変わり者のホド旅   作:benitubaki

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今回はサクッと軽めに


22話 還流水路-中層中継地点

ドシュッ ガィン! ギヂッ……

 

……シュィン

 

ふー……横穴全部チェックしてたら3時間もかかっちゃった。

 

かなり降下してるはずだけど、ようやく中層……全体の半分か。やっぱ長いなー。

 

地図の注意書きによれば、この辺りから見張りが置かれ始めるってことだったけど……えいっ。

 

パシュッ……カァン、コロコロ

 

フォン チチチ……

 

……残骸ばかりでどうやら動くモノは居ないね。少なくとも二脚や四脚は巡回していなさそう。

 

でも監視カメラとかあるかもしれないし、念のためステルス使って降りようか。ブィン

 

ボゴッ キリリッ カシュン

 

パスッパスッ……

 

・・・

 

ガタン

 

横穴到着~。パッと見た感じだと、監視カメラもレーダー走査も無いっぽいか。

 

数十年使ってないルートらしいし、流石にもう置いてないのかな?

 

でも古いのが置きっぱなしにされてる可能性もあるから、探検は慎重に。

 

さあどんなふうに変わってるかな~。

 

チリッ

 

……んあ? なんだ? 今の感覚。

 

まあいいや。ふんふんふ~ん。

 

・・・

 

丁字路、鏡確認ヨシ! しかし監視どころか照明すら点いていないとは……。

 

ところどころ自動機械や風化したニンフの亡骸が落ちてて、まるで文献で見た『お化け屋敷』みたいだ。お化けが何なのかはよくわかんなかったけど。

 

ふんふん、匂いも古い感じの埃っぽさがあるくらいで何の変哲もない……。

 

でもなんだろ、何かある予感がする。さっきから感じる、なんとも言えない首筋の感覚……。

 

炭素生物は得体のしれない存在と遭遇する時、背筋がぞわぞわっとする感覚を覚えたらしい……もしかしてお化けなるものも居たりして!

 

ウチワクワクしてきたぞ! っと、危ない危ない。このワイヤーは爆破トラップのものだね、爆弾もある。

 

周りの荒れ具合・爆弾の煤け具合から見て、連鎖爆発し損ねた奴なのかな?

 

もしかしたらまだ生きてるのが転がってるかもしれないし、帰りに引っ掛からないように目印付けておこう。

 

これでよし……と。じゃあ奥へ進もう。

 

・・・

 

横道は多々あれど、大体が小部屋だったり瓦礫で塞がってたりで、あんまり収穫がないな……。

 

でも首筋の感覚は強まってる。一体この先に何があるんだろう?

 

あ、分岐だ…… チリッ ……?

 

今の一段と強い感覚は……あ、こっちは大部屋だ。反対側は塞がってるね。じゃあリコンをポイっとな。

 

パシュッ カン コロロ……フォン

 

良し地形データ取得完了、熱量分析も特異な部分は無し。じゃあ入ろうか。

 

ヒョイ カコ

 

いやしかしリコンが使い捨てじゃなくなったのはありがたいね。回収できたらの話になるけど。

 

一発500は流石にばかにならんからね~。あとは吸着機能があれば完璧なんだけど……。

 

そうか、撃たずに細工して投げればいいんだ! もっと早くに気付けばよかった。

 

筋力も上がった今なら結構な距離飛ばせそう……勢い余って壊しちゃったりして。んなはは。

 

んで、この機械根はなしてこんな場所に……? こんな人気のないとこにあるなんて珍しい。

 

とりあえずリンクしとくか。

 

サァア……

 

うん生きてる。……んん? よく見たらこれリストにない奴だ。リスト自体が何時頃のものかは知らないけど……。

 

そういえばストークの機械根も新規登録だったな。という事はこれも結構新しいものなのかな?

 

でも誰が何の為に、こんな所に機械根を……? 人知れず棲みついて消えていった集落があったりしたのかな。

 

チリチリ……

 

っ! これまでで一番強い感覚……! 近くに原因があるの?

 

だとしてもここは瓦礫ばっかりで他に何にも……瓦礫の下に何かあるのかな。

 

なんか情報に繋がるものないかな…… ガラッ ひゃっ、こんなところに亡骸が。どれどれ……?

 

おおう、まだ生体部品が残ってる。少なくとも道中の亡骸とは年代が違いそうだ。案外宣教師とか巡礼の亡骸だったりして。

 

なんかもっと情報に繋がるもの持って…… キラ ん? 今何か見えたような。ふんぬぬぬ……よい、しょっと!

 

グイッ カタン コロロ

 

うわっ目玉が外れて……目玉? いや違う! これナインちゃんから渡された鍵と同じ奴だ!

 

カチッ キュゥィィィン…… ピシッ カチャ

 

やっぱり。という事はこの子も私が造り出した子……!

 

……駄目だ、思い出せない。何かもう少し取っ掛かりがあれば行けそうな気もするんだけど……。

 

寄り添っている亡骸も多分そういう事だよなぁ……。

 

お墓、必要だよね。二人一緒にしておいてあげよう。

 

・・・

 

ガッガッガッ ボロ グッ バギ バラバラ……

 

ふぅ、被せる為とはいえ小石を砕くのも大変だね。……よし、じゃあこれを挿してっと。ザス

 

あとは……こういう時、炭素生物は手を合わせて祈ってたんだったっけ。

 

スッ

 

……お疲れ様。ゆっくり休んでね。

 

ごめん。今は埋葬してあげることくらいしかできなかったけど、君たちの事を思い出せたらまた来るよ。

 

……行こう、奥に道が続いてる。何か情報が得られるかもしれない。リコン投擲っ。

 

ビュッ!! カン、コロロ、フォン

 

相変わらず何の反応もないね……でも一応見て来ようか。

 

あれ? そういえば首筋の感触が無くなってる。

 

……そっか、君たちが呼んでたんだね。

 

・・・

 

……外に出た? じゃあ、ここからが本格的にガーディナ領という事か。

 

鎧殻を変えておこう。Triusじゃ目立ち過ぎるし、逃げるのにも不向きだ。

 

よし、脚と翅Shamalfornにしたら大丈夫でしょ。速いし細いし、いざという時はステルス張ればいいし。

 

それじゃ、あっちから見てこうかな……あれ?

 

「すっかり埃をかぶってしまったな。」

 

あそこにいるのってもしかして……。

 

 

「──今回の所はこのくらいでいいだろう。残りは追々教えてやる。」

 

「はい!」

 

「カルラド、早速で済まないが二人の子守を頼む。」

 

「? 何かご用事ですか?」

 

「ああ、少し野暮用をな。一時間ほどで戻る。」

 

「わかりました! お気をつけて!」

 

・・・

 

コツコツコツ

 

(……嘆くべきなのだろうな……。)

 

(秘匿回線どころか、二人ともが移植しても尚目が見えぬとは。これほどまでに母は疲弊して……。)

 

(しかもヨヨは明らかに通常型未満。戦闘型として産まれる筈だった痕跡は残っているものの、実際には鎧殻の接続口は機能しておらん。)

 

(先日の出産でも戦闘型は半数程度に留まり、残りは腕の足りない技師型か只の通常型だった。)

 

(ここで双子が二人とも欠陥持ちであるという話が広まれば、女王への忠誠は揺らぐ事になる。)

 

(最悪は誰がガーディナを率いるかで内部分裂が起きるやもしれん。それだけは避けなければ。)

 

(幸いまだ双子が産まれたことは育房と衛兵、そしてあの二人(カルラドとルズ)しか知らぬ。ルズからも漏れているという報告はない。)

 

(処遇を如何にすべきか……猶予は短い。鎧殻の操縦訓練が始まる前に答えを出さねばならん。)

 

(母は我が決断せよと言った。周囲に悟られぬよう迂遠な言い回しではあったが、我と思いは同じと見える。)

 

(だが生かすとしてヨドはいい、ヨヨをどうする? 目が見えぬ通常型など、どのコロニーでも爪弾きだ。)

 

(他所ならば放逐で済む話だろうが、ここ(ガーディナ)では分解槽行き。)

 

(なりふり構っていられなかった頃の風習が、今になって頭を悩ませる事になるとは……まこと因果なものよ。)

 

(形成異常が出始めた時点でこの時が来るのは分かっていたはず。考えることを先延ばしにしてきたツケが回ってきたと見るべきだな。)

 

コツコツコツ……

 

(ここらで靄を吐き出しておこう……あの子らに悟られぬように。)

 

カチャ

 

(ここに来るのも久しぶりだ。)

 

「すっかり埃をかぶってしまったな。」

 

スッ サッサッ パンパン

 

「誰にも内心を吐露できずこうして本音を話せるのは、口も利けぬようになったお前だけとは。」

 

「笑いたくば笑え……霧と呼ばれた我が、滑稽なものだとな。」ヴォーグさん……? ジャリ

 

「!」ピク

 

(…………。)

 

「今日、双子が産まれた。」

 

「可愛い末妹達だ。名はヨド、ヨヨという。」

 

「これから戦闘訓練が始まるまでの半年間、カルラドと共に面倒を見ることになった。」

 

「……思えば、我が直接受け留めたのはナズ以来だったな……。」

 

「あの子は産まれた時から──いや、今すべきはこの話ではないか。」

 

「──ヨドとヨヨは、どちらも盲目なのだ。それ故に、今我は悩んでいる。」

 

「同じ盲目なら、鎧殻を扱えるであろうヨドを残しヨヨを捨てるべきか。」

 

「分解槽行きになったとしても手元に置き、最期の瞬間までその手を握っていてやるべきか。」

 

「それとも、女王の権威が失墜するきっかけになることも厭わず、二人ともお前に預けるかだ。」

 

「シーディよ、そこにいるのだろう?」スッ

 

……やはり気付かれてしまってましたか。ガチャ

 

「感づかせぬつもりなら、足元には気を付ける事だな。」

 

忠告として受け取ります。

 

……撃たないんですね?

 

「背後を取られたからな。これがアルカンドの斥候だったならば、我はとっくに死んでいる。」

 

「考え事をしてたとはいえ不覚を取ったことに変わりはない。今回は撃たずに独り言を聞いてくれた礼だと思えばよい。」

 

あ、ありがとうございます?

 

ところでそれは……。

 

「これか? ……これは墓だ。この奥の縦穴に不時着していた、どこの者とも知れぬニンフのな。」

 

そう、ですか。

 

……き、奇遇ですね? 私も今、墓を作ってきたばかりなんですよ。

 

「わざわざ作っただと? こんなところにお前の縁者が居たとでも言うのか?」

 

それが居たんです。この先の機械根がある広間、その瓦礫の下に。

 

「前から妙な匂いがする場所だとは思っていたが……埋もれていたのか。」

 

ええ。私も奇妙な感覚に襲われていなければ気付きませんでした。きっと私が来るのを待っていたんだと思います。

 

「そうか……。」

 

……あー、その、えっと……あ! 今の話に出ていたヨドちゃんとヨヨちゃんというのは?

 

「聞いていただろう? 盲目の双子だ。」

 

「ヨヨは戦闘型としての機能は十全と見たが、ヨヨは鎧殻の装着すらできないだろう。」

 

「このままではヨヨは良くて放逐だ。悪ければ前線に連れて行かれ、分解装置で弾にされるだろう。」

 

っ……戦争中ですもんね、仕方のないことだとは思いますが……。

 

「そこでだ。」

 

 

「ヨヨを、アルカンドへ連れて行ってはくれぬか。」

 

な……。

 

「昨日の今日で厚かましいことを言っている自覚はある。だが、それでも……!」

 

待ってください。本気ですか?

 

「……冗談を言っているように見えるか?」

 

いえ。でも……。

 

「これは我の我儘だ、今すぐ決断しろとは言わん。お前にも都合はあるだろうしな。」

 

「だが我はヨヨを見捨てられない……。アルカンドに預けてでも生かしてやりたい。」

 

「自分の腕の中に抱いた子を諦めきれんのだ、我は。」

 

……。

 

「ふ、ふふ……我も随分と弱くなったものだ。昔は隣で姉妹が消し飛ぼうが気にすることもなかったというのに。」

 

人生ってそんなものですよ。長く生きれば、未練や後悔が増えて弱くなっていくんです。

 

それに、貴女は弱くなったんじゃないんだと思います。妹の為なら敵を頼る事すら厭わない、それが本来の貴女なんじゃないんですか?

 

「そんなこと、」

 

ありますよ。じゃなかったら、ずっと前に追放したナズさんの事を気に掛けるはずないですから。

 

下に降りてからのナズさんの事を聞く機会がありまして……彼女、ギプロベルデの生き残りが困っている所を助けてあげたりしていたみたいですよ。

 

「あいつが、そんな事を……。」

 

結構似てますよ、貴女達。なんだかんだで誰かを見捨てられない所とか特に。

 

……実は私、自分の過去を探しに降りているところだったんですよ。

 

「過去を?」

 

ええ。数百年前の、イーデンが封印したであろう記憶を開く鍵を探しに。

 

さっき埋葬した子達も私の過去に纏わるニンフ達でした。もう後には引けない旅です。

 

道半ばで蟲に喰われ斃れるかもしれない、だから今すぐにお返事はできません。……ですが。

 

半年後に私がまだ生きていたら、旅の途中だったとしてもまたここに来ます。

 

その時その子達の命が脅かされる事態になっていたのなら私を頼ってください。

 

これ、連絡先です。ピピ

 

「……! 済まない、恩に着る……!」ピ

 

お礼を言われるような事じゃないですよ。生きてたら~とか、結構無責任なこと言ってますし。

 

「それでもだ。」

 

・・・

 

それじゃあ、そろそろ発ちます。また半年後に。

 

「ああ、お前の無事を祈っている。」

 

ありがとうございます。……ふふ。

 

昨日銃を突き付けられたばかりでこういう事になるのも、なんだか奇妙な感じですね。

 

「……そうだな、お前が相手だと不思議と態度が柔らかくなってしまう。お前の特性なんだろうな。」

 

自動機械にも通じてくれたら楽なんですけどね。

 

「はは、連中はニンフと違うからな。」

 

では、また。

 

「ああ。」

 

・・・

 

「……。」

 

「頼んだぞ、シーディ。」

 

「……もうこんなに経っていたか。いい加減戻らなければな。」

 

コツコツコツ……

 

「(もし奴が戻らなかった場合を想定して、一人でも生き抜けるよう色々と叩き込んでおく必要があるな。)」

 

「(本来ならヨドも預けてしまいたいくらいだが……それを選択できるほどここ(ガーディナ)に愛想を尽かしている訳でもない。)」

 

「(本当に、頼んだぞ。必ず戻ってこいシーディ。)」




・主人公
本編時間軸へと繋がる大事なフラグを立てた
今回埋葬した二人はシックスとセブン、この地に逃げ込んだ種子と相討ちとなった
しれっとその場でアセン変更しているが、誰でも出来る事ではない

・ヴォーグ
双子の運命を委ねられた長姉
慣例に従うならばヨヨを切り捨てるしかない
一度の出産で割合にして半数以上も戦闘型を産める女王は他に類を見ないほどなのだが、大多数のガーディナニンフたちは他所の事情など知らないので割合の低下に危機感を抱いている


〇女王が出産するニンフの割合
一般的に通常型が最も多く、戦闘型が最も少ない
これは祖となったアーヴドの形質を受け継いだ為であり、コロニーの特色に応じて多少配分は変わるものの通常型が一番多いのが基本となる
直系である下層の三コロニーやギプロベルデ・アルカンドなどはその傾向が強く、戦闘型の割合は戦闘特化のナガラでさえも三割程度に留まる
例外はガーディナで戦闘型の割合は五割を超える
何故これほどまでに戦闘型が多く生まれるのかは不明だが、この異常ともいえる戦闘型の生産力こそがギプロベルデを斃し、中層の覇権を握らせたと言っても過言ではない
バウカーンも通常型と技師型で逆転現象を起こしているが、これは女王の病的な技術開発欲で通常型をも技師型として変異させているためである

(左から通常型・技師型・戦闘型)
アーヴド   7:2:1

ナガラ    5:2:3
ファブラー  7:1:2
ポロッカ   5:3:2

ギプロベルデ 6:3:1
ガーディナ  4:1:5(3:1:6)
アルカンド  5:4:1

ヘロス    5:3:2
バウカーン  3:5:2
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