偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第18話 戦場までは何センチ?

 第13独立戦隊旗艦……と言っても、現状1隻しか無いのだが、ホワイトベースはサイド6宙域に達していた。艦橋(ブリッジ)のブライト艦長の姿が、第2艦橋(サブブリッジ)のメインスクリーンに大写しになっている。

 

 

『パイロット各位、周辺警戒ご苦労だった。これより我々ホワイトベースは、サイド6リーアのリボー・コロニーに立ち寄る事になる』

「あのー、ブライトさん、ちーっといいっすか?」

『なんだカイ』

「いっちゃん外側で立ち寄りやすいパルダ・コロニーや、政庁のあるイズマ・コロニーじゃねえ理由は何っすか?」

 

 

 カイの疑念に、少々悩んだブライト艦長はやがて答える。

 

 

『済まないが、その件に関してはまだ公開する許可が出ていない。ただ、当該コロニーにある連邦軍施設から、『ある物件』を受領する、とだけ言っておこう』

「……了解っす。とりあえず、はっきりとした理由がちゃんとあるって事さえわかれば」

『そうか』

 

 

 納得したカイに、ブライト艦長は安堵の様相を見せる。

 

 

『あちらに到着したら、とりあえず操縦士(パイロット)は半分ずつに分けて半舷上陸を許可する。ただし、右舷デッキのガンキャノン隊と、左舷デッキの白兵MS(モビルスーツ)隊で分けるのは避けてくれ。キャノン隊2人、白兵隊2人で降りる様に』

「ブライト艦長、もしや襲撃の恐れが?」

『可能性はある、とだけ言っておこう』

 

 

 エグザベの問いに、画面のブライト艦長は頷く。一同の表情が引き締まった。

 

 

 

*

 

 

 

 リボー・コロニーでは、ホワイトベースやMS(モビルスーツ)等装備品類に封印措置をするかどうかで、ひと悶着あった。しかしながら、既にコロニー内に連邦軍施設がある事、このコロニーでは連邦軍とリーア軍の間で防衛協定が結ばれている事などが功を奏し、武器の封印はされずに済んでいる。

 

 そして今、エグザベはハヤト、ジョブ少尉、セイラと組んでリボー・コロニーの街へ繰り出して来ていた。ちなみにニャアンも、いっしょに付いて来ている。彼らの他にも、整備兵やら機関部員やらも、半舷休息で交代で街に出てはいるが、この場に一緒にいるのは彼らだけだ。

 街はまだまだクリスマスには遠いが、それでも気が早い店はそろそろ飾り付けを始めている。とは言っても、本当に気が早い店だけであり、ほとんどは日常風景のままだ。

 

 

「ニャアン、せっかくだから、何でも食べていいぞ」

「エグザベ兄さん。食べ物だけで釣れるって思わないでください」

「わ、悪かった」

「ふふ、冗談です。あのお店、お肉を柱にして焼いて、削って出すやつ。なんて言うんですか?」

「ああ、あれはトルコ料理で、たしかドネルケバブ、だったはずだよ。食べるかい?」

「はい」

 

 ハヤト、ジョブ少尉、セイラは義兄妹の様子を見て、ほっこりしている。まあ正式な戸籍に入れた義兄妹ではないのだが。

 

 

「エグザベさんって、なんであんな色々知ってるんだろうなあ」

「知らない事もあるよ。先日補給品に入って来た、水ジェットの歯磨き機器、使い方分からんどころか機械を見た事なくて硬直してた。普通の歯ブラシの種類だったら、ブタの毛のとかナイロンのだとか硬め柔らかめだとか、異様に知ってたけど」

 

 

 どうやら『嫌な臭い』も感じ取れていない様子。一同は一安心していた。

 

 

 

*

 

 

 

 一方、艦内では艦橋(ブリッジ)に呼び出されたアムロが、モニター画面の前で驚きの余り、硬直していた。

 

 

『アムロ、ちょっとぶりだな』

「父さん!」

『ちょっと公私混同だがな。頼み込んで通信時間を10分ばかり貰った』

「どうしたの!? 北極に行くって話だったろ!?」

『北極の研究施設から直接打ち上げてもらって、ここの施設にモノを運んで来たんだ。ソレはもともとホワイトベースに行く予定だった物でな。内容は、まだ明かすわけにはいかんが……。もう別に構わんとは思うが、まあ規則だ。仕方がない』

 

 

 画面の中のテム技術大尉は、そして顔をしかめる。

 

 

『アムロ、気を付けろ。北極圏の研究施設がある基地だが。わたしとモノが打ち上げられた直後に、奇襲攻撃を受けた。おそらくはこのモノを狙っての事だろう。だから、引き続きこのモノを狙って来る可能性が無きにしもあらず、だ』

「……!! わ、わかった父さん。ならこの後、半舷休息で街に降りるつもりだったけど、避けた方いいかな」

『む。……いや、張り詰めすぎるのも良くはないだろう。少しは緩めんと、な。弦が切れてしまっては、元も子もない。よければ街で会わんか?』

「……わかったよ父さん。皆にも伝えて置くよ」

 

 

 その後アムロは、テム技術大尉と会話を楽しんだ。その様子を、周囲の人間は微笑ましく見ていたものであった。

 

 

 

*

 

 

 

 通信を終えたテム技術大尉は、独り言ちる。

 

 

(おそらくは、アレの基礎設計を行ったわたしが調整に参加した結果、完成までの時間が短縮されてリボー・コロニーへの移送が早まったのが影響したのだろう。もしわたしが参画していなければ、アレが地上に在ったうちに特殊部隊の攻撃を受けていたに違いない。

 ……ここに、来るか? いや、アレは必ずアムロたちに渡してみせるぞ。アムロたちが生きて終戦を迎えられるために。アムロが生きて、戦後を迎えられるために。そのために必要な鎧であり、そのために必要な剣なんだ)

 

 

 そしてテム技術大尉は踵を返す。その行く先には、『NT-1』とペイントされたコンテナから運び出される、巨大なパーツ群……。MS(モビルスーツ)のパーツが、存在感を強く、強く打ち放っていた。

 

 

 

*

 

 

 

 乗組員の半舷上陸を終え、第13独立戦隊旗艦ホワイトベースは、万が一の襲撃に備えて戦闘態勢までは行かないが、第二種警戒態勢を取っていた。

 

 

「何事もなければいいわね」

「そうだな、ミライ。……そう言えば、君に通信が入っていたな。カムラン監査官、だったか?」

「え、ええ……。気にしないで」

「あ、うむ」

 

 

 ブライト艦長とミライの間に、微妙な雰囲気が流れた。直後、ニャアンが顔色を青くしてブライト艦長を見遣った。ブライト艦長が『ソレ』を理解した直後、通信士のフラウが叫び声を上げる。

 

 

「ブライト艦長! リーア軍、そして連邦軍基地から、迎撃要請です! 街中を、街はずれのスクラップ工場から出現した青いジオン製と思われるMS(モビルスーツ)が、連邦軍基地へ目指して進撃中です!」

「馬鹿な、コロニー内で! い、いや想定内にはあった! ガンダム2機、GM指揮官機2機とガンキャノン隊は武装マシンガンにしてあるな! コロニー内戦闘、緊急発進だ! ビーム兵器は不許可だぞ!」

「ブライト! ホワイトベースは!?」

「火力が高すぎる! コロニー内に進入しても意味が無い! MS(モビルスーツ)隊に任せるしか無い!」

 

 

 そしてハッチを全開にしたMS(モビルスーツ)デッキから、全MS(モビルスーツ)が出撃して行く。ブライト艦長は、祈る様な気持ちでその背中を見つめていた。

 

 

 

*

 

 

 

 MS-18Eケンプファーの操縦席(コクピット)で、ミーシャ……ミハエル・カミンスキー中尉は、焦っていた。当初コロニーの『山』……港に続く切り立った崖の上から現れた3機の連邦軍MS(モビルスーツ)、白、黒、紅白の3機を、彼は嘲笑していた。素人め、と。

 ……違った。コロニーの中で、こちらは街中を地面ぎりぎりで飛翔し、相手は中空。相手からは街にダメージを与えそうで攻撃は躊躇(ためら)われ、こちらからは狙い放題な位置取り、だと思っていた。そしてシュトゥルム・ファウスト2発を連続して発射。

 

 ……白と黒のガンダムは、その手に持ったマシンガン、量産型ガンキャノン用を急遽転用した90mmマシンガンで、シュトゥルム・ファウストの砲弾を狙撃。その爆炎に紛れて、突撃して来たのだ。化け物じみた射撃技量。ミーシャは続けて紅白のGMに向けてショットガンを撃ち放つ。あっさりと(かわ)されて、GMはこれも90mmマシンガンを連射。

 ケンプファーの装甲は薄い。必死に(かわ)したミーシャは、操縦を誤ってコロニー壁面のガラス面『河』に渡されている橋に突っ込んでしまった。衝撃で引き千切られる、ケンプファーの左腕。右腕しか使えないため、使える武器が一気に減った。

 

 

「ち、くしょう!」

 

 

 つるしていた紐から外れ、足元に口の開いたウィスキー缶が転がる。芳醇な香りが、操縦席(コクピット)に満ちた。左腕が使えないので、ショットガンを機体の出っ張りに引っかけてポンプアクションする。そして黒いガンダムを狙う。

 

 

「!!」

 

 

 一瞬の判断で、ショットガンを捨ててビームサーベルを抜き放つ。正解だった。ミーシャのケンプファーは、ぎりぎりで黒いガンダムのビームサーベルを受け止める。だが……。

 

 

「ま、まだ来やがるか!!」

 

 

 通りの向こうから、これまた別の赤白のGMを先頭にして、4機のキャノンタイプが現れる。ここら一帯は、『河』沿いだ。街じゃない。街を『人質』にはできない。キャノンタイプ4機が一斉に、両肩のキャノンを撃ち放った。黒いガンダムが飛び退る。

 

 

「うおおおぉぉぉっ!?」

 

 

 一斉の、至近弾。装甲が薄いケンプファーは、耐えきれない。煙が流れ去った後には、両脚を失った愛機の姿。

 上空に居た紅白のGMが、降下して来る。スピーカーから、女の声が響く。

 

 

『降伏を勧告するわ。武器を捨てて、操縦席(コックピット)ハッチを開放し、地面に降りて膝立ちで、両手を頭の後ろに組みなさい』

「……はぁ」

 

 

 ミーシャは大きく酒臭い息を吐くと、相手の言うとおりにした。隊長たちの安否も気にかかる。しかしもうどうしようもない。

 

 

(甘かった……。もうMS(モビルスーツ)乗るときゃあ、禁酒、だな。いや、禁酒しててもこんな化け物ども相手じゃあ駄目かもしれんが)

 

 

 しばらくして、連邦軍施設からやって来た兵隊たちが、荒っぽくミーシャを取り押さえる。彼らの制服にも血の跡があり、彼ら自身傷を負っている事から、おそらくは隊長たちがかなり暴れたのだろう。そうでなければ、無傷の兵士を送り出して来るはずだ。

 この調子では、隊長たちも無事ではいられんだろう。そう思うと、ミーシャは胸が重かった。

 

 

 

*

 

 

 

 ホワイトベースの左舷MS(モビルスーツ)デッキに運び込まれた複数のMS(モビルスーツ)。その運搬の指揮を執っている士官に、アムロは声を掛けた。

 

 

「父さん!?」

「おう、アムロか。ああ、クリス君。ここを任せてもいいかな?」

「了解です!」

 

 

 テム技術大尉はちょっと一風変わったパイロットスーツに身を包んだ女性士官に声を掛けると、微笑んでアムロに向き直る。

 

 

「無事で良かった、父さん。連邦軍の施設がテロリストっていうか、ジオンの特殊部隊に襲われたって……」

「ああ、ちょうどコイツらの最終調整をしてたからな。あわてて操縦席(コクピット)に飛び込んで、ハッチを閉めたのさ。それで人間相手にはオーバーキルだと思ったんだが、頭部の60mmバルカンを一連射した。そうしたら自爆しおってなあ。

 機材の一部に被害は出たが、それでも各MS(モビルスーツ)には被害らしい被害は無かった。おかげでコレを、お前たちに渡す事ができる」

「コレ?」

 

 

 アムロはMS(モビルスーツ)を見上げる。明らかにガンダムタイプだ。それが3機。

 

 

「RX-78-NT1アレックスが2機、そしてRX-78-NT2アレックス2。本当ならアレックスは1機だけのはずだったんだがな。わたしが伝手を使ってねじ込んで、パーツを新造させて急ぎ組み上げた。お前とエグザベ君の双方が使える様に、とな。

 それとアレックス2だが。アレックスの操縦席(コクピット)が最新鋭の全天モニタとリニア・シートであるのに対し、アレックス2はコア・ファイターを導入しているために通常型コクピットだ。脱出とデータ回収にはいいが、総合的に戦闘力が高いのはアレックスの方だな」

「何か、見るだけで凄そうってのは分かるんだけれど」

「細かい話は、搬入が済んでからな。とりあえず、わたしとクリス君はルナ2まで一緒に行かせてもらう。それ以後はまだ話は聞いておらんが……」

『テム技術大尉! アムロもいるのか!』

 

 

 唐突に、壁面のインターホンから会話に割り込んで来たのは、ブライト艦長だ。何事かと驚いたテム技術大尉とアムロだったが、話の内容に更に驚く事になる。

 

 

『連邦軍施設を襲って、連邦メディカルセンターを吹っ飛ばしてコロニーに穴を開けた奴らの隊長が、意識を取り戻して吐いたんだ! ガンダムNT-1を狙って、ジオンが核攻撃を敢行する!』

「「ええっ!」なんだと!?」

『テム技術大尉、搬入完了まであとどれほど掛かりますか!』

「クリス君、聞こえたかね!?」

「は、はい! もう物資自体のコンテナは全部運び入れました! あとは場所移動だけなんですが」

「聞こえたか、ブライト君!」

『ええ! アムロ、MS(モビルスーツ)隊への伝達は任せた! 第一種戦闘配置だ! わたしはこれからコロニー側と折衝の上、緊急出港する! 核攻撃は、なんとしても止めねばならん!』

「了解!」

 

 

 そして通信は切れる。テムはクリスとかいう女性士官と共に資材の整理に掛かり、アムロは操縦士(パイロット)全員が居るであろう第2艦橋(サブブリッジ)に駆けて行く。とりあえず、アレックスとアレックス2の初陣は、この次になりそうだった。




シュタイナー:銃撃戦で重体→タイーホ→意識取り戻し自白
アンディ:被撃墜で死亡
ミーシャ:タイーホ
ガルシア:60mmの破片を受け、直後自爆で死亡
バーニィ:銃撃戦で重傷だが生存→タイーホ

というわけで、テムさん頑張ったので(実際戦闘も、コクピットから60mmバルカン操作しただけだけど頑張った)、おかげでNT-1が2機とNT-2はホワイトベースに渡りました。
アルはバーニィが腹から血ぃ流してるのを見てショック受けて今病院です。子供にゃあキッツい。
タイーホ組だと、ミーシャが一番軽傷ですね。でもテロリストか間諜(スパイ)か、何にせよ非合法工作員扱いなので未来は暗いです。正式な戦闘扱いにゃ、どうあがいてもなりませんわな。
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