偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第2話 赤・白・黒

 RX-78-2ガンダムの操縦士(パイロット)アムロ・レイは、地球連邦軍の技術士官にしてガンダムの開発者、テム・レイの一人息子である。彼は地球連邦軍強襲揚陸艦ホワイトベースがサイド7グリーンノアに入港する3日前に、ジャンク屋雇用の18歳の少年エグザベ・オリベと共に緊急の扱いで地球連邦軍に徴用され、とりあえず階級なしの特務兵の立場でガンダム以下RX-77-2ガンキャノン、RX-75-4ガンタンクなどRX計画MS(モビルスーツ)の開発に従事していたのだ。

 

 ……無論、欺瞞情報である。

 

 戦闘に於けるどさくさで、アムロとエグザベ、そしてニャアンは地球連邦軍の秘密兵器である3機のガンダムに乗り込んでしまった。アムロとニャアンに至っては、乗り込んだガンダムで、ジオン軍のザクⅡを撃破もしている。

 この状況下で動いたのが、テム・レイ技術大尉である。彼は重傷を負ってはいたが意識ははっきりしていたホワイトベースの艦長、パオロ・カシアス大佐と話し合い、時系列を3日(さかのぼ)ってアムロと、そしてオマケ的にエグザベを現地徴用兵扱いにして、彼らがガンダムに乗ったのが緊急避難的に許可され得る事にして、彼らの軍刑務所行きを免れさせたのである。

 ちなみにアムロがガンダム2号機に乗っていた事を知った時、テム技術大尉は取り乱した。そしてアムロを殴り、直後号泣して『わたしがガンダムを造ったのは、お前(アムロ)や若年の子供たちが戦争に行かなくて済むようにだったのに』と叫んだ。だが起きてしまった事は仕方ないため、彼はアムロ、エグザベ、ニャアンを守るために必死の工作に出たのだ。

 そしてアムロとエグザベは日を(さかのぼ)っての現地徴用、そしてニャアンについてはRX-78-1プロトガンダムのコアファイターを、ニャアンが乗ったデータを消去と共に記録装置を戦闘(バトル)ダメージを装って破壊。ニャアン自身にも口止めをしたのだ。これでプロトガンダムを操縦してザクⅡを撃破した人間は、正体不明となった。

 

 そして今、アムロとエグザベはガンダム2号機とプロトガンダムに乗り込み、サイド7グリーンノアの連邦軍施設に残された様々なRX計画関連パーツや備品など等の、ホワイトベースへの積み込み作業を行っていた。ちなみにプロトガンダムのコアファイターは、ガンダム3号機のコアファイターと交換済みである。アムロは通信モニターに映る、あちこち包帯だらけのエグザベに向かって言った。

 

 

「エグザベさん、大丈夫ですか?」

『ああ。全身いたるところ死ぬほど痛いけど、大丈夫さ』

「エグザベさんって、見た目によらず冗談を言う人だったんですね」

『……いや、冗談じゃないけど』

「……」

 

 

 一瞬絶句したアムロだった。

 

 

「ところでガンダム3号機はどうだったんですか?」

『一見アンテナが折れて左腕が肩口から欠損しただけに見えたんだけどね。肩口のジョイント部から、Aパーツ本体の内部構造にまで被害が行っててね。とりあえずホワイトベース艦内での修理は不可能。核融合炉の火を落として、ルナ2に寄ったら降ろして、そこで修理と改装をするって話だよ。テム技術大尉が言ってた。改装後は、G-3ガンダムって名前だってさ』

「父さん、ですか……」

 

 

 しみじみと、アムロは沈思する。彼はその口から、大きな溜息を吐いた。

 

 

「父さんが、あんな事を想っていたなんて、知りませんでした。気付いても、いませんでした。僕や僕と同じような年齢の子供が、戦争に行かずに済むように、このガンダムを造ったなんて……。父さんが、避難民よりもガンダムをホワイトベースに載せる事を優先したとき、怒りを感じました。でも、父さんはガンダムを優先する事で、より多くの被害が出ないようにって考えていたんです。

 ……何事も、きちんと話して理解し合わないと、駄目、なんですね。父さんに初めて殴られて、思い知りましたよ。そして父さんは、僕らが軍刑務所行きにならない様に、パオロ艦長に語らって、裏工作をしてくれた。そのために僕らが軍属になる結果になった事について、より一層思い悩んでいたみたいですけど」

『軍属ってのは狭い意味だと、軍事に関わる仕事をする民間人を指すから、正確では無いけどね。広義なら、軍人も含めて言うから、今の僕ら、特務兵、いわゆる三等兵扱いも含む事になるけどさ』

「……エグザベさんって、デリカシー無いって言われませんか」

『えっ……。なんで知ってるんだい?』

 

 

 アムロは再度、大きな溜息を吐く。エグザベは(ほが)らかに笑みを浮かべて言った。自分でも、世話になったジャンク屋の親父さんを亡くして(つら)いであろうに。

 

 

『さて、とりあえず大物はこのガンタンク運んだら終わりだね?』

「……そうですね。本当はガンダム3機、ガンキャノン3機、ガンタンク4機とパーツ類多数だったはずなんですが。ザクたちの襲撃で、ガンダム2機と中破機1機に細かいパーツ類。ガンキャノン2機と完全分解されたパーツ状態のが1/2機分。ガンタンクは残骸から集めたかろうじて無事だったAパーツBパーツコアファイター合わせてサンコイチしたのがこいつ1機と、あとはバラッバラのパーツ類。それとビームライフルやらスプレーミサイルランチャーやらハイパーバズーカやらシールドやら諸々」

『ガンキャノン2機とガンタンクは核融合炉の火が落とされてるから、再起動にはかなり時間かかるみたいだね』

「父さんがガンキャノン優先して、必死に整備してるらしいです。ただ、パイロットが……」

『あー……』

 

 

 本来サイド7の1バンチコロニー、グリーンノアの連邦軍施設には、ガンダム3機、ガンキャノン3機、ガンタンク4機の総勢14人プラス交代要員6人の20人のテストパイロットが存在していた。しかしザクⅡ2機の攻撃により、退避室や待機室のハッチが偶然開いていたなどの不幸な偶然により、テストパイロットのうち19名が死亡、残り1名も現状意識不明になっていた。

 生き残りは頭を打って意識不明だったが、レントゲンやMRIによれば重篤ではないため、意識さえ取り戻せば若干の経過観察を経て、任務復帰は不可能ではなさそうだ。不幸中の幸いではあった。

 

 

『ブライトさんが病床のパオロ艦長と相談して、とりあえずガンキャノン1機目動いたら、リュウさんを充てるって話だけど、その1機目再起動が何時になるか目途が、ね』

「……さて、ガンタンクはリフトに載せたし、細々(こまごま)したパーツを集めましょうか」

『そうしよう』

 

 

 アムロとエグザベは各々の機体を操り、大量の荷をホワイトベースへと上げて行った。

 

 

 

*

 

 

 

 ニャアンはホワイトベースに避難して来た難民たちの中で、フラウ・ボウというアムロの幼馴染の娘と共に年端も行かない子供たちの面倒を見させられていた。正直なところ彼女には、そこまでの心の余裕は無い。無いのだが……。

 

 

(エグザベ兄さんもがんばってる。わたしもがんばらないと)

 

 

 包帯だらけのまま、プロトガンダムで出て行ったエグザベの後ろ姿を思い起こし、彼女は必死に立ち上がる。幸いなことに、過半の子供たちにはちゃんと親が生き残っていた。しかし(わず)かながら親や家族に死なれた子供たちもいる。カツ、レツ、キッカと言う3人だ。

 

 

「レツ! キッカ! 走り回らないで!」

「「わーい!」」

「カツ! 2人を止めて!」

「うん」

「そう言いつつ、いっしょになって走らないで!」

(フラウさん、たいへんそうだな。とりあえず3人の洗濯物、(たた)んでおこう)

 

 

 サイド7の1バンチコロニー、グリーンノアは先日のジオン特殊部隊襲撃により、けっこうなダメージを受けた。大きな損害を受けたのは軍、民間を問わずシェルターなどの避難施設、そして市街地、連邦軍施設である。グリーンノアに残りたいという人員も多々あったが、グリーンノアを退去したいという民間人も先頃ホワイトベースに避難してきた者達を中心に、多々存在していた。

 ニャアンはその難民たちの中、必死になって少しでもエグザベのためになろうと働いていた。今現在、彼女にとって『家族』と言えるのは、エグザベしか居ないのだ。彼女はプロトガンダムに乗って艦の外に出るエグザベが帰る場所を、必死になって守っていたのである。

 そんな中、彼女の意識の端、彼女をこれまで幾度となく助けて来た『嗅覚』に、何かが引っ掛かった。

 

 

(……!? 嫌な臭い!?)

「? どうしたの、ニャアンちゃん」

「フラウさん! 『来る』!!」

「え……?」

 

 

 ニャアンは叫ぶや否や、その場から駆け出した。彼女は12歳にしては異様に(さと)い子供だ。自分の『嗅覚』だと論拠としては周囲の大人たちに対して(はなは)だ頼りない事、そしてこの『危機感』を(わず)かでも共有してくれそうな人物が誰なのかという事を、理解していたのである。

 彼女は、ホワイトベースの左舷MS(モビルスーツ)デッキでガンキャノンの核融合炉再起動作業をしているテム・レイ技術大尉の元へ駆け出した。テム技術大尉は、ニャアンと、そして彼の息子であるアムロ・レイが、通信不可能状態であったガンダム3号機に乗っていたエグザベからの『叫び』を傍受し、『何故か』双方ともザクⅡの操縦席(コクピット)をビームサーベルで(つらぬ)いた事を聞かされている。少しでも彼女の言い分に耳を貸してもらえそうな大人は、テム技術大尉しか居なかった。

 そしてニャアンは、本来テム技術大尉が左舷MS(モビルスーツ)デッキに居る事など知る(よし)も無いのに、『何故か』構造をよく知らないはずのホワイトベース内を、正確にテム技術大尉の居場所目指して走り抜けた。

 

 

 

*

 

 

 

 アムロのガンダムと共に、連邦軍施設と残存部品群……ほとんどが使用不可能な残骸であり、使えるパーツ類は(わず)かにも無かったが、それらをスーパーナパームで焼き払ったエグザベのプロトガンダムは、ジオン軍軽巡洋艦ムサイ級ファルメルの攻撃に(さら)された、サイド7は1バンチコロニー、グリーンノアの宇宙港にやって来ていた。グリーンノアの連邦軍施設跡地に潜入していた、ジオン軍のスパイを追って来ていたのだ。

 

 

『よし……。う、撃つぞ! 撃つぞ! 撃つぞおおおぉぉぉ!!』

「まて、アムロ君! ビームライフルでは人間のノーマルスーツを撃つのは無理だ! 結局のところ、けん制にしかならない。だから……」

 

 

 そう言って、エグザベはFCSを操作、ビームライフルから頭部60mmバルカンに切り替える。

 

 

「撃つなら、こっちだ。単射のビームライフルより、弾丸が拡散するこちらの方が、ほんの少しでもあたる可能性が高い。まああたる可能性が少ないのは同じだから、あくまで脅しだ」

 

 

 ガンダム2機の頭から、バルカン砲の弾が短時間だけ射撃される。まあ、あたる見込みは無いので、全部の弾丸を使い切る事は無い。

 

 

『こちらホワイトベース、出港する。ガンダム、プロトガンダムはホワイトベース左右10km近辺に付き従い、護衛を』

「こちらプロトガンダム、エグザベ。了解ですブライトさん」

『こ、こちらアムロ、ガンダム、了解』

 

 

 エグザベは思う。

 

 

(ニャアン、テム技術大尉に敵襲を警告したって話だけど。『僕ら』の、この『感覚』は何なんだろう。あまり……話さない方が良さそうだな。ニャアンにも言い聞かせておこう。テム技術大尉にも、お願いしておかなきゃ)

 

 

 

*

 

 

 

「ええい、連邦のMS(モビルスーツ)は化け物か!」

 

 

 ジオン軍宇宙攻撃軍ドズル・ザビ中将旗下の特殊部隊を率いるシャア・アズナブル少佐、通称『赤い彗星のシャア』は、舌を巻いた。宇宙空間で彼と部下のスレンダーは、射出されたザクを受け取って敵艦である木馬の近傍へと取って返した。そこで護衛機である白いMS(モビルスーツ)と黒いMS(モビルスーツ)に阻まれたのだ。

 白を基調とした機体は素人臭さが抜けていないが、それでもザクマシンガンをものともしない装甲と機動性に物を言わせて突っ込んで来る。もう1機の黒い機体は、こちらも動きは素人臭さは感じさせるが視野が広く、こちら(シャア)の目くらまし的機動を読んで先を潰して来る。

 

 

「ば、馬鹿な。直撃のはずだ! ……スレンダー、来たか! 敵のMS(モビルスーツ)の後ろへ!」

『しょ、少佐! 武器が違います! あの武器は自分は見ていません!』

「あたらなければ、どうと言う事は無い! 援護しろ!」

 

 

 そこへまた1機、トリコロールに色分けされた小型戦闘機が木馬から姿を現す。それの銃撃を避けたスレンダーのザクⅡに、白いMS(モビルスーツ)が撃った光条が命中した。一瞬の閃光。

 

 

「す、スレンダー……。一撃で、一撃で撃破か! 何と言う事だ、あのMS(モビルスーツ)、戦艦並みのビーム砲を持っているというのか。くっ!」

 

 

 一瞬の操作。シャアの赤いザクⅡは、白い敵MS(モビルスーツ)の腹に蹴りを見舞う。瞬間、白いMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)が叫んだ様な気がした。そしてそこにスラスター全開で突入して来る、黒いMS(モビルスーツ)。狙いはシャアのザクⅡの、伸びきった左脚。

 

 

「うわぁっ!? く、やられるか!」

 

 

 黒いMS(モビルスーツ)は、シャアのザクⅡの左脚を、膝から斬り落とすや、背中のランドセルにビームサーベルを戻し、腰からビームライフルを抜いて発射する。シャアのザクⅡは機体をきりもみさせて、そのビームを(かわ)した。かすったビームが、機体右脚の動力パイプを焼く。

 

 

「やむを得ん! 撤退だ! ……!?」

 

 

 シャアの赤いザクⅡは、背中のランドセルのスラスターを全開にして、その場から離脱する。しかし白いMS(モビルスーツ)のビームライフルが、閃光を放つ。

 

 

()けられん!?)

 

 

 絶体絶命のシャアは必死で機体を(よじ)り、赤いザクⅡの右脚だけを犠牲にしてぎりぎりで致命打を回避。同時に太腿(ふともも)の付け根から機体の右脚を切り離し、誘爆を()ける。

 そしてシャアは、スラスターのリミッターをカット、爆発寸前まで出力を上げて逃走した。

 

 

「この屈辱、かならず晴らしてみせる! 白いMS(モビルスーツ)! 黒いMS(モビルスーツ)!」

 

 

 去っていくスラスター炎を見遣りつつ、黒と白のMS(モビルスーツ)は、(きびす)を返して木馬型の強襲揚陸艦に向かい、スラスターを開放した。




祝、シャア初登場。とりあえずザベ君のプロトガンダムがアムロのガンダムに協力したことで、シャアの被害は拡大です。次に登場するときには、もしかしたら赤いザクⅡS型、両脚だけ緑色とかありますかもねー。

あと、ニャアンはプロトガンダム降りました。いやさすがに12歳女児をMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)として採用するって、何事。アムロとエグザベも、書類を操作して3日前に現地徴用兵の特務兵(事実上の三等兵扱い)にしてあります。これで彼らを軍刑務所送りにする論拠はとりあえず暫定的にあくまで表向きには消えています。バレたら物理的に全員の首が(パオロ艦長も含め)飛びますが。物理的に。比喩的表現じゃなく。
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