偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第33話 1/144GMの、箱絵のキャラの人、がんばった

 スタリオンは、今トロイホースと艦列を組んで、ジオン残党推定親衛隊のコムサイを追跡している。第49独立戦隊は、軌道上から核バズーカ装備のMS-06CザクⅡを搭載したコムサイが、地上に潜伏している旧ジオン公国親衛隊一派から補給を受けて、オーストラリア大陸トリントン基地へ向かう事を掴み、その潜伏場所を急襲したのだった。

 その結果、補給をほぼ完了していたコムサイはそのまま現地を逃走した。そしてトロイホースとスタリオンは近隣の連邦軍部隊に現場を引き継ぎ、コムサイの追跡に移ったのである。

 

 スタリオンのMS(モビルスーツ)隊を率いるエグザベ中尉待遇少尉は今現在、スタリオンの左舷MS(モビルスーツ)デッキにて戦闘待機中であった。と、ここでスタリオン艦長のエルマー大尉から通信が、エグザベ機へ入る。

 

 

『エグザベ少尉、あと少しでスタリオンとトロイホースは、目標コムサイと砲戦可能範囲に入る。コムサイは後方に銃座は無いから、一方的に撃てるはずだ』

「なるほど……。エルマー艦長、申し訳無いですが、提案があるのですが」

『何かね?』

「どうせ相手から砲撃、銃撃は無いと見ているのでしょう。左舷MS(モビルスーツ)デッキのハッチを、開放状態にしておいて欲しいのです」

 

 

 エグザベの提案に、エルマー艦長は目を丸くした。

 

 

『理由を聞こうか』

「コムサイの状況が絶望的になった場合、相手は内部格納庫よりMS(モビルスーツ)を投下するはずです。肝心要の、ザクⅡC型、核バズーカ搭載タイプを」

『つまりそうなったなら、即座にオリベ小隊を発進させて追撃を、と言う事か。了解した、ブライト艦長に上申して来る。少し待ってくれ』

「了解です」

 

 

 ブライト艦長は即座に提案を了承した。

 

 

 

*

 

 

 

 ゲーツ・キャパ少尉は必死になって、エグザベ中尉待遇少尉の機体に追従し、自分のジムカスタムを疾走させていた。

 

 

「く、人工的に付加されたニュータイプ能力があるのに……。い、いやこれが『素』の操縦技量の差なのか。アダム・スティングレイ准尉の機体にすらも置いて行かれそうになるなんて」

 

 

 そう言った通り、アダム准尉、そしてゼロ・ムラサメ少尉の機体はどうにかエグザベ隊長の機体に付いて行っている。ゲーツ少尉は気合を入れて、機体の速度を一段階上げる。

 

 

『コムサイから脱出したのはゲルググタイプ1機と、目標のザクⅡC型、核バズーカ搭載タイプ! トリントン基地は目の前だ! あのコムサイの操縦士(パイロット)、ここまで粘るとは思わなかったが』

『たーいちょ。今は急ぐことだけ考えましょ』

『そうだな、そのためには……。ゼロ少尉! 隊を半分に分けて、僕とアダム准尉はザクⅡC型を追う! 妨害して来るゲルググタイプ……おそらく地上用のG型ではないかと思うが、ゲーツ少尉とそれを()としてから追って来てくれ。できるか!?』

『任せてくれ。任務了解』

「……こっちも了解だ、隊長!」

 

 

 ちょうど良く、ゲルググタイプがビームライフルを撃ち放って来る。ゲーツ少尉は自分のジムカスタムをブーストで一瞬だけ後退させてそれを(かわ)すと、ジム・ライフルの狙いを合わせた。

 

 

 

*

 

 

 

 モンシア中尉はアルビオンに走っていた。あのシン大尉は気に食わないが、それでも一年戦争の前線での戦闘を潜り抜けた猛者である事は間違いない。それになんだかんだ言っても、ジム改とかいう型落ち機体で彼のジムカスタムを完封した化け物だ。

 そんなシン大尉があれほど必死になって、基地防衛を叫ぶのだ。何かしら、予兆があったのだろう。だとすれば、万一に備えてMS(モビルスーツ)を発進させておいて損は無い。

 

 

(ま、もしも何も無かったら、あのクソいけ好かねえ奴が最低でも営倉に叩き込まれるぐらいにゃ、ならあな。それはそれで……)

 

 

 モンシア中尉、ベイト中尉、アデル少尉が艦へのエレベーターに飛び込んでボタンを押し、扉が閉じて動き出したその瞬間、ピンク色を帯びた光条が(はし)る。そして爆音や衝撃と共に、エレベーターの電源が落ちた。……間違いない、襲撃だ。敵襲だ。あのクソいけ好かない大尉の勘は、正しかった。

 モンシア中尉たちは知る由も無かったが、この時ゲルググG型のビームライフルによって、停泊中だったアルビオンのヤバい箇所にビームがブチあたっており、あちこちの電源が落ちていたのだ。本来であれば軍艦であるアルビオンだ。普通ならひたすらにタフであり、そんな故障が起きるはずもない。

 しかしながらこの時、人員は完全にダレていた。トリントン基地はおろか、アルビオン自体も、(ゆる)み切っていた。そのため対空・対地監視はおろそかになっており、致命箇所に楽々と一撃を加えられるまで至近距離への接近を許してしまったのである。

 仮にモンシア中尉たちがアルビオン格納庫までたどり着けていたとしても、彼らのMS(モビルスーツ)を出すためにはMS(モビルスーツ)整備ベッドの固定を破壊し、アルビオンのMS(モビルスーツ)ハッチをビームサーベルか何かで破壊し、出てこなければならない。

 まあそれどころか3人のMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)たちはエレベーターの中に閉じ込められ、何もできないまま殺される恐怖に震える事になったのだが。

 

 

 

*

 

 

 

 パワードGMが、それに随伴するGM改と試験用の接収されたザクⅡF2型が、次々に撃墜されて行く。シン大尉は1機の陸戦用ゲルググG型の相手をしながら、通信機に叫んだ。

 

 

「リック! トボル! アンク! テロン! ニッタ! 聞こえるか! 聞こえたら脱出しろ!」

 

 

 まだパワードGMの操縦士(パイロット)たちの息がある事は、シン大尉には『理解』できていた。だが機体はいつ爆発してもおかしくない。また、シン大尉のニュータイプ能力は生命の有る無しは判断できても、細かい状態まで判るほどでは無かった。苦痛のうめきは『聞こえて来る』ので、何かしらの負傷を負っている事は確かだろうが。

 そして陸戦ゲルググの左腕を、ビームサーベルで斬り落としたGP-01ゼフィランサスは、すかさず飛び退く。もう1機の陸戦ゲルググが、腕部グレネードを射出したからだ。爆発の衝撃波が、GP-01ゼフィランサスの装甲表面を叩く。

 

 シン大尉は、叫んだ。思念で叫んだ。必死に助けを求めた。

 

 

(頼む、誰か! 時間かければ勝てるかもしれんが! そしたら俺の部下たちが死ぬ、死んでしまう! 誰か助けてくれ! なんでこいつら、こんなに強いんだ! なんで俺は、弱いんだ! 最新鋭機なのに! こいつら一年戦争末期のロートル機なのに! 部下が、部下たちが死んじまう!)

 

 

 ゲルググG型2機は、1機1機は能力はシン大尉にも及ばないし、機体面でもGP-01ゼフィランサスには遠く及ばない。なのにこいつらは、ジオン兵だったはずなのに、下手な連邦軍人よりも連携に長けている。互いを信じ、カバーし合って、その能力を数倍に高めている。孤軍奮闘状態のシン大尉と、互角に渡り合っているのだ。

 そして敵の最後の1機、MS-09ドムが、GP-02Aサイサリスが置かれている格納庫に飛び込んだ。

 

 そしてライフル弾が……。超高速の徹甲弾の連射が、ゲルググG型を撃ち貫く。泡を食ったもう1機のゲルググG型も、同じ末路を辿った。

 

 

(来てくれたか!)

(あなたの声、聞こえましたよ。2年とちょっとぶりですか、出世おめでとうございますシン大尉)

(あんたは! ビグ・ザムのときの!)

 

 

 シン大尉の思念は、歓喜に湧いた。

 

 

 

*

 

 

 

 無線でシン大尉の声が響き渡る。ミノフスキー粒子をばら撒ける機体が敵に無いので、音声は明瞭だ。

 

 

『救護班! 急ぎ救出用機材を以てして、擱座(かくざ)したパワードGM、GM改、試験用ザクⅡから、操縦士(パイロット)を救出しろ! ……俺の部下どもが死んだら、お前らの枕元で祟ってやるぞオラァ!?』

 

 

 言いつつも、GP-01ゼフィランサスはGP-02Aサイサリスが置かれている格納庫に疾走して行く。その様子を見ながら、エグザベ少尉は『間に合った、か』と深く息を吐いた。トリントン基地近傍で彼とアダム准尉は核バズーカ搭載のザクⅡC型を捕捉、撃破に成功し、核バズーカを粉々に粉砕した。

 しかし直後、トリントン基地よりの救難信号を傍受し、更にぎりぎりでシン大尉からの思念を受けて、焦って現場に飛び込んで来たのだ。

 

 エグザベ少尉が仰ぎ見ると、上空にトロイホースとスタリオンがミノフスキークラフトで浮遊しており、トロイホースからシイコ大尉率いるMS(モビルスーツ)隊が降下して来るのが見えた。

 そして後方からは、自分たちの相手を片付けたゼロ少尉とゲーツ少尉のジムカスタムも、姿を現す。シン大尉は一応ニュータイプ能力者だが、彼らの安定性はもうそれに接触した程度でどうにかなる様なレベルではない。……ここまで来るのに、2年という時間と莫大な(じぇに)が掛かってはいるのだが。

 

 そしてエグザベ少尉達は、トリントン基地格納庫へと機体を進める。そこではドムが駐機しており、その操縦席(コクピット)ハッチが開いて、無人である事が分かる。その操縦士(パイロット)は、というと……。

 

 

(動け、動け、動け、動け、動いてよ! 今動かなきゃ、今やらなきゃマレット様の理想が、マレット様の思想が、実現できなくなっちゃうんだ! もうそんなのやなんだよ! だから、動いてよ!)

 

 

 完全に核融合炉の火が落とされたGP-02Aサイサリスの操縦席(コクピット)から、そんな思念が読み取れる。相手はニュータイプ能力者では無いはずなのに、強く、強く思念が伝わって来る。

 やがて憲兵(MP)たちが数名の作業員を連れてやって来て、バッテリーを繋いで操縦席(コクピット)ハッチを強制開放させる。すぐに憲兵(MP)が突っ込んで行って、2度ほど銃声がした。

 

 

バン! バン!

 

 

 本物の銃声は、ドラマなどで聴くソレよりも、軽くて乾いている。そして肩と腹から血を流し、それでも生きている女パイロットが、乱暴に引きずり出されて、手足を拘束されたままタンカに載せられてストレッチャーで運ばれて行った。その女の心からは、ずっとマレットとか言う男の影だけが伝わって来る。

 

 

「やれやれ、とりあえず終わった、かな」

 

 

 エグザベ少尉は、ほっと息を吐いた。

 

 

 

*

 

 

 

 その後多少の越権行為はあったかもしれないが、現場の判断、緊急避難的に問題なしとされたシン大尉は、流石に昇進直後だったために昇進はしなかったが、またも勲章を貰う事になったらしかった。これにはアルビオン隊やその艦長、そしてトリントン基地司令を含む基地の偉いさんたちの失態から、目を逸らすためでもあったらしい。

 シン大尉からエグザベ少尉に送られて来た型どおりの礼状の末尾に、追伸として書かれていた内容によると、シン大尉はこの件で基地司令とちょっと気まずくなったために別の基地へ異動になるらしい。勲章の件も、これで恩給や年金の額が増える、と喜んではいる様だ。

 

 

「まあ、うん、まあ。強い人、ではあるね」

「どうしたんですか」

「シン大尉からの礼状」

「ふうん」

 

 

 エグザベ少尉は、帰還してきたジャブロー基地で、そっと苦笑を漏らした。




>動け、動け、動け、
いや、『シン』繋がりという事で(笑)。初号機と違って、GP-02Aは動きませんでしたがね。2号機ですし。

シン大尉、最初から最後まで頑張り詰めでした。他の面々、役に立ちません。作劇上の都合もありますが、この時期の連邦軍の駄目っぷり。ゴップもレビルもワイアットも、あのコリニーですらも、「やばい、このままじゃ。なんとかしないと」って顔になってます。
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