偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第28話 卒業と部隊配属

 ナイメーヘン士官学校で伝説になった、徒手空拳訓練機での敵6機撃破から、1年半が経過、エグザベ、アムロ、カイ、ハヤト、セイラは士官学校をそれぞれが充分に優秀な成績で卒業。見事少尉任官した。無論の事だが、コウ、キースもまた卒業し任官している。まあ残念ながら卒業式にはニャアンは幼年学校がまだ1年あるので忙しくて来られない。帽子が宙を舞うところを見たかった、と愚痴られたので、エグザベは動画の撮影を在校生に依頼して、それを送った。

 

 

「ウラキたちは、どこに配属だい?」

「あー、なんか幾つか話があって、オーストラリアのトリントンってのが有力だったんだけど直前で変更、なんかアフリカのキリマンジャロらしい」

「一年戦争終盤で、レビル将軍がかなり綺麗に『掃除』したんだけど、それでも広すぎて僻地に逃げ込んだ残党は多いらしいよなあ。ただ、ドズル派閥の奴らはその後率先して投降して来たって聞くけど」

 

 

 ここでセイラが口を挟む。

 

 

「ドズル派閥は、ドズル・ザビの発言が色々手を加えづらいテレビの生放送映像で流されたからね。(いさぎよ)く投降して裁判で戦犯かどうかの判断をされた後、大半はジオン共和国に帰参してるわね」

「ああ、そういや地球侵攻軍ってガルマ・ザビが司令官になるからって、地球侵攻に反対というかルナ2攻略先にしろって言ってたドズルも、弟可愛さに自軍からかなり削って部隊を提供したんだっけ? だから地球侵攻軍にはキシリア派だったのとドズル派だったのが混在してるんだよな」

 

 

 セイラはカイに頷いた。

 

 

「コウ、キース、だからアフリカ僻地に残ってるやつらは元キシリア派閥の奴らが大半だと思うわ。……気を付けなさい」

「「お、おう」」

 

 

 コウとキースは、ごくりと唾を飲み込んだ。そして2人は口々に問う。

 

 

「そういうアムロたちは?」

「エグザベとか、なんか特殊部隊にでも引っ張られそうな気がするけどな」

「僕たちは旧第13独立戦隊の面々が、ゴップ大将の麾下に招集されるらしいので、そこに集められるよ」

「リュウやジョブは出世してるかしらね」

「どーだろ。あいつら技量とかじゃなく生き方の面でぶきっちょだろがよ」

「ブライトさんは……」

「あの人こそ生き方不器用でしょ。ああでも、逆に出世しなきゃならない立場に押し込められてそうだなあ」

 

 

 いや、ブライト元艦長は軍大学コースが確定しているので、その通りなのだが。しばらくはエグザベやアムロといっしょに前線に居られるかもだが、そのうち一時前線離れて軍大学だろう。しかも下手すると最新技術を駆使しての超詰め込み課程での短期コースで。学生の人道には配慮しましょうゴップ大将。

 

 

 

*

 

 

 

 ジャブローのドックには、2隻の改ペガサス級が入港していた。片方は改ペガサス級強襲揚陸艦トロイホースと言い、第49独立戦隊の旗艦である。もう片方は改ペガサス級強襲揚陸艦スタリオンで、第49独立戦隊の僚艦だ。2隻の改ペガサス級を配備されるこの独立戦隊は、まあ広告塔と言う事もあるのだろう、一年戦争でドズル・ザビを捕縛しギレン・ザビをその座乗艦ごと葬ったMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)達が配属される事をが、広く知られていた。

 ……だがその番号が49(四苦、あるいは死苦)とは何事だろうか。

 

 

『いや、その様な迷信など撥ね退ける力を、期待しておるという事なのだよ』

「そ、そうですか」

「「「「「「……」」」」」」

『第49独立戦隊、期待しておるよ』

 

 

 メインスクリーンから、ゴップ大将の映像が消える。まあ大将閣下がわざわざ激励の通信を入れるというのは、やはり期待は大きいのだろう。きっと。だが、わざわざ避けるために開けておかれた番号を割り当てるというのは、どうしても意地悪をされた気がして仕方がない。

 ここはトロイホースの艦橋(ブリッジ)である。スタリオンに配属される面々までもが、いったんこちらに出向いて集まっていた。

 

 

「ごほん。ううむ、皆、よく来てくれたな」

「昇進、おめでとうございます、ブライト少佐」

「ありがとうシイコ大尉。まあつい先ほど、11:00時からだが、な」

 

 

 ブライト艦長の襟には、真新しい少佐の階級章が光っている。

 

 

「まあ、諸君らが来てくれて本当にありがたい。懐かしいのもそうだが、な。リュウとジョブだが、こちらの部隊に来るには来るんだが、遅れるそうだ。長期の作戦行動が入っており、それが終わるまではどうにもならん、と。今あいつらが居るのは残党狩り任務の治安維持の部隊でな」

「やっぱり残党、いるんですね」

「ああ。想定より規模はずいぶん小さいが、な。ドズル・ザビの生放送の影響は、かなり大きい。一時期、各地の裁判所がパンクしかけたからな、投降兵が戦犯に値するかどうかの裁判で」

「……生きて捕えられたのは、本当に良かったですね」

 

 

 しみじみと語るエグザベ少尉に、一同は頷いた。

 

 

 

*

 

 

 

 これまでに配属された隊員たちの割り当てが完了した。まあ、まだ他から引っ張って来ないといけない人員も多いのだが。第49独立戦隊には、シイコ大尉率いるMS(モビルスーツ)中隊が配属されている。更に詳細な割り当てであるが、まずはトロイホースからだ。

 トロイホースに配属されたのは、まずシイコ大尉の直卒小隊である。中隊長のシイコ大尉と、小隊の副隊長としてアムロ少尉が所属する。このアムロ少尉は中隊としての副隊長任務も受け持ってはいるのだが、万一シイコ大尉が指揮を執れなくなった場合の代理というよりは、絶対にそうならせないために彼女を護り、彼女を暴走させないための保険みたいな意味合いが強い。

 次にカイ中尉待遇少尉率いる、支援小隊である。シイコ大尉の直卒小隊がおそらくは前に出るので、支援機部隊を率いてソレを支援するのが仕事だ。ここにはセイラ少尉、ハヤト少尉が所属する。

 次にスタリオン配属の2個小隊だが、実のところここには1個小隊しか配属されない。エグザベ中尉待遇少尉率いる小隊である。あと1個小隊は、リュウ中尉とジョブ中尉が赴任してから設立される予定だ。

 ちなみに現状の部隊でも、リュウとジョブはどちらも中尉になってはいるが、ジョブ中尉があまり指揮官適性が高くないためにリュウの下で副隊長をやる形に収まっているとの事。まあ、かつてもジョブは何でも屋的な感じがあり、良い意味での器用貧乏ではあった。そのため率いるよりかは支える立場の方が向いていたのであろう。

 

 

「うちの部隊のMS(モビルスーツ)小隊は、1個小隊4機編制か」

「まだまだ、色々試行錯誤らしいよ。配備開始されたばかりのサラミス改タイプの艦だと、1個小隊載せる事が可能で、3機編制の1個小隊だそうだ。ペガサス級や改ペガサス級だと、1個小隊4機編制が基本の様だけどね」

「僕とシイコさん、じゃない大尉のところだと、あと2人空きがあるな。カイさんところはあと1人」

「僕のところは3人どこかから引っ張って来ないとならないよ」

 

 

 アムロ少尉とエグザベ少尉は、アムロ少尉の執務室で話をしていた。ジャブロー基地のPXの1つで買って来たケーキを、アムロが淹れたコーヒーと共に楽しみつつ、隊の編制について言葉を交わす。

 

 

「エグザベさんは、どうするか決めてあるのかい?」

「ううん、人事部と話すしか無いかな。新人の兵員を引っ張ってこないといけない。可能なら、本当に新人で。士官学校を卒業したばかりの、実戦未経験な奴らを。下手に実戦を経験済みだと、こっちの話を聞いてくれないだろうしなあ。……ウラキとキースが引っ張れたらなあ。まあ無理か」

「そういう問題も、あるか……。直卒小隊はシイコ大尉が偉いから、彼女の言う事は聞いてくれるだろうけどなあ。カイさんとこにも、あと1人、階級が可能な限り低いのを引っ張って来なきゃ」

 

 

 そのうち話は、別な内容に変わる。レビル将軍の話だ。

 

 

「レビル将軍って、そういや僕らも元々はレビル将軍の派閥扱いみたいな存在だったはずだろ? RX計画にどっぷり浸かってたんだから」

「そうなんだけどね。僕が聞いて来た話だとさ。レビル将軍自体が、自分の派閥をティアンム提督に引き渡す様に動いてるみたいなんだ。その過程で、僕らとかをゴップ提督の派閥に引き渡したりとか、あえて自分の影響力を縮小させてる気配がある」

「そうなのか……。政界に転出するって話も聞くけど?」

「どうなのかなあ。ゼロ少尉から、手紙を貰ったよ。彼の管轄はゲーツ少尉と共にゴップ大将に移ったらしいけど、それでも幾つか伝手から話を聞くらしい。なんか逆にゴップ大将が、まだ色々な事から手を引くのは早いって説得してるらしい。一年戦争中に色々手を貸した分、返してからにしろ、ってさ」

「あー……」

 

 

 アムロ少尉は、大きく息を吐く。

 

 

「父さん……。テム技術少佐からも、話は聞いてるよ。なんかレビル将軍って言うかティアンム提督派閥と、ゴップ大将派閥の間で、宙ぶらりんみたいな形なんだって。だけど地位はあるから、現状自分の力が及ぶ限りでは、好きな研究をさせてもらってるらしい。両者の視線が届く範疇で、だけどさ」

「今は何の研究を? いや、漏らせないやつなら聞かないけど」

「僕もぼかして聞かされたけど、再編されたニュータイプ研究所があるだろ? それの手伝いみたいな形で、ニュータイプ用MS(モビルスーツ)……その基本骨子を作ってる『みたい』だよ。なんか色々と組み込むため、機体の余裕をばかでかく取った上で、可能な限り能力を高く、って話だったそうだけど」

「あー……」

 

 

 エグザベ少尉とアムロ少尉は、異口同音に言った。

 

 

「「サイ・コミュニケーター」」

 

 

 それは彼らが投降させた、ブラウ・ブロというジオン軍のニュータイプ用MA(モビルアーマー)に組み込まれていた、ニュータイプ能力者の精神波で機械をコントロールするための装置である。略してサイコミュ。

 

 

「たぶんアレを組み込んだ機体を造りたいんじゃないかなあ」

「僕もそう思うよ。でも個人的には、サイコミュコントロールだけじゃなく、普通の操縦系もちゃんと残して欲しいな。手と足ってのは、考えるより早く動く事もあるからね。あと精神だけでのコントロールって、何か脳に悪そう」

「悪そうだよな」

 

 

 そしてまたも話は変わる。

 

 

「僕らの部隊に配備されるMS(モビルスーツ)って、何になるんだい?」

「今のところ、僕らにワンオフ機を与える予定は、あるけど無いらしい」

「どっちなのさ」

「まずは量産機で部隊を立ち上げてくれって」

「なるほど、そうしてから場合にもよるが、もしかしたらワンオフ機を、か」

 

 

 そう言う事らしい。まあ部隊を運営する上で、ワンオフ機は癌だ。部品供給とか部品共有とかの面から言っても、悪夢の存在でしか無い。

 

 

「量産機は何を?」

「前衛部隊には最新鋭のジムカスタム、支援機隊には最新鋭のジムキャノンⅡだそうだけど。シイコ大尉によれば、マグネットコーティング技術も、だんだん標準化しつつあるらしい」

「僕らには、リミッターはいらんだろ?」

「まあ一般隊員には、リミッター付きマグネットコーティング機だろうさ」

 

 

 とにもかくにも、いよいよ彼らの部隊はスタートラインに立った。まだ必要人員は揃っていないが、この後にゴップ大将から無茶振りをされる事は目に見えている。とにもかくにも、今はしばしの休養を取っておくべき時だった。




卒業いたしました。コウたちは正史と違い、アフリカです。史実のアフリカよりは、楽な仕事ですね。ドズル派閥がごっそりと投降しましたんで。ドズル、TV取材を受けて、まだ逃げている潜伏ジオン軍人たちに誠心誠意の説得しました。
まあそんなこんなで、連邦の偉い人はますますドズル殺せなくなりました。此度の事を功績として、減刑できないかとか必死に頭ひねってます。あと、何か慶事は無いかとか必死になってます。慶事があれば、それを理由に恩赦とかできそうですし。
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