偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第21話 チェンバロ作戦開始

 あれからホワイトベースを旗艦とする第13独立戦隊は、元サイド5ルウムの暗礁宙域に滞在し、そこでジオン軍艦艇を狩り続けた。ジオン軍側からすれば、この宙域に敵対的な何か、間違いなく連邦軍の部隊が居るとは理解してはいたが、それがこの様な小規模艦隊だとは思ってもいなかっただろう。

 そして今、ホワイトベース、マサチューセッツ、イリノイの3隻はコロンブス級オキノトリシマ、チチジマの2隻から補給を受けていた。彼らは封緘命令の開封コードを持って来ており、ブライト艦長が命令書を開封した結果この補給が終わり次第、第13独立戦隊はジオンの宇宙要塞ソロモン目指して航行中の、ワッケイン大佐(戦時昇進)が指揮を執る連邦軍連合艦隊第3艦隊に合流予定である。

 ちなみにワイアット中将率いる第1艦隊は、ルナ2からソロモンへの道中にミノフスキー粒子を撒きつつ、その露払いをするのが任務だ。それが済み次第、消耗した連合艦隊第1艦隊はルナ2に帰艦し艦隊整備に入る。そしてその後を追うティアンム提督率いる連合艦隊第2艦隊こそが、宇宙要塞ソロモンを叩く主戦力だ。第3艦隊は陽動、言い方は悪いが(オトリ)である。ぶっちゃけた話、第13独立戦隊の仕事がそのまま拡大したのと、あまり違いが無い。

 

 

『というわけでブライト艦長、ザザザッ諸君らの任務は最大の効率を上げたザザッことだよ。連邦軍情報部によれば、ザッソロモン方面とグラナダ方面の偵察部隊が幾つも旧サイザザッ5ルウム方面へと送り出され、そしてその全てが消息不明となった。故にコンスコン機動艦隊よりも大きい規模の艦隊が、ソロモンから進発している。

 必殺を期しているようだが、それに関わっている暇は君らザザッ無いからな。幸い規模が大きいだけ足は遅ザザッ。サイド5暗礁空域にソレが到着する前に、君らも我々も、さっさと離脱して命令書の通りに、だとさ』

「ありがとうございます、ハインライン艦長。MS(モビルスーツ)隊を周辺警戒に出しておりますので、それを収容しだい離脱します。……補給の隙を突かれて、自艦を撃沈されるなど、自分の立場になりたくは無いですからな」

『そうザザッば聞いておるかね? 地球では北米が連邦の手に戻ったとの事だぞ。若き戦術家、マット・ヒーリィ大尉のデルタ・チームが英雄的な働きザザザッ脱出直前のガルマ・ザビ大佐ザザッ打ち上げ直前のザンジバル級機動巡洋艦の発進を阻止、ガルマを捕虜にしたそうだ。それで中尉から大尉に特進したそうだがね、ヒーリィ大尉はザッ』

「おお、それはそれは」

 

 

 その他にも、コロンブス級オキノトリシマのハインライン艦長は、地球の色々な噂話をしてくれた。マット大尉、当時中尉のデルタ・チームが任務遂行中に、屍食鬼(グール)隊と遭遇して敵を全滅に追い込んだらしい。屍食鬼(グール)隊はジオン軍外人部隊とも内輪もめをしていた様で、最期の時には『あの化け物共さえ、あの化け物共さえいなければ!』などと叫んでいたらしい。たぶん『化け物共』というのは、ホワイトベース隊の事だ。

 それとレビル将軍は地上部隊を率いて、アフリカ大陸を掃討している様だ。そしてハワイはバッフェ中将率いる部隊がミデア輸送機を大量投入しての空挺作戦でGMの群れを降下させ、北米キャリフォルニアベースとニューヤーク基地が陥落したのと前後して、陥落したとの事。オーストラリア大陸はこれからとの事だが、時間の問題だろう。

 

 

 

*

 

 

 

 第2艦橋(サブブリッジ)のド真ん中で、ニャアンは磁力靴で床に貼り付きながら、エグザベ達と共に食事を摂取していた。チューブのドリンクは、やはり何となく味気ない。

 

 

「……そういえば、ニャアン。ブライト艦長と話した例の件。本当にいいのかい?」

「うん、幼年学校行く。それが確実に、まっとうに……。軍人って職業がまっとうなのかはわからないけど、まっとうに生きられる道だと思うし」

「そうか。じゃあ僕も士官学校コースは生き残ってれば確約されたみたいだし、どうにか軍大学コース行って、2人で准将ぐらいで退官目指して頑張ろうか。恩給、いっぱい出るし」

「うん」

 

 

 どうしてこの人は、期待とちょっとズレた事を言うのだろう、とニャアンは思う。まあ仕方ない。エグザベ兄さんはエグザベ兄さんなのだから。……なんという説得力。

 そのうちエグザベは、『ニャアンが結婚するときのための持参金、たっぷり稼がないとなあ』とか、本気でズレた事を言い出しかねない。そう言いだしたら、お尻でもつねってやろう、とニャアンは考えた。

 

 だが、言い出さなかった。エグザベは、もっと身近な、卑近の事を考えていたのだ。

 

 

「……次は間違いなく大きな戦いになる。注意してと言っても、意味はあまり無いだろうけど。でも、ホワイトベースを護れば、ニャアンも護られる……」

「……ありがとう、エグザベ兄さん」

 

 

 いつもこう、欲しい言葉をちゃんと言ってくれればいいのに、何故いつもどこかズレてるんだろう。そうニャアンは思うが、まあエグザベ兄さんだから仕方ない、と彼女はエグザベのパイロットスーツに寄りそう。流石の宇宙服だけあって、エグザベの体温は感じられない。それが少しだけ寂しかった。

 

 

 

*

 

 

 

 エグザベとニャアンを見ながら、シイコ中尉は頬が緩んでいた。まあ、どんなに自分たちが強くとも、死ぬときは死ぬ。RX計画テストパイロットになる前の戦いでも、トリアエーズやセイバーフィッシュに乗っていた仲間が大勢死んだ。あんなに腕前が良いパイロットでも、MS(モビルスーツ)とのハードウェアの差は如何ともしがたかった。そしてサイド7でも、テストパイロット仲間が大勢死んだ。あんなに優秀だったのに、待機室に閉じ込められたまま、彼女以外は全滅した。

 

 

「だから、なのよねえ……。わたしも考えた方、いいわよね」

「え? どうしましたか?」

「ああ、アムロ君。いえ、ね。歳の差とか、そういう事で躊躇してるヒマがあったら、行動あるのみかなあ、って」

 

 

 けれど、ここら辺は(ラグランジュ)5ポイントだから、サイド1宙域か、サイド4宙域に該当する。つまりはそこの法律が、本来適用されるわけだ。

 

 

「サイド1とかサイド4って、青少年保護育成条例とか施行されてたかしら」

「え」

「ああ、でも申し訳ないのは申し訳ないけれど、政庁ごと壊滅してるから法律は……。いえ、でも絶対この台詞は不謹慎、よねえ」

「あ、あのシイコ中尉、何を」

「ああ、でもやっぱり考えちゃうわ。……アムロ君、ちょっと席外すわね」

「あ、はい」

 

 

 シイコ中尉は床を蹴って、ふわっと宙に浮くと出口へ向けて虚空を流れる。ちょっとだけ、頬が熱かった。

 

 

 

*

 

 

 

 ジオン公国軍宇宙要塞ソロモン。ワッケイン率いる連合艦隊第3艦隊は、隠れ蓑にしていたサイド4の残骸を離脱、ソロモンに攻撃を仕掛けんとしていた。主力であるティアンム提督の第2艦隊からは既に、作戦コード『チェンバロを鳴らせ』が発信されている。チェンバロ作戦、開始であった。

 アムロが座すアレックスの操縦席(コクピット)に、艦橋(ブリッジ)からフラウの通信が送られて来る。

 

 

『アムロ、発進願います。進路クリア、よろし?』

「アムロ、アレックス、行きまーす!!」

 

 

 蹴飛ばされるかの様なGを尻に感じ、アムロのアレックスは宇宙に()ぶ。先に発進していたエグザベの01アレックスが、アムロ機の右斜め後ろに綺麗に並んだ。既に熟練の技量を感じさせる、見事な編隊行動だ。01アレックスの反対側には、シイコ中尉のアレックス2が並ぶ。そしてやや後方上に、ハヤトのガンダムがぴたりと付いた。

 

 

『皆、エグザベだ。ザザッまずはあまり要塞に深入りしない様ザザッ。パブリク戦闘艇が、ビームかく乱膜を張る。ビームライフルは使いづらい戦場だかザザザ』

「アムロ、了解」

『こちらシイコ、了解よ』

『ハヤトザザザ了解』

『ハヤトはザザ同じように、キャノン隊とボール部隊の直掩を頼むザザザッ、僕はその周囲でもう少し広く全体を護ザザザ。シイコ中尉とアムロは我々の切っ先だ。好きな様に敵を斬り裂ザザザザッ』

 

 

 エグザベの指示の元、隊は小さめに分散する。相互支援ができなくなるほどには離れない。第13独立戦隊とそのMS(モビルスーツ)隊は、ソロモン要塞へと突入して行った。

 

 

 

*

 

 

 

 エグザベは、味方のGMを連続で撃破して行く緑と青のリックドムを見つける。そのリックドムは、通常色のリックドム2機を引き連れている小隊編制の隊長機であり、相互の連携も悪くない。

 

 

(あいつらを、キャノン隊やボール隊に近寄らせたら駄目だ)

 

 

 エグザベは配下の通常色リックドムを、ビームライフルで狙撃する。瞬間、爆光が広がった。緑と青のリックドムが、こちらに気付くや吶喊(とっかん)して来る。

 

 

(何だ? 今、『義によって』とかなんとか叫ばなかったか、こいつ)

 

 

 一瞬、このリックドムの操縦士(パイロット)が心に強く思った事が『読』めた気がした。ちょっとばかりだが、エグザベは不愉快に思う。それを表に出しはしないが。

 義とか名誉とか、そんな物は『戦場』には在りはしない。そんな物があるなら、サイド5ルウムもサイド2ハッテも、サイド1もサイド4もサイド7も、襲われはしなかった。全滅しはしなかった。それきり、エグザベは青と緑のリックドムの操縦士(パイロット)を、意識から外す。そして無造作にビームライフルを撃った。これは引っ掛けである。

 見え見えの射線から、リックドムは見事な機動で避けて行く。だがその射線の先に居た部下のリックドムが爆炎と化す。青と緑のリックドム、その操縦士(パイロット)が、悲痛な声で叫んだ気がした。その隙を見て、エグザベはあくまで作業的に、ビームライフルを撃とうとした。そして急遽取りやめて、回避機動。

 彼は言葉に出して、呟く。

 

 

「赤い……新型? なんだ? だが、赤い彗星のシャア、か」

 

 

 青と緑のリックドムを救ったのは、赤い新型機である。その後方から、白一色に塗装されたこれまた新型機、そして両肩が赤く塗られたこれも新型機が出現した。

 

 

 

*

 

 

 

 シャアは叫ぶ。

 

 

「退け! ガトー大尉!」

『だ、だがシャア中佐ザザッ!』

『そうだ! ここで退いては、地球での任務をあえてザザザッで切り上げ、EXAMをこの機体に積み替えてまでソロモンに来た意味が無くなザザザ!』

『……冷静になれ』

「白狼殿の言うとおりだ! その相手は……!!」

 

 

 そして黒と銀のガンダムタイプMS(モビルスーツ)が、ビームサーベルを抜いて斬りかかって来る。シャアはビームナギナタで必死に応戦した。だがガンダムタイプがわずかに手首を捻り、絶妙な力加減を加えた事で、ビームナギナタは彼の高機動型ゲルググの手から弾き飛ばされた。

 シン・マツナガ大尉の白い高機動型ゲルググが、ガンダムタイプにタックルをする。しかしガンダムタイプは背中に目がついているかの様に、ぬるりと(かわ)すと、ニムバス・シュターゼン少佐の高機動型ゲルググに目標を変えてビームサーベルを振るう。ニムバス機の、左肩から先が斬り飛ばされた。

 

 

『ぐうぁ!? ば、馬鹿な! EXAMに選ばれたザザザッわたし、が、な、何!?』

 

 

 次の瞬間、ニムバス機のモノアイが赤く、紅く、血の色に輝く。そして敵のガンダムタイプに、これまでの数段上の速度で攻撃を開始した。だが黒と銀のガンダムタイプは、なんら痛痒を覚えた様子は無く、難なく(かわ)す。

 

 

「!!」

 

 

 そしてシャアは、一瞬の判断で白狼の機体とガトー大尉の機体に体当たりをし、『上方向から』の攻撃を避けさせた。何故避けられたのか、自分でも分からない。だが、『何か』が『()え』た気がしたのだ。そして一瞬前まで彼らの機体があった場所を、数発のビームが(よぎ)る。

 そこには青と白、赤と白の、黒と銀の機体によく似通ったガンダムタイプが存在していた。圧倒的な、圧倒的な『チカラ』を感じる。絶体絶命、だった。

 

 

「ニムバス少佐! シン大尉! それにガトー大尉! いいか、これは命令だ! 退け! この様な化け物共を相手になどしていられん! 我々の任務を思い出せ! 我々は敵の旗艦を狙い……」

(何……。わたしを……。壊す? 殺す、の?)

「な、なんだコレは! ニムバス少佐では、ない! なんだコレは!」

 

 

 無謀な攻撃を繰り返し、ニムバス少佐の高機動型ゲルググは見る間にズタボロになって行く。本来はシャアは、彼とニムバス少佐、シン少佐の3機の高機動型ゲルググでの、ワッケイン司令の旗艦撃沈を目的としていたのだ。しかしガトー大尉の相手がガンダムタイプであった事から、つい助けの手を伸ばしてしまった。彼としては、悔やみきれないミスではあった。

 

 ……そして。

 

 

「な、なんだこれは! 光が! ソロモンが、焼かれていく! なんだ、やめろ! 『わたし』の中に、『入って』来るな!! 死人の、声が!!」

 

 

 シャアとシン大尉、ガトー大尉は必死でその場を逃走する。後ろでニムバス少佐の機体が火球と化し、更にその背景では連邦軍の秘密兵器であるソーラー・システムで、ソロモン要塞が焼かれていた。




シャア、ようやく覚醒(ほんのちょっと)です。でも0.5レベルとかそういう事は言わずに、確実に1レベル以上にはなりました。ニムバスさん、おさらばです。ゲーム版設定なのか、小説版設定なのか、それは本作では永遠に明かされません。外道なのか、苦悩する騎士なのか、不明です。えいえーんにー、いーーー♪

前半と後半の落差が激しい。前半は石は破らないけどラブラブ天驚拳展開。後半は血で血を洗う戦闘シーン。
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