偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第25話 終戦

 第13独立戦隊は第42独立戦隊ペガサスと別れて、宇宙空間を航行していた。ペガサスとそれに曳航されたブラウ・ブロはそのままコンペイトウを経由して、ルナ2まで帰還する命令が出ている。一方の第13独立戦隊には、間に合うかは分からないが、可能であればア・バオア・クー攻略に参加する様に、との指示が出されていた。

 

 

「って事は、グラナダ攻めじゃなくア・バオア・クー攻めだったんですか」

「その様ね。グラナダかア・バオア・クーのどちらかを陥落()とせば、ジオン本国へ大部隊を送り込む道筋が開ける。まあ本国決戦になるか、敗北を認めて本国は無血開城になるか、は相手次第だけど」

 

 

 アムロの問いに、シイコ中尉は柔らかく微笑んで語る。そして彼女は、軽いキスを相手に送ると身体を放した。

 

 

「さて、一応あと少しで戦闘待機になると思うわ。最後の戦いになればいいけど、ならなかったら本国決戦。場合によってはグラナダ攻略もあり得るわ。……頑張りましょう」

「はい!」

「じゃ、後でMS(モビルスーツ)デッキで、ね」

 

 

 そして彼女は、『アムロの部屋の前』から、無重力移動用のバーを握ってついーっと移動して行った。アムロはそれを見送ってから、自分の部屋に戻る。……そしてシイコ中尉は曲がり角を曲がると、磁力靴で床に降り、そして頭を抱えて赤くなりイヤンイヤンと顔を振ったかと思うと次の瞬間には顔面蒼白になり頭を抱えたまま(うずくま)り、そして次にはまた赤くなり、また蒼白になるのを繰り返す。

 

 

(まずいまずいまずい、ここサイド3宙域の端っこよね。いえ、でもジオンの法律に従わなきゃならない理由なんて無いわよね。そうなると連邦の法律? いえでも連邦は連邦国家だし、各々構成している地域の法律? ええっと、どうなるのかしら? 未成年に手を出しちゃったら、タイーホ? だけど一大決戦の前に、気持ちの決着を、でもタイーホ?

 いえ、それよりも……。なんでわたし、ルナ2かコンペイトウのPXで避●具買っておかなかったのかしら。デキたらどうするつもりよ、わたし。年上のわたしが用意するべきだったでしょ。いえわたしも経験は……って話じゃないわ。デキてなければ一晩の思い出ってことで、いえでもソレで済ませるつもりは無いけど、だけどヤバい)

「シイコ中尉、そろそろ戦闘待機……」

「ぎゃあああぁぁぁーーーっ!!」

 

 

 シイコ中尉は絶叫を上げて、左舷MS(モビルスーツ)デッキの方向へと逃走する。その場に残されたエグザベは、唖然としていた。

 

 

「え……っと」

「だめです、エグザベ兄さん。あの状態のヒトに声かけたりしたら。まったく、そういうところです」

「で、でも戦闘待機……」

「だ・め・で・す」

「ハイ」

 

 

 ニャアンに叱られて、まるで飼い主に叱られたアイリッシュウルフハウンドの様に(しお)れたエグザベだった。なおアムロも部屋で思い悩んでいて、戦闘待機に遅刻、大目玉をくらったらしい。

 

 

 

*

 

 

 

 ホワイトベース、マサチューセッツ、イリノイの3隻は宇宙を進軍する。ブライト艦長はフラウ・ボウに尋ねた。

 

 

「それで、ティアンム提督の座乗艦タイタンからは、まだ何も?」

「はい、何も通信ありません」

「オスカ? マーカー?」

「超遠距離観測の結果から、ア・バオア・クー方面に多数の爆発光を確認してます」

「細かくは聞き取れませんが、センサーが多数の通信電波を傍受していますし、その障害強度から戦闘濃度それも最大レベルのミノフスキー粒子が散布されていると思われます」

「戦闘が開始、いや既に佳境に入っていると見るべきか」

 

 

 実を言うと昨日の内に、ワッケイン司令の連合艦隊第3艦隊からは途切れ途切れではあったものの通信が入っており、それを精査した結果によると、どうやらジオン軍が騙し討ちをして来た、という物であった。具体的にはジオン公国デギン・ソド・ザビ公王座乗艦グワジン級グレート・デギンが和平交渉のため、連合艦隊第2艦隊旗艦、ティアンム提督座乗艦タイタンに接触して来たらしいのだ。

 だがしかし、それと時を同じくしてタイタンに対し、旧い機体であるC型ザクⅡ複数機が奇襲攻撃を敢行。C型ザクⅡなどという機体を選んだ理由はすぐに判明するが、この機体は南極条約違反の核バズーカを装備していたのだ。ジオン公国の現状の機体で、核対応機はC型ザクⅡしか無い。これによりタイタンの影武者艦が、爆散している。

 そしてグレートデギンは鹵獲、デギン公王は拘禁されて和平交渉は失敗と言うか、騙し討ち扱いされているらしい。ただしデギン公王は本物であったらしい事から、ジオン公国内部での内紛の結果ではないかとも推測されている様だ。

 

 なお、核バズーカを装備していたC型ザクⅡは、緊急発進したシン少尉駆るRGM-79SC、GMスナイパーカスタム率いる小隊により全機撃破されている。彼のGMは、ソロモン要塞での手柄の影響もあってか、カスタマイズ処置を施された模様だ。閑話休題(おいといて)

 

 フラウが突然、叫んだ。

 

 

「ブライトさん! ワッケイン司令の第3艦隊旗艦ハルから緊急入電! 繋ぎます!」

「メインスクリーンへ!」

 

 

 ノイズが散々に走った画像が、メインスクリーンに映し出される。ワッケイン司令の姿が、大写しになった。

 

 

『ッザザザザ、ブライト艦長! サイド3方面へ逃走するザザザザザ艦隊を叩け! ギレン・ザビザザザザッ衛隊長エギーユ・デラーズがザッザザッ乗っている可能性が高い! グワジン級戦艦は絶対にザザザ』

「ワッケイン司令!」

 

 

 通信画面の向こうは、けっこうな大事の様だ。艦の中でも堅牢に作られているはずの艦橋(ブリッジ)であるのに、そこかしこから火花が散って、壁には空気流出を防ぐ応急用バルーンが貼り付いた形跡もある。

 

 

『キシリア・ザビが父親をザッザザッザザ犠牲にしようとしたギレンをザザザッザザそれで返り討ちに遭ったという本当かわからん情報もあるザザザ、ギレンとデラーズを逃がしてはザザザ』

「了解です! 第13独立戦隊は、ギレンとデラーズを押さえます!」

『敵の予測位置情報をザザッ通信障害を考慮して、3回送信ザザザ靴下の穴理論で、情報補完して使えザザザ』

「了解!」

 

 

 そしてワッケイン司令が送って来た情報により、ギレンの座乗艦であるグワジン級戦艦グワデンの予想位置が判明する。第13独立戦隊は、真正面からそれを迎え撃つ形となった。

 

 

 

*

 

 

 

 カタパルトのGが心地よく感じる様になったのは、いつの頃からか。こうして慣れて行くのだ、とエグザベは少々やるせない気持ちを抱えたまま、01アレックスを宇宙に飛び出させる。遥か前方、しかし充分にMS(モビルスーツ)の航続距離圏内に、幽鬼の様に揺らめく気配が見える。……ギレン・ザビの気配、だ。

 

 

『ザザッアムロ、アレックス! いきまーす!!』

『シイコ、アレックス2、出ます! ッザザザ』

『ハヤト、ガンダムいきます!』

 

 

 アムロが、シイコが、ハヤトが左舷MS(モビルスーツ)デッキから次々に出撃して来る。右舷デッキからはリュウ少尉、ジョブ少尉、セイラ、カイがこれも次々に発艦した。

 本来ボール搭載型であり、最低限のMS整備施設を後付けで増設したサラミス級軽巡洋艦、マサチューセッツとイリノイからは、それぞれ露天係止していたGMコマンドが、次々と発進して来た。彼らはエグザベたち左舷組のMS(モビルスーツ)の後ろに、綺麗な編隊を組んで並ぶ。

 

 グワジン級グワデンと、その随伴艦であるムサイ級5隻、チベ級2隻から、ばらばらとMS(モビルスーツ)が発艦して来る。だがその数は、そこまで多く無い。やはりア・バオア・クーの戦いで消耗しているのだろう。中には片腕が無い機体すらも見受けられる。ただし多くないとは言っても、それでも第13独立戦隊のMS(モビルスーツ)数からすれば、倍以上はあるが。

 

 

(アムロ! シイコ中尉! グワジン級戦艦グワデンの、エンジンノズルを潰してくれ! MS(モビルスーツ)とムサイ、チベは僕らが始末する!)

(了解!)

(了解よ!)

(ノズルを潰したら、艦首の脱出艇兼大気圏突入カプセルを破壊するんだ! 逃げる手段は、可能な限り潰すんだ!)

 

 

 1機、また1機。1隻、また1隻。エグザベは丁寧に、丁寧に敵機を、敵艦を、潰して行く。その眼前に、豪奢な装飾を施された、明らかに典礼用か何かかと思われるリックドムが立ちはだかる。そいつはあろうことか、オープン回線で怒鳴って来た。

 

 

『貴様はあのときの! 貴様がドズル閣下をも! 艱難辛苦、耐えに耐え! 捲土重来を』

「うるさいよ」

 

 

 通信には乗せず、しかし言葉で呟くとエグザベはビームライフルを放つ。ぎりぎりでそれを(かわ)した相手だったが、その瞬間エグザベは右手のガトリング砲を展開、ノータイムで機関砲弾をばら撒いた。彫金を施された装甲板が砕け散る。損傷した敵機は必死にジャイアントバズを撃つが、そんな初速の遅い大型火器は、エグザベの01アレックスには命中しない。

 そして左手のガトリング砲が、半壊した敵機にとどめを刺す。一瞬で爆散する、装飾過多なリックドム。脳裏に、無念の絶叫が響いた。

 

 その瞬間、ハヤトとカイの叫びが聞こえた。セイラの悲鳴も聞こえる。

 

 

(まずい、抜かれた!)

(損傷したゲルググの1個小隊! 損傷はしていても、やつらビームライフルを持ってやがる! まずい! セイラさん、撃てねえか!?)

(だめ! こちらの位置からだとマサチューセッツの艦体が邪魔になる! リュウとジョブも、イリノイの向こう側よ!)

 

 

 エグザベの脳裏に、周辺模式図が描かれた。周辺空域の宙域図や地図などを脳裏に展開できるのは、指揮官として得難い才能ではある。あるが、このときは自分たちが絶対にホワイトベースの救援に間に合わないという事を、思い知らされる結果にしかならない。

 ホワイトベースは周囲に向かい、必死に対空砲火を撃ち上げる。1機の損傷ゲルググが爆散する。しかし残り2機が別々の軌道を取って、ホワイトベースに迫った。

 

 

(う……あああぁぁぁ!! うなあああぁぁぁ!!)

((((((!?))))))

 

 

 怒りと恐怖の絶叫。それが聞こえた瞬間、2機の損傷ゲルググは爆散する。1機はビームライフルで。もう1機は斬りかかったビームサーベルで。それぞれが粉砕されたのだ。

 そこにあったのは、黒と銀で塗装された01ガンダムだ。それはホワイトベースの後部デッキに、予備機として置かれていたはずの機体である。そして搭乗しているのは……。

 

 

(ニャアン!!)

(あ、ご、ごめんなさい。一瞬、見えたの。敵が、『嫌な臭い』が来る、って。そして皆が、間に合わないって)

(大丈夫、怒っちゃいない! それより、大丈夫か!?)

(あ、だい、だいじょうぶ、エグザベ兄さん)

(わかった、もう大丈夫、もうすぐ終わる。頑張ったな。ニャアンはホワイトベースの後部デッキに戻って、あとはブライト艦長に、ごめんなさいを言う。いいね?)

(うん。はやく、戻って、きてね)

 

 

 ニャアンの機体が、ホワイトベースに帰艦して行く。それを『感覚』の端で感じ取りつつ、エグザベは残りのチベ艦を撃沈すると、グワデンのブリッジの前に()んだ。未だ、ギレンの気配は濃い。もう1つ、これはデラーズの気配だろうか、怒り狂ったかの様な雰囲気が伝わって来る。

 

 

「だが」

 

 

 ぽつりと、思念ではなく言葉で呟く。機体に、ビームライフルを構えさせる。おそらくギレンの物だろう、ギラついた視線、怒りの視線が、敵艦ブリッジから感じられる。けれども、これで終わり、だった。

 エグザベは、ビームライフルの引き金を引く。同時にアムロのアレックスが、シイコ中尉のアレックス2が、それぞれビームライフルをグワジン級グワデンの主エンジン本体と、長距離用の燃料タンクとに向けて撃ち放った。……3人は、即座に離脱する。

 

 そしてギレン総帥とデラーズ、その座乗艦であるグワジン級グワデンは、光球と化して消滅。ここに事実上、地球連邦とジオン公国の戦争に、決着はついたのだ。

 

 

 

*

 

 

 

 宇宙世紀0079、12月23日。クリスマスを目前にして、この一年に渡る地球連邦とジオン公国の戦争に、終戦協定が結ばれた。月面都市グラナダにてダルシア・バハロ『ジオン共和国』首相が調印したこの協定により、後に一年戦争と呼ばれた戦いは終わったのである。




前半の赤面ものから、後半の落差よ。

そしてガトーとデラーズに関しては、いちおう始末が『運よく』ついてます。ガトーは最後、デラーズの旗機を無理矢理借りて出撃してます。正史の通り、ぎりぎりまで戦ってデラーズに『うっかり』説得されてしまい、『ドズル閣下を連邦から取り戻す』ために戦う意欲を固めたところで、ソーラ・レイ破壊から帰って来た第13独立戦隊に襲撃されたわけですな。

でもって本作では、キシリアは親父デギンを連邦に捕まえさせて、騙し討ちの汚名を着せさせた事で、キレてギレンを殺そうとしました。でも親父がタイーホであって殺されてない件、親父が無駄な和平交渉に出た事を知らされた件とで、ギレンに対する殺意が若干薄かった事もあり、隙ができてギレン射殺前にギレン側近に射殺されました。
でも正史ではギレン暗殺でジオン軍に隙ができて、連邦が逆転した事になっています。いますが、本作ではティアンムが戦死せずにソロモン(コンペイトウ)から時を置かずに直接軍を動かせた事、ソーラ・レイ不発で丸々連邦軍の兵力が残っていた事、などから最初から連邦軍圧倒でした。あとシン少尉(嘘)。いえいえ、ちゃんと彼、GMスナイパーカスタムで頑張ってますよ。終戦した後は、勲章と昇進もあります。

ちなみにシャアは、青葉区で意気消沈したまま出撃して、そこそこ程度にしょぼい活躍してます。たぶん戦後のストーリーで、なんらかの形で出てくるかとは。
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