さーて、まずは何をしましょうか?
「そうだな……そこの機械根の奥、壁面に構造物が突き出ているのがわかるか?」
はい、足場みたいな奴ですよね?
「そうそれだ。それを渡って上に行けそうなのもわかるか。」
えーと……あ、はいそうですね。結構上まで行けそうな感じになってます。登って見て来ればいいですか?
「ああ、頼む。ついでに見晴らしが良い所を見つけたら地上を見渡しておけ。私はついて行けないから通信に切り替えるぞ。回線合わせ。」
……あー、あー、ここかな? こちらシーディ、聞こえますか。
<<こちらギリー・ベル、明瞭だ。>>
じゃあこのまま行きますね~。おっとと、いやあ風化が酷いなこれ。
<<踏み抜くなよ。地上は成れの果てまみれだからな。>>
<<それと伝え忘れてたが……亡骸も何も付いてない“放置されている鎧殻”を見つけても迂闊に近寄るんじゃないぞ。>>
え? なんでですか?
<<そういうのは大抵罠だからだ。拾いに来た奴を待ち伏せていたり、地雷が仕掛けられていたりといった具合にな。>>
ひぇ~、そんな殺伐とした業界なんですねぇ。っと、天辺に到着しました。ちょっと眺めてますね。
<<ああ。古くからいる亡骸漁りは、そういう罠は仕掛けないという暗黙の了解があったんだがな……。>>
下層なりにそういう秩序みたいなものはあったんですね。おー広い。景色まるっこ変わっちゃったな~。
<<私たちが反目しあっても異形共の利にしかならん。遠回しに自分の首を絞めるだけだ。>>
<<だが近頃は羽蟲共に中層を追われた残党共の流入が増えてきてな、そういう理屈が分からんものだからちょくちょく目にするようになってきた。>>
コロニーじゃないから取り締まることも出来ない……というか、そもそも無法地帯ですもんね。
<<慢性的に資源が不足しているからな、そこに急激な人口増加だ。落下物待ちの亡骸漁りだけでは到底賄いきれない……ならばどうすればいいか?>>
<<その答えが“餌に引っかかった奴を資源にする”だ。掛かったのが同郷だとしても、顔も知らんような他人なら心も痛まないという訳だな。>>
<<それにここで生き延びて来た古参を捕えることが出来れば、貯えごと奪えて一石二鳥。>>
<<『装備を整えられればガーディナに復讐する機会が巡ってくる』。そんな夢を見た連中が何とか生き延びようと
<<ここでジリ貧になるくらいならさっさと中層に戻って潜伏すればいい物を、まったく馬鹿馬鹿しい。復讐する為に頭数減らしてたら本末転倒だろうに。>>
生きることに必死になりすぎて先を見れてないですね~。そのガーディナ?の侵略が終わらない限り状況は改善しそうにないですし。なんだアレ、沼?
<<そしてもう一つ懸念すべきことがある。この戦法を異形共が学習し始めている事だ。>>
あいつらそんな知恵つけられたんですね。ん? 今何か動いたような……瓦礫が崩れただけか。
<<驚くべきことにな。大方鎧殻も持っていないような奴が返り討ちにあって学習させてしまったんだろう。この辺には居ないが、一層上の密森にはそういう厄介な異形がかなりいる。>>
密森?
<<上の連中が『降積地帯』と呼ぶ領域だ。異形に寄生された自動機械共が屯している。>>
<<連中はそもそも数が多くて厄介だ。囲まれて餌食にならんよう、落ちている物に近づくときは周囲に十分気をつけろよ。>>
了解しました! それで早速なんですがね……。
<<もう見つけたのか? 流石に目が良いな。>>
今ベルさんの直上の梁に居るんですけど、その先の潰された柱わかります?
<<あの一段低くなっている奴か。>>
はい。それに乗っかってる梁に鎧殻っぽいのが落ちてるのが見えますね。場所が場所だから異形も残党も手を付けてはいないと思うんですが……。
<<見てみないことには何とも言えんな。視界共有できるか?>>
はい、映像送ります。
<<ふむ……何かが仕掛けられてそうな様子はないな。しかし取りに行くには少し遠くないか?>>
巡航モードが使えるか試してみます。それが使えれば地上に降りずに戻れそうですし。
<<ぶっつけ本番で大丈夫か? 整備だってまともにしてないだろう、それ。>>
ダメそうだったら周りの足場に降りますよ。それじゃ行ってきまーす。
・・・
さて試してみるか。鎧殻を巡行モードに切り替え、頭環のHUDに各部パラメータをリンク……よし。流石に混じっても問題ないように作ってあるね。
機動外肢と加速肢の同調……よし。出力制御はオートで。よーし、離陸開始!
速度40、50、60、70、よし離陸! ……あれ? 身体が左に流れて(ボボ、ボッ)やばっ、左足が咳き込んでる! 制御をマニュアルに、左足をカットして右足を出力上げて……。
<<おい! 前を見ろぶつかるぞ!>>
!? いつの間に高度が下がってッ!? うおおお曲がれぇ~~~ッ!!!
あふんっ! いてて、あー死ぬかと思った。
<<無事か!? 今どこにいる!?>>
えーとここは、oh...。なんか壁にへばりついてる異形に乗っかってる状態でーす……。
<<はぁ……心配させるな。そいつは特定範囲しか認識できない奴だ、そこなら下からも狙われないだろう。今成れの果てどもを片付けてやるから少し待ってろ。>>
はぁい、すみませぇん……。ピッ 銃口こっち向いてるんですけど、本当に撃たれないんですよね!?
<<感知範囲外なら例え撃たれても無反応だ。安心していい。>>
そ、それならいいんですけど、うぅあんまり見ないでよぉ……。
・・・
<<終わったぞ、降りてこい。>>
は、はいっ。よいしょっと、たぁっ!
「全く手間をかけさせて……貸し一つだからな。」
すみません、ありがとうございます! でもなんで咳き込んだかなあ……。後でバラさないと。
「坂の裏に小屋があるから、先にそれの整備をするか?」
そうですね、ブースト機動で同じこと起きたら大変ですし。
「分かった、ついてこい。」
はーい。うわっ!? めっちゃ撃たれるんですけど!?
「それが奴の攻撃だ。そのサーチライトの範囲から出ろ。」
大人しくなった……変な生態ですね……?
「砂埃で視界が効かないからそういう適応をしたんだろうな。」
・・・
「着いたぞ。ここなら埃も少ないし、少しバラして見る程度なら大丈夫だろう?」
そうですね。とりあえず吸気口とフィルターだけ見てみます……(バコッ)うわっ、なにこれ胞子?
「大気に混じっている異形のだな。なるほど、持ち主の死因はこれか。」
以前見た奴と形態が違いますね。あの時のはもっと砂っぽいのがびっちり詰まる感じでした。
「定着して成長が始まるとそうなるんだ。一度根が張ると、炙って根を焼き切らない限り何度でも生えてくるぞ。」
はぇ~そうなんですね~。でも火を焚くもの持ってないです。バサバサポンポン
「この
なるほど~。これも亡骸漁りの知恵って奴ですか?チリチリチリ……
「まあな。私もはじめは似たような失敗をしてだいぶ苦労をした。親切な先輩から教えられたものの一つだよ。」
じゃあその話もっと聞きたいです!チリチリ……トントン
「一気に語っても覚えられんぞ。トラブルが起きたらその都度教えてやる。」
はーい。よし落ちた! 主機の方は……自前の熱量があるから大丈夫そう。ガチンパチン
「ついでに他の鎧殻もメンテしておけ。この先ゆっくりできる場所は限られている。」
分かりました。んじゃ
「……そうだな、手を動かしながらでいいから聞け。この辺をうろついてる成れの果てどもだがな、あれには近づくんじゃないぞ。」
なんか爆発してましたんで危なさそうなのはわかりますけど……あの黒い煙ってそんなにヤバいんですか?
「あれは煙で黒いんじゃないぞ。頭の異形が放出した寄生虫が、煙に見えるほどの濃度で滞留してるんだ。」
うげ、じゃああの中に居たら……。
「あの連中の仲間入りだな。」
ひええ……。そりゃナガラが陥落するわけですよ。
「対ナガラに特化した異形なんだろう。あと混じってうろついてる二脚が撃ってくる追尾弾も同じだから気をつけろよ。濃度は爆発の比じゃないぞ。」
うげぇ、どんな原理で飛ばしてるんですかそれ……。あれ、でもしばらくすると消えてましたよね?
「どうも寄生虫は大気中だと長く生きられないらしい。色が抜けたら入っても大丈夫だ。」
あ、そうなんですね、安心しました。……と、整備終わりましたー。
「じゃあまた上に上がるぞ。さっきの所をもう一回飛んでみろ。」
了解です!
・・・
離陸っ! おお、今度は大丈夫ですね。
<<どうだ? 届きそうか?>>
はい、これなら大丈夫です! 降下します……よし、成功!
<<これなら隣も大丈夫そうだな。>>
隣?
<<着いたら教える。それで落ちているものはなんだ?>>
はい、今映します。これですね……知らないタイプの鎧殻だ。
<<これは……恐らくヘロスの新型だ。>>
ヘロス? どの辺のコロニーでしたっけ?
<<私も根拠地は知らん。だが、あらゆるコロニーと交易をして生き残っているやり手らしい。>>
<<どこの勢力からでも鎧殻の開発を受け付けていて、ホド全域に製品を売りさばく商人気質だと聞いている。>>
はぁー、独特なコロニーですねえ。でも賢いやり方だと思います。
<<この辺でもたまに見かけるぞ。……見た感じ罠は仕掛けられていなさそうだな……。>>
取ってみます?
<<慎重にな。>>
・・・
近づく前に周りをよく見よう。……少なくとも見える範囲には居なさそうだね。
手榴弾の爆発範囲と想定して大周りに回り込んで確認。裏側にも設置物は無しと。
じゃあそーっと手を伸ばして……(……ュゥゥウウウ)ッ何かが飛んできてる!
ボボボガァン!!!うおおおおお!?!? ヒュンッ ひゃあっ!?
<<無事か!?>>
なんとか! 今のはどこから!? 少なくともここに設置されたものではないです!!
<<横から飛んできたように見えたが……行ったぞ! 避けろ!!>>
ドドドガァン!!! ヒュンッ くぅ……!! 見えましたか?!
<<見えた! チィ、禁域の隔壁の方、鉄骨がむき出しになっている梁からだ!>>
うっそ、この距離を狙撃してる!?
<<間違いない! また撃ってきた! もう
了解! 離脱します!!
・・・
ふぃー、知識を授けられてなかったら危なかったですよぉ。
「また危ない目に遭わせてしまったな。すまん。」
いいですよぉそんなの。偵察兵はこのくらい日常茶飯事ですから。
「それでもだ。さっきのはその辺の野良共のやり方じゃない。どちらかというと羽蟲共に近いやり方だ。」
羽蟲……って、ガーディナってことですか?
「この辺でガーディナ生まれといえば……。」
『おー悪ぃ悪ぃ!! 生きてっかぁ~~!?』
わっ、誰ですか?!
「白々しい!! おいナズ! 貴様どういうつもりだ!!」
『おいおい説教は勘弁してくれよ! アルカンドのカッコした奴が俺の獲物に手ェ出そうとしてんなら、撃つのは当たり前だろォ!?』
「よく言う! そこまではっきり見えてるなら、私と一緒に居たところも見えていただろうが!」
『へへっまあな!! お嬢ちゃん! 初見で避け切ったのはお前さんが初めてだ! もっと俺を楽しませてくれよ!』
こっちはもう願い下げです!!!
『つれねえなあ! 俺んとこに来たら弟子にしてやるぜ!』
「さっさと失せろ!!」ドドォッ!!!
『ハハハ!! 聞けねえなあ! 逃がさねえって決めちまったしよ!!』ボボボンッ!!!
「シーディ、禁域の方に行くぞ! 足元なら狙えないはずだ!」
了解!
・・・
「流石に追ってこないようだな。じゃあ奥に進むぞ……あ。」
どうしました?
「ちょっと下がれ。」
? はい。
ドシャアッッ!!
ひいぃッ!? 今度は何ですか?! 今回こんなことばっかりじゃないですか!
「…………。」
「レキ、私がわかるか? ギプロベルデのギリーベルだ。すまないが通らせてもらうぞ。」
「……そイつは誰だ。」
は、はい! 初めましてレキさん! 私はシーディと申します!
「さっき下で拾った連れだ。コイツはそっちは荒らしてない。私が保証する。」
「……さっサト行け。」
「ありがとう。行くぞ。」
は、はいっ。あの、ありがとうございます!
「……。」バシュッ ズゴォォォ……
あの鎧殻……彼女はナガラの生き残りですか?
「ああ、ここで墓守をしている。このエリアは同胞達の最期の場所なんだそうだ。荒らしたらぶっ飛ばされるからな、下手に触るなよ。」
りょ、了解です。
・・・
それにしてもなんなんですかあのナズって人。 まるで狩りを楽しんでるような……。
「実際楽しんでるんだよ、あいつは。気をつけろよ、一旦目を付けられたらしつこいぞ。」
うええ……勘弁してくださいよぉ。
「ならあいつを実力で分からせることだな。私はそうした。」
手は貸してくれないんですかぁ!?
「二人がかりで勝ってもアイツは納得しない。認めるのは一対一の勝負で負けた相手だけだ。」
こっちはライフルとグレランしかないのに、火力足りなさ過ぎますよ……!!
「今の装備では確かにきついな。だが実力の方なら希望はあるぞ? さっきの攻撃、狙撃も混ぜられてただろう。」
あ、そういえばそうですね。
「アイツの攻撃はそっちが本命だ、アレを回避できる奴は中々居らん……自分の動きに自信を持て。」
「それに、あいつがああいう物言いをした時は既にある程度認めてるんだ。もしかしたら倒すまでやらなくてもいいかもしれんな。」
「危ないときは私が割って入ってやるから、修行のつもりでアイツとやりあえばいい。」
ぶつかるのは決定事項なんですね……。
「逃げ続けて見逃される事はあり得んから諦めろ。それに中層はああいった手合いがごろごろしているからな。今のうちに慣れておいた方が良い。」
わかりましたぁ……。やるしかないか。
・・・
所でさっき気になったんですけど……。
「なんだ?」
あのナズって人、鎧殻や装具はギプロベルデでしたよね? なんでガーディナのニンフがその格好を?
「ああ、それか……。」
あ、言い辛いのでしたら無理にとは……。
「いやいい。奴の情報は持っておくべきだ。」
「とはいっても、私も経歴は詳しくない。ガーディナの特殊部隊出身とは聞いたが、その程度だ。」
「まあ、元特殊部隊だけあって手段を選ばないのが特徴と言えるか。特にさっきのような待ち伏せや闇討ちは当たり前にやってくるぞ。」
とにかく面倒くさそうってのはわかりました。
「鎧殻の性能については言うまでもない。罠にハメられた上に正面からぶつかられると生き残るのは難しいだろう。」
「だがやりようはあるはずだ。奴の戦法に付き合わず、向こうには無いもので戦えばいい。」
空中機動力と、近接装備……それにあの人は私の戦い方を知らないはずですもんね。
でもタンク相手に接近戦や旋回戦に持ち込むのは……いくら有効とはいってもハイリスクすぎます。
「結論を急いでもろくなことにならんぞ。とりあえず、このエリアを回りながら考えるといい。」
そうですね。こっちは……ファブラー跡地ですか?
「ああ。今は禁域と呼ばれている。」
禁域……名前がもうヤバそうなんですけど。
「実際危険度は聖智廟以上だ。こちらには奴も近寄れんしちょうどいいだろう。」
「それとコレを渡しておく。」
何ですかこれ? 瓶詰めの蟲と、薬?
「浸食に効く蟲と注射薬だ。即効は蟲、予防は注射だから覚えておけ。ここは浸食虫を浴びながら探索することになるぞ。」
うわぁ……了解です……。
・主人公
外に出て早々厄介な相手に目を付けられたニンフ
あの狭い足場で砲撃と狙撃を避けられるのなら大抵の相手からは逃げきれそうではある
がんばれ
・ギリー・ベル
ネームドが無名モブに負けるわけないだろ! ということで勝っていたことになりました
実際やりあったらどっちが勝つのかは分からない
ナズとはいろいろあったが今では認め合う間柄(なおコミュニケーションの方法は物騒)
・ナズ
聖智廟踏破後配置の野良タンク 現時点の装備は
下層で生き延びているんだからそれなりの経歴は必要でしょ、と盛ったらエライことになった
ちなみにベル姉御は事情と経緯を聞いて同情してしまい、ガーディナの括りからは外している
・レキ
禁域ボス 敵対してなければ話は通じる
が、長く汚染地域に居たため徐々に蝕まれてきており、旧知の仲のベルも名乗られないとすぐには思い出せない様子。