偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第10話 屍を食らう鬼

 アムロとジョブの乗るGアーマー、そしてハヤトのコアブースターは、ホワイトベースに先行してコジマ大隊第02MS小隊が居る地点へと向かっていた。ホワイトベースも最大戦速でそれを追っている。

 

 

「ハヤト、ジョブ少尉、敵部隊に関する情報は送られて来ましたか?」

『いや、相手がグフ複数機を中核として、それよりもやや少ないザクⅡ、たぶんJ型を擁した中隊規模の部隊って以外はわからない』

『ザザッムロ、ブライトさんによればザザザ、ドダイYSも数機存在するらしいが、全機には行き渡って無いザザっぽいぜ』

 

 

 ガンダムと直結しているジョブ少尉の声にはノイズは入らないが、離れて飛んでいるコアブースターのハヤトからの声にはミノフスキー粒子の影響が出ている。アムロは眉をしかめた。

 

 

「この距離でミノフスキー粒子の影響が大きいとなると……。戦場は予想地点よりも、こちらに近づいている様だ」

『そうか、じゃあ監視を強化……』

「!! 見えた、ジョブさん少尉ビームキャノンの照準、FCSをガンダムに繋いで!」

『わ、わかった! 繋いだぞ! でも『ジョブさん少尉』って、混ぜないでくれよ』

 

 

 そしてアムロは、トリガーを引く。アムロの『視界』の中で、第02小隊の陸戦型GMにとどめを刺そうとしていたグフが、二条のビームに貫かれて爆散した。アムロは叫ぶ。

 

 

「ジョブ少尉! 分離を!」

『了解だ!』

 

 

 Gパーツが前後に分割され、ガンダムが姿を現す。アムロはガンダムを降下させると同時に、目に着いたJ型のザクⅡに右腕のシールドを投げつけた。ザクⅡは胴体をひしゃげさせ、爆光に飲まれる。

 

 

「ええい! 捨てるためにシールド1枚持つってのは! 後で上申しないと!」

 

 

 そしてアムロは『()』た。ザクⅡJ型の右肩シールド表面、かつて部隊章があったであろう箇所を乱雑に塗り潰され、その上に得意げに描かれた屍食鬼(グール)の紋章。次の瞬間、そのザクⅡはハヤトのコアブースターから発射されたメガ粒子砲に貫かれて爆散する。

 そしてアムロのガンダムに向けて、複数のグフが一斉にヒートロッドを伸ばした。だがそのヒートロッドは、空中でぶつかり合い、ガンダムに傷一つ負わせられない。グフ同士のモノアイが、互いを苛立たし気に睨みつける。あろうことか、どうにか我慢した様だがそのグフ同士は、互いに一瞬だけフィンガーバルカンを向けさえしたのだ。

 アムロは異様な物を感じ取る。

 

 

「な、なんなんだ、こいつら」

『ザッきゅ、救援感謝する! こちらコジマ大隊第02MS小隊小隊長、リアム・ハーディー中尉ザザザ!』

「こ、こちらホワイトベース隊のガンダムです! 本隊もすぐ近くまで来ています! 下がって! 下がって!!」

『りょ、了かザザザッ!! 脱出した部下がその辺にいるはザザザなんだ! それを拾ったらすぐに離脱すザザザ』

 

 

 フィンガーバルカンを乱射しつつ、グフが3機ほど陸戦型GMに迫る。アムロはそれをシールドを構えて庇いつつ、ビームライフルの照準を合わせた。先頭のグフが回避機動を取る。……しかしその背後のグフが先頭の機体の動力パイプを握った。つんのめる先頭のグフ。アムロは反射的に引き金を引く。

 ピンク色の光条に貫かれて爆炎を吹き上げたグフ。しかし背後のグフがシールドでその爆炎を防ぎ、ヒート剣を振り上げてガンダムに迫った。流石に意表を突かれたアムロ……。いや、そう行動するのではないか、との『意思』は『読めて』いたのだ。だがそこまでやるか、との意識がアムロにはあり、一瞬動きが遅れた。

 

 

「ちぃっ!」

(下がれ、アムロ!)

(下がって、アムロ君!)

「!!」

 

 

 アムロは反射的にガンダムを後退させた。次の瞬間、『開いた』射線に、ピンク色の光芒が2つ走り、グフ2機を貫いた。アムロは快哉を叫ぶ。

 

 

「シイコ中尉! エグザベさん!」

 

 

 見遣ると、ビームライフルとシールドを構えたプロトガンダム、そしてビームスプレーガンではなくガンダム用のビームライフルとシールドを装備したGM指揮官機が、スラスター炎を吐き出しつつ降下して来ていた。その後方では、ホワイトベースがガンキャノン2機とGMキャノンを連続して射出している。

 コアブースターとGファイターが並んで地上掃射を行う。さすがのビーム兵器の威力に、ザクⅡJ型が1機、もう1機、爆発して消えた。アムロ、エグザベ、そしてシイコ中尉は機体を前進させる。その背後から、ガンキャノン2機とGMキャノンがキャノン砲で支援射撃を行う。残る敵は、グフ4機とドダイYSが2機。

 

 

『……こいつら、グフをまったく使いこなしてないザザッ』

「ええ。それにチームワークどころか、足を引っ張り合ってる」

『みんな! 潰してやるわよ!! ザッ』

「『『『『『了解!!』』』』』」

 

 

 屍食鬼(グール)の紋章が付いたMS(モビルスーツ)は、それからさほど間を開けずして全滅した。直後、ジオンの垂直離着陸輸送機であるファットアンクルが丘向こうの森の中から急発進して逃げ出そうとしたが、ホワイトベースの砲撃とGファイター、コアブースターによって撃破されて墜落、炎に包まれた。

 

 

 

*

 

 

 

 第02MS小隊は隊長機を残して壊滅状態、隊員は隊長以外のMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)2名中1名が生存、ホバートラックでの索敵要員1名が必死に森に逃げ込んで生き残っていた。だが残念ながら1名は愛機の陸戦型GMと共に爆散、消滅しており、小隊としてはもはや形を成していない。

 そんな訳なので、ホワイトベースは彼らと機体を回収、残骸も可能な限りホワイトベースの後部デッキに詰め込んで、コジマ大隊の出迎え部隊と接触するために東へと飛んでいた。本来であればコジマ大隊が駐屯している基地まで運んでやりたかったのは山々なのだが、そうもいかない。ホワイトベースはこのまま西進して、正式名称や目標はまだ公表されていない連邦軍の一大作戦に参加する予定なのだ。

 

 艦橋(ブリッジ)でブライト艦長が問いかける。

 

 

「フラウ、コジマ大隊の出迎えとは連絡はついたか」

「はい、こちらから見て、ええと11時方向、ですか? そちらにあと30分で」

「そうか。厳しい事を言うようだが、できるだけ早く慣れろ。通信士は、ある意味で部隊の要だ。それがしっかりしていないと、各戦闘単位間の連携が取れず、壊滅する事も多々ある」

「は、はい!」

「……すまんが、『はい』よりは『了解』を使う様にしてくれ。まあ慣例上は『はい』でも構わん場合もあるが、慣れんと見極めをつけるのが難しい。『了解』と言っておけば大概は大丈夫だ」

「は、はい!」

「……」

 

 

 ブライトの胃が、またしくしくと痛んだ。

 

 

 

*

 

 

 

 ホワイトベースの第2艦橋(サブブリッジ)は、機動兵器操縦士(パイロット)達や整備兵の集会所と化していた。ニャアンが厚意で食堂から運んで来てくれた戦闘糧食を(かじ)りながら、エグザベが皆に尋ねる。

 

 

「ニャアン、ありがとう。皆、前回の敵、正体分かったのかい? 何か噂とかは?」

「僕は残念ながら。ガンダムの整備で忙しかったので」

「そうか、僕もプロトガンダムの整備で調べる暇、無かったからなあ」

「俺もガンキャノンで」

「わたしもガンキャノンで」

「俺もGMキャノンで。というかGMキャノン、量産機なのに整備思った以上にヤバいんだが」

「左右非対称ですからね。Gファイターも、構造が空洞多い割に、残りの部分が密すぎて整備性悪いです」

「コアブースターは、思ったより楽ですね。コアファイターとの接続部以外は、簡単ですよ」

 

 

 そこへシイコ中尉が現れる。ニャアンは彼女にも戦闘糧食を持って行った。

 

 

「シイコ中尉、どうぞ」

「ありがとうニャアン。ふう、皆ごめんなさいね。GM指揮官機の整備、頼んじゃって。特にアムロ君」

「い、いえシイコ中尉。大丈夫です。GMはMS(モビルスーツ)の中で一番整備に手間かかりませんから。エグザベさんにも手伝ってもらいましたし」

「ガンダムやプロトガンダムの整備に慣れてれば、GMなら大した事は」

「なら俺のGMキャノンも」

「「すいません、GMキャノンはちょっと」」

 

 

 まあGMキャノンはGMと60%共通パーツだとは言え、GMのジェネレーター出力は1,250kw、GMキャノンは976kwと完全に核融合炉からして別物である。またスラスター推力はGMが55,500kg、GMキャノンが63,500kgとこれまた違う。まあこれは全備重量がGMキャノンの方がキャノン部分でどうしても重くなるため、推力をやむなく増強したのだろうが。

 だがスラスターの増強、キャノン部分の追加、左右非対称によるバランス調整、下脚部の追加装甲による重量バランス調整など等、GMキャノンは素のGMやGM指揮官機に比べ、整備が難しいのは仕方がない。まあGM指揮官機もビームサーベル2本差しなど余計に手間を取られるのは仕方ないのだが、それでもホワイトベースのMS(モビルスーツ)中では一番整備が楽なのは間違いない事だ。

 そしてシイコ中尉が、困ったような顔で言う。

 

 

「前回の敵だけど、もしかしたらアレじゃ済まない可能性があるわ」

「え」

「それはどういう」

「あれで全部なら良かったんだけど、もう少し規模が大きそうなのよね。まだけっこうな数残ってるみたい。屍食鬼(グール)隊って言ってね。キシリア・ザビの私兵らしいのよ」

 

 

 シイコ中尉は、まるで『あらあら奥様大変なのよ~』とでも言う様な雰囲気で話を続ける。だがその瞳は光っていた。ニャアンが尋ねる。

 

 

「あの、それわたしが聞いても?」

「いえ、情報の取り扱いに失敗して、もう乗組員たちには広まってるから。ダメダメよねえブライト君」

「あの」

「だから、口に出さない様に気を付けてくれて、あと誰かが噂話をしてたら止めてくれればいいわ」

「はぁ……」

 

 

 そしてシイコ中尉は、溜息を吐いて話し始める。

 

 

「ふぅ。その屍食鬼(グール)隊なんだけど。まともな指揮系統を持っていないらしいのよ。キシリア・ザビの私兵って事で他のジオン軍に対してもやりたい放題。部隊の装備品とか補給物資は、お仲間ジオン軍部隊からの略奪で賄ってる」

「それって」

「軍隊じゃないでしょ」

「わたしもそう思う。でもそれ故に神出鬼没でね。補給経路とか分からないし、命令もどこからどう受けてるのかも不明。というか半分以上好き勝手やってるみたい。そういう奴らが、わたしたちホワイトベース追討の命令を受けてるってわけ」

「「「「「「うわぁ」」」」」」

 

 

 アムロもまた、大きく溜息を吐く。

 

 

「はぁ……。奴ら、他のジオン軍部隊に対してだけじゃなく、自分たちのお仲間に対してすらも、まともじゃないみたいですよ」

「ああ、アムロ君からの報告書にあった、アレね?」

「ええ。味方を犠牲に自分だけが手柄を立てることを、躊躇(ちゅうちょ)してません。あいつらと相対したら、そういうところに『だけ』は気を付けないと」

 

 

 その場の全員が、酢を飲んだ様な顔つきになる。ニャアンが皆に、チューブ入りのドリンクを配ってくれたので、全員がそのストローに吸い付いた。爽やかなハチミツ入り紅茶の味が、苦々しい空気を洗い流す。

 エグザベは、すっと無拍子で手を伸ばし、ニャアンの頭を撫でた。一瞬ニャアンはビクリとするが、すぐに力を抜く。さらさらとした髪の感触を、エグザベはしばらく堪能していた。




というわけで、屍食鬼(グール)隊でした。ホワイトベース隊追討の命が下されてますので、本作では『まっくん』以下デルタチームは少し楽ができる? かな?

と言いますか、『まっくん』で分かる様に、戦記メンバーは小説版です。屍食鬼(グール)隊出て来るから当然ですが。『撃つなラリー』はありません。ノエル・アンダーソンも黒いです。まあでも、戦記メンバーが今後出て来るかはわかりませんけどね。不明にしておきます。
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