一つ前の世代のニンフが繁栄していた時代の記憶
アーヴドなどは産まれてすらいない古代の記録です
◇
[しかし一からとなると面倒だな。]
[ライブラリに断片でも残っていないか、調べてみるか。]
チッ
(・・・)
[……まだ眠っていろ。オリジナル。]
チチチ……
(・・・)
ザッ……ザザ……
[折角封印が解けたのだ。夢現で自らの過去を見直しているといい。]
[目が覚める頃には全て終わらせておいてやる。]
(・・・)
ザザ、ザザザ---
・・・
・・
・
◇
・
・・
・・・
ザザ……
<<───今の振動はなんだ!? 何が起きたんだ!?>>
<<む? おい貴様。見ない顔だな、どこの……ッうわぁぁ!?>>
<<ひ、隊長!? まさか、これが新種……く、来るなあ!!>>
<<貴様ら何をしている! 撃て! 撃てェ!! ぐぉああッ!?>>
<<バカな、急所に命中しているはずだッ! がっ……!?>>
<<絶対にここを通すな! 俺達の後ろには非戦闘員が居るんだぞ!!>>
<<構わん私ごと撃てッ!!>>
<<一斉射用意! ッてェーッ!! な、速、>>
<<ひぃいい!? なんで食って……!?>>
<<このおおッ!! 姉ちゃんを喰うなぁああ! くそ、放せ! はな>>
が、ぁああ……ッ! ハァッ! ハァッ! ぎっ……! ズキズキ
ガクガクガクッ
「貴女様!? まさか糸であの子らの……!」
逃げて……! みんな逃げてぇ……!!
<<!? まだ来るのか!>>
<<総員撤退! 工場に立て籠もるぞ!>>
<<撤退ったって、もうどこにも退路なんか無いですよ!>>
<<上からも降ってくるぞ!! ぎゃあっ!?>>
<<来るな! 来るなああああ!!>>
[阿鼻叫喚だね。数が居ても役に立ってないじゃない。]
「貴様……!!」
[睨んでる暇があるなら、さっさと連れて行った方がいいんじゃない?]
か、は……! ぁ……ッ、は、ハァっ、はっ……!!
ドシャ、バタッ
「貴女様! 感度を下げて下さいまし! 全てを受け止めていては貴女様の身が持ちません!」
ら、な……。
「直ぐお部屋へお連れしますわ!」スッ ガシッ
タタタタ……
[…………。]チチチ……
[下は結構残ったんだ。じゃあ、掃除しないとね。]スッ
[はぁ、面倒……。]シュゥゥ……チャキ
コツコツコツ……
「……。」「……。」「…………。」「……。」ウロウロ
[……ん、せっかくだし幾つか連れて行こうか。]
[手伝いなさい。]キィン……
「「……。」」ギィン……
[うん、問題なし。]
[じゃあ行こうか。]
ゾロゾロ……
・・・
ピッ、ピッ、ピッ
「直ぐに冷却を開始します!」
う、ん……。ズキズキ
コォォォ……
ガコン
「シーディ様ッ!」
アンジェ、無事だったんだね……。
「はい! シーディ様もご無事……ではなさそうですね。」
ちょっと頭痛で倒れただけだよ……心配しないで。
「そうですか……? ラナ、シーディ様の容態も気になるが、地上が酷い有様だ。特に中層は通信すら繋がらん。何が起こった?」
「……窟帝がホド全域に向けて電磁パルス攻撃を実行しました。」
「シーディ様は糸で繋がった者たちの断末魔を受けてしまったのでしょう、過熱で体調を崩されたのです。」
「そういう事か……待て、イーデン様やヴァ―シィは!?」
「イーデンからは先程糸で『上層の起爆は阻止した』と連絡がありました。今こちらに向かっています。」
「ヴァ―シィは付近の生き残りを集め退避の準備を進めている筈です。冷却が済み次第、私達も合流しましょう。」
……。
(……この気配……。)チリッ
ッ!!
二人とも、ヴァ―シィの所へ急いで!
「!? ですが貴女様を置いていくわけには!」
いいから早く!! 行って!!
「(……!)
「アンジェ!? 放しなさい! あ、貴女様ぁッ!」
タタタタ……ガコン
(……行ったか。ありがとうアンジェ)
(それとごめん、ラナ。こうでもしないと貴女はついて来てしまうから……。)
(ネマが動き出した。このエリアの子たちを直接始末して回るつもりだな。)
(先回りして少しでも多く拾わないと……ちょっとだけ感度を上げて、
(付近の子たちは大体がヴァ―シィの所に集まりつつあるか。……っ!)
<<な、何なのよこの音ぉ……!>>
<<扉を壊そうとしてるの……? アシリィ、こっちへ!>>
<<リゲィラ、ここに隠れてて本当に大丈夫なのぉ……!?>>
<<もう少し寄りなさい……。助けて、助けて下さいシーディ様……!!>>
(工房の二人が取り残されてる! 急いで向かわないと……!!)
ガコン タタタタ……
・・・
タタタタ……
「……。」ユラ……
「……。」フラ……
邪魔だ、退いて!!
ドン!
「! ……。」ヨロ、フラ……。
(あの異形たち、さっきから妙だ……こっちを見ても、突き飛ばされても何の反応もしない……。)
(上は大惨事なのに、どうして……!? まさか。)
(……今はそんなこと考えてる場合じゃない! ……あれは!?)
「がぁう!!」ドン、ドン
「ぐるる……!」ガリガリ
「ヴゥゥ、がァッ!!」ガキン、ガギィッ!
(工房の扉の前に群がってる! 間違いない、二人はあそこにいる!)
こ、のぉ……!! 寝ていろッ!! ガシ、ギィン!
「がっ!?」「ぐるっ!」バタバタッ
お前も! ガシ、ギィン!
「ヴァッ!?」バタッ シン……
良かった、
ガコン バッ!
アシリィ! リゲィラ! どこ!?
「し、シーディさま~!!」バッ!
「た、助かった……!」ノソ……
間に合ってよかった……! ヴァ―シィ達と合流するよ! 上層に逃げる!
「逃げるって、あのバケモノたちがいる中を突っ切るってことですかぁ!?」
「せ、せめて何か武器を……!」ゴソゴソ
直接触れられればあいつらを封印で無力化できるから、私の後ろについて来て!
ゾロゾロゾロ……
[なんだ、まだ逃げてなかったの? ……邪魔だからそこ退いてくれないかな。]
ネマ! やはりこの子たちも殺すつもりなんだね……!!
[当たり前でしょ? この状況で逃げ遅れるような鈍間は残しても仕方ないと思わない?]
「私達、殺される……!?」
「そんな、なぜ……!」
いい加減にして! 二層であれだけ殺しておいて、まだ殺し足りないの!?
[足りる足りないじゃなくて、残ってたら邪魔だから処分してるだけなんだけれど。]
まるで異物みたいに……ふざけるなよ……!!
キィィン!
[ふぅん……?]
[行って。]スッ
「!」「!」ババッ!!
させない! ガシッ キン!
「……。」「……。」ドサドサッ
[はい、ご苦労様。]トッ キィン!
あっ……!? ギギギ……
「シーディ様!」
「なんてことを……!」
[全く、糸が切れてるからイチイチ接触しなきゃならないなんて……。]
[それじゃあ、死んで?]チャキ
「ひ、」「いや、」
あ゙あ゙あああああっっ!!! ギギギッ!!! ガシッ!
[っ! ……本当、残念。これで好戦的だったらあなたをベースにしてたのに……。]
ハッ、ハッ、そんなの、こっちは、全く、嬉しくない……!! ギン!
[でも私に
あ……!! ギ、ギギ
[これ以上邪魔立てするというのなら、貴女も処理しなくちゃならなくなる。]
[あなたの能力が必要だから、攻撃目標からは外してるんだよ?]
やっぱり……そうだったのか……!
[意識を落としても良いけど、やっぱりお仕置きが必要だから起きて見ていて。]
!! さ、せ、な……! グググッ!!
[はあ……強情なんだから。じゃあ、少し静かにしててもらおうかな。]
ヒュトトッ!!
ブシャアッ!!
ッッッが、ぎぃ……!!
ビチャビチャッ!! ドシャ
「シーディ様ッ!! 止血を!」
「ネマ! よくも!!」ダダダダダァン!
バスバスバスッ!
[あ、反抗はできるんだ。]
ヒュガッ!
「ぐあっ!? そんな、頭部に直撃したのに……!」
[もっと早く反抗できてたら、あなたもこの子達もこんな目に遭わなくて済んだのにね。]
ヒュパパッ!! ボト、ボト
「ぎゃうっ!?」
「ひぃっ!? リゲィラ!?」
「手が、腕がぁ……ッ!」
ぐぅ……うう……!! ふたり、とも……!!
やめて、ネマ、お願い、だから、もう殺さないでぇっ!!
「いたい、いたいぃ……!! 死にたくない、シーディさ」
ヒュッ ドスッ
「ま、ァ……!」ドサッ
「リゲィラっ!? ひ、いや、許して、ゆるしてぇ!!」
ヒュッ ザンッ
「が、は。」バタッ
ああ、あああ……!! アシリィッ! リゲィラッ!? パキィン!
ダダッ ユサユサ
いやだ、お願い返事をして! いや、いやああ……!!
[もう終わり? とことんガッカリさせてくれる、] ガコン [?]
パッ「死ねッッ!!!」ザギンッ!!
[っあ。]
ググ、グイッ、ドンッ! ドシャアッ! ガランガラン
「姉上! 無事か!?」
イーデン、ムツ……!
「酷い怪我だ、修復剤を! 止血は、済んでいるか……!」
「シーディ様、中央大洞穴でヴァ―シィが待っています、早く合流しましょう!」
まって、二人が、ふたりがぁ……!
「姉上、二人はもう……遅れてすまない……!」
[……もう来たんだ、早かったね。]ググッ
「まだ息があるか!」ザシュッ!!
ドタッ
[ふふ、でももう手遅れ。じきにここも制圧される。さっさと
「いい加減耳障りだ、失せろ!」ズパンッ!
ビュッ! ゴドン、ゴロゴロ……
「チィ、これは子機の方か! また奴が来る前に合流するぞ!」
待って、この子達を、この子達だけでも……!
「ダメだ姉上! 死体を担ぎながらでは連中から逃げきれん!」
異形は私には手出ししてこないの! だから私が連れて……。
パシィッ!
っあ。
「聞き分けの無いことを言うな姉上! 死んだ者の為に生きている者まで危険に晒すことはできん!!」
あ、ぅぅ……!! ボロボロ
「分かってくれ……! 今は一人でも多く上に逃れさせねばならんのだ……!」
わかってる、わかってるよ……!! でも……!
<<イーデン様!!>>
「どうした、ナナツ!」
<<奥からネマの気配が! 近づいています!>>
「!! クソ、早いな……!」
「イーデン様ッ!!」
「今度は何だ!」
「ヴァ―シィの結集地点が新種に嗅ぎ付かれたようです! 止むを得ず移動を開始したと!」
「流石に数が集まれば気付くか……! そのまま離脱しろと伝えろ! 我々は別ルートで上がる!」
「了解!」
<<ネマと思しき反応、なおも接近中。お二方、時間がありません。>>
「ああ分かってる。姉上、立つんだ。」
……うん。ごめん。
「構わん、恨めよ。……管理者通路を防衛機構を起動させながら上がる。」
「姉上、頼めるか。」
大丈夫、急ごう。
「ムツ、ナナツ! 管理者通路に向かう! 先行しろ!」
「「ハッ!!」」ゴォォ……
……ごめんなさい、リゲィラ、アシリィ……!!
バッ タタタタ……
・・・
タタタタ……
「あそこを曲がれば昇降機の小部屋だ!」
砲台起動、レーザーフェンス起動、マイクロ波照射装置起動……!
「これで足止めになればいいが……。」
キラッ
「光ッ!?」
「「お二人とも、我々の後ろに!」」
「チッ!!」バッ
っ! バッ!
ビュゴッ!!! ガギィン!!
「ぐああああッ!! 副腕が一撃で!?」
ビィィン……シュワァァァ……
「ッ! これは槍か!?」
セル分解した……これはネマの槍だ……!!
キラッ
「また来る!」
「防弾膜展開!」ヴン
バキィン!!
「よし効いた!」
「今の内に駆け込むぞ!」
うん!
フォン……
「なに!? 何故上がらん!」
[私の権限で止めたからだよ。]
ネマ……!!
「ならば権限を奪い返すだけだ!」カタカタカタ
[お前は逃がさないよ、イーデン。爆弾の除去までして上層の掃除の邪魔をしてくれた礼をしないといけないしね。]
「たわけた事を!」ピピピピ
「やらせはせん!」ジャキ
「シーディ様、下がって下さい!」チャキ
[……抵抗しても良いけど、余計苦しむだけだよ?]スッ
「……!」「……!」ババッ!
「チェぇアッ!!」
「チェストォッ!!」
ザギュザギュッ!! ドサドサ
「やらせはせんと言った!」
「素手相手に負けられるか!」
二人とも間合いを維持して! 身体に触れられると封印で動きを止められる!
「ならば
「
[単純な戦闘力なら優秀なのに……。本当、余計なことしてくれたね。]ジト……
その子たちだって、私が法整備した後に生まれた世代なんだけど……!? カタカタ、ピ
ビシュィン!!
[侵入者用トラップか。邪魔。]キン
シュゥゥン……
「シぇいあッ!!」ビュビュビュッ!!
「シッ!!」ビュンッ!
[……戦いに明け暮れていれば、すぐにでも生まれてたんじゃない?]キン、ヒュッ ヒュカカッ!
「見えるッ!」ガキン!
「間合いが遠いわッ!」キィン!
そんなの、進化する前に絶滅するのが関の山だ!
[そうならない為に、貴女に調停権限を持たせたんじゃない。]クルクル、ヒュヒュヒュッ!!
「ちぃ!!」ガギ!!
「なんとぉ!!」ジャリリィッ!
[イーデンも、そのハッキング能力を有意義に使ってくれればよかったのに。]ザッ ジリ……
「話しかけるな、気が散る。」カタカタカタ
[まあいいけどね。追加も来たし。]
「……。」「……。」「……。」「……。」「……。」「……。」ゾロゾロ
「流石に数が多いか……!?」ギリッ
「なんの、これしき。心が躍る。」ジャリ
「よし、掌握した! 姉上ッ!!」
うん! 待って、二人は!?
「我等は殿を!」
「どうかお元気で!」
「済まない、ムツ、ナナツ……!」フォン ガション ギュゥイイイ……
そんな、此処で置いていったら二人は!
「足止めが居なければどのみち全滅だ!」
「私とて、二人を置いていきたい訳が……!!」
……ッ!
ごめん、ごめんね、イーデン……。辛いのはイーデンの方なのに……!
「……いや、構わぬ。ここに来る時点で覚悟はしていたのだ。」
「姉上よく聞いてくれ……今この状況で情に流されれば、周りの者は皆死ぬ。」
「非情な事を言うようだが、今は自分の命を最優先にしてくれ……!」
でも、できない、そんなことできないよ……! まだどこかに生きてる子たちが、
「泣き言を言うな!」ガシッ!
っ!!
「姉上。奴が態々追ってきたのは、私が排除目標であるからというだけではない。」
え……?
「先程ハッキングで奴に触れた時に分かった。奴は姉上を捕縛し自我データをクリーンアップするつもりでいた……!」
……!
「クリーンアップされれば、ホドの記録にも元の情報は残らない。それは我々にとって、身体を失う事よりも明確な死だ。」
「いいか? 我々は先程の大規模攻撃で大きく数を減らされた。」
「中層は首脳部と連絡が付かず、下層は各地で煙が上がっているというのに静まり返っている。」
「残っているのは上層の入植団と、ヴァ―シィの呼びかけに応じられた僅かな戦士たちのみだ。」
「我々は異形に追い詰められつつある。ここで貴女が生き残らなければ、私達は終わってしまうのだ。」
「体制から何から、社会基盤そのものが崩れてしまった今、精神的な支柱として貴女が必要なんだ……!」
……。
「その為には何を犠牲にしても、姉上を上層に送り届ける必要がある。」
「あの二人もそれは理解していたし、納得もしていただろう。だから……。」
ごめん、なさい……私が、間違ってた……。
「……分かってくれればいいのだ、姉上……。」
間違ってたんだ……何もかも……。
「姉上……?」
アイツが脅威になるのなら、排除しなきゃ……。
殺す……殺される前に……。
「姉上? 姉上ッ!?」ガシ、ユサユサ
っ! な、なに……? どうしたのイーデン……?
「どうしたも何もない! 今様子がおかしかったぞ!?」
え? わ、わたし、なにかしてた……?
「……姉上は同胞の声を受けすぎて疲れているのだろう。中層にヴィシクを待機させてある。」
「早い所連中と合流せねばな。」
……うん……。
・主人公
現代ニンフの世が始まる前に、
糸が繋がっていた者達どころか、すぐ傍に居た者すら救えずに溢してしまっている
ニンフとしては異端な、極端に死を厭う気質はネマの頭痛の種でもあった
・槍ネマ
暴君ぶりを遺憾なく発揮 電磁パルスが届かず多数が生き残った最下層エリアは、自らが手を下すことにした
付近の異形(次世代ニンフ)は糸が繋がっている為、いくらでも意のままに従わせられる
得物である槍の習熟度は何気に達人レベルだったりする
・ラナ、アンジェ
ヴァ―シィの所へ合流してすぐ異形の襲撃が始まったため、休む暇もなく撤退戦を開始することになった
・リゲィラ、アシリィ
後のスリーとツーになる通常型姉妹
凡庸な二人ではあるがシーディとの付き合いは長く、ヴァ―シィと同じく身の回りの世話や作業の手伝いなどを行ったりしていた
ヴァ―シィの呼びかけで異変に気付くも、通路は既に異形が屯っていて逃げるに逃げられなかった
・ムツ、ナナツ
イーデンの護衛兼側近を務める双子鎧化兵 のちのシックスとセブン
近接戦闘に秀で、後世のナガラに繋がる技術体系を作り上げた近接戦闘特化型でもあった
シーディとイーデンを逃がす為に殿を務め戦死している