偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第13話 ドム、ドム、ドム

 最新鋭MS(モビルスーツ)、MS-09ドムの快速性は、予想以上だった。ガイア大尉は上機嫌で、エルランから示された木馬(ホワイトベース)とミデア補給部隊の合流ポイントを目指し、ドムをホバーで疾走させる。

 

「マッシュぅ! オルテガぁ! そろそろ予定地点だ! 気合い入れて行くぞ!」

『ザッザザおう!! 情報では屍食鬼(グール)隊の奴らが、尻尾撒いて逃げ帰ったって言うがザザッ』

『ザッだな! だがこんな短時間でザザザ再度のザザ襲撃されるとは思うまい!』

「ミノフスキー粒子も濃い! これなら気付くまいて!」

 

 

 しかし黒い三連星は、このミノフスキー粒子の濃さ故にホワイトベース指揮官であるブライト艦長が、襲撃を確信して防衛体制を敷いていた事に、まったく気づいていなかった。開戦初頭の一週間戦争以来無敵であったミノフスキー粒子戦術……。それに頼り切っていた、ジオン軍全体に蔓延していた油断。その虚をつかれた形である。

 

 

「見えて来たぞ! ……何っ!?」

『うわ! ザザッ』

『面制圧射撃だザザとぉ!?』

 

 

 ガンキャノン2機とGMキャノンのキャノン砲による面制圧射撃が、ドム3機を襲う。幸いな事に、敵はドムの高速性に照準を見誤ったのか、命中弾は無い。無いが、至近弾は幾つかある。

 

 

「マッシュ! オルテガ! 損害報告!」

『ザザッ損害なし!』

『ザッこっちは深刻だ! ジャイアントバズの照準器をやられた! ドムのモノアイとの機能連携で、至近距離ならなんとかザッザザザ』

 

 

 ホワイトベース艦長ブライト中尉は、既にMS(モビルスーツ)隊を展開していたのである。制圧射撃をして来るガンキャノンと、遠距離支援射撃をするホワイトベースを潰そうにも、それらとの間にはガンダム、プロトガンダム、GM指揮官機が防衛線を張っており、普通の手段では突破不可能だ。

 更にその上空から、Gファイターとコアブースターの地上掃射が襲う。流石に直撃を食らうほどドムは鈍重ではないが、2機の射撃は徐々にその精度を上げて行く。その成長速度は、目を見張るものだ。

 

 

「ちぃっ! くそ、あの白いMS(モビルスーツ)だ! エルランからの情報で、ガンダムとか言うやつだ! あれをジェットストリームアタックで()とすぞ!」

『『おう!!』』

「至近距離に入れば、空の敵もあのキャノンタイプの面制圧射撃も、恐くは無い!」

 

 

 黒い三連星は、一直線に並んで機体を疾走させた。

 

 

 

*

 

 

 

 ニャアンは、黒い三連星の悪意に気付く。

 

 

(……『嫌な臭い』が濃くなって! (カタマリ)になって突っ込んで来る!)

「ニャアンちゃん、どうしたの!?」

「……!! フラウさん!!」

 

 

 だがニャアンは、まだキレてはいない。まだ冷静だ。ここで慌てて通信端末に飛びついては、色々と軍の制度上マズい事を、彼女は理解している。彼女はキレさえしなければ、(さと)い子供だ。ブライト艦長たちが、彼女やエグザベを護るべく色々と頑張ってくれている事も、『なんとなく』ではあるが、理解している。

 

 だから彼女は、こういう行動を()る。

 

 

(エグザベ兄さん! アムロさん! その『敵』は、こう動いて来るよ!)

((ニャアン!?))

(一塊になって、まっすぐ突っ込んでくる! 一列になって! 次々に撃って来る!)

(そ、そうか!)

(……ありがとうニャアン。アムロ、『こう』するんだ!)

(わかった、エグザベさん!)

 

 

 そしてガンダムとプロトガンダムは、黒い三連星のドムに対し、相対した。

 

 

 

*

 

 

 

 黒い機体、まだ機種名を知る由も無いそのMS(モビルスーツ)が一列になってこちらに飛び込んで来る。こちらからすると、まるで1機にも見えるが、これが3機連続の連携攻撃である事をニャアンからの思念で、エグザベは既に見抜いている。

 

 

(アムロ!)

(はい、エグザベさん!)

 

 

 そしてエグザベはガンダムの後ろにプロトガンダムを移動させた。ガンダムが前方に疾走する。プロトガンダムも追随して疾走。先頭の黒い重MS(モビルスーツ)は虚を突かれたかの様に、慌てて大型バズーカを撃とうとした。相手の思惑では、おそらくこちらが待ち構えている物と思ったのであろう。

 

 

『甘いんだ! ザザッこっちは戦艦じゃない! 機動兵器だ!』

 

 

 アムロの声が響き、そして敵の思念が拾える。いや、『聞こえた』のではない。こちらが『読んだ』のだ。

 

 

(俺を踏み台にしブベッ!?)

(ぐわあああぁぁぁ!?)

 

 

 先頭の敵機体がバズーカを撃つ直前に、ガンダムが小ジャンプしてその頭を踏みつける。そのまま2機目が撃ったバズーカを、体勢を低くして避ける。直後、エグザベのプロトガンダムも先頭の敵機を踏みつけて、彼は機体を高く跳躍させた。エグザベの視界に、2機目の黒い重MS(モビルスーツ)の胴中央にビームサーベルで斬り込むガンダムが見えた。

 

 

(ま、マッシュうううぅぅぅ!!)

(仲間のことを心配している余裕があるのかな! ……聞こえはしないだろうが!!)

 

 

 それはそうだ。この3機目の敵の叫びは、エグザベが『読んだ』物であって敵が発信した思考ではない。エグザベの『声』も、敵には『拾える』わけが無いのだ。そういう『能力』が無いのだから。敵の機体は、ガンダムに斬り裂かれつつある2機目を飛び越えて、急上昇する。しかしながら、上昇力についてはエグザベのプロトガンダムの方が圧倒的に上だった。先頭の敵機を踏み台にしている事もあるが故。

 そしてプロトガンダムは60mmバルカンを斉射。黒い機体のモノアイレールが砕け散り、敵機は視界を喪失する。そしてビームライフルが3機目の頭頂部から股間にかけてを撃ち抜き、爆散させた。

 

 

(ぎゃあああぁぁぁ!?)

(お、オルテガあああぁぁぁ!!)

(あんたの相手は、わたしよ! 地獄へ、おちろおおおぉぉぉ!!)

 

 

 ガンダムとプロトガンダムに踏まれて転倒し、顔面から地面に転倒した先頭の機体。シイコ中尉のGM指揮官機が、多数のビームを放つ。今回彼女は、威力や射程距離よりも連射性と弾数を優先し、ビームライフルではなくビームスプレーガンを装備していた。

 先頭の黒い重MS(モビルスーツ)は、無様に地面に突っ伏したまま、五体を打ち砕かれて行く。そして次の瞬間、爆炎に包まれた。

 

 

(があああぁぁぁ!!)

 

 

 断末魔の悲鳴が『読み取れ』る。そこへ再度、ニャアンの思念が『聞こえ』た。

 

 

(まだ来るよ! そいつらと戦って、皆が疲れたのを狙ってたみたい! 『ぎょふのり』って言うの!? そんな言葉が『読め』た!)

(ありがとうニャアン! この『気配』か! なんだ……? これは……? こいつらの他にも誰かが、見張ってる?)

(僕にも感じ取れました……。『装備は一流、腕前は二流、人間は三流』? 見張ってる奴らの思考?)

(とりあえず、続いて来るやつらを叩き潰すわよ! 見張ってる奴らは、終わるまで気にしない!)

 

 

 シイコ中尉の怒号に、エグザベもアムロも意識を敵に引き戻す。そして直ぐに、またあの黒い重MS(モビルスーツ)が、今度は6機も現れた。

 

 

 

*

 

 

 

 ガンキャノン2番機の操縦士(パイロット)、カイ・シデンは少々焦っていた。理由は機体両肩のキャノン砲が、残弾が少なくなって来ていたからである。

 

 

「ちっくしょう、最初の3機への面制圧射撃で、使い過ぎた」

『そうね。腕前は最初の3機より今度のザザッ機の方が格段に低いから、こっちなら制圧射撃できれば当て放題だったろうけどザザザ』

『セイラ、カイ、言ってる場合じゃザザザ。それなら狙撃用ザザザッライフルでの狙い撃ちで、1機ずつ潰して行くしかないだろう。あと悪いが俺は、スプレーガンじゃ届かなザザッから、一度艦に補給に戻ザザザ』

「わかった、はやく帰って来てくれよなリュウ」

 

 

 見遣るとコアブースターとGファイターも、ホワイトベースに一時帰艦する模様だ。ビームを撃ち尽くした彼らは、先ほどまでは機載のミサイル類で攻撃を続行していたのだが、それも切れた模様だ。

 

 

「……ま、一斉攻撃より波状攻撃を選んでくれたおかげで、少しは助かったってとこかな」

 

 

 カイはこの重MS(モビルスーツ)がMS-09ドムという機種名である事は知らない。そしてドム3機の後に来たドム6機が別部隊であり、漁夫の利を狙って手柄を立てようとして来た事も知らない。

 

 

「……3、2、1、そこだ!」

 

 

 カイのガンキャノン2番機は、いつの間にやら会得した芸術的な狙撃技術で、黒い重MS(モビルスーツ)を撃墜した。

 

 

 

*

 

 

 

「ビームのエネルギーはいい! ミサイルだけでいいから、急いでくれ!」

 

 

 ジョブ少尉は、Gファイターの操縦席(コクピット)から叫ぶ。急ぎ整備兵が集まって来るが、そのうち2名が来たばかりの新兵なので手際が悪い。ちなみにこれは、ジョブ少尉が居る左舷MS(モビルスーツ)デッキの反対側、右舷MS(モビルスーツ)デッキでも同じ事であり、あちらではリュウ少尉とハヤトが補給の手際が悪いことにブーブー言っている。あちらには今回マチルダ隊が連れて来た5名の整備兵のうち3名が常駐していた。まあ閑話休題(それはおいといて)

 

 

「くそ、あの黒い新型が、今度は6機もいるんだぞ! はやく戦線に戻らないと」

 

 

 ジョブ少尉の焦りを他所に、補給は遅々として進まない。そして新人の整備兵が、オイル缶を転ばして中身をブチまけた。

 

 

「馬鹿野郎! 何をやってる!」

「す、すいません!!」

「液体用掃除機持ってこい! 火災が起きたらどうする!」

 

 

 ジョブ少尉は頭を抱えた。

 

 

 

*

 

 

 

 ガンダムが、()ぶ。黒い重MS(モビルスーツ)がまた1機、爆散する。

 

 

「次は! どいつだ!」

 

 

 アムロがガンダムの首を巡らせて敵を探すが、その瞬間エグザベ機とシイコ中尉機に1機ずつドムがやられて爆炎が吹き上がった。

 

 

()った!! ザザザッ次はどこ!?』

『ザザザ終わりですよ。あとは見張ってた奴の気配だけですが、そいつらザザザザッもう逃げてます。追えば追えなくは無いザザザすけど、もうエネルギーも残弾も少ないですし』

 

 

 エグザベの言葉の通り、逃げると言うか撤退して行く気配が感じられる。戦闘の興奮が収まるにつれ、超感覚じみたモノが、潮が引く様に薄れて行った。『未だ』彼らは四六時中そういう感覚を維持できるほど『覚醒』もしていないし、四六時中そういう感覚に耐えられるほど強靭な精神力を有してもいない。

 アムロは、全身から力が抜けるのを感じた。そこへ通信士のフラウから指示が入る。

 

 

『アムロ! 皆さんも! ブライト艦長からのザザッ命令で、敵影は無いから帰艦しろですって!』

「フラウ、もう少し言い方を。軍の公式通信なんだから」

 

 

 いや、アムロ側も通信の砕けっぷりが酷いが。

 

 そうして一同は、周辺を一応警戒しつつ、ホワイトベースに戻る。更には敵機体が新型であったと言う事もあり、これについては形が残っている残骸は、マチルダ隊が回収してミデアで手近な連邦軍基地へと運ぶ手筈と相成った。

 どうにか敵の(結果的な)波状攻撃を撃破する事ができたホワイトベース。だがオデッサ・デイは、まだ始まってもいない。ジオン軍オデッサ基地を叩く作戦は、まだこれからなのだ。




というわけで、黒い三連星(と、オマケでマッチモニード)は叩き潰しました。ガイアは二連踏み台で踏み潰されて、そこにスプレーガンの連射で沈みます。マチルダさんは、戦闘参加すらしませんでした。
そして賑やかしに終わったマッチモニード。ただ、それを観察というか監視していた者達が居ます。それにまだ屍食鬼(グール)隊も残っています。あとはマッチモニード、MS(モビルスーツ)こそ全機失いましたが、もしかしたらニアーライト少佐とかは機体に乗ってなくて生きてるかも知れませんねー。
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