この日、第49独立部隊作戦指揮官ブライト艦長は、ジャブローのゴップ大将執務室に呼び出されていた。先日アフリカはキリマンジャロ基地への応援派遣を終わらせたばかりの彼に、いったい何用だろうかとブライト艦長は
「ブライト少佐、よく来てくれたね。はっきり言おう。面倒ごとだ」
「はっ!」
「うむ。君はアナハイム・エレクトロニクス主導のGP計画……。ガンダム開発計画を知っているかね? いや知っていたら大事なのだが」
「知りません」
「うむ、連邦軍の防諜はしっかりしている様だ。アナハイムからの情報漏れは、ある様だが」
ゴップ大将は、笑って、いや
「ガンダム開発計画とは、文字通り一年戦争で大活躍をしたガンダムを再現し、連邦軍の新たなフラッグシップ機として運用すべきとの申し出を、まああろうことか連邦軍内部ではなくアナハイムから言って来た事が契機になって始まった計画だ。コーウェン中将が旗振り役となって、推し進めている。
……まあレビルは、気に食わん様だがね。彼は彼で、わたしと語らってティアンム君に『依頼』し、わたしとティアンム君共同の上で、テム技術『中佐』に」
「!?」
「ああ、今度技術『中佐』になるのだよ、彼はね。テム技術中佐に命じ、『あくまで連邦軍内部で』ガンダムの再開発を行っているんだ。アナハイムは知らん様だが。いや知っていてもらっても困るだけだし、ね」
ブライト艦長は、内心で溜息を256発連打する。そしてゴップ大将はアナハイムのガンダム開発計画について説明を始めた。
GP-01はストレートなガンダムの後継を狙った機体であり、コアファイター機能を組み込んだ、白兵戦能力に優れたかつてのガンダムの路線をそのまま継承した機体だ。ただし地上用と宇宙用に仕様が分かれており、基本的にはランドセルやバーニアを共有する形になるコアファイターを別仕様の物に変更する事で、地上用と宇宙用を切り替える事になる。ただし宇宙用についてはアナハイム内部からも異論が出ており、ガンダムBパーツをも換装するべきとの意見が出ていた。
GP-03は拠点防衛用
GP-04は宇宙用を基軸とした、ハイエンドモデルとしてのガンダムの開発である。ただしこれに関しては、GP-01と企画上被る部分が大きいため、GP-01の計画に統一される可能性が示唆されている。もしかしたら現在では、既に統一されているかも知れない。
「とまあ、こんな具合だね。あとGP-00という機体も、それら各ガンダムの基本として試作されたらしいが。あくまで試作機、だ。ガンダムが実験機であり技術実証機であり実戦テスト機であったのに比べ、本当の意味での試作であり、不具合てんこ盛りらしい」
「……質問を、よろしいでしょうか」
「うん、質問を待っていたよ」
「やはり。GP-02を抜かしたのには、何かわけが?」
「それはGP-02の件が、今回の話の肝だから、だね」
そしてゴップ大将は、本題を話し始める。
「GP-02は核抑止力としての、核爆弾投射機能を保有するガンダムだ。ガンダムの名を冠してはいても、構造はジオンのドム系に近いらしい。駆動系はフィールドモーターらしいがね」
「……核攻撃、その機能ですか」
「ああ。核ミサイルはミノフスキー粒子により、誘導が事実上不可能だという理由でな。誘導に頼らず核兵器……核バズーカを確実に運用できる機動兵器、だそうだ。強力な特殊冷却シールドにより、核爆発の外縁部に居て巻き込まれても耐える事が可能だとの事でな。ちなみに運用するMk.82核弾頭は、分類は戦術核だが、事実上戦略核に相当する威力を発揮する。
……ふん、馬鹿な話だ。核抑止力ならば、今我々は……。現状では『君ら』に『引き金』を頼らざるを得ないが、サイコミュ誘導の核弾頭ミサイルを開発中だ」
ガンッ! と殴られたかの様に、のけぞるブライト艦長。だがしかし、必死に精神を立て直す。
「そ、それは、ゴップ大将」
「使うつもりはない。核『抑止力』だと言っただろう。一年戦争が終わり『南極条約が失効した今』、いや戦時中でさえも何度もの条約破りを犯し、核兵器を用いたジオン公国、その精神を継承したジオン残党に対し、我々は抑止力として、核兵器を『見せ金』として保有しておく必要がある。
……だが、
「……」
「他にもサイコミュ誘導以外に、電波誘導に頼らぬミサイル、カメラと
そしてゴップ大将は、そのカエル面を真正面からブライト艦長に向ける。ブライト艦長も気力を振り絞り、ゴップ大将の視線から目を逸らさない。
「だがな。いかにGP-02がそのお題目である核抑止力として使い物にならん兵器だとしても、だ。連邦軍の威信というものが絡めば、話は変わって来る。アナハイム・エレクトロニクスの内部で、権力争いでも起きたのか、それとも戦争、紛争を煽って軍需部門の売り上げ増でも狙っておるのか。スプーンから宇宙戦艦まで、と
奴ら、ジオン『公国』残党にGP計画内容を流しよった。そして情報部によれば、残党らは『連邦の南極条約違反だ!』と鬼の首でも取ったかの様に喜び勇んで、そしてMS-06CザクⅡによる核バズーカでの、GP02撃破作戦を立てているらしい。馬鹿め、南極条約は失効済みだと何度言えば。と言うか、南極条約は『使用禁止』であって保持、生産は禁じてはおらん。と言うか、何故それで自分らが率先して南極条約違反の核攻撃実行を……」
「ゴップ大将、ゴップ大将」
「おお、すまんな」
実はこの人、飄々として見せて本当はストレス大なんじゃないのか、と思ったブライト艦長である。だが次にブライト艦長は思う。この人、そのストレスを我々をいじめる事で晴らしてないか、と。
「何にせよ、どんなに阿呆らしくても、だ。軍の権威、軍の威信、軍のメンツ。そういう物が無ければ、軍は成立せん。それを護るために、君らには動いてもらう。最終目標は、GP-02が破壊される前に核バズーカ装備のMS-06CザクⅡを破壊、核バズーカを押収もしくは徹底破壊する事。だがだからと言って、通常兵器によるGP-02破壊も許してはならんぞ。
それと一部では、GP-02を奪取してジャブロー基地への奇襲攻撃に用いれば、などというブチ壊れた意見もあった模様だ。まったく阿呆な事を、と思って念のために
「大将閣下……」
「うむ、愚痴はここまでだ。後の事は、命令書と作戦書を届けさせる。細かい部分は、君の裁量で構わん。任せたぞ」
ブライト艦長は敬礼をし、ゴップ大将からの答礼を受け取ってその場を辞す。ちょっとばかり面倒くさい仕事の様だ。というか色々内情を掴める連邦軍情報部、超有能である。戦後も毎ターン、諜報Sランクになるまで資金を投入していたに違いない。
*
空港の手荷物受け取りターンテーブルで荷物を受け取った時、彼女を呼ぶ声が聞こえた。
「おーい!」
ニャアンはその相手に向けて、手を振った。相手は言わずと知れた、エグザベ少尉である。
「はぁ、はぁ……」
「エグザベ兄さん、久しぶりです。でも訓練不足ですか? 息を切らして」
「最近、
「ふふ、冗談ですよ。そんなに気にしないで。でもジム(凸)増やしてどうするんです」
「いやRGM-79GMはもう増やさんだろう連邦軍は」
「ふふ、冗談です」
2人は笑い合う。やはりたまにでも会えると、少し安心する。離れているのは、やはり寂しい。
「ようやく今日明日の2日、もぎ取れた休みだ。これを捻出するのに、どれだけ前倒しで艦内自室でデスクワーク漬けになったか」
「ご苦労様です。わたしも連続で取れた休日を使って、わざわざ飛行機で南米まで飛んで来たんです。同期からデートか、ってからかわれちゃいました」
「ははは、申し訳ないな。今、幼年学校三年次だろ? 忙しいだろうに」
ニャアンは一転してジト目になり、エグザベの目を睨みつける。
「え、僕何かしたかい」
「何もしないから問題と言うか、その反応が面白くありません。少しはどぎまぎしてください」
「なるほど?」
「わかってないです。……飛行機の時間が微妙だったんで、機内でお昼食べられませんでした。奢ってください」
「うん。この近くに、美味しい店があるんだ。行こうか」
まあこの人はこういう人だ。ニャアンは仕方ないなあと内心で思いつつも、エグザベ少尉を追って行く。まあこの人は、自然とニャアンの手荷物を自分で当然の様に持ってくれる、優しい人ではあるのだ。レディーファーストとか妹分だからとか、そういう事ではなしに、本当に当然のごとく、何の気なしに重い荷物を持ってくれるのだ。うん。
……この人は、そう。なんというのか、本当に自然に、『人生の重荷』すらも背負ってくれるのだ。だったら、どうにかして、この人の、この
「ん?」
「なんでもないです」
「そうか」
遅れたニャアンを、自然に立ち止まり待ってくれている。これはドン臭いエグザベが、必死の訓練による条件反射で身につけたものである。彼はドン臭い。朴念仁でもある。そして自分に妙に自信が無いので、相手に好かれるとか思わない部分がある。相手に好かれているという自信が持てない部分がある。だから相手の好意に気付けない部分がある。
(今の部隊に、エグザベ兄さんに好意を持ってる女性とか、いないといいな)
とりあえずニャアンは、エグザベが荷物を持っていない、反対側の手を取り、自分の手と結んだ。
前半ジオン残党の計画、正史と違って『スケールちっさ!(笑)』という話と、後半スケールこそ小さいものの、とても大事な『小さな幸せ』のお話です。とりあえず今回は逆パターン。最初ヤバい話で、後半しっとり、のんびり。温度差あるのはそうですけどね。
と言うわけで、GP計画は既に発動してました。でもって、RX78GP-02A強奪計画ではなく、RX-78GP02A核攻撃(笑)計画です。今頃コムサイで、MS-06CザクⅡ核バズーカ搭載型(たぶんもう機数は残り少ない)が宇宙から降下している頃です。あとそのムサイも、コムサイ切り離すと補充の余地がまず無いので、コムサイ無いまま宇宙を航行するという情けない姿に。イバラノソノとか無いですからねー。大型の工房や工廠、ドック持ってないんですよ、アクシズ派以外は。あとアクシズ派、ミネバもいないしシャアもいない。あいつら大義名分何もないんですよ。まあ今回動いてるのはアクシズ派じゃないですけどね。
デラーズ居ないので、イバラノソノを開墾というか開拓というか、自分たちの基地として整備する計画とか立てられないんですよ。あと月面都市にこっそり入港するとか、ジオン共和国の反体制派とツナギ取ってナニするとかが、ほぼできない。シーマ様が以前やってたみたいに、宇宙海賊やったり、あとは地上のは僻地で民間人襲って物資盗んだりとかしできない。
あ、唯一ジオン『公国』水泳部だけは、あれは連邦海軍が立場を保つために仮想敵に生き残ってもらおうと、陰で反連邦派を装って『援助』してるんで、けっこう物資潤沢です。と言うわけで、地上のジオン『公国』残党最大派閥は水泳部。宇宙のジオン『公国』残党最大派閥はアクシズですねー。
あとテム・レイ技術少佐、今回で技術中佐に昇進です。アムロ君が軍人なのは心に棘のように刺さってますが、ですが彼は拘っても無駄な部分は理系らしくきっぱり諦め(でも棘は刺さってる)、息子が生き延びられる様に、『剣』にして『盾』な機体を必死こいて開発してます。息子の嫁も生き延びられる様に、頑張って『鎧』を開発してます。息子の友人たちも生き延びられる様に、全身全霊で『槍』を開発してます。