偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第40話 ベルファスト基地へ

 今、第49独立戦隊は地球に降りて来ていた。バスク大佐、いや元大佐のエゥーゴが起こし掛けた幾つかのテロ事件を未然に防いだ後、コリニー元中将の派閥が根拠地としたイギリスはベルファスト基地の攻略のため、欧州へと降下していたのだ。

 そう、元大佐であり、元中将である。エゥーゴとの関わりが、と言うかエゥーゴ参加者である事が立証された軍人たちは一部を除いた全員が、軍籍抹消の上で更に一部はテロリストの容疑を掛けられた。サイド1の30バンチコロニーへのGGGガス攻撃を計画し実施命令を出したバスク、汚職による逮捕を『拒み』MS(モビルスーツ)複数機と改ペガサス級強襲揚陸艦サラブレッドを『私物化』し『逃走』したコリニー、コリニーを『救出』したジェリドとカクリコンなどは、その筆頭である。

 ちなみに例外が、ぎりぎりでエゥーゴを脱出して来たチャップ・アデル少尉である。彼は脱出の際に本人は内容を知らなかったが、多数のエゥーゴのテロ計画書、そして命令書を持ち出して来ており、それに基づいて行われた調査で多くのテロが阻止された。その功績を以てして、彼は情状酌量と合わせて無罪判決を勝ち取っており、今は直接エゥーゴと戦わずに済む後方基地での警備隊勤務をしているらしい。

 

 そして今、エグザベ中尉はニャアン少尉と共に、改ペガサス級強襲揚陸艦スタリオンの艦橋(ブリッジ)で、小さな溜息を吐きつつドーバー海峡の方角を眺めていた。

 

 

「ほんとなら、シナプス艦長のお別れ会、ブライト艦長のおかえりなさいパーティ、ニャアンの歓迎会、全部やるつもりだったんだがなあ」

「残念です」

「仕方ないだろう。ここんとこテロの阻止で時間なんて取るに取れなかったんだ」

 

 

 リュウ中尉も、そう言いつつもちょっと残念そうだ。ジョブ中尉が苦笑して言う。

 

 

「まあシナプス艦長は無理でも、ブライト艦長おかえりなさいパーティーとニャアン少尉の歓迎会は、ちょっとだけ延期してこの任務完了後に行えばいいじゃないですか」

「まあそうなんだけどね」

 

 

 まあ、そういう事だ。トロイホースのシナプス艦長はブライト艦長が戻って来た事により、晴れてペガサス最終型強襲揚陸艦アルビオンの艦長に返り咲いたし、士官学校を卒業したニャアンは少尉任官してスタリオンのMS(モビルスーツ)隊に配属されていた。これによりエグザベ中尉の小隊は、変則的な5機1組の小隊一時的になっている。

 なお近い内に、アダム・スティングレイ准尉が少尉に昇進して中尉待遇少尉として小隊を率いる立場になるとの事で、異動の予定がある。彼はアルビオンのMS(モビルスーツ)隊として異動するらしい。そうなればエグザベ中尉のオリベ小隊はエグザベ中尉、ゼロ少尉、ゲーツ少尉、そしてニャアン少尉の4人編成に戻る事になるのだ。

 

 

「そうですね。遅くなってもやってくだされば、嬉しいです」

「じゃ、そうしよう」

 

 

 のん気な言葉の内容とは裏腹に、エグザベ中尉の視線は(きび)しく険しい。

 

 

「……ベルファスト基地には、ホワイトベースで来た時以来か。あの時とは違って、今度は攻め込むことになるとはね」

「エグザベ兄さん、勝ちましょう」

「ああ」

 

 

 周辺にはMS(モビルスーツ)を運搬するために集められたミデア輸送機や、またはベースジャバー、ドダイ改などの姿も見える。時間が来たら、これらの機体はいっせいにドーバー海峡を渡ってベルファスト基地へと攻め込むのだ。

 

 

 

*

 

 

 

 超望遠レンズで捉えられる大軍団を見遣りつつ、バスクは(あざけ)りの言葉を吐いていた。

 

 

「ゴップめ、ワイアットめ。モグラと無能が、よくもやったものよ。それともあの戦争馬鹿のレビルか? ティアンムか? しかし裏切者のジャミトフと、臆病者の宇宙人ブレックスは、まさかおるまいて……。

 おい、脱出用の艦の準備は整っているか! ジャマイカン!」

「はっ! 改ペガサス級強襲揚陸艦サラブレッド、カタパルトレール上にて、いつでも発進可能であります!」

「よかろう。だが万一狙撃MS(モビルスーツ)が控えていた場合に備え、発進はぎりぎりまで待つことにする」

「それは……」

 

 

 ジャマイカンは、ごくりと唾を飲み込む。

 

 

「やつらの本隊が攻め込んで来たのを見計らい、時限核自爆装置を作動させる。ちょうどサラブレッドが上昇中に爆破する様にな。

 さすれば狙撃用MS(モビルスーツ)が居たところで、問題あるまいて。ベルファスト近郊が更地になるのを眺めつつ、我らは宇宙へと飛び立つのだ」

「ではコリニー中将閣下を」

「それには及ばん」

「は?」

 

 

 苦虫を4,096匹まとめて噛み潰した表情で、バスクは吐き捨てる。

 

 

「せっかく救い出してさしあげたものを……。あの方は、もはや駄目だ。前に進む気力を失っておる。ならば、賊軍どもに一矢報いて死なせて差し上げるのも、忠義という物だろう」

「そ、それは……」

「戦闘が始まったなら、あの方の居場所を賊軍どもにリークする。そして逃げられぬ状況を作ったところで、核がドカン、よ。ふはははははは」

「そ、それは……」

 

 

 バスクは丸眼鏡に見える視力補正具の下で、不気味な笑顔を浮かべる。

 

 

「そして我々が向かう先は、ルナ2よ。あそこの司令、ワッケインは我らの同志だ。レビル派閥を装ってはいるが、な。戦後腑抜けになったレビルに愛想を尽かし、腰巾着のティアンムに付く事もしたくはなく……。そして我らの大義に同意し、密かに協力を約してくれたのだ」

「おお」

「しかも奴め、すばらしい計画をもたらしてくれたぞ。奴の率いる艦隊は、そのままサイド7宙域を支配下に置く。そして奴は、我らが到着する前に準備を整えてくれるそうだ。

 ……ルナ2落とし、だ」

「……!!」

 

 

 そして呵々大笑したバスクは、嬉しそうに語る。

 

 

「正義である我々が立ったというのに、それに呼応せずに日和見を決めおった臆病者どもも! 正義である我々に歯向かうモグラどもも! 寒冷化した地球で、すべて滅びれば良いのだ! そしてルナ2艦隊と共に我々はスペースノイドどもを殲滅し、真の平和を地球圏にもたらす! コリニー閣下ではない、このバスク・オム大佐がな!!」

(く、狂っている……)

 

 

 ジャマイカンはそう思ったが、時すでに遅し、である。彼は逃げ出す手段を必死で考えつつ、しかし何も思いつかずにバスクの腰巾着をするだけであった。

 

 

 

*

 

 

 

 レーザー通信で、ワッケイン大佐……一年戦争中は少佐であったが、戦時昇進で大佐になり、そして戦後に戦時昇進が解除されて少佐に戻ったが様々な功績で中佐に昇進し、そして先日ついに正式に大佐になった彼は、画面の中のゴップ大将に敬礼する。

 

 

「例の件ですが、上手く行っております」

『すまんな。レビルから君を借りて何をやらせるかと言ったら、下手な役者の真似とは』

「ふ、退役したら役者でも食っていけますかな?」

『まだまだ退役されては困るのだがね』

 

 

 ゴップ大将は画面の中で、コーヒーを啜る。

 

 

『本当にすまんな。バスクと通じるダブルスパイ役を、君の様な高位の軍人にやらせるなど』

「いえ。任務です。それより、ベルファストの時限式核自爆装置は、どうなりましたか」

『潜入工作員が、上手くやっておるよ』

「では後のわたしの仕事は、万が一にサラブレッドが地球の重力圏を離脱してきたなら、艦砲射撃で沈める事ですな」

『おそらく、その必要も無いが、ね』

 

 

 失笑したワッケイン大佐は、真面目な顔に戻ると問う。

 

 

「ところで、バスクの『玩具』の対策は?」

『エグザベ・オリベ中尉の小隊に、ビームライフルの他にバズーカを装備して出ろと厳命してあるとも』

「了解です」

 

 

 笑っていたゴップであったが、そのカエル面を引き締めて言った。

 

 

『……しかし、最初から最後までバスク1人にしてやられた様な物だ。あやつの突発的な思い付きでしかない行動のおかげで……。本来ならば、もっと年単位の長い時間をかけてコリニーを追い詰め、バスクの手足を縛り、そしてエゥーゴの組織を末端に至るまで根切りにする予定だったのだ。数年、いや十年かけて、な。

 なれどあやつのせいで、コリニーを無理に失脚させざるを得なくなり。テロ対策に多数の手間と資金を取られ。そしてエゥーゴの末端は……。反スペースノイド思想を持つ輩は、細い細い根っこの部分を取り切れず、地球圏各地に分散してしまった』

「……」

『今後我々は。十年どころではない。数十年単位でエゥーゴの残り香と、終わりの見えない戦いに身を投じる事になるだろう。消耗する人員も、消耗する資金も、目も当てられん。言わば我々は、バスクの愚かさに敗北した様なものだ。……だが、バスクも勝利者では無い。勝利者などいない』

「……寒い、時代です」

 

 

 ゴップ大将もワッケイン大佐も、もはや言葉は無かった。

 

 

 

*

 

 

 

 黒い巨大なガンダム型をした、40mはあるMS(モビルスーツ)が、腹部から拡散ビームを放つ。だがそれは、エグザベ中尉やニャアン少尉のガンダムMk-Ⅲも、ゼロ少尉やゲーツ少尉のガンダムMk-Ⅱも、とらえる事は無い。

 

 

(Iフィールドか! 全員、装備をバズーカに交換! 股間、脇の下、首の付け根、弱点らしいところを狙って撃て!)

(((了解!!)))

 

 

 Iフィールドが何の役にも立たない炸薬式バズーカが、黒い巨大MS(モビルスーツ)の弱点を次々に(えぐ)る。と、ゼロ少尉が、ゲーツ少尉が次々に思念で叫ぶ。

 

 

(な!? こ、こいつ俺の、僕の、いも、うと!?)

(ちい! まだムラサメ研の生き残りがいたのか!? ムラサメ研はこれだから!)

(あ゛、あ゛、あ゛、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、ぼ、ぐ、の゛、か、らだ、ガアアアァァァッ!!)

(くそ、目を覚ませ! ソレはお前の身体なんかじゃない!)

 

 

 必死に呼びかけるゼロ少尉だったが、しかし相手の反応は無い。ゲーツ少尉が叫ぶ。

 

 

(ちくしょう! だめだゼロ少尉! こいつ完全に洗脳されてる!)

(だが! だが! 病院に入れてやれば! もしかしたら!)

(つらいのはわかる! くるしいのも、くやしいのも! だが今大事なのは、仲間の命だろう!)

(く……っそおおおぉぉぉ!!)

 

 

 エグザベ中尉は、一瞬悩む。しかし、キラキラ輝くニュータイプ能力者の感応空間に入ってどうにかするには、『何か』が微妙に足りない。たぶん人数だ。今はなんと言うのか、あの黒い巨大MS(モビルスーツ)のせいで、『チカラ』が何割か食われている状況なのだろう。ことに、黒い巨大MS(モビルスーツ)操縦士(パイロット)に何かしようと言うのなら。

 

 

(……ニャアン! 力を貸してくれ!)

(任せて)

 

 

 次の瞬間、ガンダムMk-Ⅲに搭載されているバイオセンサーが、2人の精神波をチカラに変換する。ガンダムMk-Ⅲがビームサーベルを抜き放つ。そして黒い巨大MS(モビルスーツ)の首、操縦席(コクピット)があるだろうソレを、左右からビーム刃を交差させて斬り落とした。

 

 

(これなら……。死には、しまい! ゼロ少尉! ゲーツ少尉!)

(隊長、礼を……礼を言う!)

(気絶して、いる様だな。まったくムラサメ研のやる事は、イカレている)

(よかった……)

 

 

 そしてエグザベ中尉は、次なる敵を探す。だが周囲には、まあアナハイム製と思しきザク系とGM系の合いの子MS(モビルスーツ)や、ドム系に連邦系技術を足し込んだ様なMS(モビルスーツ)が居るだけであった。ちなみにどちらも、ガンダムMk-ⅢにもガンダムMk-Ⅱにも能力的には遠く及んでいなかったりする。

 

 

 

*

 

 

 

 カイは照準器を使わずに、上昇する改ペガサス級強襲揚陸艦サラブレッドを精神で捉える。それに乗っているバスク・オムの思念が、核爆発が起こらない事に激昂する腐った思念が、はっきりと感じられる。

 

 

(アムロちゃ~ん、シイコ大尉~、セイラさんも~、ハヤトもさあ~。しっかり、邪魔入らねえ様に、護っててちょうだいよ、ねっ!)

(わかってるカイさん!)

(カイ君、任せたわ!)

(でもお願いだから、いつぞやの軟弱ものの様な物言い、やめてくれないかしらね、うふふ)

(か、カイさん! 頼みます!)

 

 

 そしてカイは、数を数える。

 

 

(……3、2、1、『()え』たぜッ!!)

 

 

 身体が反応し、引き金が引かれる。カイのガンダムMk-Ⅱが装備している、狙撃用ビームライフルから、通常のビームライフルの4倍の威力に相当するビームが放出され、天空へと昇って行く。

 カイは、肉声で語った。

 

 

「終わりだ、バスク・オム」

 

 

 天空に、爆炎が散った。

 

 

 

*

 

 ……ベルファスト基地は、エゥーゴから地球連邦軍の手中に戻った。しかしこの後エゥーゴは地下に潜り、その残党との戦いは延々と続く事になる。ジオン公国残党との戦いも未だ終わっていない状況に於いて、この事は地球圏の未来に暗い影を落とし続けるのだった。




とりあえず表向きは、エゥーゴとの戦いは勝利に終わりました。ですが、本当は終わってません。この後、延々と続きます。くっそ面倒くさいです。
バスクの残した呪いは、延々と地球圏を蝕み続けるのです。そしてソレに、アクシズ勢力もまだありますからねえ。キシリア派残党とギレン派(親衛隊)残党が協力しないのだけは幸い?
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