変わり者のホド旅   作:benitubaki

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垂直移動もっとしたい(切実)


24話 密林(降積地帯)

パシュッ、ガィン、ヨジヨジ……ボゴッ、パシュッ、ガィン、ヨジヨジ……

 

よい……しょっと。こういうところでも地味に役立つね、アンカー。

 

鉄骨にワイヤー絡ませてよじ登ることも出来るし、普通だったら諦めなくちゃいけない所でも行けちゃうのは高評価だ。

 

さーてさてぇ、ナズさんが言ってた『周回ルートの真ん中』は……ああ、あの一段とゴツいビルか。

 

それじゃとりあえず接近してみよう。まだ居てくれれば助かるなー。

 

 

「……やり過ごせたか……?」

 

(下がやけに静かだから高台に上がってみれば、例の鎧化兵とニアミスだなんて……。)

 

(今ので目を付けられたかもしれない。降りて来たばかりで口惜しいけど、今回はもう引き上げた方が良いかな。)

 

(それにしても……コルダは一体どこに行ってしまったんだろう。)

 

(彼女が簡単にやられるとは思えないけど……ん?)

 

 

わわわ、調子に乗って速度出し過ぎた! 上昇が間に合わない~!!

 

激突、す、る、か~~~~!!

 

ガスン!! バシュォアアアア!!

 

ぬおらあああっ! Triusの推力なら垂直壁登りだってできらぁ~~っ!!

 

あと少し、届け~~~ッ!!

 

 

ゴォォォォ……!!

 

「接近する音? 方位は……こっちの、下」

 

ガァァァァ!! バスンッ!! ガヅッ!! グルンッ!!

 

くぁっ!!

 

ビュオッ!!

 

「、は。」

 

あっ。

 

……ヒュゥッ! クルクル ガダンッ!!

 

ふぅ……危なかった。って、あれ?

 

壁を上がってきた!?!? いやそれよりもこの鎧殻は、拙い!)

 

バシュッ ゴォォォォ……!!

 

ちょっ、何で逃げるの!?

 

(教会長がこんな所に居るわけがない! ならあれが噂に聞いた『教会長の眼』か!?)

 

(いつから僕に監視が……!? そもそも教義に反することは何もしていないのに!)

 

(……まさか、コルダは「余計な事を知った」から消されたのか!?)

 

(それで彼女を探す僕にも嫌疑が掛けられて、まとめて排除しようと……!)

 

(となると、やはりこの下層にはまだ何か秘密が隠されている! なら尚更こんな所で死ぬ訳にはいかない!!)

 

キィィィン……バスンッ!

 

「しまった!!」

 

ヒュゥゥゥ……

 

 

……行っちゃった。直ぐにでも追いたいけど、今オーバーヒートしてるしなあ……。

 

なんかすごいびっくりしてたけどなんで……あ、Triusはイーデンの代名詞か。あの子が此処に居たらそりゃ驚くよね。

 

……これってそんなにビビられる格好なんだ。一体何したのイーデン……。

 

ピピピッ チカチカッ

 

コールと発光信号? 発信されている方位はあっち……あれはナズさんか?

 

えーと、『応答しろ』……はいはいもしもし。

 

<<おー、やっぱこれで合ってたか。>>

 

ナズさん。何かありましたか?

 

<<おう。さっきはすっかり言い忘れてたんだ。毒蜘蛛の掃除ついでにあちこち罠仕掛けてたからお前も気を付けろってな。>>

 

あ、そうだったんですね。場所とかは……。

 

<<あー、そうだな。口頭だと分かりにくいからマップデータ送るわ。ピン打ってるところが今回仕掛けたポイントだ。>>

 

なるほど……分かりました、ありがとうございます。

 

<<まあお前やアルカンドの連中引っかけてもしょうがねえからな。旨みがあんま無ぇし。>>

 

<<あと、層間連絡ゲート付近に仕掛けた奴は解除中だから近づくなよ。>>

 

了解でーす。ピ

 

……これハティちゃん急いで追わないといけない奴では?

 

 

ハァ、ハァ……!」

 

(追ってこない!? ええい、早くオーバーヒートから復帰してくれ!)

 

(大変なことになった……これでは上層に帰ることも出来ない。)

 

(ほとぼりが冷めるまで潜伏していたいけれど、生憎今の手持ちじゃ一月が限界だ。)

 

(もっと物資を買い込んでおくべきだったか……。いや今更後悔しても仕方がない。)

 

(それに向こうもまだ諦めていないはず。)

 

(粛清しに来たのなら話を聞いてくれるワケ無いだろうし、追って来られない所まで逃げ込むしかないか……。)

 

(なんとか諦めさせる方法、或いは隠れる場所を見つけたいな。)

 

ヒュゥゥゥ、ズシャアッ!

 

あ、いたいた。

 

!!!」ザッ!!

 

わわ、ちょっと待ってよ、話を聞いて……。

 

その手には乗らないぞ!

 

ヒュッ ボボン

 

わぁっ! え、煙幕?

 

「悪いけど僕はコルダからは何も聞いていない! 諦めて上に帰ってくれ!」

 

ゴォォォ……

 

 

しまった、また逃がしちゃった。すっかり警戒されちゃったなあ……。

 

でも攻撃してこないからまだマシか。追い詰めすぎて自棄を起こされる前に終わらせたいな。

 

う~ん、とりあえず鎧殻変えようか。巡航モードならともかく、地上走行になるとTriusの速度と燃費じゃ追えないしね。

 

・・・

 

頭と翅はVarches、脚はShamalforn、そして忍び寄る為のTrius背嚢。

 

これなら速度と通信機能を確保しつつハティちゃんを追えるかな?

 

ていうかなんで初手で通信しなかったんだろ……? さっさと通信してたらこんな鬼ごっこしなくて済んだのに……私のバカ!

 

お陰でナズさんの罠に飛び込むリスクが生えちゃったし、もしもの事があったら……。

 

早いとこハティちゃんを確保して誤解を解かないと! ステルス起動!

 

・・・

 

こっち(崩落道路の坂)に降りてったと思ったんだけどな~。やっぱ警戒してるから屋内に逃げ込んじゃったのかな?

 

罠地点に入ってなきゃいいけど……これは一旦下に降りて探さないとダメか。

 

あの道路の坂に降りようかな。いや、その手前のトラスの方が良いか。

 

キュゥゥゥン……ズシャァ

 

カコ ピィン……チチチ

 

ふむ……下のは寄生体の残骸か。履帯の跡が見えるしナズさんの痕跡かな? 点々と続いてる。

 

ちょっと移動して~っと。広場の方に痕跡は……。

 

あっ。コンクリの焼けた跡、もしかしてハティちゃんのかな?

 

この残骸は実弾による損傷は少ないね。蟲部分が溶けたように抉れてるし、痕跡はまだ新しい。

 

ベルさんやナズさんは熱塵系の武装を装備していないし、ハティちゃんの副腕には熱塵速射砲を積んでたのが見えたから……。

 

この先の屋内に潜んでるのかな? 稜線から様子を窺ってみよう。

 

んんん~~……あっ居た! あの建物は……奥の縦穴に罠が仕掛けられてるやつだ! そっち行っちゃう前に誘導しなきゃ!

 

幸い何か考え込んでるから直ぐ動き出すことは無いだろうけど……よし、連絡回線でコールして遭難者を装って釣り出してみよう。

 

……通信で呼びかける前に、反応を窺える位置に付きたいな。できれば救援を求めてる風に見えるとこで……。

 

この傾いたビルの隙間がちょうどいいかな? 日影になる位置なら視認できなかったと解釈してくれるでしょ。

 

それじゃああっちから適当な瓦礫を拾って来て…… ズズズ ゴドン これでヨシ!

 

 

(毒蜘蛛が居なかったのは不幸中の幸いだったな……。じゃなきゃ屋内に退避も出来ない所だった。)

 

(しかし解せないな……。反射的に粛清だと決めつけて逃げて来たけど、彼女は本当にそのつもりだったんだろうか……?)

 

(もし粛清が目的なら、わざわざ姿を表さずに背後から奇襲するなり方法があったはず。)

 

(だけど、あの鎧殻に纏わる話は決して風説なんかじゃない。)

 

(実際にあの鎧殻を目撃してから記憶の欠落を経験したり、不審な失踪を遂げた同胞を何人も知っている。火の無い所に煙は立たない。)

 

「……これ以上ここで考え込んでいても仕方ないかな。そろそろ移動しよう……ん?」

 

キラッ キラキラッ

 

(あの光は……こっちに向けているのか? 信号っぽいパターンに見えるが、アルカンドの符丁で読めるか?)

 

(キュ・ウ・エ・ン・モ・ト・ム……コ・チ・ラ・シ・ー・ディ)

 

(シーディ……聞かない名前だ。現地のニンフが行動不能になっているのか?)

 

(鎧殻構成は遠くてよく見えないけど、さっきの鎧化兵とは違うように見えるな。なら様子を見に行った方が良いか……? いやしかし怪しい……上に張り込んでいるかも?)

 

(反射が止まった。こっちが認識したことに気付いたのか?)

 

ピピピッ

 

「これは相互連絡用の……という事は巡礼なのか? やはりこっちに気付いている。試しに繋いでみるか……。」

 

ピ

 

<<ザザ、すみません、誰かザザ援を……>>

 

ブツ

 

(本来ならすぐにでも助けに向かうところだけど……状況が状況だ。)

 

(警戒しながら慎重に近づこう。本当に遭難していたとしても、通信できるという事はまだ機能停止(死ぬ)まで猶予があるはずだ。)

 

(もしかしたらさっきの鎧化兵の仲間で、僕を釣り出す為の餌役をしているのかもしれない。)

 

・・・

 

(成程、瓦礫に挟まって動けずにいるのか。あの大きさなら自分で被った可能性も無いだろう。)

 

(少なくとも周囲に潜んでいる様子はないな。なら大丈夫か。)

 

ゴォォォ……

 

あ、来てくれた。

 

「大丈夫ですか、えっと。」

 

シーディです。

 

「シーディさん……んん!? その服は、御子様!? 馬鹿な、そんなはずは!」

 

「何者だ! 生まれと本当の名を名乗れ!」ジャキ

 

あー、そうなっちゃうのか~。

 

ググゴドン

 

あの瓦礫を片腕で!? なんて膂力だ……まるで自動機械じゃないか!)

 

カチャ、バシュン、ドサ

 

ふぅ。初めまして、ハティちゃん。私はさっきも名乗った通りシーディ。

 

生まれは内緒だけど……コレ見たら敵じゃないって信じてくれる? ほら。キラッ

 

「それは、うちの耳飾り!? それをどこで!?」

 

クルザジオちゃんが貸してくれたんだよ。自分と知り合いなら君も信じるだろうってね。

 

「クルから……?」

 

……鎧殻も外して敵意は無いって証明したんだし、そろそろ銃を下ろして貰えるかな。

 

「っあ、ああ、すまない……。」スッ

 

 

「き、教会長のお姉さん!?」

 

うん。これ言うとみんな驚くんだけど……そんなに驚くようなことなの?

 

当然です! 教会長イーデン、その血縁ともなれば……粗相を働いた時点で、粛清の刃を向けられても文句は言えないんですよ!?」

 

そ、そうなんだ? なんか実感わかないけど……。

 

そうですよ! ですからもっと、特にアルカンドのニンフと接する時は慎重になさってください……!」

 

「このままだと冤罪で犠牲者を出すことになりますよ!?」

 

あう……ごめんなさい。気を付けるね。

 

「分かって下さればいいんです……。それで、接触してきたからには何か僕に伝えることがあったのでは?」

 

そうそう忘れるところだった。ハティちゃんって今同郷の子を探してるの?

 

「はい。コルダって言うんですけども、前回の巡礼の途中から連絡がつかなくなったんです……。」

 

「今月に入っての行方不明者がもう二名。どちらも同郷なので、少し不審に思いまして……。」

 

そのコルダって子なんだけど、もしかしてFolsを着てなかった?

 

「! そうです! もしかして所在が……。」

 

えっと……伝えにくいんだけども……その子、もう死んじゃってるんだ。

 

「そんな……いや、巡礼をするなら覚悟の上でしょう。問題は死因の方です。まさか本当に粛清されたんじゃ……。」

 

それなんだけどね、此処で活動してる鎧化兵に倒されちゃったみたいで……。

 

「それは、さっき見かけたギプロベルデの……?」

 

うん。直接現場を見た訳じゃないけども、いろんな状況証拠とか倒した人の証言とかを総合するとほぼ確定だと思う。

 

「そう、だったんですか……。はぁ~~……。

 

「……待ってください。なぜその倒した相手から証言を得られたんですか?」

 

あー、一から説明するとちょっと長くなるんだけど……。

 

・・・

 

コルダの鎧殻を纏ってあの鎧化兵と対決した!? なんて無茶を……!」

 

状況的に仕方なかったんだよぉ。唯一の出口は封鎖されてる上に爆破トラップまみれだったし。

 

それを抜けても此処に居る間は狙われ続けるっていうから、本人を倒すしか状況を打破する方法が無かったの。

 

でも、Folsに残ってたコルダちゃんの意志のお陰で勝てたわけだし、私としては結果オーライだったかな。

 

「そうですか……。まあ、間接的にとはいえ逆襲を果たしたのならコルダも満足でしょう。」

 

う~ん、それがねぇ……。

 

「どうかしたんですか?」

 

どうにもその秕の方は最後まで行かないと気が済まないらしくて、外した後もナズさんが近くにいると凄い騒ぐらしいんだよね。

 

「……彼女らしくもない。いや、残滓だから本人ではないのか。」

 

白錫も黒鉛も戦闘本能の塊みたいなモノらしいから、そうなっちゃうのは仕方ないんだろうね。

 

とりあえずそれは今伝手の方に預けてあるから、処置が終わったら身内の子に返そうかと思ってるんだけど……ハティちゃんに渡そうか?

 

「……はい、お願いします。どんな形になっていても、彼女の欠片であることに変わりはありませんから。」

 

わかった、処置が終わったら返してあげるね。鎧殻の方はイーデンに預けてあるから、必要だったら言うと良いよ。

 

「わかりました。ありがとうございます。」

 

・・・

 

「シーディ様は、この後どちらへ?」

 

暫くはこの辺うろうろしてるよ。とりあえず当初の目的を優先する感じだね。

 

下層での用事がたくさんあるから、それらが済むまでは帰れない。ハティちゃんは?

 

「僕は……下の鎧化兵に目を付けられたかもしれないので、もう引き揚げるところでした。」

 

下の鎧化兵……ナズさんの事かな。

 

それはつまり、その人に狙われてなければ今回の巡礼は続けるってことでいいんだよね?

 

「まあ、そうですね。」

 

じゃあナズさんがハティちゃんを狙ってるのか、私の方からちょっと聞いてみるね。

 

「そんな気軽に確認できるんですか?」

 

一度本気でやりあった仲だしね。少年漫画に曰く、「喧嘩したらマブダチ」ってやつだよ!

 

「なんですかそれ。ショウネンマンガ……?」

 

炭素生物の文献の一分類だよ。機会があれば見せてあげるね。あ、もしもしナズさん?

 

「本当に連絡している……。」

 

はい、んでハティちゃんなんですけど……はい、アルカンドの。分かりました。

 

あとコルダちゃん……あ、この前仕留めたって言ってたアルカンドの子なんですが……あ、そうだったんですか。

 

はい、了解でーす。本人に伝えときますね。ありがとうございます。それじゃ。

 

「その、ナズ?はなんと?」

 

ハティちゃんも含めてアルカンドの子は基本的に狙ってないから、罠にかからないように気を付けろって。

 

コルダちゃんは引っ掛かっちゃったから、元を取る為に相手をしただけだってさ。

 

「……そうだったんですね。最後の最後で運に見放されたか。

 

「それとも粛清じゃなかっただけマシというべきか……?」

 

もう一人の事は分からないけど、とりあえずコルダちゃんに関しては事故みたいなものだったね。

 

「ええ、はい。巡礼には付き物の話、よくある事です。」

 

とりあえずこれで今回の巡礼は続けられそうかな? 今回敷設した罠の位置が載ったマップデータあげるね。

 

「いいんですか?」

 

ナズさん曰く『それがお互いの為』だってさ。

 

「そうですか、ありがとうございます。」

 

それじゃ気を付けてね。

 

「ええ、シーディ様もお気を付けて。」

 

ゴォォォ、キィィィン……

 

・・・

 

それじゃ私も用事を済ませに行くか。

 

育房に向かおう。まずは秕の件とベルさんの妹さんの事を済ませないとね。




・主人公
ヴォーグとの再会やスイコとの出会いで「まず通信しなければならない」という事が頭からすっかり抜け落ちていた
プロット時点ではもっとドタバタするはずだったが、ガチ目の命のやり取りに発展しそうだったので穏便なルートに変更
推進壁登りは地上走行+空中飛行位の燃費なのであっという間にガス欠になる危険行為
釣り出しで逃げられた時は危険タックルしてでもとっ捕まえるつもりだった

・ハティ
ようやく登場したみんなのヒロイン
この時点での主腕武装はD_Selysなので、即座に不利と判断し逃げの一手を打った
自分達が危ないことに手を出しているという自覚はまだないが、知り過ぎたニンフは粛清されるという噂は把握している
何気にシーディの服装に初めて反応した人物だが、イーデンの血縁と知って妙な納得の仕方をしたようだ

・ナズ
アルカンド鎧殻はギプロベルデ鎧殻とは互換性があまりない(内部部品の規格がまるで違う)ので、獲れたところで釣り餌にしかならない
所持している物資は美味しいがそれはラファやショコラからも融通出来るので、本命は部品取りが可能な中層の敗残兵だったりする
そう言った意味ではコルダは予定外の獲物だったと言えるだろう
シーディの時は好奇心が勝ったようだ

〇教会長の眼
Trius二号機を駆るガディンにいつの間にか付いていた異名
本人も認知しており、このことをイーデンに弄られたりしている
彼女の任務には「思想犯の粛清」やソレに繋がる異端の芽を刈り取る「暗殺」が含まれるが、同時にそういった者たちは警戒心が強く姿を見られることも度々あった
実際に粛清する時は他の鎧殻(Shamalforn)に着替えているものの、出現時期があまりにも近い為に関連付けて考えられており、実質的に同一人物であるとバレているようなものだったりする
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