偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第14話 オデッサ・デイ

 いよいよオデッサ・デイ……オデッサ作戦が開始された。ホワイトベースも数時間前の新型重MS(モビルスーツ)合計9機の襲撃による消耗を、なんとか回復させつつ作戦に参加している。

 

 

「起きたか、エグザベ、アムロ」

「リュウさん……。すいません、寝過ぎましたか?」

「すいませんリュウさん」

「いや、ちょうど予定時刻だ、安心しろ」

 

 

 第2艦橋(サブブリッジ)に寝袋を持ち込み、パイロットスーツのまま仮眠を取っていたMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)たちは、次々に目を覚ます。先に補給のため帰艦していたリュウ少尉、ジョブ少尉、ハヤトは、再出撃前に戦闘が終了したためもあり、オデッサ作戦発動まで時間が無かった事でデブリーフィング無しで先に仮眠を取っていた。

 そしてハヤトだけは、現在コアブースターで偵察行に出ている。とりあえず周辺には、さほど大きな敵部隊は展開していない様子だ。そのはずであった。

 

 

『こちら艦長のブライトだ』

「ブライトさん、何かありましたか?」

『しばらく前にハヤトから連絡があった。資料に無い敵基地が近場にあった。そこから『連邦軍の』連絡機であるドラゴンフライが飛び立ち、連邦軍のビッグ・トレーに着艦したそうだ』

「スパイ、ですか?」

『ああアムロ。その疑いが濃い。ハヤトはビッグ・トレーに着艦後、まだ連絡は無い』

「まさか……」

 

 

 ブライトの声音は、硬い。

 

 

『わからん。わからんが、初期と優先度が変わったので、俺たちはまずその資料に無かった基地を叩く。あの基地があると、他の目標を叩いても面倒ごとになる。皆にも伝えてくれ』

「大丈夫です。スピーカーになってます」

『そうか。では各機の操縦席(コクピット)で待機だ。……ハヤトはきっと無事だ、そう信じよう』

 

 

 ブライト艦長からの通信は切れた。アムロは肩を落とす。

 

 

「……連邦軍人も、色々いるんです、ね」

「どうしたんだアムロ」

「エグザベさん。いえ、連邦軍の、皆のために命を捨てて情報と指令を届けに来た連絡員の人を思い出して。ああいう人もいるのに、敵に、ジオンに情報を流して、たくさんの味方を殺す人も……」

「……人、それぞれ、さ。サイド2を護ろうとして全滅した連邦軍の守備隊も居れば、サイド5をジオンとの戦いの盾にした連邦軍艦隊だって居る。……そう、人、それぞれ、なんだよ」

「……」

 

 

 そして彼らは、自分の機体に走った。

 

 

 

*

 

 

 

 カイはドムの1個小隊に向けて、全ての火器を撃ち放っていた。このドムは、そこそこ腕が立つ様で、高速戦闘時に隙が無い。彼は僚機に向かい、怒鳴る。

 

 

「リュウ! セイラさん! あんたらじゃ、こいつらに命中させるのは無理だ! ザクやグフを狙ってくれ!」

『わ、わかっザザザ』

『今アムロ、エグザベ、シイコ中尉がこっちへザザってるわ! 少しだけ持ちこたえて!』

「わかってますって! とは言ったものの、キツいな。はやく来てちょうだいよ、アムロちゃん、エグザベ大明神、シイコ大将」

『わたしは中尉なんだけどね』

「助かった! 来てくれたか!」

 

 

 カイのガンキャノン2番機がブーストでバックダッシュすると同時に、そこへガンダム、プロトガンダム、GM指揮官機が入り込む。ガンダムとプロトガンダムがビームライフルを撃ち、再チャージの時間中はGM指揮官機がビームスプレーガンで弾幕を張る。カイはもう若干ばかり後退すると、後方からドムの1機を狙撃し、沈めて見せた。

 

 

 

*

 

 

 

 エグザベはビームライフルを温存して、ビームサーベルでザクⅡとグフを連続して両断する。見遣るとアムロがグフのヒートロッドに巻き付かれかけたが、それを頭部の60mmバルカンで切断している。あんな集弾率の悪い武装で、よくやる物だ。

 更に向こう側では、リュウとセイラがキャノン砲で敵基地の司令塔を粉砕している。カイはその2人を護衛して、ビームライフルと両肩のキャノンでそれそれ2機のザクⅡを撃破していた。

 

 そこへホワイトベースのブライト艦長から通信が来る。

 

 

『アムロ、ジョブ・ジョン、緊急だ!』

『いったい何がザザザ』

『ジオンが、マ・クベが水爆を使う! ザザッ』

『何ですって』

『Gファイターにガンダムを載せてザザッ、発射地点近くの上空でこの図面の赤い線をビームサーベルで斬るんだ』

『こ、こんな雑なザザッ図面』

 

 

 悪態はついても、アムロはジョブ少尉のGファイターにガンダムを載せて、急ぎ現場へ飛ぶ。ブライト艦長は、他の面々にも命令を下した。

 

 

『お前たちは、基地攻略はいい。アムロを援護するんだ』

「了解です!」

『水爆じゃあザザザしゃあねえわな』

『急ぎましょう! ザッザザザ』

 

 

 そして全速力で、エグザベたちはアムロのガンダムを追った。見遣ると、ガンダムの載ったGファイターが多数のドップに絡まれている。

 

 

『うわーっ! くそ、水爆ミサイルをなんとかしないと、お前たちもザザザ吹っ飛ぶんだぞ!?』

『アムロ君! みんな、アムロ君を支援して!』

「了解です!」

『待ってろ、アムロちゃザザザッ』

 

 

 多数のビームの火箭が撃ち上がる。ドップは一気に数を半分に減らした。だが直後、ガンダムがGファイターから落下させられる。

 

 

『うわあああぁぁぁ!! し、しまった!』

「くそ! そうだ!」

 

 

 エグザベは、プロトガンダムをガンダムの落下地点に走らせた。水爆ミサイルの発射サイロが、扉を開く。

 

 

『ま、ザザザ間に合わない!!』

「アムロ! プロトガンダムに乗れ!」

『そ、そうか!!』

 

 

 水爆ミサイルが、ゆっくりと上昇を始める。プロトガンダムの肩に、ガンダムが飛び乗った。エグザベは推力を全開にして、機体を上昇させる。跳躍の頂点で、彼は叫んだ。

 

 

「うおおおぉぉぉ!! アムロ、()べ! ()べ、ガンダム!!」

『うわあああぁぁぁ!!』

 

 

 落下して行くプロトガンダムを後目に、ガンダムはそこから推力を全開にして、更に高く飛翔する。いわばガンダムの2段ロケット作戦だ。だがそのガンダムに、ドップ3機が攻撃を仕掛ける。

 

 

『邪魔をするなあああぁぁぁ!! え?』

『アムロ!!』

 

 

 ドップが3機とも、爆散する。1機はGファイターのジョブ少尉が、そしてもう2機を撃墜したのは……。

 

 

「ハヤト!」

『ハヤトか!?』

『間に合った! ザザザ裏切者のエルラン将軍を、逃げ出した飛行機ごとザザッ撃墜してたら遅くなった! ……行け、アムロ!』

『うわあああぁぁぁ!!』

 

 

 アムロのガンダムが、ビームサーベルを振り上げて、ちょうど上昇して来た水爆ミサイルを叩き切る。水爆弾頭部と、水爆の点火システムが切り離され、点火システムがあるミサイル胴体部分が落下して爆散した。

 

 

『や、やった!』

「やったな、アムロ!」

『素敵よ、アムロ君』

 

 

 その時、オデッサ基地本部方面から、一直線に上空へ向かって噴射炎と噴射煙が伸びて行くのが見えた。それはその場の誰も知る由も無かったが、ジオン軍オデッサ基地司令官マ・クベ大佐が機動巡洋艦ザンジバル級で地球を脱出していった証であったのだ。

 マ・クベが水爆を使い、しかも基地を放棄して宇宙へ脱出した事が知れ渡ると、オデッサ基地本部及び周辺基地の抵抗は徐々に下火になり、ある者は投降し、ある者は脱出し撤退を選んだ。こうしてオデッサ・デイ、地球連邦軍の一大作戦であるオデッサ作戦は成功裏に終わった。これ以後、地球での戦いは勢力比が逆転し、連邦軍へと傾いて行く事になるのである。

 

 

 

*

 

 

 

 オデッサ作戦の後、ホワイトベースはイギリスのベルファスト基地へと向かっている。致命的な損傷はまったく無いが、多少の不具合や小さなバトルダメージは仕方がない。そう言った部分の修理や、アムロが上申していたGアーマーからガンダムを切り離した際にシールドを1枚捨てねばならない件の改良など、やらねばならない事は多々あった。

 

 

「アムロぉ。やっぱり俺たちゃ正式な軍人にならにゃならんのだろうな」

「と言いますか、既に正式な軍人ですよ。特務兵、いわゆる三等兵扱いですけどね、カイさん」

「うげぇ」

「本来三等兵って階級は存在しないので、次のベルファスト基地で正式な階級を貰うはずです。昨日、ブライトさんから聞きました」

 

 

 カイは少しばかり不満がある様だ。

 

 

「まあ、分かっちゃいるんだ。V作戦、RX計画について、お前の親父さんが居たときにレクチャー受けたからな。もともとコレ知ったからにゃ、一生涯軍刑務所、ってよ。そうならない様に、特務兵に志願することを勧めてくれたんだってよ。感謝はしてんのよ? 感謝は」

「それは、どうも……」

「ただなあ……。軍人が自分に合うかどうかってのは、また別な話なわけで、よ」

 

 

 そこへエグザベがやって来る。

 

 

「だったら、戦争が終わるまでは大人しくしておいて、昇進してから退役するべきだね」

「お、エグザベ。出世したいってか?」

「って言うか、本当は親父さんのジャンク屋に就職して、その事業を広げるために大学行きたかったんだけどさ。うん」

「あ、悪い」

「でも、こうなった以上。……一番優先されるべきは、ニャアンと僕が生き延びる事。そして次に優先するのは、不自由なく生きられる収入を得る事。勉強も進学も、その手段でしか無い」

「「……」」

 

 

 真摯な瞳で、エグザベは語る。

 

 

「とりあえず、佐官までは出世しておきたいね。可能ならば大尉か少佐あたりになったら軍大学コース行って、准将にまでなれれば……。そうなれば、恩給の額が跳ね上がる」

「世知辛ぇなあ……」

「でもまあ、さっさと軍にオサラバしたいなら、佐官まででも悪くはないと思うよ。恩給も充分だ。そうしてから、別の人生を歩みたいならそちらへ歩み始めればいい。まあ僕はニャアンと僕自身のために、どうにか将官とのコネ作って、軍大学への紹介状書いてもらえる様に頑張るつもりだけどね」

 

 

 アムロもカイも、大きく溜息を吐く。

 

 

「「はぁ……」なあエグザベ。もしかして士官学校行こうかって考えてるか?」

「ああカイ。まあそうだね。と言うか、佐官とか軍大学コース行くなら、あたりまえさ。戦争終わるまではたぶん僕らは前線を離れられない。でも戦争終わったら、どうにか士官学校への紹介状手に入れて、士官になるよ」

 

 

 士官には、最初から士官学校を志してそこを卒業し任官するパターンと、兵として経歴を重ねた者がキャリアを申請して士官学校へ入学、卒業して士官となるパターンがある。最初の例がブライト艦長やシイコ中尉などである。ちなみに後者は昔はB士官などと言われ、いわれのない差別を受けていた時代もあったらしい。

 

 

「何はともあれさ、君らも士官学校は考えておいた方がいいと思う。僕らはある意味で、連邦軍からの注目の的だよ。士官学校行けば、連邦軍に忠実だっていうポーズにもなる。となれば、戦後に難癖付けられて軍刑務所行きとか言う事態になる可能性は、激減するはずだ」

「「ああー……」」

「……何の話を?」

「ハヤト、来たのか」

 

 

 アムロとカイは、これまであまり深く考えてなかった事を突き付けられて、思わず声を上げてしまった。そこへ新たにやってきたハヤトは、何が何だかまったく分かっていない様子だ。それはまあ仕方がない。……まあアムロについては、テム・レイ技術大尉の庇護下に入ればどうにでもなるであろうが。

 

 そうして、ホワイトベースはイギリス方面へと飛翔()ぶ。とにもかくにも、今は生き延びる事が最優先だ。まだ、戦争の先行きは、分からない……。




水爆撃墜のために、二段ジャンプ。原作でアムロが水爆斬りやった高さよりかは、ずいぶん低いです。Gファイターから落ちましたからね。

そしてハヤトがエルラン相手に大立ち回り。本作ではエルラン逃亡して、ハヤトのコアブに撃墜されました。だもんで、ちょっと問題が。エルランを尋問できなかったため、どんな情報がジオンに流れたかとか、ジオン関係のどんな情報をエルランが持ってるか、とか。そう言ったところが、本作世界線では欠けてます。

あと、エグザベの空気読まない、地味に地味な将来設計。どうすれば生きて行けるか、どうすればニャアンに楽をさせてやれるか。ニャアンが結婚するときに、どれだけ持参金持たせてやれるか。そんな感じの事しか考えてません。自分の幸せは、あんまり考えて無いって言うか、『生きてれば、あとは別にいいか』ぐらい? アムロとカイは、圧倒されてます(笑)。
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