偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第50話 病める時も健やかなる時も、ビームや砲弾飛び交う時も

 ここはジャブロー基地内の教会。本日は、ブライト艦長とミライ女史、そしてエグザベ大尉とニャアン中尉の合同結婚式である。エグザベ大尉とニャアン中尉は既に入籍を終えているが、結婚式自体は色々と多忙だったために未だ挙げることは出来ていなかった。そして本日、色々と日取りも都合が良かった事もあり、ゴップ大将をお財布として豪華な式を挙げる事となったのである。

 

 ちなみにブライト艦長は今後、色々とすったもんだしたあげく、ミドルネームにゴップの姓を使うことと戸籍上はゴップ家に婿入りするという事で、ブライト・ゴップ=ノアとなる。すごく七面倒くさい。

 一方のエグザベ大尉とニャアン中尉は、事実上の義父という事で、ジャンク屋の親父さんの遺影を母艦のペガサス最終型強襲揚陸艦ヘカーテ艦長であるシマザキ大尉に持ってもらい、参列してもらっている。残念ながら2人とも実母、実父の写真は、もはや手に入れる術も無い。

 

 まあそんな不幸話は置いといて、2組の新郎新婦はとても晴れやかな顔をしている。ミライさんとニャアン中尉がブーケを投げる際に、女性陣が急に真顔になったり、綺麗に着飾っていたのに何故かズタボロになったニコラ少尉が、どうにかニャアン中尉の投げたブーケを獲得したりと、微笑ましいシーンもあったりする。TV局や新聞社が来ているというのに、ずいぶんと笑える事態だ。

 

 そんな中、1つの再会があった。

 

 

「あ……。ひ、久しぶりフラウ」

「ハヤト!? すっかり横に大きくなって」

「横は関係ないだろう」

「うふふ、縦にも大きくなってるわ。でも恰幅が良くなったのは確かね。太りやすい体質に多い体型だから、気を付けてね」

「そ、そうか」

 

 

 ハヤト中尉は幼馴染のフラウ・ボウと久しぶりの直接会話をしていた。彼女はミライ女史と今も友人関係を続けており、その関係でこの場に来ている。ちなみに足の短いあしながおじさん関係で、もっともっと深いつながりはあるのだが。

 ちなみにアムロ大尉は既に既婚者だと言う事もあり、奥さんに余計な心配をかけないためにも本当に幼馴染としての型どおりの挨拶だけで、あえて退散している。ハヤト中尉は独身なので、そんな心配はいらない、のだが。

 

 

「そ、そうだ。カツ、レツ、キッカは来てないのかい?」

「あの子たちは、学校があるから。ご飯とかはお隣のおじいさん、おばあさんにお願いしてあるのよ」

「そっか。久しぶりに会えるかもと思ったんだがな」

「もしかしたら、今後はより一層会いづらくなるかもしれない」

「えっ……」

 

 

 フラウの話に、ハヤト中尉は驚く。

 

 

「実は、一年戦争以来援助をしてくれてる人からの勧めで、サイド7ノアに出戻りで移住するつもりなのよ。専門学校で色々資格も取ったし、あっちは仕事多そうだしね」

「宇宙暮らしは、税金高くならないかい? 空気税とか。君は一年戦争で戦った事もあって、地球暮らしが認められるはずじゃ」

「いえ、計算すると空気税とか含めても、収入があっちの方多いのよ。サイド7は新コロニー建設ラッシュと修復コロニー移送受け入れラッシュで、高収入の仕事が多いから」

 

 

 そういえばハヤト中尉は、季節の手紙とかでも何故か彼女が何の専門学校に通っているのか聞いた事が無かった。とりあえず彼は聞いてみる事にする。

 

 

「そういや、何の専門学校だったんだい? 今まで聞いてみたこと何故か無かったな」

MS(モビルスーツ)操縦」

「え゛」

「プチモビ、モビルワーカー、作業用MS(モビルスーツ)。わたし実はホワイトベース時代にガンダムの予備パイロットになろうってシミュレーターをこっそり何度も何度も何度もやった事あるのよ。エグザベさんが01アレックスに乗った後は01ガンダム空いてたでしょ? まあ、うん。実らなかったけどね。

 その経験が生きて、今GM系の払下げ作業用MS(モビルスーツ)で土木工事してるの。いいお金になってる。まあでも、コロニー建設工事やコロニー内建築物の方が高給取りだし、無重力作業とかスペースポッド技師とか操縦免許とかの資格も、取れるだけ取ってるから」

 

 

 口をあんぐりと開けるハヤト中尉だった。

 

 

「あ、ごめんハヤト。流石にあの子たちもいるし、さすがに長期間家を空けるわけにいかないから、二次会諦めて早い飛行機で帰る事になってるのよ。また手紙送るわ」

「あ、う、うん」

「また会えるといいわね。それじゃ」

 

 

 去っていくフラウの背中を見つつ、たそがれるハヤト中尉。その肩をポンと叩く者がいた。

 

 

「あ、アムロ」

「だめだよハヤト……。せっかくの機会なんだから、もっと積極的に行かないと。あるいは二次会お前もパスして、タクシーで送るとか」

「あ」

 

 

 そう言われたハヤト中尉が見遣ると、フラウはもうタクシーに乗り込むところであった。なおジャブロー基地は無駄に広いので、軍人か正規の通行証を発給された者であれば乗る事ができるタクシーが、縦横に走っている。まあバスも走っているのだが。

 ちなみにフラウは足の短いあしながおじさんよりタクシーチケットを送ってもらっているので、無料で乗る事ができた。手を挙げかけた状態で固まるハヤト中尉。アムロ大尉は顔を掌で覆う。

 

 

「うん、まあ、うん。頑張れハヤト」

勝者(よめさんいるやつ)の余裕なんか聞きたくないよ……」

 

 

 悄然としてその場を去るハヤト中尉だった。

 

 

 

*

 

 

 

 合同結婚式とその二次会、三次会が終了した後、セイラは自艦の自室までわざわざ帰って来た。一応地上の宿舎も借り上げて使う事はできるのだが、妙に貧乏性が板についてしまっている。

 ふと見遣ると、扉の手紙受けに1通の手紙が入っていた。検閲済みの判が押されている。まあ気にせずに、彼女は手紙を取り出して目を通した。

 

 

 

*

 

 

 

親愛なるセイラ・マス殿。

 

 こうして手紙を書くのも久しぶりだ。本当は電話をしようかとも思ったのだが、お前に対する不義理を考えると、腰が引けてしまってな。悩んだ末に、手紙を書く事にした。

 

 前回会ってから後、結局会社は清算して倒産手続きをする事になった。まあ充分な退職金は支払われたので、とりあえず不自由する事は無かったが。お前が教えてくれた弁護士に連絡し、遺産を送ってもらった。それと退職金を元手にして、小さな建築会社を起業したんだ。

 幸いにも幸運に恵まれ、当初はプチモビやモビルワーカーなどレンタルだったが、いつの間にかそこそこ中堅程度の規模に会社を拡大した。機材もレンタルではなく、自前になった。

 

 そして今、わたしはサイド7ノアの7バンチコロニーに会社を移転している。サイド7に来るのは少々どころではなくかつての自分の愚かさを思い知らされる気分であったが、莫大な商機があったのだ。わたしは賭けに勝ち、会社規模を倍にすることに成功した。もはやそうそう潰れる心配は無い。

 

 そして財産を築いた今、過去の自分の愚かさから目を背けるべく、わたしは情けない行いをしている。サイド7の戦災被害者の共同墓地に、豪華な慰霊碑を贈ったのだ。慰霊碑の前に立ち、黙とうをしていると、己の欺瞞に身が焦がされるようだ。しょせん自己満足に過ぎない、とな。

 

 わたしは戦乱にでも巻き込まれなければ、ここサイド7ノアの7バンチコロニーを(つい)棲家(すみか)とするつもりだ。そしてサイド7の復興、と言うにはもともと1バンチコロニーが半分未満しか出来上がっていなかったから、戦中全盛期の域には既に至っているのだが。復興、再建と、そして新たなバンチの建設に全てを捧げるつもりである。

 

 まあ、その上で社員たちのために儲けはもらうつもりではあるがな。社員たちの中には、一年戦争で難民となった者達も数多くいる。彼らのために働き続ける事が、わたしの(つぐな)いであり、今の生きがいでもある。

 

 それではこの辺で失礼する。近況報告のみで、申し訳ない。ただ、昔のわたしでは無い事を知っていて欲しい。お前を、いつも愛している。

 

愚かな兄、エドワウ・マスより。

 

 

 

*

 

 

 

 セイラは、大きく溜息を吐く。

 

 

「まったく……。あの男は……。無駄に自虐的で無駄に行動力があって……。昔のわたしでは無いって、変わってないじゃないの。それに不義理って。なら手紙でも電話でも、もっと回数を」

 

 

 そう言いつつも、彼女の頬は緩んでいた。彼女は携帯端末を取り出すと、番号を入力し通話ボタンを押す。

 

 

「……長い。さっさと取りなさいな。……カイ? ちょっと72番PXに付き合いなさい。ちょっとヤケ酒というか祝い酒というか。いいでしょ別に。行くわよ」

 

 

 そしてガチャ切り。まだ外出着から着替えて無かった事もあり、軍の略章とカードだけ胸から下げて、彼女は部屋から出て行くのだった。

 

 

 

*

 

 

 

 合同結婚式から数日後、いちおう新郎達とも新婦たちとも縁があるテム・レイ技術大佐……先日、けっこう功績が貯まってたので当然のごとく昇進したのだが、その技術大佐は卓上端末からジャブロー基地の大型コンピューターにログインし、画像付きのシミュレーションを行っていた。

 

 

「ふむ……。計算は完璧だ。このウェーブライダー板。MS(モビルスーツ)を載せて大気圏突入するための機材。テストはどうしたものか」

「テム技術大佐、上に頼んでパイロットを派遣してもらいますか?」

「フランクリン君、駄目だ。こんな危険なテストは人間にやらせられない。あくまで人工知能(AI)による自動操縦でやるんだ。わたしがRX-78で実現した自動操縦機能は、この程度のものならば容易にできる」

「なるほど、そうですな。本気で失礼しました。人命は、大事ですな」

 

 

 フランクリン技術大尉の謝罪に、テム技術大佐は満足げに頷く。

 

 

「その通りだ。特に若者の命を無駄に賭けさせては、ぜったいにいかん。……そう、だな。GMⅡを手配してくれるかね? それを改造して、自動操縦機能を拡張しよう。そしてウェーブライダー板をもっての大気圏突入実験を。

 バリュートでの大気圏突入だと、なんらかの弱威力の攻撃ですらバリュートが破られてしまう危険がある他に、ちょっとした事故でもバリュートは破れてしまう可能性もある。そしてRX-78ガンダムに積んだ耐熱エアーフィールドは、元来シールドを保持していないと使いようが無い。しかもアレは本来、大気圏突入に成功したらガンダムを分離してコアファイターで脱出する様になっていたんだ」

MS(モビルスーツ)での軌道降下という近年の要求仕様からすると、少し何ですな」

「元々、緊急避難的に大気圏突入するための物だったのだよ。しかしシールドを基本持たないRX-77ガンキャノンや持てないRX-75ガンタンクにまで耐熱エアーフィールドを装備……。当時のわたし含めた開発陣の煮詰まり具合が、わかる、な……」

「ところで技術大佐」

 

 

 フランクリン技術大尉が問いかける。

 

 

「なんだね?」

「ウェーブライダー(ばん)というネーミングは、本番までにどうにかしておくべきでは」

「その気持ちも分かるがね。思いつかぬものは仕方ないだろう」

 

 

 そういやこの人、RX―78ガンダムのコードネームに、『ガンダーRX-78』とか、まんまなネーミングしてたんだったな、と思うフランクリン技術大尉だった。




今回は、ほのぼの話。いや殺伐とした話多かったし。ちょっとはね、ちょっとは。

ブライトさんミライさんと、エグザベ兄さんニャアンの合同結婚式。エグニャアは既に籍入れてるけど。
TV局と新聞社、来てます。そこでニコラ少尉、派手にやらかしました。ニャアン、もう笑うしかないので笑ってます。

正史でのカップル、今回はまだ始まってもいません。ごめんよハヤト。ちょっと笑いが欲しかったんだ。

セイラさん、兄上様からお手紙来ました。ちょっとムカついたので、でも少しだけ嬉しかったので、手ごろなイケニエ捕まえてPXへ飲みに出ました。カイさん、式の会食と二次会三次会でけっこう飲んでるので、ちょとツラい。セイラさんはザル。というか枠。なんとなくそんな気が。

そして仕事熱心な技術大佐殿。でもアムロはじめ若者たちが生き残って、幸せになるためなら、お父さんは頑張ります。お爺ちゃんにもなりたい。
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