偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第19話 いい話には裏が、というか裏が先でいい話が来た

 ここは地球連邦軍宇宙基地ルナ2、最前線の基地である。元々は資源採掘用の小惑星を運んで来て(ラグランジュ)3ポイントに据えた物を、軍事要塞化したものだ。

 

 

「あー、久しぶりですね。前来たときは、いったん軟禁されたんですよね」

「そうだったね。あの時はあのまま軍法会議か軍事裁判か、って思ったよ」

 

 

 第2艦橋(サブブリッジ)の船窓から、近づいて来るルナ2の姿を見遣り、アムロ、エグザベは呟く。そこへリュウ少尉が口を挟んだ。

 

 

「まあ、そうならなかったって事でいいじゃないか。気にしても、あまりいい事ぁ無い」

「ま、そういうこったな。とりあえずは、この戦争を勝つ事からだ。その後は、まあ色々考えんといけねえけども、よ」

「僕が言いたい事、全部言われちゃいましたよ」

 

 

 カイに続けて、少々おどけてハヤトが語る。皆は笑声を上げた。

 

 

「しっかし、核攻撃は阻止できてほっとしたぜぇ」

「向こうの艦長も、核攻撃やりたくなかったらしいですよ。僕らも『戦意』が見えなかったっていうか」

「ああ、わかるわかる」

「助かったわよね。まあでも、そういう良心的な奴らも、結局はコロニー落としとか虐殺とかの片棒担いでるのよねえ……。ふぅ」

 

 

 シイコ中尉が悄然と溜息を吐く。周囲も少ししんみりとした。そしてホワイトベースは、ルナ2へ入港して行った。

 

 

 

*

 

 

 

 白色をベースに、青でカラーリングされたガンダム、RX-78-NT1アレックスが宇宙を()ぶ。ここはルナ2周辺の演習宙域だ。アレックスを駆るアムロは、その反応性に快哉を叫ぶ。

 

 

「凄い! 打てば響く様だ!」

『確かに! 今まで避けれなかった攻撃も、たぶん問題無く避けれるぞ』

 

 

 これまで避けれなかった攻撃などほとんど無かったのにそう言うのは、エグザベだ。エグザベはアムロのアレックスで白色の部分が銀色、青色の部分が黒色の機体、コードネームが01アレックス、と名付けられたMS(モビルスーツ)に乗っている。

 そしてそこに乱入者が現れる。RX-78-NT2アレックス2、シイコ中尉の機体だ。この機体は全天モニタとリニアシートは搭載していないが、その代わりにコアファイター対応であり脱出機能は高い。また設計当初よりマグネット・コーティング技術を使う事はアレックス同様に織り込み済みであり、異様に高い反応性を誇っていた。

 ちなみにアレックス2のカラーリングは、アムロ機のアレックスで青い部分が赤で塗装されており、GMなどに近い色合いになっている。

 

 

『アムロ君! このわたしの想い! 受け止めて!』

「想いを受け止めるのはかまいませんが、撃墜判定はゴメンです!」

『つれないわね! うふふ!』

 

 

 そして一方のエグザベは、ハブられてしまって少し唖然としている。

 

 

『ええっと……』

『あ、エグザベさん。だったら僕の完熟訓練を手伝ってもらえないかと』

『ああ、ハヤト。アムロが使ってたガンダム、どんな感じだい?』

『アムロの操縦って、ちょっとクセがあったみたいなんですけど、アムロの親父さんの調整のおかげですぐ馴染みました。馴染みましたけど、やっぱりマグネット・コーティングされてる機体って正直キツいです。身体も、ちょっと心も』

『まあ、それはね。とりあえず基礎的なところからみっちりやろうか』

 

 

 ともかくエグザベは、ハヤト相手に機動訓練を開始した。一方のアムロとシイコ中尉は、何と言うかとても楽しそうに宙域を跳ね回っている。

 

 

「『()え』る!!」

『こっちも『()え』てるわ!』

「ですが!」

『だけど!』

 

 

 エグザベとハヤトは、地味に地味に地味に地味に、基本動作を延々繰り返す。まあ人にはそれぞれ向き不向きがあるのだ。アムロもシイコ中尉も、感覚に頼り切って限界値を詰めた方がいい。一方エグザベは能力的には彼らと同等かそれ以上ではあるが、感覚だけにも頼らないし、理屈詰めだけでもない。良い意味での万能型だ。

 ハヤトは万能型ではあるが、今のままだと悪い意味での器用貧乏になりそうである。だからエグザベは、自分の訓練にもなる様に、そしてハヤトの限界値ぎりぎり上を見極めて、ハヤトが壁を超える様に誘導していた。

 

 

 

*

 

 

 

 ルナ2基地のPXで、カイ、リュウ少尉、ジョブ少尉、セイラのガンキャノン隊はコーヒーブレイクをしていた。リュウ少尉が口を開く。

 

 

「なあ、今ん所はGM指揮官機乗りだったシイコ中尉とハヤトが機種転換して、アレックス2とガンダムに乗り換えるんだろ? あとエグザベが乗っていた01ガンダムが1機余るんだが。戦力価値から言えば、キャノン隊から1人、01ガンダム操縦士(パイロット)に異動した方がいいんじゃねえか?」

「俺はパス、だぜ。白兵戦闘は、今の俺じゃ無理だ。苦手、とかじゃねえ。無理だ」

「カイと同じね。わたしも白兵戦闘は今のところ何のスキルも無いわ」

「セイラさんはハンマーとか似合いそうな気も。えっと。あっと。ご、ごめんなさい」

「いい子ね、ジョブ」

 

 

 リュウ少尉は、ああーっという感じで口を大開きにする。

 

 

「なるほどなあ……。俺も、しばらく訓練すりゃあどうにかなりそうな気はするんだが……。だが今すぐってのは無理な話だ。ジョブも、だろ?」

「僕も駄目ですね。というか、スキルがとかどうとかじゃなく、MS(モビルスーツ)の白兵戦闘はちょっと度胸が追い付きません。性格的なもんです」

「ふう、む。わかった、ブライトには言っておく。エグザベのだった01ガンダムは、予備機として後部MS(モビルスーツ)デッキだな」

 

 

 ここでジョブ少尉が思いついた様に口を挟んだ。

 

 

「そういえば、アレックスとアレックス2のシューフィッターやってたって中尉さん。クリスチーナ・マッケンジー中尉、でしたっけ? あの化け物機体のシューフィッターやれるんですから、けっこうな敏腕パイロットさんですよね?」

「何考えてるかわかるぞ、ジョブ」

「カイもわかるだろ? ホワイトベースにスカウトできないのかね。01ガンダムに乗ってもらえば」

「駄目だろ」

 

 

 カイに断言されて、『え』と言う表情になるジョブ。カイは噛んで含める様に言った。

 

 

「いや、あの人は駄目だろ。あの人は『戦える』人ではあるけど『戦う』人じゃねえ。ンな気がする。連れてったら、そうそうしない内に、あの人の中でなんか劇的に変わらん限り、確実にどっかで潰れる。そう思うぞ俺ぁ」

「……そっか、ねえ」

「俺もそんな気がするな。まあ、潰れなかったらそこからガラっと変わって、超A級の戦士になりそうな気はするがな」

「リュウ、連邦が欲しいのは戦士より軍人じゃないの?」

 

 

 まあそんなこんなで、ガンキャノン組は彼らは彼らで、仲良くやっていたのである。

 

 

 

*

 

 

 

 ルナ2の通信室で、ブライト艦長はワッケイン司令……つい先日に戦時昇進で大佐になったらしいが、戦争が終わったら戦時昇進は解除されてまた元の階級に復帰するはずだ。まあともかくそのワッケイン司令と並んで、ジャブローからの通達を受けていた。

 スクリーンには、かなりの肥満体の、ジャブローのモグラと揶揄(やゆ)される大物、ゴップ大将が映っている。ゴップ大将は口を開いた。

 

 

『ブライト中尉、(オトリ)任務、ご苦労であった』

(いや、(オトリ)って口に出してしまっていいのか)

『?』

「あ、いえ。労いのお言葉、ありがたく」

 

 

 にやりと笑うゴップ大将。ブライト艦長は、そして隣のワッケイン司令も、唾を飲み込む。このゴップは、無能の象徴の様に見られているが、けっして無能ではない。その評判をも武器にして、汚濁の中を泳ぎ渡る、ある意味化け物だ。

 

 

『で、だ。またもう少し、無茶を聞いて欲しいのだがね、ブライト中尉』

「……はっ。命令とあらば」

『そう硬くならんでもいい。見返りは、用意しておくとも。ブライト君には軍大学への推薦状を、わたし含む複数将官からと、推薦枠。まあただしその前に、候補生から直接任官したせいで履修しておらん士官学校の課目を、ちゃんと履修してからになるが、ね。

 そしてエグザベ・オリベ曹長、アムロ・レイ曹長、カイ・シデン曹長、ハヤト・コバヤシ軍曹、セイラ・マス軍曹に士官学校への推薦状を、わたし含む複数将官から。そして士官学校の推薦枠、も』

 

 

 ゴップ大将は、目を細める。ブライト艦長は生きた心地がしない。

 

 

『ここでだね? おそらく普通であれば彼らは、ばらばらの別々の士官学校に放り込まれるだろうね? だが、わたしの名前で確約しよう。全員、ナイメーヘン士官学校行きだ。卒業後は、可能であれば『わたしの』派閥の部隊に『君も含め』抱え込みたいね。それほどに、『わたしは』君達を見込んでいる……』

「……はっ。あ、ありがとうございます」

『それと、だ。当人が望めば、だが』

 

 

 そしてゴップ大将は、微笑んで言う。だが、目が笑っていない。

 

 

『ニャアン君、だったかな? 『戦後』、連邦宇宙軍幼年学校への推薦状を書こう。そこで3年。その後『わたしの』推薦状付きでこれもまたナイメーヘン士官学校へ』

「そ、それは!」

『……彼女が軍から離れられる可能性は、低い。であるならば、なるべく良い環境を整えてやるのが『大人』としての役割だ。仕事だ。使命だ。

 彼女の『保護者』であるエグザベ曹長も含め、君と彼女と保護者との3人で、良く話し合いたまえ。……おそらくそれ以外に、彼女に『幸せ』を掴む道は、無い。その道を逸れてしまえば……。ニュータイプ研究所、という物を知っている、かね? 彼女を護るには……。わかる、ね?』

「……!!」

『『わたし』やその他の権力者たちを、上手く『利用』したまえ。どぶ泥にまみれても、護らねばならぬ『物』……。護らねばならぬ『者』は、あるだろう』

 

 

 ここで今まで空気だったワッケイン司令が、口を挟む。

 

 

「大将閣下、その辺でよろしいかと。それよりも、『無茶な話』の内容を」

『そうだったな。何、今までの話からすると大した事ではない。』

 

 

 それはそうだ、とブライト艦長は思う。

 

 

『……サイド5ルウムの跡地まで進出し暴れ回り、連邦宇宙軍がルナ2に集結してジオン軍某宇宙要塞を攻める準備をするのから、ジオンの目を逸らして欲しいのだよ。まあこれまでの延長と思えば、そう変わらん任務だ』

 

 

 けっこう大した事だった。

 

 

『その後は、ワッケイン君の率いる艦隊に合流し、某宇宙要塞を攻撃する一助となってもらう。その際はワッケイン君からの指示に従ってくれ。

 ああそうそう。第13独立戦隊に、ボール搭載型サラミス艦を2隻配属する。ただし艦長は君同様に士官候補生から特例で任官した少尉達だ。あまり重責を負わせんでくれよ?』

「……了解です。任務、拝命しました」

 

 

 ボール搭載型サラミス艦の艦長については、間違いなくブライト艦長がやり辛くならない様に、との配慮だ。それは間違いない。ただこれまでの経緯もあり、また何か裏があるのでは、とついついブライト艦長は思ってしまうのだった。




ジオン公国軍チベ級ティベ型重巡洋艦グラーフ・ツェッペリンとその艦長、フォン・フェルシング大佐はナレ死(いや死んでないけど)です。キリング中佐がギレンの権力を笠に着て出した、リボー・コロニー核攻撃命令を拒否するため、第13独立戦隊ホワイトベースと形ばかりの交戦をした後に、あっさり降伏しました。

そしてアレックス=アムロ、01アレックス=エグザベ、アレックス2=シイコ、ガンダム=ハヤトと言う様に配備されました。エグザベの01ガンダムは、ホワイトベースの後部デッキで塩漬けです。いざと言うときの予備機ですね。うん、いざと言うとき(邪笑)。

そしてゴップ大将無双。さすがゴップだ、なんともないぜ。なんともあるのはブライトとワッケイン。
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