偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第16話 レビルの愚策

 ここは連邦軍本部基地、ジャブロー。今、ホワイトベースは大西洋を越えてジャブローのドックに入港していた。

 

 

「で、結局どうすんだって?」

「ブライトさんがゴップ大将と会談したんだけど、ホワイトベースは可能な限り早く……と言っても、補給や整備あるからちょっと時間は掛かるけど、できるだけ早く宇宙に上がるらしい」

「やれやれ。アムロの親父さんの伝手で、少しは休ませてもらえないのかい?」

「頼むよハヤト。親父はV作戦、RX計画の主要人員ではあっても、階級は技術大尉。そこまで権力無いよ。それどころか、入港当時にちょっと会いに来てくれたけど、その足で北極基地に行かなきゃならないんだってさ。詳しい話は軍事機密で話してくれなかったけど、新型機の最終調整だって話だ」

「親父さんも、大変だねぇ」

 

 

 アムロ、カイ、ハヤトは愚痴を語り合っている。だがアムロは、忙しい中ぎりぎりでほんの数分でもテム技術大尉が会いに来てくれたことを、嬉しく思っていた。

 

 

「けど、大西洋渡るときにも何度かズゴック? だとか、あと水中用MA(モビルアーマー)だっけ? ソレに絡まれて、ホワイトベース無事で良かったよ」

「修理が効くレベルで、助かったよ」

「ジャブローの対潜哨戒機(ドン・エスカルゴ)来てくれてほんとに助かったよなぁ」

 

 

 そこへエグザベが現れる。

 

 

「おーい、例のシニア・ハイスクール卒認定試験、君ら自己採点やったのか?」

「あ、俺ぁどーせ今回はお試しだからさ」

「ぼ、僕は一応。まあ、でも、まあ、うん」

「僕は理数系はどうにか自信があるけど、人文系は自信無いんですが」

「自己採点やっといた方いいぞ? まあ、結果発表は宇宙に上がってからだろうし、それが僕らの手元に届くのは更に先になるだろうけどさ」

 

 

 そしてカイが露骨に話を逸らす。ただし内容は、ちょっと深刻な物でもある。

 

 

「ところでよ。チビどもやニャアンだが」

「……ああ。聞いたよ」

「何のお達しも無し、だそうだね」

「つまりは現状のまま?」

「ああ」

「「「「……」」」」

 

 

 何故そんな事になったのか、それについてはエグザベ、アムロ、カイはなんとなくだが想像が付いている。

 

 

(((人体実験じみた考えでも、あるんだろうなあ)))

「え?」

 

 

 ハヤトは彼らの考えに気付いていない。だがこの場にいないシイコ中尉は、おそらく3人に同意するだろう。エグザベ、アムロ、カイ、シイコ中尉は、エスパーじみた精神感応に似た能力を発現させている。それがNT(ニュータイプ)ではないのか、と『上』は想像しているのだろうと、皆は思っていた。

 

 

「……なるべく、僕らの環境を変えたくないんだろうな」

「それでデータ取り、ってかよ。くっそ」

「……まあ、悪い方向にばかり考えててもね。手の届く範囲に、護る対象があるって考えよう」

「???」

 

 

 蚊帳の外に置かれたハヤトが、少しだけ寂しそうだった。

 

 

 

*

 

 

 

 北極圏へ向かう連絡機の中で、テム技術大尉は独り、焦りを抱いていた。

 

 

(アムロ、いやアムロたち、だ。単に連邦軍が戦争に勝つだけではいかん。アムロたちが自由を謳歌できるように。できる限りの伝手を作っておかねばならん。『上』の連中は、ムラサメ研やらオーガスタ研やらのニタ研を設立。そして先日会った『被験者』……。ゼロ・ムラサメか。冗談じゃない、アムロやその友人たちを、そんな『被験者』になんかさせてたまるものか)

 

 

 テム技術大尉は、必死だった。彼に一番近いお偉いさんはレビル将軍ではある。だがゼロ・ムラサメと言った強化人間計画にGOサインを出したのは、そのレビル将軍でもあるのだ。であるならば、アムロたちの自由を買い取るために、なんらかの取引材料か、あるいは別のお偉いさんと伝手を作る事も考えなくてはならない。

 彼の手元で、書類束がガサリと音を立てる。そこには、『RX-78-NT1』の文字が躍っていた。

 

 

 

*

 

 

 

 ジャブロー上空に、ガウ攻撃空母が殺到する。少し前までは、いつもの『定期便』と呼ばれる定期爆撃かと思われた。だが此度は総勢18機のガウ攻撃空母より、54機ものMS(モビルスーツ)が降下して来たのである。これはジャブローの殲滅、破壊を目的とした本格攻勢であった。

 ことここに至り、ジャブロー基地ではここに在る全ての戦力に対し、出動を命じる。無論、ホワイトベース隊も例外では無い。シイコ中尉、エグザベ、アムロ、カイ、セイラ、リュウ少尉、ジョブ少尉、ハヤトは総勢で出撃した。

 ちなみにリュウ少尉、ジョブ少尉、ハヤトの機体は変更が成されている。リュウ少尉とジョブ少尉はRGC-80GMキャノンとGファイターからRX-77D量産型ガンキャノン2機へ、ハヤトはFF-X7-BstコアブースターからRGM-79GM指揮官機へ、とそれぞれ機種変更が成された。これはホワイトベースが宇宙へ行く事を前提にした機種変更であり、実はホワイトベース中央格納庫に納められていたMS(モビルスーツ)輸送機ガンペリーも、脱出用の宇宙艇(ランチ)2隻と交換されていた。

 

 

「アムロ! ガウがMS(モビルスーツ)を降下させている!」

()とします! 01ガンダムも!』

「了解!」

 

 

 旧プロトガンダムであるエグザベの01ガンダムとアムロのガンダムが、同時にビームライフルを撃つ。それは吸い込まれる様にガウ攻撃空母の1機に命中し、爆散させた。降下途中だったドムは1機だけが降下して行き、残り2機はガウと運命を共にする。

 だがその降下中の1機も、リュウ少尉とジョブ少尉の量産型ガンキャノンが放ったキャノン砲の砲撃により、木っ端みじんとなる。更に周辺からは対空砲火の火箭が次々に打ち上げられて行き、まともに降下できるジオン軍MS(モビルスーツ)は半分も居ない。

 

 その時、『思念』が『()』んだ。

 

 

(うあああおおおぉぉぉ!! 空を落とすやつは! 僕が! 抹殺する!!)

((((((!?))))))

 

 

 見遣ると、グレーのRX-78が最大出力でランドセルのバーニアを()かし、ガウ攻撃空母の上に飛び乗った。そしてビームサーベルを抜くと、まるで『開き』にするかの様にガウの機首から尾翼にかけてを切り開いて行く。

 エグザベは、思わず叫んだ。

 

 

(避けろ! 味方の対空砲火が!)

(あたるか!!)

 

 

 グレーのガンダム……G-3ガンダムは、華麗に味方の対空砲火を(かわ)し、爆散するガウから別のガウへと飛び移った。そしてそのガウもまた開きにして爆砕すると、地上へと降下して行く。

 

 

(あれは……!? 強い、強いんだが、『強さ』は感じられたが、しかし)

(エグザベ兄さん、何か『あの人』は……。危険、です)

(な、何か……。ぜ、ゼロ・ムラサメって『読め』ました)

(わたしは『強化人間』って読めたわよ!?)

(えっと……。俺にゃ良く分からんかったが。だが奴はなんか苦しんでたぞ?)

 

 

 アムロもシイコ中尉も、愕然としている様子が伝わって来る。一方でカイは言語化して『読み取れ』た物は無かったようだが、それとは別に深いところの『何か別な物』を感じ取ったらしい。だがそれに構っている余裕は無い。まだ、敵のMS(モビルスーツ)もガウ攻撃空母も、数多くいるのだ。

 

 

 

*

 

 

 

 とりあえず、敵は全機掃討を終えた。アムロはガンダムの頭部をぐるりと巡らせて、警戒を続ける。

 

 

「とりあえず、敵は居無さそうですね」

『ああ、ミノフスキー粒子の影響も無くなって……!?』

 

 

 そのとき、ジャブローを覆っている樹木を割って、1機のMS(モビルスーツ)が現れた。グレーの機体、グレーのシールド。目立つV字アンテナに双眼。G-3ガンダムだ。シールドは度重なる被弾に半壊しているが、胴体部には一切の着弾も無い。相当な技量、ではある。

 

 だが、様子がおかしい。

 

 

『ぐ、うう、あ、あ……』

「シイコ中尉、エグザベさん、皆、なんかこいつ……」

 

 

 その時、G-3ガンダムからまたも思考の大波が打ち寄せて来た。それには圧倒的な苦痛が含まれている。

 

 

(うわ!?)

(ああっ!?)

(きゃあ!!)

(あああっ!!)

(ちぃっ!!)

 

 

 そして世界が変わった。

 

 

 

*

 

 

 

 エグザベは、ニャアンは、アムロは、シイコ中尉は、カイは、光が輝いて満ち満ちている空間に居た。エグザベは呆然と呟く。

 

 

(こ、これは? いや、わかる。ミノフスキー粒子、だ。通信波とかを妨害するんじゃなく、静かに、だけど高エネルギー状態に遷移して、輝いている)

(なんでわかるんです)

(情緒的じゃないわね)

(なんつーかな)

(おいといてください。こういう人なんです。エグザベ兄さん、あれを)

 

 

 ニャアンが指さす方向を見ると、緑の髪をした少年が、頭をかかえて(うずくま)っている。彼は叫んでいた。

 

 

(あ、頭が! 蛇が、蛇がうねるような! 痛い! 痛い!!)

(な……で……に……)

(あ……え……)

(あ、ハヤトぉ!? それにセイラさん!? いやチラチラしててはっきり像を結んでねえ。そうか、『覚醒』しかけだけど、完全じゃねえからこの『空間』に適応できねえのか。ってなんで俺ぁ、こんなの理解できるんだよ)

(そ、それは置いといて。彼だ。たしか『ゼロ・ムラサメ』だったよな!?)

 

 

 エグザベの言葉に、皆がそちらを見遣る。すると『ゼロ・ムラサメ』の頭部から黒い細長い何かがうねり、ぐちゃぐちゃに突き出しているのが『()』えた。

 

 

(!! これ、か!?)

 

 

 思わずエグザベは、その黒いモノを掴んで、引き千切る。ニャアンも急ぎ、それを千切る作業に参加した。だが『ゼロ・ムラサメ』は身もだえして抵抗する。

 

 

(あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーー!!)

(み、皆! 彼を!)

(わ、わかったわ!)

(押さえればいいんですね!)

(ちっくしょ、仕方ねえ! ハヤトとセイラさんは……あ、消えちまったか。『身体』に戻っちまったのか)

 

 

 そしてエグザベは叫ぶ。

 

 

(これで!!)

(ぐわあああぁぁぁ!!)

 

 

 周囲が、光で満ちた。

 

 

 

*

 

 

 

 シイコ中尉は、まるで目が覚めたばかりの様な感覚に襲われる。彼女は操縦席(コクピット)時計(クロノメーター)を見遣った。

 

 

「時間は過ぎてない! ……G-3ガンダムは!?」

『大丈夫です!』

 

 

 アムロの声が、通信モニターから響く。メインモニターでは、ガンダムと01ガンダムがG-3ガンダムを支えているのが見えた。

 そしてG-3ガンダムから通信が入る。

 

 

『もう……。放してくれても、大丈夫だ』

「……貴方、は?」

『俺はムラサメ研の、プロト・ゼロ少尉。此度の作戦成功で、ムラサメの姓を貰える事になっていた。強化人間、人工的なニュータイプ、だ』

「……」

 

 

 ゼロは語る。

 

 

『頭痛の元を抑え込んでくれたのには、感謝する。だが、根っこは残ってるのが感じられるからな。必ず再発する、だろう。

 ……重ねてだが、感謝はする。しかし、それでもお前たち生粋のニュータイプたちは、俺にとって競争相手、だからな。……これで、失礼する』

『あ、おい!』

『ちょっと待……』

 

 

 そしてG-3ガンダムは、彼らを残し去って行った。残された彼らは、陰鬱な空気に飲み込まれる。人工的な、おそらく人体実験の結果作り出されたニュータイプ。

 

 

「どうやら……」

『戦争が終わった後に……』

『戦わないといけない物が……』

『見えて来た、ってか? クッソ……』

 

 

 戦闘は、勝利に終わった。

 

 

 

*

 

 

 

 モニター映像の中で、ホワイトベース……(オトリ)部隊である第13独立戦隊旗艦が、ジャブローのカタパルトで上昇して行く。それを見遣りつつ、レビル将軍……ヨハン・イブラヒム・レビル大将は悔恨の溜息を吐いた。

 

 

「……失敗、であったな。強化人間計画」

「……」

「ジオンの地上勢力の拡大に恐れを感じ、してはならん手段に手を出してしまった。しかも、あのゼロ少尉で『成功』だとムラサメ研は言い張っておる」

 

 

 マチルダ・アジャン中尉が、冷めきったコーヒーを淹れ替えた。だがレビル将軍は、それに手を付けようともしない。

 

 

「巨額の資金を投じて、あの様に深刻な頭痛などの疾病持ち。能力的にはたしかに有効だが、いかに強力とは言えど、個人単位でしかない戦力。量産などできぬ。1人生み出すのがやっとでは、成功とは言えん。多数あってこその兵士だ。巨額の資金を投じ、多数の被験者に顔向けのできない非道を働き、その結果がコレだ。

 ……わたしは、愚か者だ」

「……」

「だが、ここで投げ出す事はできん。ジオンとの戦争を終わらせたなら、責任は取ろう。取り切れるものではないが、可能な限り。地獄へも、落ちてみせよう」

 

 

 マチルダ中尉は、何も言わない。明日は彼女とウッディ・マルデン大尉との結婚式だ。あと数日、第13独立戦隊の出立が遅ければ、結婚式に参列してもらいたかった、と思いつつ、彼女はデスクの上の書類を束ねた。




れびるしょうぐんの、だいしっぱい。

いや、ギレンの野望とかでプロト・ゼロ欲しさに多少のアラインメント下落は覚悟の上で、強化人間開発計画OK出しますけどね。あの計画って、あの程度のアラインメント下落で済まないでしょ本当。

あと、ハヤトとセイラさん、わずかに、わずかに、NT覚醒し掛けてます。度合で言えば、0.5レベルぐらい。だから強力なNT集まって共振とかして能力が一時的に高まったりすると、微妙に浮かび上がります。でもまだチカラはまったく無しです。無しです。大事な事なので(ry
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