偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第20話 コンスコン隊ふたたびあらわる

 テム技術大尉とクリス中尉は、ルナ2でお別れとなった。まあテム技術大尉はおそらく向こうから、何度も接触を取って来るであろう事は分かり切っているが。それとGM指揮官機は2機ともルナ2で降ろす事になった。とりあえず予備機として01ガンダムが積んであるので、そんな豪勢な部隊に更にGM指揮官機などという高級機を2機も予備機として置いとくのは勿体ないのだ。

 まあだが、GM指揮官機が高級機なのも、もうそろそろ終わりかも知れない。テム技術大尉が頑張ったためなのか、彼らがルナ2を出港する際には、ルナ2周辺の演習宙域で新型のGMが機動戦闘の訓練をしているのが見えたのだ。

 

 

「あれは……。最新鋭機のGMスナイパーⅡか」

「あっちのは何だい、アムロ」

「ああハヤト。あれは後期生産型GM、GMコマンドGSって言われる宇宙用のGMコマンドさ。他にもGMコマンドにはコロニー内で使用するっていう触れ込みになってるけど、地上戦が延々続く様であればたぶん重力下に配備されてたであろうG型があるよ。それとその先行型みたいな形で、親父が前にちょっとの間だけ居た、北極圏の基地に配備されてた寒冷地仕様のD型のGMがあるけれど。ほとんどG型GMコマンドと変わらないらしいね。頭部形状とか微妙に違うけどさ」

「台詞長いよ」

 

 

 そしてホワイトベースはルナ2から少し離れた場所で、ボール搭載型サラミス艦マサチューセッツ及びイリノイと合流する。各々の艦長は、マサチューセッツがダスティン・モーフェット少尉、イリノイがエヴァン・ファルコナー少尉である。ブライト艦長自身はルナ2基地で出港前に直接会っていたらしかったが。

 ちなみに通信スクリーンでホワイトベースの艦橋(ブリッジ)に子供がいることを知り、サラミス艦艦長たちはびっくりしていた。しかしあらかじめ『あの艦には色々変な事、軍の慣例からして考えられない事があるが、特殊な環境の部隊であるので気にしない様に』との申し送りを受けていたらしく、口を出して来ることは無かった。

 

 

 

*

 

 

 

 サイド5ルウムの跡地、というかその宙域だが、ここはエグザベにとって最悪の思い出の地であると同時に、忘れがたい幸せが存在した地でもある。そんな彼の前に、1基のスペースコロニーが姿を現した。ホワイトベース第2艦橋(サブブリッジ)の船窓から、彼は呟く。

 

 

「……テキサス・コロニーか」

「それって?」

「ああ、ニャアン。食事を持って来てくれたのか」

「うん」

「ありがとう。テキサス・コロニーは、地球のテキサスを模した観光コロニーでね。ここ(ルウム)に来る前にデータベースで調べ直したんだけどさ。軍事的価値がまったく無い事から、連邦もジオンも見放してて。それで整備もされなくて、ミラーも傾いたまま止まってる。

 ……それでも、さ。昔、小さい頃に。両親と観光に来た事があったんだよ」

「……」

 

 

 ニャアンが、エグザベの手をぎゅっと握った。エグザベはそれを握り返す。

 

 

「エグザベ兄さん、ご飯にしよう」

「ああ」

 

 

 周囲の皆は、何も言わない。ここは、彼らだけにしておくべきだ。そう、理解していたのだ。

 

 

 

*

 

 

 

 オスカとマーカーは、アクティブセンサーは全面カットし、パッシブセンサー系のみで周辺宙域をチェックしていた。

 

 

「うーん」

「どうしたマーカー」

「テキサスゾーンは、テキサスコロニーを中心に暗礁空域やコロニー残骸が散乱しててさ」

「ああ、パッシブだけじゃ判断し難いよな」

「あ」

 

 

 マーカーが一瞬、何かの反応を見つけた。

 

 

「オスカ、これ」

「うん。ブライト艦長、おそらく我々と同様にアクティブセンサーをカットし、パッシブセンサーだけで航行していると思われる艦影複数をキャッチ」

「チベと、ムサイ複数……合計7隻です、ね」

「何!? ……相手はこっちが見つけた事を?」

「不確定ですが、まだ分かっていない可能性が高いと」

「……」

 

 

 ブライト艦長はしばし考える。

 

 

(……ニャアンが『嫌な臭い』を訴えて来ない。つまりはこちらに対し、敵意を持っていないって事だ。となると……)

「「……」」

「フラウ・ボウ、第2艦橋(サブブリッジ)に繋いでくれ」

「りょ、了解です!……繋ぎました!」

「シイコ中尉、それにMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)諸君。敵艦隊を発見した。第一種戦闘態勢。MS(モビルスーツ)各機、順次発艦せよ。ただし……」

『『『『『『……』』』』』』

 

 ブライト艦長の言葉を、スクリーンの向こうの皆は黙って聞いている。ブライト艦長は続けた。

 

 

「発艦後、ホワイトベース周辺に展開、攻撃準備態勢を。それとリュウとジョブは、各々マサチューセッツとイリノイのボール隊を指揮下に置け。あちらには俺から連絡して置く。カイ、ガンキャノン隊、特にリュウ、ジョブに対する指揮権を、特例で与えて置く。お前の判断で、支援の指揮を執れ」

『『『了解!』』』

「ガンダム各機は……。シイコ中尉、済まないが」

『了解。わたしの戦い方じゃ、指揮は執れないものね』

「ああ。エグザベ、頼めるか……じゃなかった。命令する、ガンダム各機の指揮を執れ」

『……了解です』

 

 

 ここであえて命令にしたのは、この件に関して全ての責任はブライト艦長にある、と明確にしたのである。もしこれが『頼んで』いたら、責任は『頼み』を了承したエグザベ側に来る事になる。それはブライト艦長にとって、赦されざる事であった。

 

 

「攻撃準備態勢が整い次第、アクティブセンサーを全開にして、『あちら』をこちらが見つけた事を知らしめる。そして先手先手と取って、敵艦隊を撃滅する!」

『『『『『『了解!』』』』』』

 

 

 ホワイトベース、第13独立戦隊は動き出した。

 

 

 

*

 

 

 

 ジオン公国ドズル中将麾下の宇宙攻撃軍に所属するコンスコン少将は、自らの機動艦隊を率いて訓練航宙を行っていた。と言ってもこの訓練は、ザクⅡで腕を磨いた熟練操縦士(パイロット)達のリックドムへの機種転換訓練が主である。そして彼らは一昨日に訓練を完了しており、今は宇宙要塞ソロモンへ帰還前の休養を取っていたところである。

 

 

「テキサスコロニーか。損傷して具合の悪いコロニーとは言え、上陸休暇ができたのは僥倖(ぎょうこう)であったな。1ヶ月と半、いや2ヶ月弱前、か? どれぐらいであったか。悪夢だったわい。艦こそ失わなかったものの、ザクのほとんどを喪失……。化け物どもめ」

 

 

 かつて彼は、ホワイトベースが大気圏突入の際に、シャアの失態の尻ぬぐいをするために攻撃をかけた事がある。しかしその際に、15機擁していたザクⅡのうち10機を撃破され、2機はそのままコムサイで大気圏突入せざるを得なかったため、3機しか手元に残らなかったのだ。おまけにコムサイも1機、喪失している。

 

 

「だが今度遭遇したらそうはいかんぞ。艦は旗艦のチベとムサイ級6隻。チベの格納庫も改修済みでMS搭載数は12。合計で36機の、完璧に機種転換訓練を行ったベテラン操縦士(パイロット)の乗る、新型MS(モビルスーツ)リックドム。負けるはずが無い!」

「こ、コンスコン提督! 敵艦が発するアクティブセンサーをキャッチ! 同時に敵はMS(モビルスーツ)でこちらに突入してきます!」

「!! うろたえるな! 即座に全リックドムを出せ! その後ムサイ艦は即座に艦首を敵に向けろ! チベはMS(モビルスーツ)発艦後、格納庫ハッチを即座に閉じさせるのを忘れるな!」

 

 

 チベもムサイも、MS(モビルスーツ)運用艦としては設計が古いのか、かなり無理や無駄な部分がある。ムサイはMS(モビルスーツ)発進口が後ろ向きであり、MS(モビルスーツ)を射出後に180度転回しなければ敵に向かい攻撃をする事ができない。チベはチベで、なんでそんなに巨大にMS(モビルスーツ)発進口を開けるんだと言いたくなる構造をしている。お前は宇宙のガウ攻撃空母か、とさえ思う。そこを狙って撃たれたら、かなり厳しい事は確かだ。

 まあそれについてはホワイトベースも、大きく発進口を開けるのは確かだ。しかしホワイトベースの場合、その発進口を狙われても実は致命的な部分には直結していなかったりする。不合理な構造も持ち合わせてはいるが、これは及第点と言えるだろう。

 閑話休題(それはともかく)、コンスコン少将は提督席に座り、堂々たる姿勢で指揮を執った。

 

 

 

*

 

 

 

 アムロは数を数える。

 

 

「1つ! 2つ! 3つ!」

 

 

 1つ数えるたびに、1つの命が消えて行く。アムロにはそれが『読め』る。アムロにはそれが『聞こえ』る。だがもはや彼は躊躇(ためら)わない。誰だって生きたいのだ。ならばアムロ自身だって生きたいのだ。アムロの仲間たちも生きたいのだ。

 それを妨げる相手ならば。

 

 

「……4つ! 5つ! 6つ!」

 

 

 ビームライフルをアレックスの腰のラッチにいったん戻す。そしてビームサーベルを機体の両手に抜き放つ。そこへリックドム2機がヒートサーベルを振りかざして、前と、そして後ろから突っ込んで来る。

 だが、アムロは後ろにも『眼』がある。比喩(ひゆ)的な意味合いだ。現実にあるわけでは無い。だがアムロには『()え』ている。二刀流のビームサーベルは、前方のリックドムの操縦席(コクピット)と、後方のリックドムの核融合炉を、同時に貫く。

 

 

「7つ、8つ!!」

 

 

 アムロがスラスターに火を入れてその場から飛び退くと、後方にいたリックドムの融合炉爆発に巻き込まれて、前方にいたリックドムが爆散した。

 そしてエグザベからの指示。

 

 

(アムロはチベを。僕はムサイ艦を()とせるだけ()とす。シイコ中尉はアムロに群がって来る奴を『消して』ください)

((了解!!))

(ハヤト、聞こえるか? 君は支援機隊の直掩。ガンキャノンと、そしてボールに、指一本触らせない様に)

(わ、わかったエグザベさん!)

 

 

 そして黒と銀の流星が()ぶ。ビームが(ほとばし)る。瞬間、ムサイ艦が次々に爆光に変わった。多数の『人』の、死に際の絶叫。

 ボール隊の斉射で、近づき過ぎたムサイ艦が轟沈。ハヤトがビームサーベルでリックドムを『開き』にする。カイとセイラのガンキャノンが各々の背後に回り込んだリックドムを狙撃して破壊する。リュウ少尉とジョブ少尉がカイの指示に従い、自身のスコアよりもボール隊を指揮して、的確に砲弾を送り込む。

 

 

(シイコ中尉……シイコさん! 背中、お願いします!)

(任せて! アムロ君! うおおおぉぉぉ! 来んなよ! 邪魔すんな!)

 

 

 アムロは突撃し、ビームサーベルをチベの機関部に深々と刺す。そしてそのまま後退。いわゆるビームサーベルの刺し逃げ攻撃、だった。

 

 

 

*

 

 

 

 コンスコン少将は呆然としていた。

 

 

「ば、馬鹿な……。36機のリックドム、が。3分、いや2分少々で、ぜ、全滅、だと? しかもボール1機すら()とせなかった、だ、と?」

「コンスコン提督! 少将閣下! た、退艦を! お逃げくだ……」

 

 忠義溢れる部下の声に、一瞬だけコンスコン少将は我を取り戻し掛けた。だがそこまでだ。チベの機関部が破壊され、そこから溢れ出た致命的なエネルギーの奔流が、部下も、彼自身をも、焼滅させて行く。コンスコン少将には最後まで、何故敗北を喫したのかが理解できなかった。

 

 

 

*

 

 

 

 ホワイトベース、マサチューセッツ、イリノイの3隻の集中砲火で、最後のムサイ艦が火球と化す。ブライトはオスカとマーカーに命令を下した。

 

 

「オスカ、マーカー、アクティブセンサー使用を許可する。周辺宙域をチェックしろ!」

「「了解です!」……どうやらあのムサイ艦が最後だった模様です。周辺宙域に艦影無し。MS(モビルスーツ)の反応もありません。残骸のみ、です」

「そうか。とりあえずは第二種警戒態勢に移行し、MS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)は2交代で休憩に入れ。フラウ、通達を」

「了解です」

 

 

 フラウ・ボウも随分と通信士が板に着いて来た。もっとも、板に着かない方が幸せではあるのだろう。暗い宇宙を見遣りつつ、ブライト艦長は溜息を押し殺す。左舷右舷のMS(モビルスーツ)デッキに、次々にMS(モビルスーツ)が着艦した。




さようならコンスコン。貴方の事は2分強~3分ぐらいの間、忘れない。NT-1が2機にNT-2、ガンダムが1機ずつ、ガンキャノン2機に量産型ガンキャノンが2機、ボール12機にサラミス2隻にホワイトベース。これだけ集まれば……。しかもボールとサラミス2隻以外は全員ネームド。いやサラミス艦の艦長は名付けましたけどね。

エグザベ君、内心で荒れ模様です。でも表には出しません。欠片も出しません。静かな、凪模様です。表は。と言いますか、あえて今回、エグザベ君叫んでません。戦闘中も。わざとです。彼、我慢してます。泣きそうなのを、怒りそうなのを。我慢してます。
でもって、仲間たち皆、それをなんとなく理解してます。NT能力がまったく無いリュウとジョブも、皆理解して、口出ししてません。対話を厭わないエグザベ君ですが、それでも……って時もあると思います。
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