偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

23 / 54
第23話 とりあえず、超エース部隊の有効な使い方

 ホワイトベースの艦橋(ブリッジ)で、艦橋(ブリッジ)要員とMS(モビルスーツ)操縦士《パイロット》など等、艦の主要人員が集められていた。真ん中にいるのはセイラである。

 

 

「……と言うわけです。わたしはマス家の養子、セイラ・マスですが、それ以前の名前はアルテイシア・ソム・ダイクン。ジオン公国の前身、ジオン共和国を興したジオン・ズム・ダイクンの娘です。そしてシャア・アズナブルの正体は、エドワウ・マス、そしてキャスバル・レム・ダイクン。同じくジオンの息子、です。

 彼はジオン公国を牛耳るザビ家、デギン・ソド・ザビやギレン・ザビらに父、ジオンを殺されたと思い込んでいます。本当のところは分かりませんが、兄はその様にダイクン派重鎮のジンバ・ラルから教えられ、ねじ曲がってしまいました。そして彼はシャア・アズナブルとしてジオン軍に参加、のし上がって権力を得て、ザビ家に復讐するつもりなのです」

「「「「「「……」」」」」」

「ですが兄は、そのためなら何もかもを犠牲にしています。ジオンのコロニー落としに協力し、おそらくはスペースノイド虐殺にも何らかの……。あれは、完全に道を踏み外しているのです。……わたしは」

「うん、わかった」

「え」

 

 

 ブライト艦長の言葉に、セイラは目を丸くする。

 

 

「あの……。いいんです、か」

「いいも何も。君は戸籍上セイラ・マス、マス家のご息女、だろう。それにな……」

 

 

 急にブライト艦長の背中が(すす)ける。まるで跳満を某雀士に振り込んだ、敵役雀士の様だ。

 

 

「君もあのゴップ大将の前に立って、その言葉を聞いてみたまえ。あの方は、下手をするとそんな事は百も承知かもしれん」

「「「「「「あー」」」」」」

 

 

 その場のニュータイプ能力持ちが、全員頷く。ブライトの感じている恐怖というか、なんというか分からないじわじわとした畏怖が、ひしひしと伝わって来たのだ。ニュータイプ能力の無いリュウ少尉やジョブ少尉もまた、ブライトの顔色を見て何がしか感じた模様だ。

 

 

「まあそれに、君は本気でシャアを()とそうとしていた。本気でワッケイン司令のマゼラン級ハルを護っていた。疑うところなど、何一つない。まあ、だけど」

「だけど?」

「一応向こうは掴んでいる情報かもしれないとしても、だ。一応ワッケイン司令を通じて、秘匿レーザー通信でゴップ大将に面談を申し込んで来るよ。隠して置いていい情報ではないし、こうなったら正直に庇護を願い出て、あちらの懐に飛び込んでしまおう。

 何、あちらは腹黒い人だ。きっとズブズブに、双方Win-Winの取引を申し出てくれるだろうさ。ははは」

 

 

 ブライトの背中が、また(すす)ける。今度は役満でも振り込んだかの様だ。笑声が乾いている。台詞の内容に、全員が引き攣った笑顔を浮かべた。

 

 

 

*

 

 

 

 ソロモン改め地球連邦軍宇宙要塞コンペイトウの通信室から帰って来たブライト艦長は、四暗刻字一色大四喜のトリプル役満を振り込んだぐらいに背中が(すす)けていた。ミライが心配そうに言葉を掛ける。

 

 

「な、何があったの?」

「いや、大丈夫だ。エグザベ、アムロ、シイコ中尉、ハヤト、カイ、セイラ、リュウ、ジョブが居れば、どうにかなる、どうにでも、なるはずの、任務だ。たぶん、きっと、おそらく、だといいが、うん。それを庇護の引き換えに仰せつかった」

「「「「「「……」」」」」」

 

 

 ブライト艦長は、両手で顔をパン! と叩いて気合いを入れ直す。

 

 

「皆、よく聞いてくれ。連邦軍情報部が、ギレン・ザビが急ピッチで進めているある秘密兵器の情報を入手した。……密閉型スペースコロニー1基をそのままそっくり改造した、超巨大レーザー砲だ。……コロニーレーザー、ソーラ・レイ、だ」

「「「「「「!!」」」」」」

「我々に命じられた任務は、このソーラ・レイを破壊、少なくとも連邦軍本隊が進軍中には使用不可能なレベルまで損傷を与える事だ」

 

 

 そして彼はメモリーチップを、艦長席のスロットに差し込む。メインスクリーンに、模式図が浮かび上がった。

 

 

「サイド3ムンゾの3バンチコロニー『マハル』。住人は貧困層が多く、ジオン公国への戸籍登録すら行われていない民衆も多い模様だ。ギレンはこのコロニー住人150万人を強制疎開させ、コロニーそのものをレーザー砲に改造しているという事だ」

「なんてことを……」

 

 

 ミライの声がぽつりと響く。ブライト艦長は強い声で語った。

 

 

「第13独立戦隊は、第42独立戦隊と共に独力でサイド3ムンゾ宙域に隠密裏に侵攻、自力でマハル・コロニーを破壊し、自前の戦力で脱出する」

「第42独立戦隊とは?」

「コロニー破壊のための、専任部隊として臨時に設立された。旗艦はペガサス級ペガサス。随伴艦はコロンブス級ミシシッピとアーカンソー。このコロンブス級には、大量のミサイルが満載されている。コロニーレーザー内にこれらを突入させて、その基部のレーザー発振部にて外装を排除し、全ミサイルを射出する。

 まあ当然ながら、突入前に乗員は脱出。それ以後はAI操艦とリモコン操艦を併用する」

 

 

 ここでカイが疑念を呈する。

 

 

「なんでミサイルだい? そこまですんなら、艦を自爆とかは?」

「それは正確な知識が無いが故だな。考えてもみろ。艦というのは緊急時のために自爆機能はあるが、本来爆発して周囲に大ダメージを与えるような造りにはなっていない。普通にミサイルに頼った方が、確実なんだ」

「な、なるほど。自爆ってのは案外効率悪いんだな」

「一部の愚か者は、自爆攻撃とか特攻を賛美する馬鹿も多いんだがな。特攻とかだと、なんで爆弾に飛行機の本体という余計な代物まで付けてやらねばならんのだ。爆発力は、言っては悪いとは思わんが、落ちるぞ」

 

 

 そしてブライト艦長は続ける。

 

 

「我々の任務は、ペガサス級ペガサスのMS(モビルスーツ)隊と協力し、この2隻のコロンブス級をマハル・コロニーの中まで送り込む事だ。それと我々第13独立戦隊の僚艦であるマサチューセッツ、イリノイは現在突貫で改修工事を受けている。

 ボール隊の隊員たちは、本作戦ではGM……正確にはGMコマンドに乗り換えだ。マサチューセッツとイリノイの甲板と底面とに各々3機ずつ6機、計12機のGMコマンドを露天係止して現場まで運搬し、出撃する。いざとなったらGMコマンドは現場廃棄するが、人員は可能な限り回収だ」

「じゃあ彼らは」

「うむ、これも突貫で機種転換訓練に勤しんでいる。短期間であってもGMに乗れるというから張り切っている、らしい、たぶん」

 

 

 そこまで聞いて、エグザベが(おもむろ)に、大事な事を尋ねる。

 

 

「ペガサス級ペガサスの戦力は?」

「艦長はヒューイット・アーキン特務中尉。今回だけだが」

「特務中尉?」

「本来は民間人なんだがな。載せるMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)の管理のためにどうしても必要だとの事で、本作戦中に限り特別に階級が与えられた」

「でーじょぶなのかよぉ」

「命令権は俺にある」

「なら、まあ……」

 

 

 続けてブライト艦長が、MS(モビルスーツ)隊の内容を発表する。

 

 

「MS隊は、主軸となるパイロットが2人と、それのサポート要員が6人だとの事。機体はG-3ガンダムが1機、GMスナイパーⅡが1機、GMコマンドが6機だ。

 乗員は、G-3ガンダムがゼロ・ムラサメ少尉。GMスナイパーⅡがゲーツ・キャパ少尉。GMコマンドが、キリア・マハ少尉、サーカス・マクガバン少尉、クライヴ・フォレット曹長、トバイアス・マーカム曹長、ベサニー・プラント軍曹、ハリエット・ブルック軍曹」

「「「「「「……」」」」」」

「どうか、したのか?」

 

 

 MS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)たちの様子に、妙な物を感じたブライト艦長が尋ねる。代表してエグザベが、言葉を紡いだ。

 

 

「ゼロ・ムラサメ少尉ですが。プロト・ゼロ少尉と言えば、思い出せますか」

「!! あのジャブローでの! そうか、たしか人工的な……」

「ええ、強化人間、と言っていました」

 

 

 難しい顔になるエグザベに、ブライト艦長も眉をしかめる。

 

 

「となると、もう1人の主軸パイロット……。ゲーツ・キャパ少尉も、もしや」

「おそらくは」

「やれやれ、ゴップ大将はとんでもない任務を……。いや、仕方がない。賽は投げられ、ルビコン川は渡り、毒は食らって皿までなめる状態だ。突き進むだけだ」

「申し訳ないわ……」

「「「「「「気にしないでくれ」」」」」」

 

 

 セイラが悄然とする中、一同は異口同音に言葉を発した。

 

 

 

*

 

 

 

 第13独立戦隊と第42独立戦隊の合計6隻の艦は、厚いミノフスキー粒子に紛れて今、サイド3ムンゾの宙域にやって来ている。ここまで来るのは、予想以上に容易であった。理由はジオン本土の防衛部隊が意味も無く無駄に無節操にばら撒いた、ミノフスキー粒子の密度によるものだ。

 

 

「……だが、それに助けられてここまで来たが。ここから先は、そうは行かない」

「工業用コロニーなどの近傍では、ミノフスキー粒子による電波妨害他の効果によって、工作精度に問題が出るものね。だからここから先は、ミノフスキー粒子散布は基本的に許可されていない」

「俺たち自身で粒子を散布しようにも、電波障害が発生している事で逆に発見されるだろうな。

 ……ペガサスにレーザー通信を開け!」

 

 

 即座にメインスクリーンに、ペガサスの臨時艦長ヒューイット氏が映し出される。レーザー通信なので、ノイズはほぼ無い。

 

 

『ぶ、ブライト艦長。い、い、いよいよですかな?』

「ええ、ヒューイット特務中尉。これより最大戦速で、マハル・コロニーに奇襲をかけます」

『だ、大丈夫なのですよな?』

「ええ。ペガサス級は艦船の中でも、マゼランより頑丈なくらいです。航行不能になる前に、きっちり逃げ切れますとも」

 

 

 実際の所、艦の指揮を執っているのは後ろに映っている副長のなんとかいう少尉だ。臨時艦長のヒューイット氏は、実のところ強化人間たちの『運用』を調整するために『長』の立場にいるに過ぎない。ぶっちゃけその本分は、医療技術者なのだ。ブライト艦長は、後ろの少尉に目礼をする。向こうの少尉も、目礼を返して来た。

 

 

(ペガサス級のペガサスとホワイトベースは逃げ切れるが……。怪しいのはサラミス級マサチューセッツとイリノイの2隻、か。最悪の場合、2隻の乗員全てホワイトベースとペガサスに収容する事も考えないとな)

 

 

 そしてブライト艦長は、命令を発する。

 

 

「全ての艦にレーザー通信を繋げ! ……我々はこれより、サイド3ムンゾの3バンチコロニー、マハル! コロニーレーザー、ソーラ・レイに対する奇襲攻撃を敢行する! 全MS(モビルスーツ)発進! 最大戦速! なんとしてもマハル・コロニーの底面、コロニーレーザー発射口として開かれている部分から、コロンブス級ミシシッピとアーカンソーを送り込むまで、2艦には手を出させるな!」

『『『『『『了解!!』』』』』』

 

 

 第13独立戦隊と、第42独立戦隊は、最大戦速を絞り出して前進を開始する。目標は、マハル・コロニー……。コロニーレーザー、ソーラ・レイである。この作戦に、ティアンム艦隊とワッケイン艦隊の無事が掛かっているのだ。




と言うわけで、コロニーレーザーの工事、かなり前倒しにされていました。本来の工程表であれば、ティアンム提督がソロモンでおっ死ななかったために、マハルの工事が始まる前に青葉区へ進軍していたはずでしたが……。レビル将軍が毎ターン諜報に予算を必要な最大限投入していたため、諜報能力がSランクになっていたので、ギレンが慌ててマハルを疎開させたのを察知できたのです。

そしてゴップ。ブライトさんに無理難題を押し付けてます。でも彼なりに、強化人間の事とか色々考えての結果なんですよ。そして可能な限り、味方全員の間でWin-Winになるように動いてます。敵や対立派閥? なにソレ?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。