偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第38話 反地球連邦組織って、字面悪いと思う

 シナプス艦長率いる第49独立戦隊は、事実上ゴップ大将の直属と見られている。というか、事実だ。そして元々その母体となった第13独立戦隊がレビル将軍の影響下にあった事もあり、またシナプス艦長がレビル将軍と縁深かったコーウェン中将の直接の部下であった事などから、ゴップ大将とレビル将軍のパイプ役と見られている部分もある。まあこれは誤解なのだが。

 現在コーウェン中将はレビル将軍の直下からは外れている。これはレビル将軍が自身の軍内部での派閥を縮小するというかティアンム提督に引き渡す動きが強かったため、反発したコーウェン中将がその下を離れたという部分が大きい。まあレビル将軍及びティアンム提督はアナハイム・エレクトロニクスの膨張を警戒というか疎んじ、アナハイムと関係性が深いコーウェン中将はレビル将軍配下を離脱したという側面もある。

 そのアナハイムだが、現状うま味の少ない軍需産業部門を縮小する動きが出ている。GP計画、ガンダム開発計画の、事実上の失敗が尾を引いているのだ。連邦軍研究工廠に先んじ、社内で強力な4種類の試作機、というか事実上の実戦テスト機を生み出したにも関わらず、社内からのジオン残党への内通によるGP-02Aサイサリスに関する情報漏洩。そしてGPシリーズの、テム・レイ技術中佐が主導して開発したRX-84ガンダムMk-Ⅱへの事実上の敗北。

 まあGP-02Aサイサリスは、これも連邦軍主導で生み出されたサイコミュ誘導核ミサイルや、カメラ映像やAI技術などによる『考えて命中する核ミサイル』にも敗北し、その意義自体が喪失しているわけだが。

 唯一気を吐いたかに見えたGP-03デンドロビウムの計画であったが、実際のところ連邦軍が接収して解析したMA-08ビグ・ザムと比べると無駄に構造が複雑であり、高い技術力を投入したのは理解できるが性能向上にコストが見合っていないのだ。テム・レイ技術中佐とフランクリン・ビダン技術中尉によれば、コアMS(モビルスーツ)を組み込んだりしなければ、もっと安価に、もっと耐久性が高く造れる、だそうだ。コアMS(モビルスーツ)は、脱出機構としてはテム技術中佐のお眼鏡に適わなかった模様。

 第一ビグ・ザムでは完全に機体内部に組み込めていたIフィールド発生器が、GP-03では機体外に露出しており、多少の攻撃で脱落する危険性もあると言うのはなんとかならないのか。これはモジュール化を推し進め過ぎたが故の、明らかな設計ミスとして後々に糾弾されている。言い換えれば、『戦場を知らない者が無茶な設計をした』という事だろう。

 

 

「……それで危機感を覚えたフォン・ブラウン支社のオサリバン常務が、怪しい動きを」

「うむ。政治には関わりたくはなかったが、そうも言っておられん。しかもそれがわたしの欠点、いや欠陥だと声を大にして叱責されてはな……」

 

 

 シイコ大尉とアムロ中尉に話をしているのは、シナプス艦長である。もうなりふり構っていられないらしい。シナプス艦長は現状ゴップ大将の線から連なる直属の部下ではあるが、ただしコーウェン中将がらみの事情から影響力は低い。シイコ大尉とアムロ中尉はブライト少佐や自身の縁からゴップ大将とのコネクションも強いし、テム技術中佐の流れでの縁もあるのだ。

 ちなみにコーウェン中将は、GP計画の事実上の失敗により、その影響力を大きく落としている。どうも何がしか、返り咲きを狙っている様なのだが……。

 

 

「……エグザベ中尉を呼んでもよろしいでしょうか。彼の意見も聞きたいのです」

「アムロ中尉……。わかった、呼んでくれたまえ」

 

 

 しばらくして、トロイホースの艦橋(ブリッジ)にエグザベ中尉が姿を現す。

 

 

「遅くなりました」

「いや、急に呼び出して済まない。実は……」

 

 

 そしてシナプス艦長は、エグザベ中尉に話を振る。

 

 

「オサリバン常務、ですか。うーん……。あれ?」

「どうしたかね?」

「いや、士官学校時代の同期生に、ウラキとキースっていう友人がいるんですけれどね。そいつからメールで知らされた話があるんですよ」

「コウたちから?」

 

 

 アムロ中尉も反応する。そしてエグザベ中尉は、携帯端末を引っ張り出すと、メールを検索し始めた。

 

 

「ああ、このメールだ。……なんかウラキとキース、そして上官のバニング大尉が妙な誘いを受けたみたいなんですよ。きっぱり断ったそうですが。……連邦軍内の派閥、『A.E.U.G.』……エゥーゴ、って言うらしいんですがね。……どうも、アナハイムが関わってるって話が」

 

 

ピロン!

 

 

「あれ? メールだ。まあ後で……。え!? このメールの件名!? シナプス艦長、ちょっとすいません!」

「む? ああ、構わんが、どうしたね?」

「……メール、全文読み上げます。アムロも知ってるだろ、シン大尉からだ」

 

 

 エグザベ中尉は、シン大尉からのメールを読み上げる。

 

 

「件名は『エゥーゴ、Anti Earth Union Group(反地球連邦組織)について』です」

「「「!?」」」

「エグザベ・オリベ中尉殿。あんたに折り入って頼みがある。もう俺が抱え込める問題じゃねえ。あんたゴップ大将とかと伝手があるんだろ? どうにか上へ話を繋げて欲しい。できれば内密に、だ。

 前のGP-02Aサイサリスの時の事件で、阿呆やった3人組操縦士(パイロット)が居たろう。ベイト、モンシア、アデルだ。その中の1人、チャップ・アデル。奴が泣き入れて、助け求めてきやがった」

 

 

 エグザベ中尉は、いったん言葉を切る。そして息を整えて、また読み始める。

 

 

「どうやらあの3人、あのときのポカが原因で、僻地にドサ回りのジオン残党(テロリスト)狩り任務やらされてたらしい。ただ、それでも技量だけは充分確かな連中だからな。エゥーゴからスカウト入ったって話だ。アデルの奴ぁ、当初エゥーゴが何の略称か知らんかったけど、アースノイドの腕利きとか顔が広い奴とか集めてるって話でな。3人とも二つ返事で参加したんだと。

 ……バスク・オム大佐だ。あのハゲが動いてやがる。どっから資金とか装備が湧いて出てるのかは知らねえ。ただ、エゥーゴってのは近年のゴップ大将ティアンム提督主導で、スペースノイドに融和策取って懐柔したり、ジオン『共和国』に肩入れしてる今の地球連邦が気に食わねえ、って奴らの実行部隊、ってわけだ。頼られたからにゃ、助けてやりてえ。他2名はともかく、チャップ・アデルはどうにかならんか?」

「……」

「バスク・オムって、たしか」

「スペースノイド嫌いの急先鋒ですね」

「……それが、アナハイム・エレクトロニクスのフォン・ブラウン支社常務オサリバンの一派と手を組むのか?」

 

 

 エグザベが、口を開く。

 

 

「これは、事が大きすぎます。ゴップ大将に内密で連絡を取りましょう。情報部に動いてもらわないといけない案件です」

 

 

 その場の全員が、頷いた。

 

 

 

*

 

 

 

 バスク・オム大佐はコリニー派の大物である。以前はジャミトフ・ハイマン少将……ティアンム提督派に鞍替えして後、准将から1階級昇進したのだが、元はそのジャミトフ少将配下であった人物だ。その彼に、副官のジャマイカン・ダニンガン中尉が声を掛ける。

 

 

「バスク大佐、その……」

「なんだ」

「いかにスペースノイド共を叩き潰すためとは言え、そのスペースノイド共でもあるアナハイムの軍需部門の力を借りるとは、いかがなものでしょうか」

「フン!」

 

 

 バスクは苛立たし気に鼻を鳴らす。そのこめかみには、血管が浮いていた。

 

 

「毒をもって、毒を制す、だ。今は悔しいが、あのクズどもの力を借りねば動くこともできん。そのうち、そのうちだ。見ておれ……。我らが連邦軍の実権を握った暁には! コリニー閣下がレビルもティアンムも、そしてゴップも追い落とした後には! 必ずやアナハイム共もこの地球圏から、いや宇宙から、消し去ってくれるわ! そして……」

「そして?」

「裏切者の、ジャミトフ! 奴の首をかならずや! かならずや!!」

 

 

 ジャマイカンは、直属の上司の狂気とも言える怨念に、内心ビビり散らかす。当人は、実はエゥーゴに来なけりゃ良かったのでは、と今更ながらに思っていたりした。

 

 

 

*

 

 

 

 ゴップ大将は、ブライト少佐に向かい話しかける。

 

 

「勉強の様子はどうかね?」

「は、順調です」

「そうか……」

 

 

 そして彼は、どさりと書類を机上に投げだした。怪訝な顔をするブライト少佐。

 

 

「読んでもかまわんよ」

「……失礼いたします。……これ、は」

「エゥーゴ、Anti Earth Union Group(反地球連邦組織)についての警告、だ。第49独立戦隊からの。彼らも、気付いた模様だよ。耳が早いものだ」

 

 

 ブライト少佐は、眉をしかめる。

 

 

「なるほど……。バスク大佐が表向きの主導で、裏ではコリニー提督が動いている。資金と装備は、アナハイム・エレクトロニクスが……。その軍需部門、フォン・ブラウン市の支社がメインになって供与している、と」

「我々が調べた内容を、噂話のレベルではあるが補完している。まったく、頼りになるものだ。前々からこうであれば、シナプス大佐も貧乏くじを引くことは無かったのだろうがな」

「では?」

「うむ、君が軍大学卒業資格を取って第49独立戦隊司令に戻ったなら、再度シナプス大佐にアルビオンか、それに近い最新鋭艦を預けるとしよう。弱点を克服したならば、あの男の能力は惜しい」

「なるほど」

 

 

 楽しそうな顔をするゴップ大将だが、目は笑っていない。

 

 

「今はコリニーと、真正面からぶつかる事はできん。だがそのうち、バスクは暴走を起こす危険がある。それを看過する事もできんよ。わたしは実戦畑ではないので、その辺の見極めが甘くなる傾向がある。ワイアット君やティアンム君に任せるしかないのだがね。レビルは退官後の色々な準備で忙しいからな。退官はまだ先になるとは言え。それにここで下手な傷をつけるわけにもいかん」

「必要とあらば、わたしが動きますが」

「いやブライト君は、勉強の時だ。軍大学の単位はもう既に取得し終えたんだろうが、そうではない勉強、それをわたしやワイアット君の傍で、『見て』学びたまえ」

 

 

 ブライト少佐は苦笑する。軍大学の単位を極々短期間で取得し終えるために、最新の睡眠学習システムとか色々と使って詰め込まれたのだ。それは未だ、いい思い出になどならずに、悪夢として時折脳裏に蘇って来る。

 

 

「そういえばブライト君。君は結婚はしないのかね?」

「あ、いえ。想っている女性はいるのですが、まだ想いが叶ってはいないというか」

「その様だね? で、だ。こちらの裏工作が済んだなら、うちの家系の女性とお見合いをしてみないかね?」

「え゛」

 

 

 ブライト少佐は少将焦る。だがゴップ大将の次の台詞を聞いて、今度は仰天した。

 

 

「いや、ミライ・ヤシマ女史は知っておるだろう? 君の所の操舵手だったのだからね。彼女に、ウチに養女として入ってもらえんか交渉中なのだ。今のところ、好感触なのでな。カムラン・ブルーム氏との婚約も破談になった様だし。彼女が養女に入ってもらったなら、君に婿入りしてもらうか、あるいは分家としてノア家を取り込むかしようかとね?」

「は、はあ」

 

 

 ブライト少佐はちょっと焦った。先ほどまでの話と、内容が違い過ぎる。まあゴップ大将にとっては、結局は政略の話なのだろうな、とは思うが。




A.E.U.G.(エゥーゴ)総司令官、バスク・オム大佐というパワーワード。力こそパゥワー。
いや、エゥーゴ(反地球連邦組織)って、字面悪いですよねー。悪の組織ですよねー。穴ハイムって悪の組織ですよねー。
というお話の回でした。ただ今回ちょこっとだけ触れた、コーウェンは何処に行くのだろうか。
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