偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第43話 やってられるか、のグレミー君

 現在、マハラジャ・カーンは重態の模様だ。どうやら毒殺されかけたらしい。戦艦グワザンの艦内で胃洗浄まではやったらしいが。今も点滴に繋がれていて、意識不明の模様。だがとりあえずは早急に、設備の整った大きな病院へ入院させる必要がある。

 ちなみにここから近いのは、復興中のサイド1だ。あそこには大きい病院があるはずだった。ブライト艦長は決断し、改ペガサス級強襲揚陸艦トロイホースで先導、殿(しんがり)に同級スタリオンを付ける事で戦艦グワザンを護送する事にする。

 

 

『ブライト艦長、感謝します』

「いや、グレミー副長。……突っ込んだ事を聞く様だが、貴官は自ら権力を握ろうとは考えなかったのかね?」

『あのドズル閣下と、そしてガルマ殿の放送を観た後、で? ……僕がギレン総帥の血を引いているだろう事、調整されたクローンだろうが隠し子だろうが、もうどうだっていい事ですが、それを知った時。歓喜しましたよ。僕が、僕こそが、ジオン『公国』を背負って立ち、スペースノイドの頂点に立つ、と。

 まあ、あの放送で『ああ、これは無理だって』と思い知らされましたけど。ガルマ殿、あの人を見た瞬間。あの人がドズル閣下を怒鳴りつけ、叱りつけたあの映像。絶対に追い付けない物を感じましたね。そして、あのレベルを周囲の者たちが僕に強要してくるのを想像したら……。ギレン総帥は、遺伝的な素質は高いんでしょう。僕もそれに関しては自負があります。でも、アレは教育とか経験とか、そう言ったのが、物を言う世界ですよ。太刀打ち? できるもんか、って気持ちですね』

 

 

 吐き捨てるかの様に、グレミー少尉は言った。その表情は、まさしく恐怖のソレである。ミノフスキー粒子の散布濃度が低く、ほとんど雑音(ノイズ)が入らないのは、幸か不幸か。

 

 

『あの巨人が、ジオン共和国という正当性でも辺境のアクシズが太刀打ちできない場所で、しかも地球連邦というある意味後ろ盾を得て、堂々と立っている。それに勝たなくてはならないなんて、そして常にアレと比較されるなんて、それを想像したら……。恐怖しましたよ。

 悩んでたら、マシュマー中尉に『逃げるかね?』と誘われまして。あの瞬間、『逃げてもいいんだ』って思ったら、背中が軽くなりましたよ。61,500kgほど』

「それはMS-14ゲルググのスラスター推力だろう」

『よく知っておいでで。……正直僕は、政治経済の勉強もしていましたが、それよりはMS(モビルスーツ)操縦に適性があると言われてましてね。自分でもそう思います。だから、下手に政治指導者とかやるよりも。単なるいち操縦士(パイロット)か、上手く行くならいち中隊指揮官レベルまで出世できるなら、その方が嬉しいですね。

 あるいは……。軍から離れて、土建屋で作業用モビルスーツかモビルワーカー、プチモビでも使って働くってのもいいかもしれません。いろんなしがらみ、全部捨てて。そういうのも、少し憧れますザザザッ』

 

 

 グレミー少尉は何処ぞの赤いヒトの理想形みたいな事を言っていたが、ブライト艦長は通信の最後に一瞬だけ入った雑音(ノイズ)を聞き逃さない。彼は立ち上がると、叫んだ。

 

 

「総員、第一種戦闘態勢! スタリオンにも伝えろ! グレミー少副長、少尉! そちらも緊急体制を!」

『ぶ、ブライト艦長、何が!』

「通信の最後に、ノイズが入った! ミノフスキー粒子下でのノイズに、非常に似通っている! これが間違いなら、笑い話にでもしてしまえばいい! だが今は、休憩中のマシュマー中尉にも知らせて叩き起こせ!」

『りょ、了解! ご、ゴットン少尉! 指揮権を移譲する! 僕はマシュマー中尉を起こしてその足でMS(モビルスーツ)デッキへ走る!』

 

 

 思わず命令口調で言ってしまったブライト艦長だったが、グレミー少尉は素直に従った。

 

 

 

*

 

 

 

 追尾して来た艦は、ザンジバル級機動巡洋艦を旗艦とした、ムサイ級最終型軽巡洋艦3隻の合計4隻からなる小艦隊だった。MS(モビルスーツ)数は推定で24機程度。というか実際に24機のMS(モビルスーツ)隊を射出している。

 機種は1機除いてAMX-003ガザCとか言う、MA(モビルアーマー)形態に変形可能なMS(モビルスーツ)だ。残り1機はと言うと、あくまで試作機という事で黄色いペイントをされているが、AMX-101ガルスJだそうだ。実戦に出しているからには、試作機とは言っても旧ガンダムの様に実戦テスト機なのだろう。これが隊長機らしかった。

 

 一方味方側の数であるが、まずトロイホースがレイ隊がガンダムMk-Ⅲが2機、ジムカスタムが2機。シデン隊がガンダムMk-Ⅱ狙撃用ビームライフル装備が2機、ジムキャノンⅡが2機。

 次にスタリオンが、オリベ隊がガンダムMk-Ⅲが2機、ガンダムMk-Ⅱが2機。ホセイ隊がガンダムMk-Ⅱ狙撃用ビームライフル装備が2機、ジムキャノンⅡが2機。

 

 このうち、ジムカスタムとジムキャノンⅡは、この任務が完了後にRGM-86GM-NEXTに交換される予定であった。GM-NEXTは当初RGM-85であったのだが、ガンダムMk-ⅢがRX-85であった事、そして先行量産のテスト機による調整がズレ込んだために、RGM-86になった経緯がある。まあ、今は無い機体の事を言っても仕方が無いが。

 

 そしてもう2機、グワザンから発進したマシュマー中尉とグレミー少尉のMS(モビルスーツ)がある。MS-14Jリゲルグと言うゲルググの派生機だ。アクシズ側の機体名称などについては、全てグワザン側からの提供情報だ。

 グレミー少尉が、のんきな口調で語る。だがその声は震えており、初陣の恐怖を誤魔化すための虚勢だと言うのが丸わかりだったが。

 

 

『は、ははザザザッあの一年戦争に於いてジオン軍全てから恐れられた、紅色の魔女率いる木馬ザザザッMS(モビルスーツ)隊、その中でも3人の超人的操縦士(パイロット)ザザザッる、紅色の魔女に白い悪魔、そして黒銀の死兆星、その3人ザザザ戦いを、伝説を目の当たりにできるなんて』

『そう、だなザザザッレミー少尉。我々は運がいい。更に今はその魔王たちが我々の味方なのだかザザザな』

「そんな二つ名で呼ばれてたのか。って言うか魔王」

『し、知らなザザザッ』

『魔女はちょっとザザッ心外かなあ』

 

 

 ちなみにガンダムMk-Ⅲは、昔ながらの色合いであるシイコ大尉が紅白、アムロ中尉が白と青、エグザベ中尉が黒と銀、そしてニャアンには二つ名は無かったが赤と銀で塗装されている。

 

 ……そして敵機が一斉に、襲い掛かって来た。

 

 

 

*

 

 

 

 かつてのホワイトベース隊では、例の3人ほど目立つわけでは無かったが、それでも地味に高いキルレートを出していた、暗闇からの狙撃手という実は二つ名持ちただし実態は知られていなかったカイ中尉は、狙撃用ビームライフルを駆使して今回は敵の母艦を叩いていた。『頭の中に』浮かぶ照準の中央に入ったムサイ最終型のエンジンポッドに狙いをつけ、撃つ、撃つ、撃つ、撃つ。

 4射して、2隻のムサイ最終型が爆散する。そこへエグザベ中尉の思念が届いた。

 

 

(カイ! そこからアレを狙えるか!?)

(……狙う! まかせろ!)

 

 

 そしてカイ中尉は、グレミーのリゲルグを押さえつけている2機のガザCの1機に照準を合わせた。

 

 

『駄々をこねてないで、ザザザ帰って来てもらいましょうか、グレミー『様』!?』

『ザッ嫌だ! お前たち、『立ち』たいんなら、ザザザッビ家の名前なんかに頼らずに、自分で『立て』ばいいだろう!』

『ええい、聞き分けザザザない!』

 

 

 次の瞬間、ガザCが1機、カイ中尉の狙撃で光球に変わる。そしてもう1機。

 

 

「さっさと逃げろ! 聞こえるか!」

『あ、ありがザザザ』

 

 

 飛翔するリゲルグ。それを狙って、ガルスJがビームサーベルを振りかざして斬りかかる。

 

 

『ならば死ね! エンツォ大佐の言う通りだっザザザ、(こころざし)無き血筋は、邪魔になザザザッばかりか!!』

『やはりエンツォ・ベルニーニ大佐ザザッか! うわ!』

 

 

 助けに入ったマシュマーのリゲルグが、片腕を斬り落とされる。

 

 

「あ、やべ。狙撃用ビームライフルのチャージが。……だが、大丈夫だろ? アムロちゃん、エグザベ、シイコ大尉さんにニャアンちゃんよ」

((((任せろ、完璧だ!))))

 

 

 4人の思念が答える。次の瞬間、カイ中尉の『視界』の中で赤と銀のMS(モビルスーツ)が、マシュマー中尉のリゲルグを救いガルスJを撫で斬りにする。襲い掛かろうとしたガザC6機が、黒と銀の機体の踊る様な動きに翻弄されて全機ビームライフルで撃ち抜かれる。その周辺宙域を青と白、紅と白のガンダムMk-Ⅲが固め、突入しようとするガザCを次々に芸術の様に撃ち落とす。

 そしてセイラ少尉とハヤト少尉が1隻ずつムサイ最終型を撃沈し、リュウ中尉とジョブ中尉、ジャック少尉、サマナ准尉、アーサー准尉がザンジバル級機動巡洋艦を共同撃沈。最後にカレン少尉とサンダースJr.少尉がそれぞれガザCを1機ずつ撃墜した時点で、残されたガザC1機は降伏の信号弾を打ち上げて終わったのだった。

 

 

 

*

 

 

 

 とりあえず敵機の脱出ポッドで生きているものを回収し終えて、自艦に戻ったエグザベ中尉達だったが、直後頭を抱える事になった。

 

 

「これ、か」

「ええ、敵機の脱出ポッド。明らかに連邦軍採用のものと同一規格です」

「これは大元はRX-78NT-1に用いられていた全天モニタとリニアシートの構造をベースにして、各社に競作させたんだよね。性能そのものよりも信頼性を重視した選定で」

「ええ。その後、採用された物をいったん連邦軍が買い取り、MS(モビルスーツ)開発能力のある各社にライセンス供与しました。ですがアクシズのMS(モビルスーツ)にこれが使われていたとなると……」

 

 

 ニャアン少尉が呟く様に言う。

 

 

「アクシズ軍に、知的所有権侵害で損害賠償請求しないといけませんね。流した会社にも」

「いや、そういう事じゃ……。いや、そういう事でもあるのか?」

「ゲーツ少尉、ニャアンが本気にされて困ってるよ」

「すいません、冗談でした」

「いや、冗談だろうとは思ったがね。だが、ある意味刑法上の件が済んだら民事でも挟み撃ちにしてすり潰さないといけないからな」

 

 

 最近ゲーツ少尉は、どことなくボケをかます所がある。本人はクソ真面目なのだが。そしてエグザベ中尉は、鹵獲機を見上げる。降伏した敵機を持ち帰ったものだ。AMX-003、ガザCである。

 

 

「こいつを解析すれば、どこの会社から技術が流れたのかは、はっきりするさ。まあ、おおよそ情報部では狙いを付けてるんだろうけど、ね。だってネジ穴の位置とか、エゥーゴ機のソレにそっくりだし」

「「「「「「ですよねー」」」」」」

 

 

 操縦士(パイロット)、整備兵全員含めて、意見が一致した。まあ今現在、『その会社』はエゥーゴに資金と機材を流していた容疑が掛かっており、色々と証拠固めの段階なのだ。なお輸送中のMS(モビルスーツ)などを奪われ、脅迫されて通報ができなかったのだ、などと言い訳をしてはいるが。当然そんなのは通用するわけもない。まあ言い訳の目的は時間を稼いで裏で賄賂や献金でどうにかしようとか、その類だろうが。

 連邦軍上層部は、今回は本気で動いている。その会社の『裏』に、どれだけの力があるのか。……アナハイム・エレクトロニクスにとって、存亡の危機、と言っても過言ではなかった。今回の件は、それに駄目押しの一手となるのか。それは誰にもわからない事である。




というわけで、グレミーはドズルを叱りつけるガルマの生中継(ただし電波到達のタイムラグあり)を視聴して、『アレと比べられる一生なんて、ヤダー!』と泣いて尻尾巻きました。いや、ぜったい嫌だろ。仮にギレン生きてたら、キシリアならともかく他のザビ家の血筋居たって、ギレンと比べられ続ける一生なんて、ぜったいに……。恐怖でしかないでしょ。

と言いますか、原作ΖΖの正史グレミーって、幸せだったんですかね。ルー・ルカとかに流されちゃうの、あのノリの方がずっとずっと幸せだったと思いますわ。

今、対アナハイムは証拠固め中です、というかほぼ完全に固まってます。アナハイムの民生部門とかは軍需部門をトカゲのしっぽ切りにすべく、動き始めてますね。
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