-朽ちた育房
「……帰ってこないわね?」
「もう半日は過ぎたかしら?」
「飛ぶのが楽しくて時間を忘れてるわけじゃないだろうなアイツ。」
「全く……帰ってきたら少し注意してやらねばならんな……。」
「アルカンドのニンフは空にいるのが心地良い子達ばかりだもの。」
「久しぶりの空なら尚更なのだわ。あんまりきつく言っては可哀そうよ。」
「そうは言うがな、もし約束を忘れて飛ぶのに夢中になっているのだとしたら、それは注意してやらねばならんだろう。」
「あらあら、まるで母か姉になったような口ぶりね。」
「手がかかる子ほど可愛いというモノかしら?」
「んなっ……!」
「ふふ、冗談よ。」
「でもそれだけ気に掛けているのなら、姉妹と言っても過言ではないかもしれないわね?」
「他所のニンフと姉妹などと……揶揄っているのか?」
「気を悪くしたらごめんなさいね。でも貴女達が近い仲に見えたのは本当よ?」
「近いといえば、気になっていたことがあるのだけど、いいかしら?」
「なんだ?」
「貴女、あのナズって子と随分親しくしてたわね。部品まで融通して……。」
「ギプロベルデの貴女にとって、ガーディナのナズは怨敵なのではなくて?」
「ああ、そのことか。」
「確かにガーディナはいくら憎んでも憎み足りない相手だったが、もう過去に囚われないことにしたからな。それに私にとってアイツはもうガーディナではない。」
「あら、予想外の答えね。それにしてもナズがガーディナではないなんて、彼女は脱走兵ということかしら?」
「でもそれだけでは根拠に乏しいわね。他にも理由があるんじゃなくて?」
「随分と踏み込んでくるんだな。」
「彼女がギプロベルデの誇りを纏い、貴女がそれを許している。技師型でなくとも問わずにはいられないわ。」
「鹵獲品なのでしょう? ならば尚更許し難かったはず。なぜ纏う事を認めたのかしら?」
「……はぁ、言うまで解放してくれんのだろうな。まあいい、隠すような話でもない。」
「まず奴との出会いから話さなくてはならん。少し長くなるぞ?」
「構わないわ。」
「とても楽しみだわ。」
「全く……。ナズと初めて会ったのは
~~~
-降積地帯 機械根付近
ギャルギャルギャル……
(久しぶりに帰ってきたが、やけに静かだな……。機械根周辺ならともかく、この辺にも
(いつもなら連中が徘徊しているルートなんだが……ッ! あれは蟲付きの残骸!)
ゴーー……ギィッ、ザザァ……ジーッ
(まだ熱が残っている……直近だな。向こうの坂の残骸も同じ。)
キュラキュラ
(ふむ、下で待ち伏せている毒蜘蛛も潰されている。火力を見るに上からまた敗残兵が流れ着いたか?)
ピピピッ……ジーッ
(……いや、それにしては周囲の戦闘痕が少ない。蟲付きもよく見れば背部を撃ち抜かれている。)
(明らかに戦い慣れている奴の仕業だ……そして武装も強力。となれば羽蟲共か?)
(だが連中はこんな資源の無い所に用はないはずだ。となれば後考えられる可能性は……。)
キラッ
(これは薬莢? まだ新しい。この戦闘痕のものか。……ん!?)
(よく見たらDolaGanz3のじゃないか! こっちには小さい薬莢も散らばっている。これはYolGanz2の物か!)
(あれらは他所の鎧殻では搭載すら難しいはず。それにこれらを同時に運用できるとなれば、物資にもそれなりに余裕があるという事だ。いつもの
(他に痕跡があるかもしれん、もう少し見て回るか。)
・・・
(やはり、この丘周辺の蟲付きや毒蜘蛛も掃除されている。手口から見てさっきと同じ奴の仕業だな。)
(この開けた場所でも背部を狙う事を徹底している……。恐らく蟲付きの感知範囲にも入っていない。随分と目が良いらしいな。それに慎重だ。)
(
(これだけの戦闘力があるとなると、敵対した場合が厄介だ。話が通じる相手であればいいが……。)
ドォン ガガガ……
「戦闘音……街道の方か!」
・・・
ドン! ドン! ドン! ドォン!! バガァ! ガチャガチャガチャ……
「クソッ! 相変わらず次から次へと、どこから沸いてきやがるんだこの蜘蛛共は!!」ガガガガガ!!
(あれは、VargMund5! やはり生き残りだったのか!?)
(毒蜘蛛に囲まれている! 間に合ってくれ……!)
ドドドドッ!
「チィ、障壁が! ガフッ! チクショウ浸食もか!」
「おい! 聞こえているなら退け! 私が親を殺る!」
<<
「蟲共が! 退けぇええっ!!」ドガガガガガッ!!
バギン、バガァ! ガギ、ボガン! ガガガッ ボボガァン!
カン、カン ヴヴッ
「そこだな! 喰らえっ!!」ドヒャアッ!! ガィイン!!
グラ……ドシャアッ!!
「おおおあああっ!!」ドォンドォン!! ダァンッ!!
ギギィィィイイ!! バチバチ、バガッ、ボガァン!!
「……終わったか。」
カシャカシャッ
「まだだッ!」「!!」
バゴン!! ボガン!
「「……。」」
「もういないか? 済まねえ、助かったぜ。」
「あ、ああ……礼には及ばん。集中攻撃されていたが、大丈夫か?」
「……あんま大丈夫じゃねえな、肌の下を蠢いてやがる。」
「これを飲め。」ポイ
パシッ「虫下しか。悪いな。」ゴク
ガシャ、ガシャ
「騒ぎを聞きつけてきたな。一旦退くぞ。」
「了解。」
ズゴォォォ……
・・・
パチ、パチ……
「ここまで下がれば蟲共も追ってこないだろう。さて、お前には少し聞かねばならん事がある。」
「その鎧殻……どこで手に入れた?」ジャキ
「おいおい勘弁してくれよ。助けてくれたと思ったら今度は尋問か?」
「返答次第ではお前を討たねばならん。答えろ。」グイ
「わかった、わかったってば! ……ここに降りてくる前に忍び込んだ倉庫からかっぱらってきたんだよ。隅っこに一式丸々置いてあったから、ありがたく頂戴してきたってだけだ。」
「(……。)そうか。」スッ
「随分あっさりと信じるんだな?」
「信じたわけではない。だが否定する材料も無い。推測だけで撃つわけにもいかん。」
「それに死体を作ったら蟲付きが寄ってくる。態々安全圏を減らしたくはない。」
「へぇそーかい。……なあ、もしかしてコレ、知り合いのだったか?」
「……それはお前が気にすることじゃない。」
「ぜってぇそうじゃん……。」
「まずは自己紹介でもしようか。私はギプロベルデのギリー・ベル。今は亡骸漁りをしている。」
「あー、俺はセラク。エオニアの生き残りだ。」
「エオニア? 知らんコロニーだな。」
「コロニーというか、分派みたいなもんだったからな。中層の端でひっそりしていた、女王無しの集落みたいなもんだ。」
「ほう、そんなところから何の用があってここに? こんなところより上層の方がずっとマシだろうに。」
「まあいろいろと事情があるんだよ。そうだ、俺のねぐら来いよ。礼くらいはするぜ。」
「ふむ、嫌に律儀だな。」
「おいおい誠意を見せようってだけだろ? 案内するから付いて来てくれ。」
「……いいだろう。」
ピピ、ガコン
「この広場を奥に行ってさらに左側のルート……ゲートがある方だが、その奥に二方向に長え階段が伸びてるのは知ってるよな? そのうち行き止まりになってる方が俺のねぐらだ。」
「そうか。……この広場、こんなに荒れてたか?」
「俺が来た時にはこうなってたぜ。多分中層から降ってきたんだな。まだ落ちてくるかもしれねえから気を付けろよ。」
「ああ。ん?」
(あれは、
バシュバシュ!! モワアアア……
「! 煙幕だと?」
「おいベル! 大丈夫か!?」
「……ああ、攻撃されてはいない。」
「待ち伏せかもしれねえ! 早くこっちに来い!」
「いや、やめておこう。」
「んなっ!? 誰かの奇襲かもしれねえだろ!?」
「奇襲ならもう失敗しただろう?」
「……ッチ、流石に露骨過ぎたか。だが、」
「もう範囲内だ。」
ドパパパッ!! ゴバァッ!!
「何!? ぐぉおあ!!」
バギバギ、ゴガララァッ!! ドズゥン!! パラ、パラ
・・・
(く、何とか瓦礫の直撃は避けたが……!)
グググ……
(瓦礫がのしかかって身動きが取れん……!)
キュラキュラ……
「おーい生きてるかー?」
「貴様、やってくれたな……!」ギギッ
「うおっ、まだ動けるのか? やっぱギプロベルデは頑丈だな。」
「当たり前だ……っ、こんなことで潰れるほど柔じゃない……ッ!」グググ、ガラ、ゴゴ……
「ほー、伊達に下層で生き残ってないか。だが俺に目を付けられたのが運の尽きだな。」ジャキ
「このやり口、やはりガーディナか! それも霧だな!?」
「そうとも。両方『元』が付くけどな?
「今ちょうど生体部品が欲しかったんだ。大人しくしてりゃ
「そんな話が聞ける訳無いだろう!」
「まーそりゃあそうだよな。じゃあ
「なに、まさか貴様……。」
「さっきコイツについて聞かれた時はヒヤヒヤしたぜ。そうだ、俺は持ち主を知ってる。どんな最期を迎えたかもな。」
「といっても俺が手を下したわけじゃねえが……。じゃあな、あばよ
ガキン!
「っな、」
「ッガァァァアアアアッッ!!!」ギュオオオッ!!
ゴガ、ガララ、ズズズ……
「うっそだろ!? これだけの重量を動かすなんて……うおおおっ!!」ギャリリィ!!
ドズゥゥン!!!
「貴様か……! 貴様がアイツを……!!」ユラァ
「俺じゃねえっつったろが! ちぃ、余計なスイッチ入れちまったか!」
「仇を討たせてもらうぞッ!!」
「やってみやがれ時代遅れがァ!!」
~~~
「やることはやってたのね。」
「でもこのままでは和解には遠くないかしら?」
「実際、私たち二人だけでいたならどちらかが死ぬまで続けただろうな。だが幸いなことに、間に入ってくれる人がいたんだ。」
~~~
「いい加減くたばりやがれ!」ギュオオオッ!! ドォン!! ギャリリッ!! キュィィズガガガガガガガッ!!
ギン、キィン! 「ぐぅッ! おぉおあああッ!!」ブォオオオン!! ドゥッドゥッ!! ドォン!!
バガァン!! 「クソ、さらに狙いが正確に……! 動きを読まれているのか!?」
ザザァァ……ピシュン、ピシュン
「「邪魔だ蟲共ッ!!」」
ガガガッ!! ボガン! ドォン!! バガン!
シィン……
「……はは、はははっ! なんでこんなことの息が合うんだ!? おい!!」ガガガガッ!!
チュイン、チュン!「フゥーッ! フゥーッ! 知るか!!」ドォン!!
バギッ!!「が……ッッ!! チクショウ、せめて遮蔽があれば! ねぐらに逃げ込むしかねえか!」
ギャリィッ!! ゴォォォガタガタガタ……バスン!!
「しまった、ガス欠っ、」
「奈落に落ちろ!!」ドヒャァッ!!バスンッ!! ガンッ!
グラァ「うおおおおっ!? お、ち、る、かぁぁぁあああ!!」ギュリイイイイ!! ドダン!
「逃さん死ねぇッ!! <<ベル待って!!>> !?」
「二人ともそこまで! 武器を下しなさい!」ヨロ……
「おい、そんな体で出てくんな! 轢かれるぞ!」
「知り合い同士が殺し合ってるのにそんなこと言ってられないでしょ……!!」ググッ
「……ラファ!? その怪我はどうした!? コイツにやられたのか!?」
「違うわよ! 私のことはいいから、まず殺し合うのを止めてちょうだい!」
「だがコイツは……!」
「だがも何もない! 殺し合いたいなら
「ぐ……! 命拾いしたな、霧め……!」
「『元』だ。……済まねえ助かったぜラファ。」
「借りを返しただけよ。ああもう、二人ともこんなにボロボロになって……。」
「……。」←残DP7000
「……。」←残DP3000
「とりあえずソレ全部脱いで。手当してあげるから。」
「いや、手当が必要なのはアンタの方じゃねえの……?」
「しっ、ここは素直に従っておけ。」
「あ゛!? 俺に指図するってのか!?」
「静かにしないと
「「……。」」
~~~
「ラファって、あのファブラーの生き残りでしょう?」
「そういえば彼女はまだ元気にしているの?」
「ああ。伊達に下層で最年長していない。」
~~~
「はぁ~~~~……。まさかアンタたちにそんな因縁があったなんてね。帰ってきてるならベルのことも教えとけばよかったわ。」
「……。」「……。」バチバチ
「ナズ、先ずはアンタが謝りなさい。土下座よ。」
「はぁ!? なんでだよ!」
「先に仕掛けたのがアンタだからでしょ! 私を挟んで話してればこんなボロボロにならずに済んだのに、もう。」
「ぐぬぬっ……! モウシワケアリマセンデシタ……!!」グッ
「……ふん。」プイ
「こいつぅ……!」
「抑えて抑えて。ベルも、土下座まではしなくていいけど謝りなさい。喧嘩両成敗よ。」
「なにっ!?」
「いくら頭に血が上ったとはいえ、直接の仇でもないのに殺そうとするんじゃないわよ、貴女らしくもない。ほら、さっさと済ませて。」
「むぅ……済まなかった……!」
「へへ、良い様だ。」フンゾリ
「さっきの続きをしてやってもいいんだぞ……!」
「幼精じゃないんだから大人しくしてなさい。」ペシッ
「痛ェ゛ッ!?」
「い゛ッ!!」
「はぁ……ちょっとお使い頼んだだけなのに、こんなことになるなんて……。念のために
「誰だそれ?」
「……下層を担当しているヘロスの配達員だ。お前も会っておけ。」
「アイツらこっちにも配達してんのか? 手広いねえ……。」
ギュィィィィィ……
「噂をすればって奴ね。」
ズギャァァッッ!!
「うおっ!」
「はいはーい!! 毎度ご利用ありがとうございます!! ヘロス下層配送小隊所属・第2区画担当・クロネコの1番、ショコラです!」
「ラファさんにご注文の品をお届けに参りました! こちら商品になります!」ガチャン!
「はいお疲れ様。お代はこれでいいわね?」
「ひぃふぅみぃ……はい確かに! 他に何かご入用なものはありますか!?」
「
「畏まりました! ほいほいっと、量はこれで足りますか?」
「ええ、十分よ。はいお代。」
「ありがとうございます! 所で貴女は……中層の方ですか?」スンスン
「ああ、私はナズ。元ガーディナだ。……あ、私がここに居るという情報は売るなよ。」
「ほほ~う? じゃあ口止め料を戴かなければいけませんねえ……。何か買ってください!」
「へいへい。じゃあ
「蠢く小虫20本セットですね! あ、それなら注射薬もご一緒にどうですか!?」
「分かった分かった、それも買えってことだろ? 良いよ買ってやる。いくらだ?」
「合計でこの分になります! 初回ご利用なのでちょっとおまけしておきますね!」
「あいよ、ほれ。」
「丁度いただきました! じゃあこれ、私の連絡先です! それではまたのご利用をお待ちしてまーす!!」ギュォォォ……
「いつものことだが、ヘロスの配達員は無駄に元気だな……。」
「下層棲みの私たちにとっては癒しでもある。」
・・・
「ところでラファ、お前何故そんなにボロボロなんだ?」
「あーそれな……。」
「そうねぇ。ベル、ゲート間の広場見てきたでしょ?」
「ああ。何処から落ちてきたのか道路が道を塞ぎかけてたな。」
「この前アレに巻き込まれたのよ。瓦礫も退かせなくて困ってたところをナズに助けられたってワケ。」
「おいナズ、生体部品が入用だと言ってたのは。」
「そうだ、コイツの為だよ。」
「よくその場で資源にしなかったな。ガーディナ流なら動けない奴はさっさと止めを刺すんじゃないのか?」
「バカ言え。来たばっかで右往左往してた時にラファから色々教えてもらったんだ。」
「その恩を仇で返すほど俺は頭中層じゃねえ。生きる術を教えてくれた分の義理は果たすさ。」
「律儀なのは性分だったか。……そういえば、お前霧じゃないのか? 元だとか逃げ延びてきたとか聞こえた気がしたが。」
「あ? あー、そうだな。霧は辞めてきた。ついでにガーディナも。」
「女王の下から抜けて来たの?」
「おう。もともとあんまし肌に合わねえとこだったってのもあるが、愛想尽かしたってのが一番になるか。」
「……何があったんだ?」
「簡単に言えば、『狡兎死して走狗烹らる』ってやつ? ……このことはまだ聞かねえでくれ。思い出すだけで腸が煮えくり返りそうになる。」
「あらー……。」
「……そういう事か。案外苦労してきたんだな。」
・ベル
久々の登場。タンクのブーストチャージ怖いでしょう
本編と違い本作の彼女はガーディナ関連事項とは折り合いがついているようだが……
とある事情でナズの戦闘機動は大分読めていた
・ナズ
脱走兵で元霧 ちなみにヴォーグと近い姉妹
なのでギプロベルデの恐ろしさは身に染みて分かっているし、どうすればいいかも知ってる
なぜベルとコンビネーションの息が合うのかは想像ついた人も居るかも
・ラファ
降積地帯野良で見た目通りファブラーの生き残り
下層ではぶっちぎりの古参、下敷きになってる間に異形に襲われなかった悪運強いニンフ
落下物は下層ではあるあるなので普段は避けているが、ポータル広場の道路は流石に大きすぎて避け切れなかった
・ショコラ
禁域野良 ヘロス配達員
配達だけでなく移動販売もしており、日々有り余る元気をお届けしている