エグザベは咆えた。
「うおおおぉぉぉ!!」
アムロも咆える。
『うわあああぁぁぁ!!』
シイコ中尉は怒鳴る。
『手前らぁ!
ハヤトは唖然とするが、まあ仕事はちゃんとする。
『……っ!! と、リックドム撃破』
前衛組の4人は、NT-1の2人がソーラ・レイ周辺に遊弋しているムサイ級軽巡とチベ級重巡を1隻ずつ片付け、NT-2の女傑がゲルググ2機を撃墜、ガンダムがリックドム1機を
一方、ペガサスから発艦したG-3ガンダムとGMスナイパーⅡも、それぞれがパプア補給艦とゲルググを撃破。GMコマンドたちもそれぞれ集団で単機の敵機に襲い掛かり、どうにか下している。
ブライト艦長からの指示が飛んだ。ここら周辺は精密機器保護のため、ミノフスキー粒子はほとんど無いが故、通信のノイズは無い。
『よし、周辺敵機は排除できたな! コロンブス級ミシシッピ、アーカンソー、AI操艦にて前進!』
2隻のコロンブス級が、
『……ブライトさん!!』
『!?』
ニャアンの悲鳴にも聞こえる声が、響いた。通信機からは離れているはずだが、それでも拾えるほどの叫びだ。
『『嫌な臭い』です! 強い!!
『総員警戒を密に!!』
「……来るぞ!」
そしてエグザベは、恐るべき圧を感じる。アムロ、シイコ中尉、カイ、セイラ、ハヤトも同様な様だ。一方、G-3ガンダムとGMスナイパーⅡ……強化人間たちの機体は、何やら挙動がおかしい。
『ぐ…あ』
『頭が! 蛇が、うねる! くう、う……そ、
『な、なん、だ。この、痛み、は』
『ゼロ・ムラサメ!? ゲーツ、おいゲーツ! 馬鹿な、あいつは安定していたはずだ!?』
ペガサスの臨時艦長ヒューイット氏が
「ぶらう……ぶ、ろ!? 『ブラウ・ブロ』と読めたが……。いかん!」
エグザベは機体にビームライフルを撃たせる。アムロも、シイコ中尉も、カイも撃った。虚空に、炎の華が、2つ咲く。
(……なんと。 有線ビーム砲を狙い撃ちするとは。2基は射撃を放棄して避けさせたが、2基は撃墜されてしまったか)
命中したのは、エグザベとアムロの射撃だけだ。
(皆! 奴はコロンブスを狙っていた! アレが何を目的の艦か、理解しているんだ!)
(りょ、了解エグザベさん! 奴を、
アムロとエグザベが、ブラウ・ブロに
(まずい!!)
(エグザベ兄さん!)
(ニャアン!?)
次の瞬間、宇宙が光で満ちた。
*
光る宇宙に、緑髪、緑髭のジオン軍服の男が浮いている。エグザベ、アムロ、シイコ中尉、カイ、セイラ、ハヤト、ニャアンは同じく光る宇宙に浮かび、それと相対している。無論これは意識の投影であり、現実ではない。現実の空間では、エグザベとアムロの機体はブラウ・ブロと激しくドッグファイトをしており、それを追い詰めようとしている。
だがエグザベは変に思う。この男からは、殺気は色濃く流れ出している。悪意、と言えるものも同様に。ニャアンが『嫌な臭い』と感じるソレが、強く、強く流れ出しているのだが、エグザベからは薄っぺらく感じるのだ。
(あんた……。なんなんだ! なんでこんな強い殺意が、こんな強い悪意が、どうしてこんなにも薄っぺらい!?)
(え? エグザベさん? 悪意、が、薄っぺらい、ですか?)
(アムロ、感じないか?)
(そ、そう言えばどことなく)
現実空間の黒と銀のアレックスが、有線ビーム砲を蹴り飛ばし、コロンブス級への狙撃を阻止する。
(……それは、わたしが、何も持っていないから、かも知れませんね。空っぽ、なのですよ、わたしは)
((!?))
現実空間の青と白のアレックスが、有線ビーム砲のワイヤーを巻き込んで飛んで、狙撃を阻止するが、しかしブラウ・ブロ本体への攻撃を
そしてエグザベ、アムロ、シイコ中尉、カイ、セイラ、ハヤトは『
(あんた、シャリア・ブルって言うのか)
(……撃墜、しないのですか? できるでしょう?)
(……)
(エグザベ兄さん!)
(ニャアン!?)
(え)
エグザベが見遣ると、見覚えのある緑髪の少年と、白髪の少年が頭を抱えて
(まってろ、ゼロ! 今、取り除いてやる!)
(エグザベ兄さん、こっちも!)
(アムロ、そっち、ゲーツ少尉を任せる!)
(わ、わかりました! 皆、彼らを押さえ込んで!)
((((わ、わかった!))))
(ええっと)
(ええい、あんたも手伝え!)
エグザベの叫びに、シャリアは唖然とする。
(何故、です? わたしは敵、なのですよ?)
(そりゃそうだが! だけどそれとこれとは、別次元の話だ! 人として、駄目だろう見捨てたら! 僕だって、
その瞬間、シャリア・ブルをルウム戦役でエグザベが感じた物が、襲う。ルウム20億人の断末魔が、疑似的にシャリアを襲う。目を見開くシャリアに、エグザベが叫ぶ。
(けど僕は! ニャアンに会った! 僕と同じ経験を! 僕よりも小さな身体で! 心で! 受け止めて! それでも必死に生きてる! だから僕は、この娘に恥じるような生き方は、しない! できないんだ!)
(……!)
シャリア・ブルは、深く、深く溜息を吐いた。
(ふぅ……なるほど。わたしも彼らを押さえ込めば、いいんですね? それとお願いがあるんですが)
(……なんだよ)
(現実空間で、ブラウ・ブロのビーム砲、全部撃墜してもらえません? そうすれば、投降する理由付けになりますからね。ブラウ・ブロの他の乗員は、わたしが説得します。どうせキシリア配下のフラナガン機関から、権力で引き剥がされた人たちですからね。ギレン総帥に、不満は溜まってます)
(……)
現実空間で、エグザベの01アレックスと、アムロのアレックスが、同時にブラウ・ブロの有線ビーム砲を撃破する。その頃には、ブラウ・ブロと共に現れたゲルググやリックドムも片付いていた。
(ぐ、うう……)
(あ……。た、たすか、った?)
(ぐ、ま、また助けられた、か。流石だな、連邦の誇る『真正の』ニュータイプ、たち。俺たちみたいな『模造品』とはワケが違う、か)
(ゼロ少尉、そんな言い方はよしてくれ。僕らはしょせん、ただの
(……そっちも、そんなもん、か)
ゼロ少尉は、悄然としつつ疲れた笑顔を浮かべる。一方でゲーツ少尉は苦悩していた。
(くそ……。ムラサメ研はヤバいと思ってたけど、オーガスタ研も結局同じ、か。僕にも爆弾が埋まってた、とはな)
(……ゼロ少尉、ゲーツ少尉。ゴップ大将が君らとの共同作戦を言って来たのには、わけがあると思う。うちの艦長の台詞だけど、『あの人は腹黒いから、うまくWin-Winの取引にしてくれる』だそうだ。希望はある、さ)
((……))
そして光る宇宙が消えて、現実の宇宙に意識が戻って来る。しばしして、宇宙に浮かんだままだったブラウ・ブロから投降の信号弾が打ち上げられた。
*
元マハルであったスペースコロニー、コロニーレーザーであるソーラ・レイが、その基部から爆炎に飲まれ、崩壊して行く。それを後目に、第13と第42の独立戦隊は、最大戦速でこの宙域を離脱しつつあった。ちなみにホワイトベースの後ろには、4つのビーム砲台を全て失ったブラウ・ブロが曳航されている。
「シャリア大尉、本当に我々が連邦に投降して、生きていけるのか?」
「シムス中尉、そうしなければ撃墜されて死んでいた。まあギレン閣下の元にいるよりは、自由度は高いかも知れんよ?」
「……大尉。その眼だが、前よりも生き生きしていないか。連邦のニュータイプと交感した結果だとすれば……。興味深いな」
ブラウ・ブロの
*
秘匿性の高いレーザー通信で、ホワイトベースの通信室からコンペイトウとルナ2を経由してジャブローと繋いだブライト艦長は、ゴップ大将とのタイマンでの会談に、緊張していた。と言うか、これまではワッケイン司令という道連れが居たので、多少は楽だったのだが。
「……と言う事で、ソーラ・レイ破壊作戦は成功裏に終わりました。GMコマンド各機を現場廃棄することも想定していましたが、全機甲板に露天係止状態で回収してあります。マサチューセッツとイリノイの両艦に関しましても、喪失は避けられました。
想定外の事態は、ジオンのニュータイプがその乗機と共に投降して来た事です。どうやら、サイ・コミュニケーターと言う精神で機械を操作する装置を搭載している模様でして」
『それはこちらとしても、予想外の僥倖だな。それはそうとして、だ。ゼロ・ムラサメ少尉とゲーツ・キャパ少尉に関してはどうかね? 『役に立った』かね?』
ブライト艦長は、少々引き攣った表情をしたが、正直に言う事にする。
「……はっきりと申し上げます。役には立ちました。ですがそれ以上に、不安定さが目立ちます。ジオンのニュータイプ能力者との接触で、前々から不安定さが指摘されていたゼロ少尉だけでなく、安定していたはずのゲーツ少尉すらも、強烈な頭痛を訴えて戦闘不能になりました。
……強化人間、は。数を揃えられれば、戦力としては有効、かもしれません。ですが不安定さ、そしてその補助に多数の
『……素晴らしい!』
「は?」
ゴップ大将は、映像の中で満面の笑みを浮かべていた。
『予想通りだ! と言うか想定していた中で、最高の試験結果を出してくれた!』
「試験結果、ですか」
『うむ。これで強化人間計画を掣肘する論拠にもなるし、被験者や完成した強化人間を『人道の名のもとに』保護する動きも可能になる。……腐った枝葉や根は、切り落とさんといかんよ』
ごくり、とブライト艦長は唾を飲み込む。そして、『こいつは……』という想いもまた、飲み込んで口からは出さなかった。
『セイラ・マス軍曹の件、それに『連邦軍ニュータイプ部隊』の保護の件、任せておきたまえ。働きには、わたしは正当な報酬で報いるとも』
「……ありがとうございます」
ブライト艦長の、胃壁がまた1mm、薄くなった。
今回の裏テーマ。
シャアより先に、エグザベ君にシャリアを会わせてみよう。
ちょっとご都合主義でしたが、上手く転がりました。あと、ゼロとゲーツも、上手く行けば行きそうです。まあでも、ジャミトフというかその下のムラサメ研とかオーガスタ研が動かないとも限りませんけど。ジャミトフ、どうにか懐柔できないかなあ。