偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第24話 ソーラ・レイを潰せ

 エグザベは咆えた。

 

 

「うおおおぉぉぉ!!」

 

 

 アムロも咆える。

 

 

『うわあああぁぁぁ!!』

 

 

 シイコ中尉は怒鳴る。

 

 

『手前らぁ! ()ちなさい!!』

 

 

 ハヤトは唖然とするが、まあ仕事はちゃんとする。

 

 

『……っ!! と、リックドム撃破』

 

 

 前衛組の4人は、NT-1の2人がソーラ・レイ周辺に遊弋しているムサイ級軽巡とチベ級重巡を1隻ずつ片付け、NT-2の女傑がゲルググ2機を撃墜、ガンダムがリックドム1機を()としている。なおキャノン隊は、コロンブス級2隻に貼り付いて、近寄って来る敵機をカモ撃ちにしていた。

 一方、ペガサスから発艦したG-3ガンダムとGMスナイパーⅡも、それぞれがパプア補給艦とゲルググを撃破。GMコマンドたちもそれぞれ集団で単機の敵機に襲い掛かり、どうにか下している。

 ブライト艦長からの指示が飛んだ。ここら周辺は精密機器保護のため、ミノフスキー粒子はほとんど無いが故、通信のノイズは無い。

 

 

『よし、周辺敵機は排除できたな! コロンブス級ミシシッピ、アーカンソー、AI操艦にて前進!』

 

 

 2隻のコロンブス級が、静々(しずしず)とコロニーレーザーの内部へ侵入して行く。ついでと言っては何だが、各コロンブス級から1隻ずつ脱出艇(ランチ)が離れ、ペガサスへと移動して行った。コロンブスを運んで来た、乗組員である。

 

 

『……ブライトさん!!』

『!?』

 

 

 ニャアンの悲鳴にも聞こえる声が、響いた。通信機からは離れているはずだが、それでも拾えるほどの叫びだ。

 

 

『『嫌な臭い』です! 強い!! (はや)い!! ……危険、です!!』

『総員警戒を密に!!』

「……来るぞ!」

 

 

 そしてエグザベは、恐るべき圧を感じる。アムロ、シイコ中尉、カイ、セイラ、ハヤトも同様な様だ。一方、G-3ガンダムとGMスナイパーⅡ……強化人間たちの機体は、何やら挙動がおかしい。

 

 

『ぐ…あ』

『頭が! 蛇が、うねる! くう、う……そ、宇宙(ソラ)を落とす敵、は……。ぼ、僕が抹殺……』

『な、なん、だ。この、痛み、は』

『ゼロ・ムラサメ!? ゲーツ、おいゲーツ! 馬鹿な、あいつは安定していたはずだ!?』

 

 

 ペガサスの臨時艦長ヒューイット氏が狼狽(うろた)えた。そして凄まじい速度で全長60m余りのMA(モビルアーマー)が出現する。

 

 

「ぶらう……ぶ、ろ!? 『ブラウ・ブロ』と読めたが……。いかん!」

 

 

 エグザベは機体にビームライフルを撃たせる。アムロも、シイコ中尉も、カイも撃った。虚空に、炎の華が、2つ咲く。

 

 

(……なんと。 有線ビーム砲を狙い撃ちするとは。2基は射撃を放棄して避けさせたが、2基は撃墜されてしまったか)

 

 

 命中したのは、エグザベとアムロの射撃だけだ。MA(モビルアーマー)ブラウ・ブロ、その上下と左右下部分に突き出している有線で遠隔攻撃を行えるビーム砲が、上下の2つが欠けていた。

 

 

(皆! 奴はコロンブスを狙っていた! アレが何を目的の艦か、理解しているんだ!)

(りょ、了解エグザベさん! 奴を、()とし、ます!!)

 

 

 アムロとエグザベが、ブラウ・ブロに吶喊(とっかん)する。周囲の者達は、ブラウ・ブロの後方から現れたゲルググやリックドムを相手にし始めた。だがその中で、2機だけ、動けないでいるMS(モビルスーツ)がいる。G-3ガンダムと、GMスナイパーⅡ……。強化人間たちの機体、だ。

 

 

(まずい!!)

(エグザベ兄さん!)

(ニャアン!?)

 

 

 次の瞬間、宇宙が光で満ちた。

 

 

 

*

 

 

 

 光る宇宙に、緑髪、緑髭のジオン軍服の男が浮いている。エグザベ、アムロ、シイコ中尉、カイ、セイラ、ハヤト、ニャアンは同じく光る宇宙に浮かび、それと相対している。無論これは意識の投影であり、現実ではない。現実の空間では、エグザベとアムロの機体はブラウ・ブロと激しくドッグファイトをしており、それを追い詰めようとしている。

 だがエグザベは変に思う。この男からは、殺気は色濃く流れ出している。悪意、と言えるものも同様に。ニャアンが『嫌な臭い』と感じるソレが、強く、強く流れ出しているのだが、エグザベからは薄っぺらく感じるのだ。

 

 

(あんた……。なんなんだ! なんでこんな強い殺意が、こんな強い悪意が、どうしてこんなにも薄っぺらい!?)

(え? エグザベさん? 悪意、が、薄っぺらい、ですか?)

(アムロ、感じないか?)

(そ、そう言えばどことなく)

 

 

 現実空間の黒と銀のアレックスが、有線ビーム砲を蹴り飛ばし、コロンブス級への狙撃を阻止する。

 

 

(……それは、わたしが、何も持っていないから、かも知れませんね。空っぽ、なのですよ、わたしは)

((!?))

 

 

 現実空間の青と白のアレックスが、有線ビーム砲のワイヤーを巻き込んで飛んで、狙撃を阻止するが、しかしブラウ・ブロ本体への攻撃を躊躇(ためら)う。

 そしてエグザベ、アムロ、シイコ中尉、カイ、セイラ、ハヤトは『()』た。辛く苦しい木星への旅路。それで擦り切れてしまった精神。ジオン公国へ帰還しても、拭えなかった虚無感。ただギレンの命令に従い、フラナガン機関から人員ごと接収したブラウ・ブロで迎撃に出撃した事。

 

 

(あんた、シャリア・ブルって言うのか)

(……撃墜、しないのですか? できるでしょう?)

(……)

(エグザベ兄さん!)

(ニャアン!?)

(え)

 

 

 エグザベが見遣ると、見覚えのある緑髪の少年と、白髪の少年が頭を抱えて(うずくま)っている。ゼロ・ムラサメ少尉と、おそらくはゲーツ・キャパ少尉だ。その頭には、黒い蛇の様な物が、うねり、突き刺さっている。シャリア・ブルとの出会いと交感で、埋没していた物が刺激されて顕在化したのだ。

 

 

(まってろ、ゼロ! 今、取り除いてやる!)

(エグザベ兄さん、こっちも!)

(アムロ、そっち、ゲーツ少尉を任せる!)

(わ、わかりました! 皆、彼らを押さえ込んで!)

((((わ、わかった!))))

(ええっと)

(ええい、あんたも手伝え!)

 

 

 エグザベの叫びに、シャリアは唖然とする。

 

 

(何故、です? わたしは敵、なのですよ?)

(そりゃそうだが! だけどそれとこれとは、別次元の話だ! 人として、駄目だろう見捨てたら! 僕だって、サイド5(ルウム)のあの時! 虚無に襲われなかったと言えば嘘になる!)

 

 

 その瞬間、シャリア・ブルをルウム戦役でエグザベが感じた物が、襲う。ルウム20億人の断末魔が、疑似的にシャリアを襲う。目を見開くシャリアに、エグザベが叫ぶ。

 

 

(けど僕は! ニャアンに会った! 僕と同じ経験を! 僕よりも小さな身体で! 心で! 受け止めて! それでも必死に生きてる! だから僕は、この娘に恥じるような生き方は、しない! できないんだ!)

(……!)

 

 

 シャリア・ブルは、深く、深く溜息を吐いた。

 

 

(ふぅ……なるほど。わたしも彼らを押さえ込めば、いいんですね? それとお願いがあるんですが)

(……なんだよ)

(現実空間で、ブラウ・ブロのビーム砲、全部撃墜してもらえません? そうすれば、投降する理由付けになりますからね。ブラウ・ブロの他の乗員は、わたしが説得します。どうせキシリア配下のフラナガン機関から、権力で引き剥がされた人たちですからね。ギレン総帥に、不満は溜まってます)

(……)

 

 

 現実空間で、エグザベの01アレックスと、アムロのアレックスが、同時にブラウ・ブロの有線ビーム砲を撃破する。その頃には、ブラウ・ブロと共に現れたゲルググやリックドムも片付いていた。

 

 

(ぐ、うう……)

(あ……。た、たすか、った?)

(ぐ、ま、また助けられた、か。流石だな、連邦の誇る『真正の』ニュータイプ、たち。俺たちみたいな『模造品』とはワケが違う、か)

(ゼロ少尉、そんな言い方はよしてくれ。僕らはしょせん、ただの超能力者(スキャナー)に過ぎないよ。人類の革新なんかじゃあ、ない)

(……そっちも、そんなもん、か)

 

 

 ゼロ少尉は、悄然としつつ疲れた笑顔を浮かべる。一方でゲーツ少尉は苦悩していた。

 

 

(くそ……。ムラサメ研はヤバいと思ってたけど、オーガスタ研も結局同じ、か。僕にも爆弾が埋まってた、とはな)

(……ゼロ少尉、ゲーツ少尉。ゴップ大将が君らとの共同作戦を言って来たのには、わけがあると思う。うちの艦長の台詞だけど、『あの人は腹黒いから、うまくWin-Winの取引にしてくれる』だそうだ。希望はある、さ)

((……))

 

 

 そして光る宇宙が消えて、現実の宇宙に意識が戻って来る。しばしして、宇宙に浮かんだままだったブラウ・ブロから投降の信号弾が打ち上げられた。

 

 

 

*

 

 

 

 元マハルであったスペースコロニー、コロニーレーザーであるソーラ・レイが、その基部から爆炎に飲まれ、崩壊して行く。それを後目に、第13と第42の独立戦隊は、最大戦速でこの宙域を離脱しつつあった。ちなみにホワイトベースの後ろには、4つのビーム砲台を全て失ったブラウ・ブロが曳航されている。

 

 

「シャリア大尉、本当に我々が連邦に投降して、生きていけるのか?」

「シムス中尉、そうしなければ撃墜されて死んでいた。まあギレン閣下の元にいるよりは、自由度は高いかも知れんよ?」

「……大尉。その眼だが、前よりも生き生きしていないか。連邦のニュータイプと交感した結果だとすれば……。興味深いな」

 

 

 ブラウ・ブロの操縦席(コクピット)で、操縦担当のシムス中尉と会話しつつ、シャリア・ブルは失笑した。

 

 

 

*

 

 

 

 秘匿性の高いレーザー通信で、ホワイトベースの通信室からコンペイトウとルナ2を経由してジャブローと繋いだブライト艦長は、ゴップ大将とのタイマンでの会談に、緊張していた。と言うか、これまではワッケイン司令という道連れが居たので、多少は楽だったのだが。

 

 

「……と言う事で、ソーラ・レイ破壊作戦は成功裏に終わりました。GMコマンド各機を現場廃棄することも想定していましたが、全機甲板に露天係止状態で回収してあります。マサチューセッツとイリノイの両艦に関しましても、喪失は避けられました。

 想定外の事態は、ジオンのニュータイプがその乗機と共に投降して来た事です。どうやら、サイ・コミュニケーターと言う精神で機械を操作する装置を搭載している模様でして」

『それはこちらとしても、予想外の僥倖だな。それはそうとして、だ。ゼロ・ムラサメ少尉とゲーツ・キャパ少尉に関してはどうかね? 『役に立った』かね?』

 

 

 ブライト艦長は、少々引き攣った表情をしたが、正直に言う事にする。

 

 

「……はっきりと申し上げます。役には立ちました。ですがそれ以上に、不安定さが目立ちます。ジオンのニュータイプ能力者との接触で、前々から不安定さが指摘されていたゼロ少尉だけでなく、安定していたはずのゲーツ少尉すらも、強烈な頭痛を訴えて戦闘不能になりました。

 ……強化人間、は。数を揃えられれば、戦力としては有効、かもしれません。ですが不安定さ、そしてその補助に多数のMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)を要した事から、かかるコストも論外です。わたしは緊急時以外の、強化人間の運用には反対いたします」

『……素晴らしい!』

「は?」

 

 

 ゴップ大将は、映像の中で満面の笑みを浮かべていた。

 

 

『予想通りだ! と言うか想定していた中で、最高の試験結果を出してくれた!』

「試験結果、ですか」

『うむ。これで強化人間計画を掣肘する論拠にもなるし、被験者や完成した強化人間を『人道の名のもとに』保護する動きも可能になる。……腐った枝葉や根は、切り落とさんといかんよ』

 

 

 ごくり、とブライト艦長は唾を飲み込む。そして、『こいつは……』という想いもまた、飲み込んで口からは出さなかった。

 

 

『セイラ・マス軍曹の件、それに『連邦軍ニュータイプ部隊』の保護の件、任せておきたまえ。働きには、わたしは正当な報酬で報いるとも』

「……ありがとうございます」

 

 

 ブライト艦長の、胃壁がまた1mm、薄くなった。




今回の裏テーマ。
シャアより先に、エグザベ君にシャリアを会わせてみよう。

ちょっとご都合主義でしたが、上手く転がりました。あと、ゼロとゲーツも、上手く行けば行きそうです。まあでも、ジャミトフというかその下のムラサメ研とかオーガスタ研が動かないとも限りませんけど。ジャミトフ、どうにか懐柔できないかなあ。
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