地球連邦軍宇宙要塞コンペイトウ。元ジオン公国軍宇宙要塞ソロモンであったこの宇宙基地に、今第49独立戦隊は寄港していた。本当はある『発表』のためにジャブロー基地まで呼びたかったのだが、『発表』まで時間が無いという事で今回はコンペイトウからレーザー通信でその『発表』に付き合う事になったのだ。
なお『発表』内容と各種必要事項はブライト艦長を通じて、『発表』に関わる人員には伝えられている。その人員とは、地球連邦軍のトップたちにより『ニュータイプ能力者』と認められている者たちだ。具体的にはシイコ大尉、アムロ中尉、エグザベ中尉、ニャアン少尉、カイ中尉、セイラ少尉、ハヤト少尉、ゼロ少尉、ゲーツ少尉である。
ちなみにゼロ少尉とゲーツ少尉に限っては、『戦時中にコリニー派の違法な研究によってニュータイプ能力を得た犠牲者であり、本人たちの希望によって今も軍に身を置いている』事が公表されている。嘘を
「……ひでぇ話だぜ。けど、この内容……。耳障りの良い事書いてるけどよ。良く考えると、変なところもあったりしねぇか? ブライト艦長よぉ」
「俺もそう思う、カイ。ただ、お前らは読んで、ざっくりとした理解だけしておけ。『発表』の後に、レーザー通信で遠隔でインタビューの時間を取ってあるそうだからな。ゴップ大将もレビル将軍もワイアット大将もティアンム提督も、今回の『発表』に関わる全ての高級将官が、『我々には、可能な限り操作されていない普通に聞こえる意見』を言う様に、だとの事だ。
つまり、下手な
「確かに。あまり突っ込まれずに、素直に終わってくれませんかね」
「エグザベ兄さん、たぶん無理」
「だよなあ」
そして彼らは書類を読み終わると、その書類を焼却した上で丁寧に揉み潰した。これで最新鋭機器を用いて鑑識作業に掛けても、内容を復元する事は不可能だ。あとは『発表』の時間を待つだけであった。
*
緊急で開かれた連邦軍の記者会見に、多数の記者が集まっていた。
「何の記者会見だ? なんか緊急の発表って話だけど」
「あれ、ジャン・ホルスト議員じゃねえのか」
「あっちはチェイコフ・スールー・ピカード議員だ。なんで軍の発表に議員が?」
今名前が挙がった者達以外にも、複数の議員、そして大臣クラスの者も何名かが発表側の席に着いていた。そしてレビル将軍、ゴップ大将、ワイアット大将、ティアンム提督らが席に着く。この大物中の大物たちの登場に、記者たちは驚き騒ぐ。そして発表が始まった。口を開いたのは、レビル将軍だ。
「此度、我ら地球連邦軍は……。まことに残念な発表をせねばならない。先日、我々は宇宙世紀元年の頃の連邦軍施設を廃棄する措置を行った。だがその前に、万が一を考えてその施設に関する徹底調査を行ったのだ。
ここで宇宙世紀元年と聞いて、ピンと来る者達も多い事だろう。『ラプラス事件』……。地球連邦首相官邸である宇宙ステーション『ラプラス』がテロ攻撃の対象となり、西暦より宇宙世紀への改元セレモニーのため集まっていた当時の地球連邦首相リカルド・マーセナス氏、各国首脳、地球連邦の首脳官僚多数、ラプラスの職員やセレモニーのため来ていたTVクルーなどの民間人多数が犠牲になった」
ごくりと唾を飲み込む音がする。誰が立てた物音かは判然としない。レビル将軍は続けた。
「我々が調査した施設から、妙な物が発見された。炭化した書類の一部分だ。そしてそれに残されていた文字に不穏な物を感じた調査員が報告。報告を受けた我々は情報部に命じて、書類の炭化部分を鑑識に掛けて、それに記されていた内容を復元した。
……それが、これだ!」
「こ、これは?」
「なんかどっかで、う、宇宙世紀憲章の文面? だ、だけど」
「この赤字で書かれた部分、宇宙世紀憲章には載ってない、ぞ!? 今端末で調べた! 宇宙世紀憲章には無い!」
その通りだった。ダカールの地球連邦政府本部に据え置かれた石碑には、この一文は無い。
『第七章 未来:
第十五条:
地球連邦は大きな期待と希望を込めて、人類の未来のため、以下の項目を準備するものとする。
1.地球圏外の生物学的な緊急事態に備え、地球連邦は研究と準備を拡充するものとする。
2.将来、宇宙に適応した新人類の発生が認められた場合、その者達を優先的に政治運営に参画させることとする』
レビル将軍は続ける。
「他の部分も見てもらいたい。命令書の写し、だ。過去すぎるために調査の手が行き届かず、部分的な確証しか得られなかった。しかし先ほどの、『欠落した宇宙世紀憲章の一部』が正しい物である補強証拠ではあるのだ!
時系列を見てもらいたい! テロ事件により宇宙世紀憲章の石碑……。各国首脳直筆サインが刻まれたオリジナルの石碑は失われた。そして已む無く、已む無くだ。レプリカの石碑が用意され、ダカールの地球連邦政府本部に据えられた。だが!」
会場は静まり返る。レビル将軍の怒声が響いた。
「レプリカの石碑の発注書だ! これの写しだ! 何故だ、何故これが連邦軍の施設にある!? 連邦政府担当者のサインの日付が入ったこれが、何故連邦軍の施設にある!?
……何故、オリジナルの石碑が失われる前日に、レプリカの石碑を発注した証拠が、なぜ連邦軍の施設にあるのだ!?」
誰も何も言えない。そしてゴップ大将が、発言を代わった。
「この疑惑はあまりにも大きかった。そこで我々は、徹底調査を行った。結果、これも確たる証拠とは言えぬが……。当時の連邦政府からの要請で、当時の連邦軍が急遽ラプラスの警備陣の人員を変更している事が判明した。何の意味も無く、だ。いや、本当に何の意味も無かったのかという疑いは、消せぬがね」
「何故、この発表を?」
記者の1人が発した質問に、律儀に? ゴップ大将は答える。
「こういう事は隠しておいても漏れるからね。見つけてしまった以上、言わねばなるまい? 隠しておれば、我々は過去の愚か者どもと道を同じくする、それこそ愚者中の愚者になってしまう。隠しておく事は、人道的にも倫理的にも、実利的にもやってはいけない事だ。絶対に、絶対にだ。
我々連邦軍は、この件について今後も調査を続けて行く。そして疑惑が完全となった場合には、もはや『犯人』は誰一人として生き残っていそうにないが……。連邦政府とも合意の元で、連邦政府と連邦軍は、この世紀の犯罪行為による被害者遺族の方々に、賠償を約束する。またもし疑惑が証明されない場合に於いても、犯罪被害者救済の観点から、今残っている被害者遺族の方々に対し、追加の補償を早急に行う所存である」
「「「「「「!!」」」」」」
そして、記者たちの質問が爆発した。それに対し、将官たちに議員や大臣たちは律儀に答えて行く。そして1人の記者が、この様な問いを発した。
「宇宙時代に適応した新人類が現れたならば、その者を優先的に政治参加させるとありますが、当のニュータイプたちは!? どのような!?」
「その質問が来る事は予想していたのでね。レーザー通信で、今現在ニュータイプと認定されている者達、そのほとんどが軍人であるのだが、どうにか軍人たちとは繋げる事ができているよ。直接話を聞いてくれたまえ。ただし!」
「ただし?」
「彼らはこういう場にまったく慣れていない、実戦士官たちだ。質問は、彼らが戸惑う事のない様に、ゆっくり一人ずつ、そして丁寧な口調で願うよ? あまり無茶な聞き方をする様であれば、彼らの人権を守るために、彼らへの質問は終了して我々だけへの質疑応答にならざるを得ない」
「……」
そうして、将官や議員たちの後ろにあるモニタースクリーンに火が入り、幾多の連邦軍制服を着こんだ軍人たちが映し出された。無論の事、第49独立戦隊の者たちである。画面の片隅にカットインの形で、1人だけ別部署のこれも軍人が映っていたりするが。ちなみにシン大尉である。
記者の1人が手を上げて質問した。
「失われた憲章の部分には、『宇宙に適応した新人類の発生が認められた場合、その者達を優先的に政治運営に参画させる』とあります。貴方がたはこれに相当する存在だと我々、いや少なくともわたしは認識しているのですが、これについて率直な意見をお聞きしたいのですが」
『申し訳ありませんが、誰が答えるのか指定していただけますか』
「失礼しました。では……。貴方ではどうでしょう、ええと、アムロ・レイ……中尉?」
『中尉で間違っていませんよ。では』
映像の中のアムロは話し始めた。
『まず最初に間違っている認識を訂正させていただきたいです。僕は『宇宙に適応した新人類』ではありませんし、連邦軍が認めた『ニュータイプ能力者』ではありますが、この憲章が認めたような、ジオン・ズム・ダイクンが言う様な、ニュータイプそのものでは、絶対にありません。
僕は、人類が元々その頭脳に秘めていた能力を、戦場のストレスなどのせいで発現させた、まあ一種の
「え、えっと。そう、なのですか」
『そしてもし僕ら、いえ僕が政治参加、ですか? しろと言われたら、裸足で逃げ出しますよ。ええと、その辺の説明は僕よりもエグザベ中尉の方ができそうなのです、が』
「で、ではエグザベ・オリベ中尉。お願いできますでしょうか」
頷いて、エグザベ中尉が前へ出る。
『エグザベ・オリベ中尉です。もし僕がこう言った力に目覚める前でしたら、こう言った力があれば、政治とか交渉事とか役に立つんじゃないかって考えたでしょうね。でも、実際にこう言った力を手に入れて、政治になんか使えませんよ』
「そ、そうなんですか」
『ええ。この力は、相手を理解する事ができます。これがどういう意味か、わかるでしょうか。簡単な例で言えば、『あ、こいつ絶対に相容れない奴だ』という結論に、一直線で飛びつく事ができてしまうんですよ。
ですから僕は、言葉によるやり取りを、すごく大事にしてます。言葉による、スローなやり取りならば、相手を理解する前に、自分の心をコントロールする猶予が出来ます。余裕ができます。それで、相手に対して『歩み寄る』という余地が生まれるんですよ』
「……な、なるほど」
『だけど、それってけっこう大変でしょう? そういう事に人間としてのリソース使わなきゃならないんですよ? 政治とか大変な事やるのに、残り少ないリソースでどうやって低レベルな以上の成果出せって言うんですか。そりゃあアムロも裸足で逃げますよ』
「り、理解できます……」
記者は、いや周囲の記者達も含めた彼らは、今いるニュータイプ能力者たちはジオン・ズム・ダイクンが言ったような『理解し合える』ニュータイプの様な優しい存在では無く、言葉の読みだけが一致した、いや最初に『こいつらニュータイプだ』と誤解されただけの存在だと理解した様だ。そして他の記者たちが少し場違いな質問をしたりもする。
たとえばゼロ少尉は、人工的にニュータイプ能力者になる方法について質問されて、『技術的な事はよくわからんが』との前置きで、こう話した。
『やってみたいのか? ……死ぬほど痛いぞ』
「……」
記者は滝の様な汗を流した。また、ニュータイプ能力者になるには、人工的な方法以外で何かあるのか、と聞かれて、コンペイトウに居る人員の全てが困った様な顔をした時、カットイン画面に映っていたシン大尉が手を上げて発言。助け舟を出してくれた。
『簡単です。死の直前にまで追い詰められてください。普通なら絶対に助からないような大ピンチ。そこで九死に一生と言いますか、九千九百九十九死に一生を得てください。できれば助けてくれたのがニュータイプ能力者で。そうしたら多分、多分ですが、ニュータイプ能力に目覚めます』
「……」
『でも、この能力に目覚めても、あんまりいい事ないです。普通
ニュータイプ能力に目覚めっちゃうと、敵の気配とか判るんで強くはなりますよ? でも、敵機を
「「「「「「……」」」」」」
記者たちの頭には、アムロ中尉の『戦場のストレスなどのせいで発現した
記者会見も終わりに近づいたとき、記者の1人がレビル将軍に質問した。
「この隠されていた憲章の一文について、レビル将軍は、いえ連邦軍上層部はどうお考えでしょうか」
「正直に言っていいだろうか。隠すほどの事は無いし、隠すためにアレだけの事を仮にやったとすると、なんと無益な事をと思う。と言うか、ほぼ無意味な一文としか言いようが無い。ああ、誤解しないで欲しい」
「どういう意味か、ご説明いただけますか」
「うむ。当時に於いては、あまり言いたくは無いが、宇宙移民は棄民政策であった。その事については、個人的な意見を言わせてもらえば腹立たしい。だがその当時にこの憲章があったとして、無意味以外のものでもなかろう。残念だがな。
そして今現在に於いて、だ。
「……」
「わたしが、我々が言いたいのは。
記者は、『ありがとうございました』とだけ言って、着席した。その後も1つ2つの質問は有ったが、ほぼ質問は出尽くした模様で、記者会見は閉幕となった。一時的に世論は大騒ぎになったが、連邦軍や連邦政府が隠さずに全て話した事で、評価は最終的には上昇した様だった。
*
この記者会見を観たマーサ・ビスト・カーバインは激昂して執務机を叩き割り、右腕を複雑骨折したと言われるが、定かでは無い。
タグの『独自設定』『独自解釈』『独自展開』『原作一部無視』が役に立ちました。
発表は偶然見つけたみたいに言ってますが、ゴップの伝手で連邦政府とアナハイムとの密約掴んで、それで証拠残ってないか必死で探させて見つけたのが前話のラスト。ちなみにコレは、アナハイムを叩くための王手飛車取りだったり。アナハイムの飛車(ラプラスの箱)を取って使い物にならなくすると同時に、アナハイムの動きを止めます。
いや、書いてるの私だし(笑)。断言しろよ(笑)。
そして前々から色々と一般人にも公開して少しづつ広めていましたが、ニュータイプに関して記者会見で思いっきり『僕ら、言われてるニュータイプじゃなくて
絶対原作エグザベ君が妙にアレなのは、ニュータイプ能力の弊害を必死で抑えて、言葉で必死にやり取りして、それで人間としての活動リソースを削り取られてるからだと思う。ニュータイプ能力に下手に制限掛けてないヒゲマンとかは、悠々としてるし。
あとはゼロ。緑川ボイス。任務完了、自爆。