偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第37話 テム・レイのご祝儀

 ここはジャブロー。ようやくの事で、延び延びになっていたアムロ中尉とシイコ大尉の結婚式が執り行われた。ただまあ、何と言うか。ゴップ大将とブライト少佐とがどうにか日程の予定をつけて駆けつけて来て参列。更に英雄同士の結婚式という事で、TV局まで来ていたりする。

 ちなみにゴップ大将は笑って祝福していたが、裏でブライト少佐は平身低頭で新郎新婦に謝っていた。まあ2人とも理屈としては理解している。著名人、しかも英雄である自分たちの結婚式だ。上手く使われてやるのも義務と言うものだろう。

 

 ちなみにこの時、ニャアンも軍属としてホワイトベースに乗り組んでいた立場から、士官学校から公休を貰って参列していたりする。

 

 

「いいなあ……」

「やっぱりニャアンも憧れるかい? ウェディングドレス」

「うん」

 

 

 そう答えつつとりあえずニャアンは、エグザベ中尉がボケた事を言うのに備えて、彼の尻をつねる準備をしておく。だがエグザベ中尉はボケた事を言わなかった。

 

 

「そっか、憧れるか……。うーん……」

「?」

 

 

 エグザベ中尉は何かしら考え込んでいる。ニャアンが本気を出せば、彼の内心を読み取れるのは確実なのだが、なんとなくあえてソレはやる気にはなれなかった。まあどうせ、口に出す事と思ってる事は同じというタイプの人間だし。

 

 

「……どうしたんですか?」

「いや、わからないんだ。ニャアンのウェディングドレス姿を想像してみたんだが……。兄としての気持ちなのか? 父親ってこんな気持ちなのか? ニャアンの隣に立つ男を想像したく無いって言うか。あいたたた!?」

 

 

 結局ニャアンは、エグザベ中尉の尻をつねる。まあ兄や父親的立場として、見て欲しいわけじゃないのだニャアンは。なんとなく。たぶん。

 ただ、エグザベ自身が、ソレがあくまで兄としてもしくは父親代わりとしての気持ちなのか、自信がもてていなさそうなのだ。ニャアンは士官学校の同期生女子から、忠告をもらっていた事を思い出す。

 

 

(そういう男性って、たぶん自分が女性から好意を向けられるって思ってもみないんだと思う。自分に変に自信が無いんだよ。だからそういうのを『わからせる』には、あからさまに攻めて攻めて攻めるしかないよ。真っ正直に、伝えないとだめ。誤解の余地無いぐらいに。

 ……盗られちゃって、後から泣いても遅いんだからね)

「……はぁ」

 

 

 溜息を吐いて、ニャアンは想う。

 

 

(それはそうだけども。でもこっちも自分の気持ちがはっきりわかってないし。いや、ほぼ間違いなくそうだと思うけど。自信ないから踏み切れないっていうか)

 

 

 もしかしたら、雰囲気に流されてしまうのが良いのかもしれない。悩むニャアンである。自分に自信が無い同士というのは、物凄くめんどくさかった。

 

 

 

*

 

 

 

 結婚式が終っても、アムロ中尉の父親であるテム技術中佐はしばらく戻らなかった。とりあえず公休が終り士官学校へ帰るニャアンを空港で見送った3日後、エグザベ中尉は母艦であるスタリオンの自室でのんびりしていたところ、トロイホースの艦橋(ブリッジ)へ呼び出される。そこには同じく呼び出されていたアムロ中尉とシイコ大尉、そして呼び出した側であるテム技術中佐の姿があった。

 

 

「テム技術中佐、シナプス艦長、エグザベ中尉ただいま出頭いたしました。此度の呼び出しはいったい……?」

「これでとりあえず全員揃ったね。今回はまあ、結婚祝いとしては少々武骨なんだが。まあ式を今回やっただけで、実際には既にとっくの昔に入籍してはいたが」

「父さん……」

「お義父(とう)さま……」

 

 

 テム技術中佐は、バインダーから書類とマニュアルを取り出す。この様子は、似たような事をしばらく前に見た事があるエグザベ中尉、アムロ中尉、シイコ大尉である。

 

 

「お前たちのおかげでRX-84ガンダムMk-Ⅱはほぼ成功を収めた。おかげで教育型コンピューターも新型機に対応したデータを大量に、良質なものを獲得できたし、実機の実働データの方も腐るほど……いや腐らんが、これも上質な物を得られている。おかげでRGM-85GM-NEXTも既に試験用の実機が1ロット完成し、テスト運用に入っているよ。ただし名前はまだ仮称だし番号も仮だがね」

「それは素晴らしい話だけど……。父さ、いえテム技術中佐。この書類は?」

「うむ。得られたデータを精査した結果なんだが。当時のRX-84は連邦軍としては最高峰の機体、ではあった。RX-78GP01ゼフィランサスやRX-78GP01Fbフルバーニアンを遥かに凌駕し、RX-78GP04ガーベラすらも周回遅れにしておる。

 ……だが、それほどの機体であっても。お前たち、アムロ、シイコさん、エグザベ中尉には不足だった模様だ」

 

 

 そしてテム技術中佐は、1通ずつ書類を手渡す。マニュアルは1冊しか無いので、アムロ中尉に手渡した。

 

 

「!! と、父さ、じゃない技術中佐、これは!」

「……すごいわ」

「RX-85ガンダムMk-Ⅲ……。『僕ら』の専用機、ですか」

「……並の操縦士(パイロット)の事を一切考慮せずに。お前たちの操縦能力に一切の(かせ)をかけず。現状の技術で、どこまで能力を絞り出せるか。そういう目的の元に、5機だけ建造された、正真正銘の特注機、だ」

「「「5機?」」」

 

 

 肩を(すく)めて、テム技術中佐は言う。その表情は、いたずらっぽい笑みを浮かべている。

 

 

「アムロ、シイコさん、エグザベ中尉。その3人用と、予備機『扱い』が2機、だな」

「『扱い』……ですか?」

「うむシイコさん。予備機というか補用機は1機あればいいんだろうが、ぶっちゃけた話もう1人、増えるんだろう? 来年度、士官学校を卒業したら新しく来る娘が」

「え゛」

 

 

 エグザベ中尉は目を丸くする。

 

 

「あ、あの娘はたしかに並以上の操縦能力はあるでしょうけど……」

「ふふふ、あの娘もお前さんには、恥ずかしい所を見せたくないんだろう。士官学校でのMS(モビルスーツ)実習の様子は、お前さんには伝えてないらしいな、エグザベ中尉」

「え゛」

 

 

 唖然とするエグザベである。

 

 

 

*

 

 

 

 公休から帰ってきたばかりだが、ある事情から懲罰を食らい、グランド100周からしれっとした顔で帰って来たニャアンに、同期生で仲のいい娘が困り顔で言う。

 

 

「はぁ……。むっちゃ鍛えてるあんたにゃグランド100周なんてオマケみたいなもんでしょうに。教官も、別の罰与えるべきよね」

「まあ、うん、まあ」

「でも勉強も無駄に頑張ってるし、補習授業やったら逆に復習になるって喜びそうじゃん。愛する『エグザベ兄さん』の役に立つために頑張ってるんだし」

「……からかわないで」

「はいはい」

 

 

 ちょっと顔を赤らめさせるだけ、少しはニャアンも進歩してはいるのだ。友人は、肩を落として言う。

 

 

「だけどさあ。頼むからMS(モビルスーツ)の操縦系、パチらせないでよ。あんたが壊した操縦席、修理すんの大変だって、整備のおじさんがあたしに泣きついて来るんだよ」

「……マグネットコーティングのリミッター、わたしの時だけカットしてくれって上申してるんだけど」

「いちいちリミッターカットやってらんないわよ。あんたの愛する『エグザベ兄さん』は、リミッター付きのマグネット・コーティング機で1回しか壊さなかったんだよ?

 いや実際、伝説の旧式GMで徒手空拳6機撃破やった人だよ? その機体自体は操縦系死んだよ? その後にマグネットコーティングした機体入って来たけど最初はリミッター付きのマグネットコーティング機で操縦系焼き付かせた人だよ? だけど1度だけで、それ以後はきちんと手加減操縦覚えて、丁寧に丁寧に操縦して見せた人だよ?」

「……」

 

 

 ニャアンは友人の勢いにのけぞる。友人は更に言いつのった。

 

 

「一年戦争の英雄のエグザベ・オリベ中尉サマ! 『エグザベ兄さん』の役に立ちたいんなら! 手加減操縦くらい覚えろっての! あたしゃもう整備の人に、あの子も悪い子じゃないんだって、あたしのせいじゃないのに謝るの、やってらんないからね!!」

「ごごご、ごめんなさい」

「謝らなくていいから、手加減操縦覚えろーーー!! その(つつ)ましい胸、()み倒すぞゴルアアァァ!!」

 

 

 ニャアンは伝説のDOGEZAの勢いで、ひたすら謝った。(つつ)ましい胸と言われたのはちょっとイラッと来たが、そんな事を言おうものならSEKKYOUが赤くなって3倍になるので、ひたすら謝った。相手が女だとは言え、好きな人以外に胸を()み倒されるのは御免であったし。

 

 

 

*

 

 

 

 エグザベは、頭を抱えた。

 

 

「にゃ、ニャアンの友達に菓子折りでも送らないと」

「それはそれで、英雄サマから菓子折り届いたなんて事になったら悪目立ちするから、やめてあげなさい」

「そ、そんなもんですかね」

 

 

 うんうんと頷くテム技術中佐。彼はしみじみと言った。

 

 

「リミッター付きで上限値が低くなっているとは言え、マグネットコーティング機の操縦系を焼き付かせる娘だ。間違いなく全力を出させるには、ガンダムMk-Ⅲが必要だよ」

「な、なるほど」

「それに、だ」

 

 

 テム技術中佐の視線が鋭くなる。

 

 

「書類の2ページ目を見たまえ」

「「「???」」」

 

 

 3人のMS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)は、首を傾げつつ書類を捲る。ちなみにマニュアルは、まだアムロ中尉の脇に挟まれたまま開かれていない。

 

 

「え……」

「こ、これって」

「テム技術中佐!?」

「うん。サイコミュ、だ。シャリア・ブル氏の協力のもと、完成した物でね。別名『バイオセンサー』と言う。ブラウ・ブロに搭載されていた物よりも、とんでもなく進歩しておるよ」

 

 

 テム技術中佐は、笑顔で語る。

 

 

「もっともこれは、純粋な脳波操縦ではない。あくまで脳波操縦は、補助的な手段だ。手足で操縦桿やペダルを操作する場合、思考よりも速く操作できる場合も多々あるからね。思考による操縦は、あくまでゲタを履かせるだけだ。完全な脳波操縦など、操縦士(パイロット)の負担になるだけだよ」

「「「確かに……」」そんな気はするわね。お義父さま、お気遣いいただき、感謝します」

「いや、そこまで気にしないでくれたまえ。ははは」

 

 

 そして書類を全部見て、アムロ中尉から受け取ったマニュアルも読んだエグザベ中尉は、感嘆の息を漏らす。このMS(モビルスーツ)は素晴らしい。最新機材であるベースジャバーやドダイ改などのサブフライトシステムにも対応しているし、大気圏突入用のバリュートシステムにも対応している。装備品の追加を考慮したソフト上やハード上の工夫は、痒い所に手が届くと言う物だ。

 エグザベ中尉、アムロ中尉、シイコ大尉の3人は、心からテム・レイ技術中佐に感謝したのである。




ようやく延び延びになってた結婚式です。まあ新婚旅行とかは無いんですが。新婚旅行どころか地球圏あちこち駆け回ってますけど。それに籍は既に入れてかなり経過してますし。

そしてニャアン。と言いますか、エグザベ、ニャアン、アムロ、シイコの4人で、実は現段階の実力的に、リミッター付きマグコで操縦系をパチらせないと確信できるのはエグザベだけしか居ません。残り3人は、アムロ=危険度中、シイコ=危険度大、ニャアン=確実にパチる、となっております。エグザベは必要なら操縦系ブチ壊して敵を倒しますが、いつもはパチらせません。
まあ彼ら3人の機体は、マグコにリミッター掛かってませんけど。あ、ゼロとカイ、セイラの機体にもマグコのリミッター掛かってません。ゲーツとハヤト含む残りの隊員にはリミッター入りマグコです。リミッターの強度はまたそれぞれで違いますけどね。
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