偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第35話 RX-84ガンダムMk-Ⅱ

 エグザベ中尉は、先日中尉待遇少尉から正式に中尉に昇進した。それと同時に、カイ中尉待遇少尉とアムロ少尉も、それぞれ中尉に昇進している。エグザベ中尉は妹分であるニャアンに、幼年学校卒業祝と士官学校の入学祝を送ったところ、折り返し中尉への昇進祝が送られて来て、頬が緩んで仕方がないところだ。

 とりあえず今現在、任務の合間に第49独立戦隊はジャブロー基地で短い休暇を楽しんでいる。ただ休暇とは言っても、突然の物であると同時にほんの数日の物であり、なおかついつ何時再出撃が掛かるかわからないため、エグザベはニャアンに会いに行けなかった。まあニャアンの事をゴップ大将クラスの人間が気にかけていてくれるためか、ニャアンが比較的長期の休暇を取得できる際は、エグザベも『何故か』時間が取れている。

 まあしかし今回は、どうしてもエグザベ側の都合がつかなかったため、直接会う事は叶わなかった。TV電話で、ちょっとニャアンから愚痴られたエグザベだった。なお拗ねた顔がちょっとだけ見たいと思ってしまった事は、さしものニャアンの能力でもTV電話越しという事でバレなかったのは、エグザベに幸いであったのかも知れない。

 

 そして休暇明けの日、第49独立戦隊主要人員は、トロイホース艦橋(ブリッジ)に呼び出された。

 

 

「シナプス艦長、エグザベ中尉、参りました。いったい此度……。え、貴方は!」

「と、父さん! あ、し、失礼しました艦長!」

「かまわん」

「あー、良いでしょうかシナプス大佐」

 

 

 そう言った白衣の男は、先ほど驚いた声を出したアムロ中尉の実父でシイコ大尉の義父、テム・レイ技術中佐であった。その隣には、痩せぎすのテム技術中佐とは異なり、若干恰幅の良さげな人相の悪い白衣の人物が立っている。

 

 

「ああ、久しぶりだな諸君。紹介しよう。彼はフランクリン・ビダン技術中尉。正直な話、彼は天才だ」

「レイ技術中佐、貴方ほどの方からそう仰られるとは。流石に背中が痒くなります。わたしの研究も、貴方の力添えが無くば完成したかも」

「フランクリン君、テムで呼んでくれんかね? ここにはアムロも、その嫁さんも居るんだ。レイでは誰だかわからなくなる」

「これは失礼」

「うおっほん!」

 

 

 雑談に話が流れそうだと見てとったシナプス艦長が、咳払いをする。苦笑したテム技術中佐は、本題を再開した。

 

 

「さて、今回我々がここに来たのは、上からの命令書と幾つかの機材を持って来たんだ。命令書の内容は、その機材のテスト、だ」

「機材?」

「ああ、アムロ。このマニュアルを見ろ」

「??? ……こ、これは!」

「どうしたんだ、アムロ!」

「アムロ君!?」

 

 

 アムロ中尉は驚きの叫びを上げると、一心にマニュアルを読み始める。

 

 

「これは! ガンダム……Mk-Ⅱ、だって!? 装甲材は、ルナ・チタニウムA!? す、すごい! これ、ガンダムやアレックスのほぼ直線上の進化形に値する機体だ! 外部仕様はともかく、内部仕様は……。ムーバブル・フレーム!?」

「そのムーバブル・フレーム構造が、フランクリン君の新開発だ」

「いえ、理論ばかり先行していたそれに光明をくださったのは、テム技術中佐のアイディアではありませんか。……正直わたしは、技術中佐に対し無意味なライバル意識を持っていました。しかし技術中佐は惜しみも無くそのアイディアをわたしに」

「うぉっほん!」

 

 

 またシナプス艦長に咳払いで怒られたことで、苦笑するテム技術中佐とフランクリン技術中尉であった。そしてマニュアルを読み進めるアムロ中尉をよそに、エグザベ中尉が質問を投げかける。

 

 

「つまり僕たちへの命令書というのは、このガンダムMk-Ⅱ……。RX-84ガンダムMk-Ⅱをテスト運用しろ、と?」

「そうだ。しかも実戦テストの依頼だ。それと共に、新機軸の構造を多用しているこの機体はOSがまだ不完全だ。GM系のOSを元にして、一応は基本を組み上げてあるのだがね。君らで、この機体の教育型コンピューターを鍛え上げて欲しい」

「!!」

「そのデータを元に、新たな地球連邦軍の新型量産MS(モビルスーツ)のOSを完成させる。そして機体側のデータを元に、地球連邦軍の新型量産MS(モビルスーツ)を設計する。

 旧来機の再利用として、GMⅡの設計も始まってはいる。だが、あれはあれで量産型としてはいい機体だが。それでもGM系機体を新造パーツを使って改造、近代化改修すると言った物でしかない」

 

 

 つまりはこのRX-84ガンダムMk-Ⅱを元にして、新しい連邦軍の新型主力MS(モビルスーツ)が生み出されるという事だ。

 

 

「アムロ、シイコ君、エグザベ中尉、カイ中尉と言った隊長副隊長の4人、そしてゼロ少尉、セイラ少尉の2人にもテストを頼みたい。各小隊2名ずつ、6機預ける事になるな。カイ中尉とセイラ少尉の機体は、支援用途目的という事で主要武装として狙撃用ビームライフルを用意してある。

 ……よろしく頼む、よ」

 

 

 重い、重い責任だ。彼らが下手を打てば、連邦軍のMS(モビルスーツ)開発や選定が歪みかねない。しかしテム技術中佐が信頼して機体を預けてくれたのだ。その信頼は、心地よかった。

 

 

 

*

 

 

 

 ブライト少佐は、ゴップ大将に呼び出されて会議室に入った。

 

 

「ブライト・ノア少佐、入ります」

『うむ、入室を許可するよ』

 

 

 ブライト少佐は扉を開ける。彼は元々細い目を目いっぱい見開く。あろうことか、その場にはゴップ大将の他、レビル将軍、その後継者と目されるティアンム提督、そしてもう1人、ジャミトフ・ハイマン准将が座していたのだ。

 

 

「良く来てくれた、ブライト少佐」

「はっ!」

「諸君、紹介しよう。彼がわたしの後継者候補、ブライト・ノア少佐だ。まあ、まだ候補の1人でしか無いが、ね。我が家には、軍人としての後を任せられる有能な者が、残念ながら、ね……。実業家や政治家なら多少人材はおるが……。

 現在わたしは、彼を促成栽培で大至急育てている真っ最中なのだよ。まあ候補は他にもおるが、目を掛けているという事では1~2を争っている、かな?」

 

 

 ブライト少佐は、直立不動で黙って立っていた。ゴップ大将は、カエル面に笑顔を浮かべて言う。

 

 

「ああ、すまんすまん。『着席を許可する』よ。ふふふ、彼はまだこういう所が硬くて、な」

「ありがとうございます!」

 

 

 礼を言って、ブライト少佐は着席をする。ゴップ大将は笑顔で言った。

 

 

「レビルは知っておるだろうし、ティアンム君も顔ぐらいは知っておろう。が、とりあえず顔見世程度はしておこうかと、な。それと、だ」

「……ゴップ大将、彼の教育のためにこの場に呼んだのは理解できるが。本題は何、かね?」

「単刀直入に言おう。レビル、わたしに力を貸して欲しい」

 

 

 周囲の皆の顔色が変わった。

 

 

「力を貸せ、とは?」

「……レビル。お前がティアンム大将に派閥の全てを引き継がせ、軍からフェードアウトして行こうとしているのは知っている。ティアンム君も、それに苦悩はしていたが、同意したのもな。

 だが。逃げるな、レビル」

「! 逃げる、つもりは無い。わたしは軍人として、そして人として、やってはならぬ事をしてしまった」

「そこのジャミトフ君が提言した強化人間計画……。それに賛同し、GOサインを出してしまった事、かね? だからこそ、一年戦争は全力で戦い、勝利した今、退役して逃げようとしている……」

「「「!!」」」

 

 

 ブライト少佐は、自分が場違いだと感じている。だが、自分がゴップ大将の後継者候補だと紹介された事で、混乱もしていた。ちょっと待ってくれ、そう叫びたくて仕方がない。だがゴップ大将は本気だ。まあ、まだ候補の1人にしか過ぎないらしい、が。

 ゴップ大将は、続けて言った。

 

 

「逃げるなレビル。そしてわたしに力を貸せ。一年戦争で貸した分、利子をつけて返せ。……退役後、地球連邦政府の、議員になるのだ。そして地球連邦政府の大統領を目指せ、いや目指すだけでは足りん。大統領に、なれ」

「!!」

「一年戦争の戦争計画を主導し、勝利に導いたその経歴があれば。選挙に勝てる。なれ。それがお前の、(つぐな)いの道だ」

「だ、だが」

「そしてわたしは、もうしばらく。ブライト少佐になるかどうかは、まだ未確定だが。後継者ができるまで待ってから、わたしも退官して、地球連邦政府議会の議員を経て議長になる」

 

 

 今度はゴップ大将はジャミトフに顔を向ける。

 

 

「君にも、力添えをしてもらうぞジャミトフ君。君が何を考えて、強化人間計画などという益体も無い計画を、レビルに吹き込んだかは知らん。だがあの様な、資金だけ食い散らかして、結果としては強力な兵士を『個人単位で』作るだけに終わった計画。兵士を作るなら、生み出すなら、畑から採れるように数万単位で作れなければ、意味が無い」

「……」

「ティアンム君、君にも力を貸してもらわねばならん。地球連邦軍を、レビルとわたしが去った後の連邦軍を、支え続けられるのは、君だけだ。君ならば、ワイアット大将とも上手くやれる。わたしから話も通しておこう」

「……あなたは、何を考えているのだ」

 

 

 ティアンム提督の言葉に、ゴップ提督は再びレビル将軍に顔を向けた。

 

 

「レビル……。地球の、全人類を、宇宙に、上げるぞ」

「「「「!!」」」」

 

 

 その場の全員が、表情を強張らせた。

 

 

「地球が、保たんときが来ているのだ。わたしは人類社会に寄生する、寄生虫だ。甘い汁を吸って来た、その自覚はある。だが、それは人類が健全に生きながらえてこそ、だ。そしてわたしは。人類社会に、甘い汁を吸わせてもらった分だけの、恩返しはして来たし、人類社会が滅んでしまってはどうにもならんと、そう思ってもいる」

「「「「……」」」」

「そして、だ。現状、地球人類、アースノイドは。宇宙市民、スペースノイドが稼いだ金で生きている。ちょっと金勘定に長けた者なら、簡単に解かる理屈だ。そしてスペースノイドが、サイド1、2、4、5が滅びた今。アースノイドも危機に瀕しているのだ。……わたしは、人類を、愛している。レビル、ティアンム君、力を貸せ。

 ……人類を、救うのだ」

「「!!」」

 

 

 そしてゴップ大将は、ジャミトフ准将に顔を向ける。

 

 

「こういう事ならば、君も反対はすまい?」

「ご慧眼、恐れ入ります」

「コリニーと、手を切りたまえ。わたしの、というには難しいだろうから、レビル派閥、いや表向きはティアンム君の派閥だね? それに鞍替えをしたまえ」

「はっ」

 

 

 ブライト少佐は、なるほど、と思った。協力を求めるだけならば、レビル将軍だけ呼べばいい。なのにティアンム提督にジャミトフ准将までも呼んだ。そして彼の理解が追い付く限りでは、ジャミトフ准将……ジャミトフ・ハイマンもまた、どうにかして宇宙へ全アースノイドを上げようとしていたのだろう。

 

 

「さてブライト少佐、いやブライト君」

「はっ!」

 

 

 ゴップがブライト少佐の顔を見遣る。

 

 

「そういうわけだ。勉強、頑張ってくれたまえ。あと、卒業して部隊に戻ったなら、手柄もどんどん立てて、出世してくれたまえ」

「はっ!」

 

 

 その後、ブライトは勉強への熱の入り方が変わった。ちょっとやらされていた感が強かったが、人が変わったかの様に熱心に取り組んだのだ。まあ彼は、ゴップそのもののコピーになる気はない。まだ見えないではいるが、自分なりの『偉いさん』になれる様に、努力しているのであった。




タイトル詐欺(核爆)。

いや、RX-84ガンダムMk-Ⅱは出てます。テムさんのおかげでフランクリンの技術が伸びて、この時代に胴体部までム―バブルフレーム使える様になってます。穴ハイム(笑)はGP-01の様に腕とかだけの部分的な使用にとどまってます。
ルナ・チタニウムAは、ガンダリウムγ相当の装甲材と見ていただければ。テムさん生き延びてるから、技術開発への意欲が連邦全体でまったく史実と違うんですよ。そしてまっとうな開発意欲があれば、人員数、人材層の厚さ、投入資金、元データの数、積み上げて来た研究データベースとかから、アクシズみたいな田舎の開発力に連邦の開発力が負けるわけないんです。
あと、名前についてはテムさんが「え? ガンダリウム? ……玩具(おもちゃ)っぽくないかね?」って疑念を呈したら、そのまま通りました。そしてテムさんはその会話、忘れてます。

というわけで、ガンダム史上最高レベルの父親と、最低ぶっちぎりの父親、共同戦線です。仲いいけど、息子への扱いでは天上と地獄の差ががが。

そしてタイトル詐欺の所以。ゴップ大将無双。さすがゴップだ何ともないぜ。もうティターンズとかは宇宙の彼方に飛び出していけ、して行方不明になっちゃったんだ。
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