偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第17話 赤い彗星、再び

 ブライト艦長は、オスカとマーカーに問う。

 

 

「前方に展開している敵艦は、正体は割れたか」

「はい、ザンジバル級機動巡洋艦が1隻、ムサイ級軽巡洋艦が2隻の、機動艦隊です。ただ、この形式の艦隊はザンジバルが新型である事もあって、あまり遭遇例はありません。ですので、指揮官などは不明です」

「そうか……」

 

 

 そしてブライト艦長は決断する。

 

 

(こちらの任務は、敵を引き付ける(オトリ)任務だ。ならば、せいぜい暴れてティアンム提督たちの艦隊が打ちあがるのを支援しないといかん。奴らを叩けば、他の敵艦も集まって来るだろう。そうしたら敵を叩きながら適当に逃げ回り、本隊がジャブローから打ち上げされるのから目をそらそう)

 

 

 ブライト艦長は命令を下す。

 

 

「第一種戦闘態勢! MS(モビルスーツ)隊を発進させるんだ! 奴らを叩くぞ!」

「「「「「「了解!」」」」」」

 

 

 やがて右舷左舷の両MS(モビルスーツ)デッキから、次々に機体が射出され始める。対する敵艦隊も、艦載機を発艦させ始めた。

 

 

 

*

 

 

 

 新たに番号を振り直されたガンキャノンC-102に搭乗するカイは、僚機に通信を入れる。

 

 

「リュウ、ジョブ、C-103とC-104は両肩のキャノンで、X104、Y032を狙って心持ちバラけさせて撃ち込んでくれ。できるか?」

『ザッ了解だ。支援射撃はお前の指示なら信頼できるザザッ』

『こっちも了かザザザ。やってみせるさ』

 

 

 階級こそ下だが、カイはキャノン部隊のしっかりとした信頼を獲得していた。更に彼はセイラにも指示を出す。

 

 

「セイラさん、『()え』るんじゃねえか? あの、何とも言えねえモニョモニョが、よ」

『ザッええ、たぶん……。何と言えばいいの? 悪意? みたいに感じる物ザザザ?』

「それだ。それを目標に、俺といっしょに狙撃用ビームライフルを撃ってくれ。……3、2、1、今!!」

『!!』

 

 

 2人の一撃は、今まさに加速しようとしていた敵のMA(モビルアーマー)に着弾。そのスラスターノズルを1つずつ吹き飛ばした。

 

 

 

*

 

 

 

 シャア・アズナブル『中佐』は、ジオン軍新鋭MA(モビルアーマー)であるMA-05ビグロを任されていたトクワン大尉よりの緊急通信を受け取る。

 

 

『シャア中ザザッ、申し訳ありません、やられました! 狙撃です! ノズルを2つ吹き飛ばされて、機動力がガタ落ちザザザザ』

「やむを得んな。トクワン、お前はザンジバルに戻れ。今ここでビグロを失うわけには」

『しゃ、シャア中佐ああぁぁ!!』

 

 

 トクワン大尉の絶叫。見遣ると、シャアの視界の中でビグロが爆散し、過剰な追撃となった狙撃用ビームライフルの光条が爆炎を突き抜けて行くところだった。なおこの過剰な追撃は、セイラが撃ったものである。カイは『何故か』適切な量だけ撃ち込んでいた。

 

 

「お、おのれ。やるな連邦の支援MS(モビルスーツ)。……うぉっ!?」

『しゃ、ザザザ中佐! 敵の攻撃が!』

「おのれ」

 

 

 そして1テンポ遅れて、ガンキャノン隊が撃ち放った実体弾、キャノン砲の弾幕が届き、至近弾の連続。

 

 

「くそ、全機突撃しろ! このままだと支援機からカモ撃ちにされる!」

『『『『『『りょ、了解!』』』』』』

 

 

 だが敵である木馬……ホワイトベース隊の方が、対応が早い。

 

 

「!! 二本差しの、量産機! 指揮官タイプか!」

 

 

 ガンキャノンの集団に近寄らせまいと、2機のGM指揮官機が迫って来る。味方は残り12機のリックドム。本来なら戦力は圧倒的なはず、だ。だがシャアは不安を禁じ得なかった。

 

 

 

*

 

 

 

 GM指揮官機のスラスターを開けつつ、シイコ中尉は叫ぶ。

 

 

「あの赤いドム! 赤い彗星め、乗り換えたな!?」

 

 

 本来そんな事を知る由も無い彼女であったが、『何故か』確信している。そして彼女はハヤトに指示を出した。

 

 

「推力と重量でのパワー・ウェイト・レシオではGMの方が圧倒してる……と思う!」

『お、お願いですから断言してザザザさい』

「だからスピードでかき回すの! 見た目からして、相手はこっちより鈍重! 墜とさなくていい! わたしが赤い彗星の相手をしてる間、逃げ回ってて! スコアはガンキャノン隊にくれてやんなさい!」

『りょ、了かザザッしました!』

 

 

 そして彼女はシャア? の赤いリックドムに吶喊する。

 

 

「うぉらあああぁぁぁ!! ()ちて!! 赤い彗星のシャア!!」

 

 

 バチッ!

 

 

(まっずい! わたしも操縦系パチった!? ぎ、ぎりぎりのところで攻めなきゃ。……アムロ君たち、頼むわよ)

 

 

 彼女のGM指揮官機は、まるで紅白の流星の様に、赤いリックドムに襲い掛かった。

 

 

 

*

 

 

 

 ザンジバル級ラグナレクの艦長ドレン大尉は、敵部隊後方の木馬……ホワイトベースに対する艦砲射撃の指揮を執っていた。随伴するトクメル、スワメルへの指示も、彼が行っている。わずかばかり、権限を超えていると言わざるを得ない重責だ。

 

 

「艦長!」

「どうした!」

「ガンダムがいません!」

「なにぃ?」

 

 

 ブリッジの船窓から外を見ると、2機のリックドムが右往左往しつつハンドサインを出している。

 

 

「リムとキャノスのリックドムです! あいつらは、ガンダムを2機とも見て無いって言ってます!」

「何、うぉ!?」

 

 

 その瞬間、2機のリックドムは爆炎に飲まれる。天の北極方向と、そして天の南極方向からの2条のビームだ。

 

 

「どこからだ!」

「上と……真下!」

「スワメルが!」

「トクメルも狙われてるぞ!」

 

 

 ラグナレクの艦橋(ブリッジ)は、大騒ぎになった。

 

 

 

*

 

 

 

(はーっ……。はーっ……)

 

 

 エグザベが、自分で吐く息の音が聞こえる。彼の視線の先には、ムサイ艦2隻、スワメルとトクメル、そしてザンジバル級ラグナレクの船底部が『()え』ている。不思議な事に、彼には別行動をしたアムロが、彼とは逆方向の敵上面から、似たように各艦の上面を『()て』いる事が理解できていた。

 

 

(アムロ、行くぞ!)

(了解、エグザベさん!)

 

 

 そして彼は、01ガンダムを吶喊(とっかん)させる。邪魔な位置にリックドムが2機。片方をアムロのガンダムが、もう片方を彼の01ガンダムが撃墜する。そして彼は、スワメルに狙いを定めた。

 引き絞られる引き金。01ガンダムのビームライフルが、ピンク色の光条を2つばかり発する。それは吸い込まれる様に、ムサイ艦のエンジン片方と、ムサイ艦艦橋(ブリッジ)真下に命中、撃ち抜いた。ぶわっ……という感じで、内側からの爆炎により一瞬膨らんで、爆散するムサイ級スワメル。

 一瞬見遣ると、ムサイ級トクメルもまた、アムロのガンダムにより同じ運命を辿っていた。次にエグザベは、旗艦であるザンジバル級ラグナレクを狙おうとした。しかし5機のリックドムが、これ以上やらせないとばかりに最大戦速で向かって来る。アムロのガンダムにも、もう5機が向かう。

 

 

(これは仕方無い、か。()とせるかい? アムロ)

(ええ。ただ、ザンジバルは無理そうですね。気配からして、離脱準備してます)

(仕方ないか)

 

 

 エグザベは、01ガンダムのペダルを蹴飛ばす。スラスターとバーニアに火が入り、それこそ蹴飛ばされた様な加速で01ガンダムは()んだ。

 

 

 

*

 

 

 

 ガンキャノンC-101を預かるセイラは、逃走する赤いリックドムに向けて狙撃用ビームライフルを撃ち放つ。

 

 

(……貴方は何をやっているのです、兄さん!)

 

 

 セイラは赤い彗星のシャア、シャア・アズナブルが自分の実の兄、エドワウ・マスにしてキャスバル・レム・ダイクンだと言う事に、既に気付いている。彼女は兄を愛してはいたが、家族よりも復讐を取った兄に対し、怒り、いや下手をすると憎悪に近い感情をも抱いている。だが、憎み切れない。だが、好意も抱けない。つらい。苦しい。

 そして彼女は、その感情を込めて、ガンキャノンの狙撃用ビームライフルを何度も撃つ。シャアは、その射線を必死になって(かわ)す。カイの叫びが、精神を打った。

 

 

(セイラさん! シャアはもういい! なんか『ある』のは理解すっけどよ! 今、ハヤトが危ねえんだ!)

(!! ご、ごめんなさい!)

(あとでだ! それより『合わせ』ろ! 3、2、1、撃て!)

 

 

 セイラとカイのガンキャノンが、ビームを撃ち放つ。ハヤトのGM指揮官機を追い回していたリックドムが、瞬時に爆散した。

 

 

 

*

 

 

 

 赤い彗星のシャアは、溜息を吐いた。

 

 

「スワメル、トクメルが撃沈され、12機のリックドムのうち戻ってこれたのは、わたしとあと2機の計3機だけ、か。しかも敵は『何故か』こちらの先へ先へと読んで、まともに戦いをさせてもらえなかった感がある」

「中佐、あやつらが連邦のニュータイプ部隊だと言う噂があります。連邦のプロパガンダだとばかり思っていたのですが」

「噂だけでは無い、かも知れんな。……白いガンダムと、黒いガンダムに、意趣返しをするどころか、奴らとは戦う事すらできなかった。リック・ドムでは駄目だ。敵の量産型の方が、軽くて速く、(はや)い。火力も敵のビーム兵器は、量産型の持つやつは、MS(モビルスーツ)を破壊するに必要充分に威力を調整してある」

 

 

 ドレン大尉は、必死で慰めの言葉を口にする。

 

 

「で、ですが中佐の機体は、他のリックドムがジャイアントバズなのに対し、試作のビームバズーカを使えるではありませんか」

「対MS(モビルスーツ)戦では、あれは重すぎる。残念ながら、な。引き金を引いてから、発射されるまでのタイムラグもそうだ。威力は高いから、対艦用としては極めて有効だ。あれが全リックドムで使える様になれば、核バズーカが南極条約で使用できなくなり対艦能力が弱体化したジオン軍MS(モビルスーツ)を、再度強化が叶うはずだ。……だが対MS(モビルスーツ)では使えん。

 いっそのこと、MS-06R-2、高機動型ザクⅡ後期型を申請してみるか? ……いや、駄目だ。ガンダム相手では、ザクマシンガンは意味が無い。ザクバズーカは、これこそ命中するかわからん」

「これまで他の連邦軍部隊に対しては無敵を誇っていたわが艦隊が、この有様とは……。恐るべき相手、だったのですな。あのサイド7の時から……」

「ドズル中将への報告が、気が重いな」

 

 

 シャアは、ホワイトベースに自身の妹が乗っている事に、気付いてはいなかった。サイド7で一度だけ邂逅してはいたが、それ以後会う事も無かったが故に、まったく想像だにしていなかったのである。

 

 

 

*

 

 

 

 ちなみにMA(モビルアーマー)ザクレロを預かっているデミトリ―曹長は、出撃を許可されずに独りトクワン大尉に申し訳ない、と涙を流していた。




シャア、歯が立ってません。理由は、圧倒的な経験値不足ですね。シャアはこれまでの間、セイバーフィッシュやトリアエーズ、良くてボールかRGM-79(E)宇宙用初期型GMを相手にしてました。その間、エグザベやアムロやシイコさんは、見ての通りです。
言うならば、シャアがアリアハンの街周辺でスライム倒してる間に、エグザベアムロシイコはリムルダール周辺でダースリカントとか倒して、ときどきゾーマの城まで行ってバラモスゾンビとか倒してまた引き返してレベル上げしてた状態?
いや、さすがにそれは言いすぎかな(笑)。

そしてシイコさんも操縦桿パチりました。
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