ちなみに回想部分はワンが思い出しているだけなので三人には伝わってません
※もともと一話だったものを分割した為ちょっと短め 許されよ
モワァ…… ヴォォォン……
「……何だこの音?」
「さっきの飛来物じゃないかい?」
「煙くて見えんな。スキャンするから少し待て。」
チィー……ピピッ
「熱量は無いが、セルが移動している反応がある。」
「そんなこと分かんのかそれ。便利だなー。」
「セル……つまりあの飛来物から、さっき倒した未確認機体へって事かい?」
「ああ。まさか修復でもしているというのか……?」
「チッ、苦労して撃破した奴を復活させられて堪るかよ!」ジャキッ
ギュィィ……ガガガガガガッ!!
パッ!! バチチチチンッ!!
「防弾膜!?」
「クソ、なら中から直接叩くだけだ!」ギャルル!!
「待てナズ! もし復帰していたら危険だ!」
「あの電撃を喰らえばただでは済まないんだよ!?」
「くっ……じゃあ黙って見てるしかねえのか!?」
[……そうですわ。暫くそこで大人しくしていなさい、新種共。]
「!?」「!」「!!」
「馬鹿な、確実に機能停止したはず……!」
「しぶといヤローだ……!」
「ならば問わせてくれ! ここはどういう場所で、お前は何者なんだ! 何故シーディ様を攫った!?」
[質問が多いですわね。]
「……未知を前に無関心ではいられない性分でね。それで、教えてくれるのかい?」
[良いでしょう。こちらもお前達に用があってこうしているのですから。]
「用があるだと?」
[ええ。あのお方……シーディ様を止める為にお前達の手も借りなくてはならない事態になりましたので。]
「ちょ、ちょっと待ってくれ! どういうことだそれは!?」
[その為に必要となる情報を開示しましょう。いくらあのお方と言えども、十分かそこらでアレを作ることは難しいでしょうから。]
[……ここはあのお方が築いた工房であり、同時に我らの同胞が眠る霊廟。そして我々、
[そして私はこの地の防衛を任された、最初の黄泉返りし者。]
[申し遅れました。私はLivingDeadシリーズ一号機、自己進化型施設防衛兵器のワンと申します。]
「自己進化……。」
[あのお方が数百年ぶりに帰還したことに舞い上がり、少々粗相を働いてしまいましたが……。]
[まあ今は置いておきましょう。]
「アイツの、工房であり……。」
「お前の同胞の、霊廟……。」
「じゃあやはり、道中で見たあの大量の亡骸は……。」
[そうです。……全く、好奇の目に曝すまいと塞いでおいたのに、わざわざ穴を開けるとは。]
「う、それは、すまない……?」
「それで、なぜアイツを攫った?」
[攫うなどとんでもない。主をお迎えしただけです。]
[そしてそれも、女神を失い滅びへ向かうホドを、神の御業で再興する為ですわ。]
「神の力で? 神とは、窟帝か? シーディを窟帝に据えるという事なのか?」
「窟帝と言やあ、ニンフどころか自動機械の果てまで従わせられるとか聞いたが……アイツがそんな力を持ってる風には見えねえけどなあ。」
[実際、今のあの方の状態では神に成り代わることはできませんわ。一部を所有しておられませんでしたもの。]
[それと……シーディ様と窟帝を同列に語るのは止めていただけます? 虫唾が走りますので。]
「あ、ああ……わかった。」
「……さっき君は『黄泉返りし者達』と言った。」
「まさかシーディ様は、死者を蘇らせることが出来るのかい……!?」
[出来ますわ。私が何よりの証拠ですもの。]
「……!」
[ただし、通常の精神状態では忌避されておられるようですが。]
「そりゃそうだ……んあ? 通常の、だと?」
「つまりお前を蘇らせた時は、普通の精神状態でなかったという事なのか。」
[ええ。約600年前、あの女神気取りが強行した『生態系の更新』で同胞たちの殆どを殺され、あのお方は精神の均衡を失ってしまわれた───。]
◇
・・・
─紀元前127年─
「貴女様ッ!?
どうしたの? そんなに慌てて……。
「以前から交戦記録が上がっていた、我らと酷似した未確認の敵性体……『異形』が各コロニーを襲撃しています!!」
異形が、あの子達を……!?
まさかネマが言っていた、『生態系の更新』……!!
ラナ! 全域に退避命令! 上層へ皆を逃がして!!
イーデンにも伝えて! 上層は工場をフル稼働して防衛線を構築!
「りょ、了解!」
ガコン!!
「貴女様! どちらへ!?」
ネマを説得しに行く! こんな、こんな方法でなんて……!!
タタタタ……
「そんな、お一人で向かうのは無茶ですわ!! ……っ!」ピピ
「……ヴァーシィ、私です! ネマが生態系の更新を開始しました! 各地の異形による襲撃がソレです!」
「総員を上層へ退避、工場をフル稼働させ自動機械で防衛ラインを構築! 一人でも多くの同胞を生き延びさせなさい!!」
<<───>>
「そうです、上層のイーデンにも『始まった』と伝えよ! 遺憾ながら、各地の女王たちは見捨てることになります……!」
<<──、───……>> <<──?>>
「シーディ様はネマの下へ直談判に向かいました! 一人では無茶です、私はシーディ様を追います!」
・・・
タタタタ……
「ハッハッ……貴女様……貴女様……ッ!」
止めてネマ……お願い、やめさせて! どうして無抵抗の子達を殺すの!?
「! 貴女様、」
[『無抵抗だから』だよ、シーディ。]
なんだって!?
「!?」タタッ
[ほら、折角ここに来たというのにあの子も丸腰。私を殺してでも止めるなんて気概も持ち合わせてない……。]
ラナ!? どうしてついて来たの!? 貴女もみんなと一緒に早く逃げて!
「貴女様を置いては行けません! 逃げるのなら共に!」
[はぁ……戦わせる為に再生産したのに戦いを放棄するなんて、酷いバグだと思わない?]
バグ……!? この子達に生まれた自意識をバグだというのか!!
[だって、そうとしか言いようがないじゃない? そもそもあなた達には、そこまで自由な思考能力は与えていない筈だもの。]
最初はそうだったかもしれないけど今は違う!
この子達が進化したんだとなぜ認められないの!?
[認めてない訳じゃないよ。でも……確かに自己進化するようにデザインはしたけれど、そういう進化は求めていないの。]
[貴女達はあくまで戦う事が使命であり存在意義。それを果たせないようなら、新型に駆逐されて当然だと思わない?]
な……!! あの子達のベースは戦闘機械ですらないんだ! それを戦いの為に進化させようだなんて……!!
そもそも、どうして殺すの!? そんな必要は何処にも……!!
[ホドで産まれた以上は私の方針に従って貰わなくちゃいけない。元が作業補助のアンドロイドでも関係ない。]
[使えるものは何でも使わなくちゃ。炭素生物譲りの器用さがあなた達の取り柄なんだから。]
[いつの間にか締結してた条約で直接の戦闘を回避して、各コロニー間の軍事的緊張を保ちつつ数を増やすなんて……。]
[あれらを再利用してこんな性質を引き継がれたら困るの。だから根絶やしにする。]
[……正直期待外れもいいところ。想定通り順調に戦闘適応していれば、新型に後れを取ることも無かったのに。]
[そういう意味では、貴女が引き起こした事態と言えるかもね。……家族ごっこは楽しかった?]
家族ごっこだと!? ふざけるな!! 私はただ、無駄な争いを無くしたかっただけで……!
[人類に似たのは良い所だけじゃなかったみたいだね。なんて愚か。]
[あなた達の原型を生み出した連中は、その無駄な争いや殺戮をし続けて進化してきた存在だったんだよ? アイツに教えて貰ってないの?]
[貴女も忘れたわけではないでしょ? 炭素生物共……人類が私達に挑んだあの無意味な侵攻を。自分の言いなりにならない機械だけでは飽き足らず、隣に居る同族までも殺戮したあの戦いを。]
[私は外の事は観測できない、故に私は備えなければならない。あの時取り逃がした少数の生き残り、あいつらの情報をもとに準備を整えていると想定するしかない。いつ『次』があるかわからないんだよ?]
確かにそうかもしれない……けれど、あれからもう
もう備える意味なんてどこにも……!
[敵があの連中だけだなんて思わない方が良いよ。あいつらが滅んで、滅ぼした奴らがまだホドの存在に気付いてないだけかもしれない。]
[その時はまた未知の戦力を相手にしなければならなくなる。……あの時点であいつらの技術力は私たちより上だった。今度は勝てないかもしれない。]
[なら、ホドを蟲毒に変えてでも進化を促すしかないでしょ?]
ッ、貴様……!!
[だから、次を始める下準備として今の世代を一掃するね。イーデンが小細工してるみたいだし、電磁波で纏めて処理しようか。]
電磁波、まさか……EMP……!?
待ってネマ! それだけは止めてッ!!
[残念だったね。武器の一つでも持ってきていれば、私を止められたかもしれないのに。]
ピーッ
[『N-01・02・03・04 起動確認』]
ネマぁッ!!!
[『核起爆 カウントダウン開始 10、9、』]
「貴女様ッ!! 避難を!!」
[『8、7、』]
[こ
[『6、5、』]
そういう、そういう問題じゃない……!!
[『4、3、』]
ネマ、シーケンスの中断を!! お願い、処分するなら私だけにして! あの子達に罪は……!!
[『2、1、』]
[もう今更止められないよ。]
[『0』]
ズズゥゥン……パラパラ……
あ、ああ、糸が切れて、みんな死んでいく……!!
[『N-02・03・04 起爆 完了』]
いやあああーーーーッ!!!
「貴女様っ!! 気を確かに!!」
[…………。]
・・・
◇
[───糸の繋がった子供たちの大半を一瞬で失い、僅かに残った者も新種に殺されていく中、その断末魔をあのお方は受け留め続けられました。]
[私如きが察することも烏滸がましい、想像を絶する悲しみと絶望……そして事が終わり、同胞の亡骸を集める程に膨れ上がる奴への復讐心。]
[やがて肥大化していく感情を処理しきれなくなり心が分かれ、自己防衛としてその片割れを感情・記憶と共に切り離し、我々の手により心の奥底に封じられたのです。]
[……イーデンの証言によれば更新の前から兆候はあったようでしたから、
「600年前……だと!?」
「えーと、今が492年だったよな……?」
「うん。だけどそれは、ホドへニンフが拡散した大繁殖時代を元年とする歴だ。」
「始まりの女王が何時から存在していたのかは誰も知らない……ならば彼女はアーヴド生まれという事になるのか?」
「いやそれだと『生態系の更新』という大量死イベントとのつじつまが……そもそも聖典にはそんな記述何処にも……。」
[早合点はいけませんわ。あのお方も、私も、アーヴドなどというモノから産まれた訳ではないのですから。]
「何ぃ!?」
「ではお前達は私達とは違う……いや、前の世代のニンフという事か!?」
[理解しましたか。お前達は奴が我々の屍の上に蒔いた種なのです。始めから戦う為の力を持たされた、戦いの為に戦いを成す戦闘種族。]
[……我らが地の底に産み落とされた時、力と呼べるものは何一つ持たされず。徒に数を増やしては
[あのお方は、地の底で怯えながら生きる事しかできなかった我らを見かね、獣と戦う為の力を与えて下さった神にも等しき存在。]
[血の繋がりこそありませんでしたが……ご自身が生み出された『力』を纏う我らを、まるで実の子の様に見守り慈しんで下さいました。]
「ちょ、ちょっと待って欲しい……! その口ぶりだと、彼女は前世代型の君よりも更に遡る存在に聞こえるんだけれど…‥!?」
「アイツ、本当に何時から生きてんだ!?」
[さあ? それは私も存じておりません。我らが生を受けた時には既に居られたとしか。]
[あの方に感謝なさい。お前達が鎧殻と呼び纏っているその力も、元を辿ればあのお方が作り出したものなのですよ?]
「アイツが、鎧殻の開発者……!」
「おいおいおい、どこまで話がデカくなるんだ!?」
「ぼ、僕達は、とんでもないことを知ってしまったのでは……!?」
[ふむ、少々お喋りが過ぎましたか。]
ガシュゥン ギュィィ……ザシ ギュゥン、ギュゥン
[……万全とは言い難いですが、これだけ動けば十分でしょう。]
「ッ!」「……。」「やはり時間稼ぎだったか!?」
[落ち着きなさい。こちらに交戦の意志はありません。]
「は?」
「……だろうな。」
「え、どういうことだい?」
[始めに申したでしょう。お前達の手も借りなくてはいけない事態になったと。]
「あ、そういえばそんなこと言ってたな……。」
「それで、今の話がどう繋がるんだ。」
「シーディ様に何かあったのか!?」
[ええ。状況は最悪の一歩手前ですわ。]
[『切り離し心の奥底に封じられた一部』が、先程目を覚ましました。]
[私の本体はメインコンピュータごと封印され、現在は『崩壊兵器』を再生産するべく理論の構築から始めている頃ですわ。]
「崩壊兵器? 俺らが使った崩壊とはなんか違うのか?」
[お前の言う崩壊が何なのかは知りませんが、あの方が製造される崩壊兵器は既存の兵器よりも遥かに危険な物であろう事は確かですわよ。]
「そんなにか。どういうものなんだ?」
[あれはアンチセル技術とでも呼ぶべき、このホドに終焉を齎す最終兵器なのです。]
「アンチ、セル……。」
[セルはかつて炭素生物が発見し、このホドを造り上げるに至った万能物質ですが……崩壊兵器はそのセルの性質を破壊し、ただの塵に変えてしまう。]
[かつて行われた実験では、小銃弾に成形した崩壊兵器が標準的な四脚の動力炉を正面から本体ごと貫き、たったの一発で鉄屑に変えましたわ。]
「なんだそれ、やっべえじゃねえか!?」
「このホドにセルで出来てないものはほぼないはずだ! な、なんという……!」
「そんなものを作り上げてしまう程、彼女の憎悪は膨れ上がっていたという事なんだろう。ゆっくりしてる暇はなさそうだ……!」
[御理解いただけたようで何よりですわ。では、最奥へ向かいましょう。] ギュィン
・主人公
過去の一部を開示 ネマに直接物を申せる立場だったようだ
前世代型を大層可愛がっていたが、同時に滅亡の原因の一端を担ってしまったらしい
鎧殻の原型機の製作者で、その他ニンフ黎明期の武装類も手がけた疑惑がある
・ワン(ラナ)
本名はラナア(Ra7A) かつてはシーディの側に仕えており、彼女が現在の状態になった理由を把握している
ネマのところに挨拶抜きで突撃しても特に何も言われず、イーデンを呼び捨てに出来る等、かなりの高位に就いていた人物でもある
・槍ネマ
望んだ状況にならなかった為、リセットするべくEMP攻撃を実行した
彼女は彼女でやむにやまれぬ事情があり、ニンフの戦闘適応を進めていたようだ
しかし強硬策過ぎてシーディとは意見が合わなかった
・三人
情報の洪水で混乱中
とにかくシーディとワンがとても古い時代の人物だという事は把握した
・イーデン
ワンからの通達で対処に当たっていた所に核のカウントダウンが始まった
演算力をフルで使いハッキングを仕掛け、寸前で起爆を阻止した功労者
ワンとは技術者仲間で気安く呼び合う関係
・核
ホド各層の大脊柱外壁及び大光球基部に設置されている、ホド自壊用の核爆弾群
爆発時に生じる放射線などの強力なエネルギーに目を付けたネマが、非常時にホド全域へ照射する為のEMP爆弾として改造していた
数字は各階層に対応しており、上層の01はネマの思惑に気付いたイーデンらが起爆を阻止した
なおこの爆破で大脊柱に甚大な被害が出たが折れる所までは行かず、数年で原型を取り戻し放射線も除去が完了している
・崩壊兵器
結合を弱体化する通常の崩壊とは違い、セルの性質そのものを破壊する禁断の技術
崩壊因子を詰め込んだ弾頭がセル物質に触れると、双方が泡をかき消すように霧散・対消滅してしまう
万が一この情報がばら撒かれ戦争に利用されれば、現在のニンフは半年経たずに壊滅するだろう
ホドの存続そのものに影響がある為に禁忌中の禁忌とされ、関連する情報もその殆どが削除されている
その性質から崩壊兵器そのものが長く形を保つことが出来ない為、基本的に『その場で構築し使い切る』ことが前提となる、扱いが難しい兵器でもある