偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第52話 僕にその手を汚せというのかReboot

 ブライト艦長、シイコ少佐とアムロ大尉、エグザベ大尉とシマザキ艦長、カイ大尉とクレイトン艦長、リュウ大尉とクルツ艦長、つまりは第49独立戦隊の指導部メンバーは、ジャブロー基地の会議室に呼び出される。このパターンは、以前にもあった事だ。

 はたして入室を許可されて会議室に入ると、そこにはゴップ大将、レビル将軍、ワイアット大将、ティアンム提督の連邦軍大御所4人とその筆頭副官4人が居る。ちなみに復権を頑張っていたコーウェン中将は、復権に失敗して中枢からは外れているため、ここには居ない。

 なおジャミトフ中将とブレックス少将は、双方ともティアンム派という事になっているため、ティアンム提督がいれば大丈夫と言う事なのか、彼らもここには居ない。もしかしたら物凄く忙しくて居ないのかも知れないが。いや彼らは本当に精力的に動き回っており、政略が本分ではないティアンム提督の大きな力になっているのだったりする。

 一同が一斉に敬礼をすると、将官4人と副官たちも敬礼を返す。そしてゴップ大将が代表して話し始めた。

 

 

「諸君らに来てもらったのは、他でもない。前線の実戦部隊としての意見を聞きたくてね。あと6ヶ月もすれば、アクシズが地球圏に到達する……。それは諸君らも知っての通りだ」

「だが我々は、アクシズの件が問題になり始めた頃、アナハイムの問題があって一時公表を控えた。あそこでアクシズが地球圏に移動して来るなどと言う話があれば、アナハイムの件をうやむやにしなくてはならんかもしれず、または逆にアナハイムの軍需部門が想像以上の規模での武力抵抗を開始した可能性も否定できぬ」

 

 

 口元を組んだ手で隠したワイアット大将が、続けた。そしてレビル将軍がそれに頷く。

 

 

「うむ。だがアナハイムの再編もほぼ形になった今、我々は『表立っての戦争準備』を何時、どの様に開始するかを考えなくてはならん。無論裏ではしっかりと準備を進めてはいるがな。諸君らをあえてエゥーゴやジオンの残党に対する掃討任務に出さず、訓練漬けにしているのは、その一部だ」

「下手に実戦に出すと、実戦の勘こそは養われても、訓練の積み重ねで得た総合力は目減りするからな。ある程度以上の経験を積んだ部隊は、能力が担保されるならば訓練漬けの方がいい」

 

 

 ティアンム提督も頷く。彼は長年の経験で、その事を肌身に染みて分かっているのだろう。そして再度ゴップ大将が口を開く。

 

 

「そこで、だ。我々はアクシズ勢力が地球圏にあと6ヶ月で到達する事を、今の段階で発表して表向き『和戦両様』の構えで行きたいと考えている。もっとも我々の本音では、『和』が無い事は君達も分かっているだろうが」

「はい。裏で侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を重ねて来たと言う事にすれば、発表が遅れた言い訳としても充分かと。ですが可能であれば、敵陣に先制攻撃を加えたいものですが。表向きの正当な理由がありません。アナハイムの軍需部門と裏での取引をしていた、のは賠償金を要求する理由になっても、戦端を開く理由には弱く」

「そうだな、ブライト君。アクシズ勢力は表向き小競り合いはあっても、表面的にはジオン残党勢力中で比較的穏健だ。見た目は、な。それが問題なのだ」

 

 

 そしてブライト艦長は言う。

 

 

「……あえて、敵に先に撃たせるしか無い、ですな」

「被害は抑えたいものだが、ね。さて、諸君らも自由に発言を許す。現場の意見という物を聞きたいのだ。そのために、裏も知っている上で現場にも精通している諸君らに来てもらった。

 ……どんな荒唐無稽な意見でもいい。好き放題に言ってくれ。ある種のブレイン・ストーミングだ」

 

 

 その後、会議室に集められた面々は多くの意見を出した。大半は採用されるに難しい意見であったが、いくつかは将官たちの胸にも響いた様だった。

 

 

 

*

 

 

 

 ここは(ラグランジュ)2ポイント。サイド2とサイド6がある宙域である。第49独立戦隊の各艦は、今単艦行動訓練として、4隻がバラバラに行動している。その中でもペガサス最終型強襲揚陸艦ヘカーテとそのMS(モビルスーツ)隊は、ここのサイド2宙域にやって来ていた。

 

「ニャアン……」

「大丈夫……」

「そうか。でも無理はしないで」

「うん」

 

 

 左舷MS(モビルスーツ)デッキで、エグザベ大尉はニャアン中尉の肩を抱いて力づける。まあそれはそうだ。サイド2宙域はニャアンの故郷(ふるさと)、失われた過去そのものだ。一応はここもサイド再建が進められてはいるものの、他所に比べそれは遅れている。

 それはそうかも知れない。コロニー落としに使われたスペースコロニーは、サイド2(ハッテ)のアイランドイフィッシュなのだ。そしてニュータイプ能力者のうちで鋭い者には、もしかしたら未だにここでの虐殺による断末魔が、聞こえているのかも知れなかった。

 

 そう、思念の声が……。

 

 

(くそ、駄目だ! 誰か! 頼む、連邦のニュータイプ! 誰か! 誰か!! 聞こえてるなら、来てくれ! わたしは死にたくないんだ! 伝えなければならない事も!)

 

 

 いや、この思念の声じゃない。と言うか、エグザベ大尉、ニャアン中尉、ニコラ少尉、ゼロ中尉、ゲーツ中尉は最速で自分の機体に乗り込む。パイロットスーツは着用していたし、ヘルメットのシールドを急いで閉めた。

 エグザベ大尉は叫ぶ。

 

 

艦橋(ブリッジ)!! 精神波による緊急連絡を受けた! ニュータイプ能力者が、救援を求めている! MS(モビルスーツ)隊全機、発進準備だ! 艦橋(ブリッジ)から発進許可が出しだいに、発進準備が出来ている者から出撃する!」

『こちら艦橋(ブリッジ)、艦長のシマザキだ! 発進を許可する! スペースジャバーは要るか!?』

「思念の距離から必要は無いと感じた! 我々の発艦後、艦は急ぎ追尾されたし!」

『了解だ! 順次発艦を!』

 

 

 本来は隊長機が真っ先に出るのは勧められないのだが、今回は思念の受信能力を優先して、エグザベ大尉とニャアン中尉が真っ先に出る。まあジオンならば隊長機こそ真っ先に出るものだったりするが。

 そして青い宇宙を、エグザベ大尉たちは()けた。

 

 

 

*

 

 

 

 プルツーはアクシズ勢力が『製造』した強化人間である。見た目は10歳前後の少女。彼女はアクシズ指導者、エンツォ・ベルニーニ大佐の命令により、サイド2で再建中のスペースコロニーを破壊して民を虐殺、その罪を連邦軍に着せるために高速艇にて先行し、ここサイド2ハッテ宙域にやって来ていた。エンツォ大佐は、これにより連邦軍の結束は乱れ、スペースノイドの支持を致命的に失うだろうと断言している。

 だがプルツーは、その命令を聞く気はなかった。彼女は本来、アクシズ勢力の指導者たるべき存在、ギレン・ザビの血筋であるグレミー・トト少尉に対し忠誠を誓う様に、マインドコントロールされる予定であった。しかしマインドコントロールが完遂する前に、彼女の忠誠対象は上からの強引な命令により、エンツォ大佐へと変更される。

 この事に対して彼女を創った研究員たちは抗議したが、研究員の代表者がみせしめに投獄される結果となる。残りの研究メンバーの手によりマインドコントロールは完了させられたが、対象を書き換えられた忠誠心は衝突(コンフリクト)を起こしてその『機能』を停止。プルツーは解き放たれたのである。その状態で彼女は、ポッドでの凍結から解除されたのだ。

 しかし頭が良いプルツーは、エンツォ大佐に対し唯々諾々と言う事を聞くふりをした。そしてサイド2コロニー破壊の命令を受けて先行して地球圏に送り込まれたとき、彼女はこれを千載一遇の機会と捉え、脱走したのである。

 

 

(エルピー・プル、それにプルシリーズの妹たち……)

 

 

 彼女は、彼女にとって僅かな心残りの事を想う。エルピー・プルとはプルシリーズの1番目で、プルワンとも名づけられていた存在であるが、正しくはプルシリーズの大元になった強化人間であり、唯一クローン以外で生まれた存在だ。故に本来であればプルゼロ、あるいはプルオリジンとでも呼んだ方がいい存在でもある。

 そのエルピー・プルは強化の影響かあまりにも天真爛漫すぎて、制御が効かないという弱点があるが、能力的にはプルツーに匹敵する。しかしながら制御が効かない事、洗脳の効果があまりにも弱い事から、今もなおポッドで凍結状態だと思われる。

 プルシリーズは、プルツーもそうなのだがエルピー・プルを元に生み出されたクローンの強化人間たちだ。ただしクローニングによるバラつきか、能力としてはオリジナルのエルピー・プルにも最古参クローンのプルツーにも、及んでいない。及んでいないのだが、それでもプルツーにとって妹たちだ。彼女たちも、おそらく今なおポッドで凍結中だ。

 

 プルツーの脳裏に、エンツォ大佐への憎悪が溢れる。

 

 

(くそ、この手で殺せるなら殺してやりたい……)

 

 

 何か処置を施しているのか、エンツォ大佐の心理は読み取ろうにも読めなかった。しかしあの顔を思い返すだけで、憎悪が満ち溢れて来る。

 

 そして宇宙を、ボウワ社製ビームライフルの光条が貫く。プルツーは、今自分が乗り込んでいる横流し品GM-NEXTをサイコミュ操作を併用して急上昇させ、ビームを(かわ)した。撃ったのはGMⅡが5機。乗っているのはアクシズ勢力の操縦士(パイロット)ども。

 ……プルツーのGM-NEXT同様に、エンツォ大佐が先行して送り込んだ、コロニー住民虐殺のための機体だ。その後ろからは、マゼラン後期型が2隻。一年戦争中に鹵獲された艦を、こういう欺瞞任務用に丁寧に整備していた艦だ。後期型なので、MS(モビルスーツ)の最低限の運用機能は持っている。

 

 

(くそ、2機は撃墜したけど、まずい! 推進剤が足りない! 機動力が落ちる!)

 

 

 プルツーがうかつだったのは、自分用にサイコミュ搭載改造をされていたGM-NEXTが補給が完全では無かった事だ。もはや推進剤切れは目前。ミサイルポッドに擬装されたファンネルポッドはまだ温存しているが、搭載ファンネルは3基。これを使い切れば、後はない。

 

 

(くそ、駄目だ! 誰か! 頼む、連邦のニュータイプ! 誰か! 誰か!! 聞こえてるなら、来てくれ! わたしは死にたくないんだ! 伝えなければならない事も!)

 

 

 必死で念じた。だが応えは無い。一瞬そう思った。だが次の瞬間。

 

 

(今出撃した! 待っていろ!)

(諦めないで! 生き延びて!)

(今、行くから! 待ってなさいよ!)

(この念……。強化人間、か!)

(アクシズでも創っているのか!? ……見捨てはしない、今行く!)

 

 

 一気に応えが帰って来る。一瞬パニックになったプルツーは、左腕とシールドを失うが、爆発前に左腕を根本から切り離して難を逃れた。そして偽装ファンネルポッドから2基ファンネルを打ち出し、また2機のGMⅡを撃墜。

 そしてそこで助けが来た。

 

 

『ザッって、マゼランとGMⅡが!? ザザザ』

『こちら隊長機! ザザザゼランもGMⅡも、鹵獲機か何かだ! 敵のザザザ反応をしている! 遠慮なしに()とせ!!』

(ニコラ! あの娘を保護して! わたしたちは敵を!)

(わかったニャアン! 大丈夫!? あとは任せて!)

 

 

 1機のGM-NEXTがプルツーの機体を確保して、急ぎ後退する。次々に爆散するGMⅡと後期型マゼランを見遣りつつ、プルツーは実感した。

 

 

(ああ、たぶんこれで、わたしの戦争は終わり、だ)

 

 

 胸の中を、姉妹たちの姿が(よぎ)る。皆、同じ顔、同じ年齢、同じ姿なのだが、なんとなく誰が誰なのか判る。どうかこの人たちが、あの娘たちを助けてくれるように、とプルツーは願った。




というわけで、デ●ム役はプルツー。サイド2コロニーをバル●ムッサしろとの命令を拒否して、逃げます。プルツーは性格は正史とあまり変わりませんが、洗脳が既に解けてます。なので逃げる事を優先した結果、あの先鋭的なギスギスした攻撃的性格は、あんまり表に出てませぬ。だいじょうぶ、普通にしてれば正史どおり攻撃的ですんで。<マテ

姉であるカチ●ア役はプルプルプルー。いや自分勝手だし。<マテ
あとプルはオリジナルのクローン元強化人間という事にしてます。あえて。弱ニュータイプを強化してツヨツヨにするのは、試みられてた様ですし。そういう存在ってことに。あと制御が効きにくいのは完全に本作設定。正史では洗脳されてソレをジュドーに解除される展開もありましたが。

原作(???)と大きく違う部分は、●ニム役がカチュ●役のクローンであり、ある意味本当に血が繋がってる事。<マテ
そしてバルマム●サするという動詞。なんてパワーワード。<だからマテ

まあでも、●ルマムッサされる前に本作主人公陣が食い止めました。そしてこれがバレる事で、エンツォ大佐は真の目的にまた1歩前進です。
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