偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第34話 観艦式

 今現在、第49独立戦隊はコンペイトウ宙域にて事前探査を行う事になっていた。何の事前探査かと言うと、ワイアット大将が主導する観艦式だ。本来この観艦式は、大規模な艦隊による威容を見せつける事でジオン公国残党に対する示威行動とする他に、連邦軍全体の士気高揚、そして一般市民に対する連邦軍への支持率回復を目論んでの事だ。

 まあ一般市民に対する支持率は、一時は一年戦争によっての勝利でちょっとばかり高くなっていた様には思われた。だが一年戦争中の末端の連邦軍による暴虐、『ちょっとばかりコレはまずいだろ』と言える行いの数々により、急降下。まあ比較対象であるジオン軍への評価も低いのだが。ガルマ元大佐現一般人の庇護下にあった北米エリアや良心的な司令官が居たオーストラリア大陸以外は、民間人はけっこうな搾取の憂き目に遭った模様であったりする。

 そんなわけで、終戦から二年余り。地球連邦と連邦軍は民間の信頼回復と復興のため、けっこう必死にやって来たのだ。本来ならば、この観艦式はその総仕上げ、とでも言うべき行事だったのだが……。

 

 

「とてもそう言うわけには行かなくてな」

 

 

 そう言ったのは、ブライト艦長である。ここはトロイホースの艦橋(ブリッジ)、そしてこの場には第49独立戦隊を率いる立場の人間たち、MS(モビルスーツ)隊のシイコ大尉、副隊長アムロ少尉、カイ中尉待遇少尉、エグザベ中尉待遇少尉、そしてトロイホース副長のヒュー中尉、スタリオン艦長のエルマー大尉が集まっている。ちなみにエグザベ少尉とエルマー大尉は、エグザベ少尉は自分のジムカスタムで、エルマー大尉は脱出艇を兼ねた連絡艇(ランチ)で移乗してきている。

 

 

「本来は総仕上げ、のつもりだったのだが。結局のところ、目的に支持率回復が含まれている事で判る様に……」

「「「「「あー」」」」」

「まあ、うん。そう言う事だ。これからも軍の支持率回復のための活動は続く。具体的には、破壊された街の修復や放置された残骸などの撤去と言った工事協力。末端のMS(モビルスーツ)部隊はこう言った活動に従事している部隊も多い。まだそういうところは、士気が高いところもあるんだが」

「「「「「あー」」」」」

 

 

 そういう事だ。前回のGP計画襲撃、特にGP02A関連の事象によって明らかに、というか、あからさまになった末端の連邦軍のモラルの致命的低下。ダラける、程度ならまだしも、悪意こそ無いが明確なサボタージュにも相当する不良軍人ども。たとえばペガサス最終型強襲揚陸艦アルビオンで言えば、3名乗艦していたMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)のうち、3交代で1人は準戦闘待機としてMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)待機室に常駐すべきであった。

 

 

「だと言うのに、だ。そいつらは3名が3名とも、艦外へ出てトリントン基地格納庫にあったGPシリーズを見物に出ていた」

「「「「「あー」」」」」

 

 

 ブライト艦長以外の面々は、さきほどから『あー』しか言ってない。だがそれしか言えない雰囲気でもあった。

 

 

「唯一適切な対処をしたシン大尉の評価が上がり過ぎて、それでトリントン基地司令や副司令と言った高級士官との軋轢が酷くなり、ゴップ大将やティアンム提督とその後ろのレビル将軍らの口利きで、他の基地……。『たぶん』少しマシな基地に逃がしたそうだからな」

「「「「「あー」」」」」

「まあとにかくだ。そういう士気(モラル)が低い連中……。『やる気』という面でも、『規律』という面でも、モラルが低い連中をもどうにかするために、とりあえず意気だけでも上げてそれから各種施策を試みよう、と言う経緯になったんだそうだ。今回の観艦式は。

 でもって、資金をわずかでも回収するべく観艦式は各地TV局に放映権を売って、そう言う意味でも宣伝政策に力を入れている。そんなわけで、失敗するわけにはいかん。是が非でも成功させねばならん。我々は、万が一のことをたくらむ輩への、探針としての役割を期待されている」

 

 

 そしてブライト艦長は続けた。

 

 

「そして、だ。わたし個人は、この任務が終わり次第諸君らと、若干の間だけお別れとなる。軍大学へ、進学……事実上の命令が下った。……最新の睡眠学習機器まで駆使した、ごく短期間での可能な限りの課目を履修、だそうだ。もしかしたら今生の別れにならん事を祈る」

「「「「「……あー」」」」」

 

 

 今度の『あー』は、哀愁の色が強かった。ブライト艦長の背中が(すす)けて見える。が、彼は必死で気力を立て直し、説明を続けた。

 どうも彼の後釜には、元ペガサス最終型強襲揚陸艦アルビオン艦長、エイパー・シナプス大佐が就任するらしい。あくまで一時的措置と言う事で、ブライト艦長が復帰しだい彼はトロイホースから異動もしくは退役になるそうだ。というか最新鋭艦であるアルビオンから、強力艦ではあるがトロイホースへの異動とは、下手したら降格人事とも捉えられる。

 と思ったら、どうやら本当に降格人事だったらしい。彼は前回のアルビオン被弾時に、副長と交代して食事休憩を取っていたそうなのだが、その時に例のGP-02Aサイサリスを奪おうとした部隊の奇襲攻撃を受けたのだ。

 結果、まともな指示を出せなかった副長は至近距離までG型ゲルググの接近を許し、艦橋(ブリッジ)第2艦橋(サブブリッジ)にビームライフルの直撃を受ける。結果各部システムがダウンし、各部署で電源が落ちる。これは今後建造されるアルビオンと同型艦でも同様となる危険が警告されており、せめてMS(モビルスーツ)デッキや機関部ぐらいは独立して稼働可能な様に、システムが再設計されている途中である。

 

 色々と同情すべき点はあったにせよ、部下たちの士気低下を解決できずにだらけた空気を払拭する事もできず、結果として艦に大きな損害をもたらしたのは間違いが無い。アルビオンは今なおトリントン基地近郊の大型ドックに入港して、修復と改修工事中である。

 そして此度のトロイホース代行艦長就任は、シナプス大佐にとって最後のチャンスらしい。能力的には優秀で、しかし地位に比してあまりにも政治との関わり合いを嫌いすぎた事で色々と問題も起きており、難しい立場に立たされていた人物である。彼が此度の異動で手柄を立てた上で自分の欠点を解消できるのであれば、軍での道は開けるだろう。しかしながらそうでは無かった場合、彼に残される選択肢は退役か、予備役入りかのどちらかである。

 

 そして一同は、各々の持ち場へ戻る。とにもかくにも、観艦式を成功に導かなくてはならない。トロイホースとスタリオンは手分けして周囲一帯を探索して回る。その間、シイコ大尉、アムロ少尉、エグザベ少尉、カイ少尉、ゼロ少尉は戦闘待機から外れ、各艦の艦橋(ブリッジ)で精神集中して気配察知に寄与する事となるのだ。

 

 

 

*

 

 

 

 シイコ大尉は、溜息を吐く。乗機のジムカスタムの傍らで、愚痴を吐く。

 

 

「とりあえずヤバい雰囲気を感じたのを片っ端から捕まえてるけど……」

「今のところ、全部が全部、確かに公国軍残党崩れなんですが……」

 

 

 夫であるアムロ少尉も疲れを表情に出している。2人は肩を落とした。

 

 

「「なんで海賊が、こんなに多い……」」

 

 

 そう、捕まるのは基本、再建中のサイド1とサイド4に運ばれる荷を狙った海賊連中であり、特に観艦式を妨害しようとか言う連中では無い。それは良いのだが、海賊の数があまりにも多かったのだ。

 

 

「だーーーっ!! 絶対サボってるでしょ、哨戒艦隊! この辺の残党狩り部隊も!」

「気持ちは同じですから、落ち着いてシイコさん」

「ご、ごめんなさい」

 

 

 アムロ少尉の言葉に、シイコ大尉は頑張って気を落ち着かせる。

 

 

「僕らが頑張ってこの辺の残党崩れ海賊を潰せば、サボってる奴らもただじゃ済みませんよ。成果が上がれば上がるだけ、奴らが給料泥棒してた証になります」

「なるほど……。いい意趣返しになるわね」

「意趣返し、頑張りましょう」

 

 

 そして、第49独立戦隊は頑張った。頑張って、頑張って、腐るほどの戦果を挙げたのである。

 

 

 

*

 

 

 

 今、第49独立戦隊は観艦式それ自体には参加せず、周辺宙域を巡って警備任務に就いていた。TVではどのチャンネルに回しても、広大な宇宙に雄飛する大艦隊の姿しか映っていない。ちなみにマゼラン級戦艦もサラミス級軽巡洋艦も、各々MS(モビルスーツ)艦載機能を備えたタイプである。

 観艦式に参加した艦船は、どうせこの後は各地のジオン残党部隊を討伐する部隊に、増援として配備されるのが過半なのだ。そんなとき、MS(モビルスーツ)運用能力が無い艦艇は小規模部隊には不要なのは、目に見えている。大艦隊ならば空母タイプコロンブス級もしくはコロンブス改級、ペガサス系列の強襲揚陸艦などと艦隊を組み、戦艦や巡洋艦は砲撃に専念できるかも知れないが、末端の小規模部隊ではそうもいかん。

 あげくに艦隊総旗艦の大型戦艦であるバーミンガムでさえも、万が一、億が一の事態に備えて、その艦体サイズからは少々足りなそうなものの、1個中隊のMS(モビルスーツ)運用能力を設計最終段階で無理矢理に追加されていた。

 

 エグザベ少尉は、バーミンガムに1個中隊のMS(モビルスーツ)が搭載されることを、いち早く知っていた。いや、いち早くというか発表があった直後、その内容が一般軍人に知れ渡る前に、と言うべきか。何故かと言うと、許可が出たという事でコウ・ウラキ少尉から自慢のメールが届いたのである。

 メールの内容は『ワイアット大将の座乗艦、バーミンガムに乗る事になった』『バニング大尉がMS(モビルスーツ)隊の中隊長』『自分はキースと共に、中尉待遇少尉として、バニング中隊の第2小隊、第3小隊の小隊長になった』という話。

 ただ、エグザベには驚きは無かった。ゴップ大将ら上層部の思惑を、ブライト艦長を通じて聞いていたのだ。バーミンガムのMS(モビルスーツ)隊には技量よりも名声で隊員を集めた、らしい。バニング大尉、コウ少尉、キース少尉は、技量という面から言えばバニング大尉は最上級、コウは現状中の上、キースは中の中といった所だ。しかし実績では、彼らはキリマンジャロ基地にてアフリカ地区のジオン公国残党(テロリスト)を叩き、勇名をはせている。

 

 

「……まあ、バーミンガム隊に選抜されるのに、相応しい実力はある。よかったな、ウラキ、キース」

 

 

 エグザベ少尉は、自機のジムカスタム操縦席(コクピット)でモニターに観艦式のTV放送を映しながら、独り言ちた。




観艦式、成功です(核爆)。しかも何故か参加艦艇の大半がMS(モビルスーツ)搭載機能あり。歴史が随分と変わってます。なおバーミンガム(ry
コウ、キースがバニングと共にバーミンガム搭乗。なんて皮肉な。あと民放に観艦式の放映権売ったりして、色々と資金稼いでます。あと他に、たぶん各地の連邦軍基地で基地祭とか同時開催して、入場料取ったり饅頭とかわたあめとかリンゴあめとか売ってます。金魚すくいも。

これが終ると、ブライト艦長は軍大学に放り込まれます。超過密なスケジュールです。脱落も許されません。
ブライト艦長の代理は、時期を区切ってエイパー・シナプス大佐。ぎりぎりのギリッギリで、降格は免れました。まあ、でも、ねえ。本編でも能力的にはアルビオン乗組員鍛え上げられましたが……。精神性は鍛え上げられたかなあ??? いや駄目かも。
シナプス大佐、さすがに大佐レベルで政治に無関心というか、あえて距離を取るのは、軍人として潔い面もあるでしょうけれど、無理があるかと。いや無理でしょう。そういう面ではイーサン・ライアー大差を見習って……。いや、アレは別な意味で見習っちゃならん。
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