今回は説明回なので短めです すみません
例によって独自解釈モリモリなので注意
「修理終わったわよ。」
「ついでに出来る範囲でオーバーホールも済ませておいたわ。」
「おー、流石に前より調子いいな。サンキュ! ベルもあんがとな!」
「構わんさ。この間の埋め合わせだ。」
「いくらその子が頑丈だといっても、簡易的な整備だけで済ませていては調子は上がらないわ。」
「しばらくはここにいるから、定期的に見せに来なさい。」
「オッケー、また頼むぜ。んじゃあ試運転がてら弾の補充でもすっかな。さっきしこたま撃ったし。」
「……これ二触れレバ、先程ノ機械根に転送サレるのだナ?」
「ええ。基本的には直前に使った機械根へ転送されるわ。」
「他の機械根に触れれば、そこも行き先へ追加されるわよ。」
「……ウム、了解しタ。それデはナ。」スゥ…
「またなー。」スゥ…
・・・
「便利なものだな、転送というのは。イチイチ穴を開ける手間がなくなるのは助かる。」
ナズさん
「アイツは撃ちたいからわざとそうしてたが、まともにやると本来あのくらいはかかるんだ。私も気付くまでしこたま撃ち込んでいたなあ……。」
流石構造材ですねえ。熱塵砲とか近接兵装はどうなんですか?
「近接兵装は分からんが、熱塵兵器もかかった時間はあまり変わらなかったな。」
へぇー。ちなみに何で試したんですか?
「
おお~、カッコいいですねえ。ていうかギプロベルデって熱塵兵器作ってたんですね。
「ウチを何だと思ってるんだお前は……。」
冗談ですよぉ。
「さ、今度は貴女の番よ。……あら?」
「ナズがいなくなったら途端に静かになったわね。今のうちに見せてごらんなさい。」
はーい。よ……っと、よいしょ。 ガシャ
「……見事に急所を貫いたわね。」
「
直せそうですか? 一応これも返す予定なんですけど……。
「形を直すことだけなら簡単よ。ただ……。」
「貴女の為に調整し直すから、『核』を取り出す必要があるわね。」
核を取り出す?
「『白錫』と言えば分かるかしら?」
「武具のものは『黒鉛』よ。」
……それって、もしかして中身に生えたりするアレですか?
「ええ、そうよ。そしてアレは意味も無く生成される物ではない。」
「アレは装具と武具に芽生えた、闘争本能の結晶というべき代物。」
「所謂『異形化』の第一歩。成長しすぎれば主従は逆転するわ。だから適度に剪定する必要があるのよ。」
「未熟なモノが纏っても結果は同じ、取り込まれることになるわ。だから不相応なモノは纏ってはならないのよ。」
えっ。じゃああれも……?
「あら、心当たりあるのかしら?」
「取り込まれて帰ってきたニンフは少ないわ。是非話を聞きたいわね。」
……ここには私たちしかいないから、バラしてもいいかな。
私、実は技師型なんです。素体を改造してるんで腕一対しかないですけど。これは内緒にしてくださいねっ!
「まさか貴女自身の事なの? ……変わった子なのね。」
「戦闘もこなせる技師型はもっと珍しいわ。イーデンみたい。」
イーデンは妹なんです。ん?戦える? 武装の方も完成させてたんだ。
「あらそうだったの? 彼女、貴女の事は一言も語らなかったわね。」
「姉妹揃ってこんなに興味をそそられる存在なんて、本当面白いわ貴女達。」
あはは……長いこと向こうに顔出してないから、たぶん死んだことにでもなってるんでしょうね。まあ、元気にしてるようで安心しました。
それで、この子たちは少し前にベルさんから譲っていただいた借りものなんですけど、初めて装着した時から動きをアシストしてくれてる感覚があったんです。
特に戦闘機動になると『考えるよりも先に身体が動く』というか、『どう動けばいいかわかる』って感じだったんですよね。
「お前、二刀流で駆け抜けた時そんな状態だったのか。」
あの時は気付いてませんでしたけどね。今説明されてようやく合点がいったって感じです。
「考えてみれば確かに、はじめは自動機械の前に出ることすら躊躇っていたお前が、四脚を切り伏せて以降はやたらと好戦的になっていたからな……。」
「二刀流の部分も気になるけど後にするわね。」
「まさしくそれが『鎧殻の闘争本能』。」
「貴女は年季が入ったニンフだから、一方的に取り込まれる事態にはならなかったのでしょうね。」
チュイィィィン……キコキコキコ コロッ
「取れたわ、これよ。」
わ、大きいですね。これが……。
「これは秕ね。ここまで成長した装具は、緊張が緩んだ瞬間に乗っ取りを仕掛けてくる事があるのよ。戦いの中で朦朧としたり、意識を失いかけたことはなかったかしら?」
……ありますね。なれの果ての自爆と手榴弾の爆発、あと誘爆した焼夷手榴弾で焼かれて、死にかけたんです。
その直後から頭の中に「アイツを倒せ」って声が響き始めて、気付いたら殺意でいっぱいになってました。
無我夢中でナズさんの身体にしがみついたんですけど、振り落とされそうになったから私の脚をナズさんの脚に縫い留めたんです。
「豪快ね。戦闘型でもそんなこと中々できないのだけど。」
「いくら
そしてそのまま激情に任せて殴りつけて……あの時ベルさんが止めてくれなかったら、私、本当にナズさんを殺してたと思います……。
あ、そういえば凄いタイミングで割って入ってくれましたね? おかげで助かりました。
「あの時はレキに戦闘の状況を伝えるためにお前達を観測していたのさ。お前が爆発に巻き込まれた辺りでもう決着がついたと判断して降りたんだ。」
「だからあの時のお前の声は私達も聞いている。ただ事でないというのはすぐに分かったよ。」
「……
「間に合わなかったらきっと戻って来れなかった筈よ。」
ひ、ひぇぇ~……でも、多分それだけじゃない気がする。
「なんだかんだで結局無事に済んだんだから良しとしないか? 奴も気にしてないだろうし。」
「それよりもだ。その白錫とやらを取り除いたんだから、今回の様な『乗っ取り』は起きなくなるんだな?」
「ええ。ようは芽生えた自我を摘んだだけだもの。」
「戦闘経験や自我といった情報はコレに宿るものなの。」
「装具の鍛える素材として何故これが有用なのか。それはコレの持つ情報がどこをどう弄ってやればいいか教えてくれるからなのよ。」
「だからやろうと思えばコレで鎧化兵の稼働記録などの情報を閲覧することも出来るわ。技師型なら可能なはずよ、持っておきなさい。」
はー、なるほど~。ところで性能低下があったりとかは……。
「勿論あるわ。少なくとも使い心地は全くの別物になるでしょうね。」
「機械的な性能はそれほど下がらないはずよ。あくまで動きの話。」
じゃあ私がナズさんの攻撃をひょいひょい避けてたのって、これに戦闘記録があったからってことなのかぁ。
さっきまでのようにはいかなくなる……気を付けなくちゃ。
「闘争本能、異形化……。質問していいか?」
「ええ、構わないわ。」
「何が知りたいの?」
「その現象はどの鎧殻でも起こりうるのか? ギプロベルデも長く稼働していた鎧殻はたくさんあったが、意識の乗っ取りなんて話は聞いたことがない。」
「そうね……乗っ取り自体頻繁に起こる事ではないのだけど、少なくとも特定の装具のみに起こる現象という訳ではないのは間違いないわ。」
「これはあくまでニンフと装具の『ズレ』から起こるものなのよ。「もどかしい」と感じている装具にニンフが付け入る隙を見せた時、それは起こるの。」
「思うに、ギプロベルデはニンフと装具で意識のズレが殆ど無かったのではないかしら? その場合は乗っ取るまでもないということになるわね。」
「あるいは、ギプロベルデの思想と思っていたものが実は装具の思想だった……なんて可能性もあるのかもしれないわね。」
「我々ではなく、鎧殻の思想?」
「ええ。風のウワサで聞いたのだけれど、泡電銃や多脚型外肢も作っていたのに「ギプロベルデ的ではない」として転換しなかったそうじゃない?」
「でも実はそれらが対ガーディナにおいて有効だっただろうと分析されているのよ。特に機動外肢なんて、「こっちに乗り換えていればまだ樹齢を重ねていたかもしれない」とまで言われていたわ。」
「しかし、皆頑なに在り方を変えなかった。それが鎧殻と我々の……。」
「でも滅んでしまったとはいえ、最後には満足できるモノを造り上げたと聞いているわ。技師型の感想になるけれど、きっと彼女たちにとってはそれでよかったのよ。」
「最期のその時まで自分を曲げず、大火力と重装甲と追及したギプロベルデという窟があった。その記録は装具と武具が在る限り残り続けるわ。」
「……。そんな自己満足……私は……。」
ベルさん……?
「っ、ああ、なんでもない……それともう一つ、『異形化』とはなんだ?」
「そうね……異形とは言うけれど、これはあてもなくさまよう自動機械や下層の虫とは全くの別物。」
「ニンフと装具に宿る戦闘本能が合一し、その渇きに肉体を支配されている……暴走機械とでも呼ぶべきモノよ。」
それって、さっきの私がなりかけた……?
「そうよ。一度こうなってしまえば互いの自我は本能に塗り潰され、身体と装具は熔け合い不可分となり、その身が朽ち果てるまで戦い続ける、生ける屍となる。……これはとても悍ましいことよ。」
「ナガラの戦士は皆、戦い抜いて戦場で果てることを誉としていた。それは裏を返せば、長く生きて異形化してしまう事への忌避感から来る強迫観念だったのかもしれないわね。」
「……待て、それじゃあまさか。」
長生きしているレキさんは、異形化し始めているという事ですか!?
「しっかり診た訳ではないから断言はできないけれど、恐らくそうでしょうね。」
「彼女、個体の識別に時間がかかるし、発音も怪しいでしょう? 昔はああではなかったのよ。」
「浸食虫の影響ももちろんあるでしょう。これだけの期間下層にいて何もないはずはないもの。」
「でもあの症状は過去の異形化の例に一致するのよ。末期ではないけれどもう手遅れ、正常に戻ることはないわ。」
「もう長くは無いという事なのか?」
「それはわからないわ、本人次第だもの。剣の話をしてあげればいくらかは持つかもしれないけども。」
「でも将来、友すら認識できない異形となり果てたのなら……その時は介錯をお願いするわね。」
そんな……。
「それが彼女の為よ。覚えておいて頂戴。」
「暗い話はここまで。さあ、出来上がったわよ。」
あ、ありがとうございます。
「流石にガタが来ていたから時間がかかってしまったけれども、これで本来の性能には戻ったはずよ。」
「早速試してみなさい。気になるところは調整してあげるわ。それが終わったら、白錫の潜り方を教えてあげる。」
分かりました、ちょっと飛んできますね!
・主人公
実はかなり危ないところだった
鎧殻の直感アシストが無くなるので鬼回避はしなくなる……はず
暴走は鎧殻の影響のみで起こったわけではない
・ベル
ギプロベルデは鎧殻と運命を共にした
であれば、彼女は何故生かされたのか
・ナズ
身内認定されればかなり付き合いやすい部類のニンフ
シーディに敗れた悔しさを壁にぶつけていた模様
※壁破壊コストはL5で禁域手紙部屋の壁に撃った時の消費量を参考にしています
・レキ
生物でいう寿命が存在しないニンフにとって、自我を喪失することが実質的な寿命となる
そういった意味では、天寿を迎える時は近いだろう
・ヤシカ&ムシカ
長期間各地を転々とし、様々な開発計画に協力してきた為、鎧殻や武装への知見はホド内随一
かつてナガラは二刀流よりも先に、自らを刀身とする境地に至った