 

「偶にはそういう事もあるさ。ハティといえば、最近姿を見ないな? こっちに来すぎてお叱りでも受けたか?」

 

「まさかぁ。彼女、その程度で大人しくしてるタマじゃないっすよ。下にでも行ってる(巡礼の旅にでも出てる)んじゃないっすか?」

 

「……まあそっちの方が彼女らしいが。」

 

ビーッ!!

 

『注目! 今回はライエ千翅長より特別に激励のお言葉を賜る! 総員傾聴!』

 

<<こほん、みんな聞こえてるかな? ライエだ。>>

 

<<まずは日々の哨戒、整備と研究開発お疲れ様。君たちのお陰でストークの平和と安全は守られている。長として礼を言わせてほしい、ありがとう。>>

 

<<さて毎回恒例の資源回収だけど、これまで観測されている異形は普段よりもかなり多い。さらに今夜は風も強めだから、十分に気を付けて作業にあたってくれ。>>

 

<<それともう知っている子も居ると思うけど、今日はちょっとしたゲストを迎えているんだ。本人から自己紹介して貰おう。え、わたし何も聞いてない……。所属と名前だけでもいいから、ほらほら!>>

 

<<……えーと、は、初めまして、アルカンドのシーディでしゅ、です! イーデンちゃんのお姉ちゃんやらせてもらってます! よろしくね!姉上、人前でその呼び方は止めて欲しいのだが。ごめんごめん、この方が印象付けられるかなと思って。>>

 

<<マイクに入ってるよ二人とも。えーということで、昼間のスクランブルはシーディさんでした。>>

 

<<ちょっと訳あって長いこと上層に居なかったから、ストークの事知らなかったみたいでね。領空侵犯になりかけたってワケ。>>

 

<<重大なトラブルではなかったので安心してほしい。>>

 

<<勿論流星群も流れ星も初めて見るわけだから、どうか事故無く飛んで楽しませてあげて欲しい。あと、いつもの投票とは別にゲスト選出による特別賞も考えているからね!>>

 

<<それじゃ今日も、ご安全に!>>

 

『……以上、千翅長からの激励とお客人の紹介だ! 配置に付け!』

 

「…………。」ダラダラ

 

「……いやあ、教会長に聞かれなくてほんと良かったすよ。」

 

『射出まで残り3分、カウントダウンを開始する。』

 

<<よおライエ。今日こそはあんたを一等空士から引きずりおろしてやるぜ?>>

 

<<バイスか。ふ、期待しないでおく。>>

 

<<んまー余裕ぶっこいちゃってまあまあまあ!>>

 

<<ここでグダグダ言ってるくらいなら、空で決着付けましょうよ。>>

 

<<言うようになったでねえのデイルちゃん! んじゃ、存分に見せつけてやるよ!>>

 

「まずは目の前のことに集中するとしよう。」

 

「いえっさー!」

 

 

うう……スピーチあるなら事前に言っといてよぉ……。

 

「あんたは前もって教えておくと何するか分かんないタイプでしょ。はい、こっちのベッド使ってね。」

 

「ふん、姉上はこういう時決まって逃げるからな。まったく、普段通りにしていれば問題ないと前から言っているだろう?」

 

それ(スピーチ)これ(雑談)はワケが違うの! も~!

 

「みんなに通達するならアレが手っ取り早かったからさ。あんまり気を悪くしないでね。」

 

「いつまでむくれているのだ。もう時間になるぞ。空を見ろ。」

 

ぶー。あ、完全に陽が落ち(大光球が消灯し)たね。……おおっ? さっきまでは見えなかった無数の輝きが……これは良いね!

 

視界いっぱいに光が煌いて綺麗だなあ~。あ、あの特に光が集まってる帯、まるで文献にあった天の川みたいだね!

 

「うん似てるよね。だからこっちでも『天の河』って呼んでるんだよ。」

 

なるほど~。あ、後で下の皆も見れるように撮影しておこっと。カチャ ポイッ フヨヨヨ……

 

バシュゥゥゥゥゥ……!!

 

この音……大光球の基部ユニットから響いてる?

 

「これが何の為の現象なのかよくわかってないんだけど、多分冷却とかそんなんじゃないかな、とにかく暴風の発生源なんだ。これが始まるといよいよだよ。」

 

「見よ姉上、星が動き始めたぞ。」

 

あ、ホントだ。こう見ると流体力学実験みたいだね~。外も風が強くなってきた。

 

……わぁ~! 空の輝きが一斉に流れ始めてる。これが流星群かぁ~。

 

「そ。浮遊型が大量発生するのはここだけらしくてね、他では見られないと聞いた時はちょっと驚いたんだ。」

 

確かに浄水層の方では見られない景色だね。ホドも各地を巡ればこんな感じの現象が沢山あるんだろうなぁ~。ずっと見てられるねぇ。

 

「貯水瑚の辺りは異形の発生源になっているのだが、どうも天井の瓦礫……外界の岩石が影響しているらしいというのが分かってな。」

 

「この現象を浄水層でも再現できれば資源問題の何割かは解決するかもしれんと、研究班が躍起になっているのだ。」

 

確かに上層は中層に比べて物資は潤沢だけど、逆に資源は水槽だらけのこの辺はむしろ乏しいんだもんね。

 

「旧時代の施設は大半が崩落か水没してるからねぇ。」

 

・・・

 

「そろそろ『流れ星』が始まる頃だな?」

 

「うん。通信聞く限りみんな張り切ってるから、今回も期待できそうだよ。」

 

さっきも言ってたけど、流れ星ってなに?

 

「あの光点が浮遊型異形というのはさっき言ったよね。あれってどう墜としても蒼い球(BP)出るじゃない? その収穫に飛行士たち総出であたるんだ。」

 

「高速ですり抜けながら異形を撃墜し、球を引き連れて飛ぶ機動の軌跡を流れ星と呼んでいるのだ。後で姉上が特別賞を与えるのだから、しっかり見ておくのだぞ。」

 

あ、そういえばそうだったね。あぶないあぶない。

 

「飛行士の担当するエリアは決まっているから、どの辺の軌跡が良かったか教えてくれれば私が割り出すよ。」

 

おっけ~、わかった!

 

……ゴゴォォォォオオオオオオ……!!

 

お、この地響きと重低音は……!

 

「飛行士たちが上がり始めたね。」

 

あれってもしかして、ポロッカちゃんを打ち上げた時の?

 

「そうだよ。といってもあんな大推力は要らないから随分小型化したけどね。水を燃料にしたおかげでここでは使い放題さ。」

 

「以前より上昇速度が速いな……また性能を上げたか? 噴進器技術はやはりストークが一歩抜きんでているな。」

 

水を燃料にだなんて、逆転の発想も良いところだもんね……。

 

「使えるものは何でも使わないといけないからね。ちなみに打ち上げ用の翅籠も自律飛行と再利用ができるタイプなんだよ。」

 

「自動機械でもないのに自力で帰ってくるのだから、初めて見た時は驚いたぞ。」

 

ほほ~! そりゃあすごい! あ、散開した。

 

うわわっ、凄い勢いで飛び回ってる! 軌跡に沿って爆発が連なって、わぁ~爆導索の連鎖爆発みたい!

 

はっはっは! まさかそれに例えるとは思ってなかったなあ!」

 

風情がないぞ姉上……。

 

・・・

 

みんなよく蒼球取り込まないように飛べるなあ、アレ結構速度あるのに。

 

「はっはっは、ポロッカの速度を舐めちゃいけないよ。みんなあの戦いを生き延びた強者なんだから。」

 

そっか、異形に追われるのに比べたらなんてことないもんなぁ。

 

それにみんな、回収優先して蛇行したり、処理速度優先で弾幕バラまいたり、飛び方に個性が出てて面白いねこれ。

 

……あっ、あの右のすごい勢いで急旋回繰り返してる軌跡って、もしかしてラインちゃん?

 

「うん、そうだよ。よくわかったね?」

 

スクランブルで駆け付けた時の機動に似てるなーって。すれ違ってから戻ってくるまでが凄く速くてびっくりしたもん。

 

「あの者はこちらの兵たちも一目置いているエースだからな。やはり他とは動きが違う。」

 

それに張り合うような軌跡が二本……ラインちゃんほどじゃないけど、こっちも凄い鋭い動きだ……。

 

「旋回で少し膨らむのがバイス、速度控えめで撃破数を稼いでるのがデイルだね。バイス動きのキレが上がってるなぁ。こりゃ~ラインが追い付かれるのも時間の問題かな?」

 

「ラインもバイスの機動に気付いているのだろう、気を取られて幾つか撃ち漏らしているな。こっそりデイルが自分のスコアにしているが。」

 

へぇ……この三人は仲いいの? 見た感じとても息が合った機動だと思うけど。

 

「本人たちは認めたがらないけどね。模擬戦の時はあの子達三人で飛んでもらってるんだけど、他の組み合わせの時よりも成績良いんだよね。」

 

「普段組んでいる二人はともかく、バイスはラインへの対抗心で腕を上げているから、本人の前で仲がいいなどと言うなよ。照れ隠しで拳が出るからな。」

 

あはは……まあいろんな関係があるよね……。

 

・・・

 

星の数半分くらいになったかな? あっという間だねえ、撃墜ペースが凄い早い……!

 

蒼球の光があんなにデカくなってる。ここまで大量に連れてるの見たことないな……。

 

「そろそろ終了時間だね。うんうん、今回も良い収量になりそうだ。」

 

「姉上、誰にするのか決めたのか?」

 

そ~だねぇ~……。中央で弾幕張ってた子にしようかな!

 

「中央の弾幕は……、ナインだね。」

 

「ふむ、何が琴線に触れたのだ?」

 

みんなが熱塵銃一本で飛ぶ中、あれだけの量の火器(ミサと機関銃と光波ブレ)の並列制御を高速飛行しながらやるってのは練度が高い証だからね! あの飛ぶ斬撃みたいな奴ってどんな原理なんだろ?

 

「あの熱量長剣か……アレに関しては何も情報が無いのだ。少なくとも上層のものではないな。」

 

「あれ、ナインが移籍した際に持ち込んできたものなんだよね。バウカーンに問い合わせたら『何それ面白そう調べるから寄越せ』って言われたし、ヘロスも『そんなもの受注した覚えはない』ってバッサリだったし。」

 

「ナインは故郷も覚えていない放浪者でな、故にあの武器は出自不明のXナンバーが付されているのだ。」

 

成程……後で見せて貰えるか交渉してみるか……。

 

「言っておくが楽ではないぞ。一点モノでしかもかなり愛着を持っているからな。」

 

「飛行士たちが降りてくる。そろそろ風が止むし私たちも街に戻ろうか。」ガチャガチャ

 

そうだね、じゃあ出よ。ピーッ あれ?

 

「この小屋は頑丈だからついつい忘れちゃうけど、外はまだ風が強くて危ないよ。鎧殻も着なきゃ。」

 

そうだった、まだ風吹いてるんだったね。ガチャ、カチッ

 

「風速が落ち着くまで自動的にロックがかかる仕様だ。間違えて出る心配はない。」

 

親切設計~。

 

ピピッ

 

「収まったみたいだね。」シュッ

 

おお~、生き残った異形達が流れ込んでく……。これはこれで良い景色だね。

 

「あまり近づくと寄ってくるぞ。」

 

 

「ネット再展張良し!」「回収機準備よし!」「受け入れ準備OKです!!」「おーし、次の飛行士達に降りて来いと伝えろ!」「ラジャー!」

 

<<2番滑走路、3番滑走路、受け入れ準備完了。>>

 

<<イーグルは2番、オウルは3番だ。飛び込んで来い!>>

 

ひぃぃぃいいいやっほおおおおおおおい!!!」ズザザザァァァァ!!!

「よっと、と、はいっ!」ズザァーーッ!

 

そおら吸い取れェ!」ギュオオオオオ

 

「おうお疲れさん! 今回はさらに大量じゃねえか?」

 

「ふふん、私たちも日々進歩しているのよ!」

「あとお願いね。早くお風呂入りたーい!」

 

「回収急げ! 飛行士たちを待たせるな!」

 

追い付かれちまった! 吸い取り頼む!」ギャギャギャリィッ!!

「調子こいて半径狭めるからですよ、隊長。」ギィィィィ!!

 

「任せとけよ! スイッチオンんん!!ギュゴォォォオオ!

 

「ネット交換急げ!」「タンク切り替え完了!!」「次が最後の組です!!」「了解ー!」

 

 

やってるねぇ。

 

「町が一番賑わう時間さ。」

 

「あ、長~。今日も大量ですねえ~。」

 

「うん、報告が上がってくるのが楽しみだよヴィシク。温泉はどうだった?」

 

「いつも通りいい湯でしたよ~。ありがとうございましたぁ。」

 

「ヴィシク、用が済んだら配置に戻れ。私もそろそろ戻る。」

 

ええ~もうですかぁ!? せっかく来たのに……。

 

「いつまでもシャーレを抜けさせておくわけにはいかんからな。」

 

「はぁ~い……。」

 

お疲れ様、大断層寒くて大変なんだって?

 

「そうなんですよ~、ありがとうございますぅ。今度遊びに来て下さいね、シーディ様~。」

 

うん、あとでお邪魔させてもらうよ。

 

・・・

 

あ、イーデン。ちょっと聞きたいんだけどさ。

 

「何だ姉上。」

 

『この子達』の持ち主ってわかる?

 

「その鎧殻のか? IDを照合すればわかるだろうが、専用の設備が必要だ。向こう(浄水層)に行かなければならんが……それがどうかしたか?」

 

「もしかして、持ち主の身内に返還したいの?」

 

うん。もしかしたら安否を知りたがってる子達がいるんじゃないかと思ってね。特にFolsの持ち主は下層で死んじゃったわけだし……。

 

もし待ってる人がいたら、行方不明のままだと不安なんじゃないかって思ってさ。

 

「姉上がそこまでする義理もないだろうに……。そも、なぜ死んだ場所が分かるのだ。」

 

下層で会ったナズさんって人が、持ち主を倒したって言ってたから……。

 

「へぇ、下層に行ったという事は巡礼目的かな? 巡礼ともなれば腕利き揃いだ。それを仕留めるなんて、そのナズって人は只者じゃないね。」

 

「ナズ……聞き覚えがあるな。姉上、その者はギプロベルデの鎧殻を纏うガーディナのニンフだったか?」

 

うん、特殊部隊出身だって聞いたよ。

 

「ならばあのナズで間違いない。なるほど巡礼では相手にならぬわけだ。」

 

「その人、そんな実力者なのかい?」

 

「奴はガーディナの暗殺部隊『霧』の二代目隊長だったのだ。」

 

「暗殺部隊かぁ。……だった?」

 

「うむ。ギプロベルデとの戦争が終わったのち内部のゴタゴタに巻き込まれ、混乱に乗じて脱走したと聞いたな。下層で生き延びていたとは……。」

 

「へぇ~、特殊部隊だけあって中々たくましいね。」

 

だからかぁ。ナズさんって派手派手な弾幕の中にこっそり狙撃混ぜてくるんだよねぇ。

 

「ああ、ソレが奴の手口だ。あえて友軍部隊と乱戦を演出しながらギプロベルデの鎧化兵に接近し、一射で確実に急所を撃ち抜いて仕留めていたと。」

 

「……待て、なぜ奴の手口を姉上が知っている?」

 

何故って、そりゃやりあってきたからねぇ。頭環のこの損傷も、その時付けられた奴だよ?

 

「……つくづく、とんでもない無茶をしてきたのだな……。」

 

「あれ? シーディ、キミそんな強かったっけ?」

 

う~ん、純粋な実力というよりは、この子(Fols-MB)のお陰と言った方が良いかな。

 

私はもうダメダメ。奇襲を仕掛けたら逆に二重の罠に引っ掛かっちゃってさ~。その後も弾幕で近寄れないし、タンクなのにとんでもない速度で逃げるからダメージレースでジリ貧だったし、ずっと翻弄されっぱなしだったもん。

 

んで、もうだめだーってなった時にこの子が気合い入れてくれてさ、土壇場で立ち上がれて逆転勝利って感じ。

 

まあそれもこれも、着用者がナズさんに討ち取られていたからこそってのがフクザツなんだけどもね……。

 

「……色々聞き出したいことはあるが……一先ず、持ち主には姉上を無事に帰してくれた事への礼をするべきなのだろうな。」

 

「もしかしてその話さ、最近ハティが来ないのと関係ある感じ?」

 

「そこで何故ソレの名が出る?」

 

「いやね、ちょっと前に『親友と連絡が取れない』って心配そうにしてたからさ。」

 

あーやっぱり。ヤシカさん達もそのハティって人のこと気にしてたから……。

 

「ふむ……そういえば巡礼の申請が来ていたな。その連絡が取れない友人の安否確認も兼ねていたか。」

 

じゃあ照合してその親友さんの物だったら返してあげよっか。

 

「そうだな……。そういえば、それはニンフに干渉できるほど育ったというわりには、随分と静かだな?」

 

ヤシカさん達に秕抜いて貰ったからね。ナズさんとやりあった時、この子執着強すぎて暴走しかけたんだよねぇ。

 

え!? 年季入った鎧殻ってそんなことになっちゃうの!?」

 

「元々の着用者であれば滅多に起きん現象だ、安心しろ。」

 

「とはいえ姉上、鎧殻にのまれかけたというのならやはり精密検査が必要だ。此方(研究室)に寄っていけ。」

 

うーん、イーデンがそこまで言うのなら、やっておいた方が良さそうだね……じゃあ先に下の皆に断ってくる。

 

「うむ。機械根が使えるのなら、浄水層に直接跳んでこい。今もそこに研究室を構えている。」

 

……そうだった! わざわざ鎧殻で飛ばなくても機械根で向かえばよかったじゃん! すっかり抜け落ちてた!

 

「……まあ馴染みが無ければ忘れてしまうのも仕方あるまい。個人通話の回線は開いておく。戻ったら呼ぶがいい。」

 

わかった! じゃあ行ってくるね!

 

「終わったらまたこっちに寄りなよ。何かプレゼントでも用意しておくからさ。」

 

え、そんなぁ悪いよ。あんま余裕ないんでしょ?

 

今日の収穫があれば問題ないよ。それに死んだと思っていた旧友が生きていたんだ。再会した記念に贈り物の一つくらいはさせてほしいな。

 

そ、そう? そういうことなら遠慮なく戴くね。

 

それじゃ、二人ともまたねー!

 

「ああ。」

 

「また今度。」




・主人公
浄水層に跳べばいいとようやく気付いた スピーチは緊張して変なこと言っちゃうタイプで、いきなり任せると緊張しすぎて逆に普通になる
実は『炭素生物の文献が読める』というのは結構なレアスキル
光波ブレードに興味深々

・ライエ
現役時代は頭シュナイダーだった
彼女の鎧殻も相当な年季を積んだ業物なので、万が一他者が装着した場合は頭シュナイダーになる可能性がある

・イーデン
シーディが話す度にとんでもない実績がお出しされるため結構肝が冷えっぱなし

・ライン
名前で気付いた方も居るかもしれないが、ライエとは双子姉妹である
つまり一旦空に上がれば頭シュナイダー

・バイス
ラインより大分年下の姉妹
憧れから超えるべき壁になった真っ当なライバル関係を築いている

・ナイン
名前と装備構成でピンと来た人も居るかもしれない
そうです ⑨枠です ただしフレーバー程度

・エイト
元ネタはAC2の名物ランカー
本家とは違いちゃんと実力はある

〇大瀑布
超デカいダムの様なものを想像して貰えれば、大体その通りです
瓦礫で取水口が塞がったので天辺の緊急放水ゲートから常時垂れ流し状態
ライエの言っていたエラーはこれのせい
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