偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第53話 迫るアクシズ、地獄の? 軍団

 艦のモニター画面に、ゴップ大将やレビル将軍ら連邦軍高官による記者会見の様子が映し出される。地球圏全体に対するTV放映の映像だ。

 

 

『我々地球連邦軍は、先日に宇宙要塞アクシズのジオン残党勢力に対し、『和戦両様』の方針で行くと発表した。これはアクシズ勢力がジオン残党勢力の中でこれまで地球圏に手出しをしてこなかった事、そして一年戦争中にも本国であるジオン公国に対しての支援が薄かった事など、穏健派であると見られていたからだ』

 

 

 代表してレビル将軍が、主に話している。会見の現場には、ティアンム提督とワイアット大将は忙しいのか参列していない。まあそうだろう。宇宙艦隊を率いる両将官は、今てんてこ舞いの忙しさなはずだ。

 

 

『しかしながら、この見込みが間違いであった事を、我々は連邦市民の方々に謝罪しなくてはならない。つい先日、昨日の出来事だ。サイド2ハッテ宙域で訓練中であった連邦軍部隊が、地球連邦軍部隊を偽装してサイド2のコロニーを破壊し殲滅しようとしていた謎の部隊と遭遇、からくもその狙いを阻止した』

『なんだって!?』

『レビル将軍、その』

『静粛に願います!』

『……その謎の部隊についてだが、若干の捕虜を取っている。様々な結果、これがアクシズ勢力の派遣した部隊である事が判明した。アクシズ勢力は、我々地球連邦軍がサイド2の復興中コロニーを破壊したと濡れ衣を着せる目的で、鹵獲したマゼラン級などを含めた戦力を派遣したのだ!

 そして我々は、アクシズ勢力指導者、エンツォ・ベルニーニ大佐がこの件を命令したという、録音データも保有している。言い逃れができぬ証拠を持っているのだ!』

 

 

 ペガサス最終型強襲揚陸艦ヘカーテの艦橋(ブリッジ)で、エグザベ大尉は溜息を吐く。

 

 

「うん、まあ。嘘は言ってないね。全部は喋ってないけど」

「確かにマゼラン後期型撃破した時点で、脱出艇兼大気圏突入カプセルで逃げ出そうとした連中、捕まえたけど」

「うん、ニャアン。でもそいつら尋問とかまだやってないし。まるで尋問したかの様に聞こえる言い方してるけど、その実すべてプルツーの証言なんだよな。エンツォ大佐が命令したの、隠し持ってたレコーダーで録音したのは流石だけど。まだ小さいのに」

 

 

 レビル将軍の話は続く。

 

 

『ことここに至り、我々はアクシズ勢力を完全なる敵対勢力と判断した。せざるを得なかった。無辜の民人を虐殺し、その罪を我々に擦り付けるような相手に対し、残念ながら譲歩するほどの余裕は我々には無い。よって先頃発表した『和戦両様』の方針はまことに遺憾ながら撤回し、これより我々はアクシズ勢力との戦いを開始する事を宣言する!』

 

 

 記者団のざわめきが拡大し、カメラのフラッシュが幾度も瞬く。そしてレビル将軍は苦悩を顔に出した。

 

 

『なおアクシズ勢力が送り込んだ敵部隊には、強化人間が含まれていた。諸君らも知っての通り、非人道的な措置により生まれた、人工的な能力者である。『彼女』はクローンにより『製造』された使い捨ての兵士であり、なんと10歳前後の少女であったのだ。いまだ小惑星要塞アクシズには、『彼女』の姉妹が複数名、培養カプセル……ポッドと呼称されている様だが、その中で凍結状態で『保管』されているらしい。

 そして『彼女ら』は『洗脳』により使役され、無理矢理に忠誠を強いられている、との事。敵偽装部隊を撃破した部隊が幸いにも保護に成功しているが……』

 

 

 ここでレビル将軍は、沈痛な面持ちでいったん黙る。記者たちのざわめきは怒号に変わり、シャッター音とフラッシュも更に激しくなった。連邦軍の係員が、何度も『静粛に』と叫ぶ。

 

 

「エグザベ兄さん……」

「うん、強化人間たちを憐れに思ってるのもそうだけど、それ以上に自責の念に潰されそうになってるんじゃないかな」

「うん」

 

 

 エグザベ大尉とニャアン中尉は、色々あって既に色々知ってる側の人なので、レビル将軍の内心を考えると複雑な想いだ。まあ、うん、まあ。既に『上』から悪い意味じゃなく目を付けられている人間たちではあるし。目を掛けられてるとも言うが、目を付けられてるの方がイメージ的に近いかも知れない。『逃がさんぞ』という雰囲気が、彼と彼女をそこはかとなく襲う。ちょっとブルっと来た2人だった。

 まあこの件に関しては、味方になってくれそうだったブライト艦長が既に『あっち側』に取り込まれてるし。つまりブライト艦長も『逃がさんぞ』側なわけだ。道連れは多い方がいい。シイコ少佐とアムロ大尉も逃げられない方の人たちのはずだろう。あの人たちは戦略家でも政略家でも作戦家でも戦術家でも無くただの戦闘家なので、スタープレイヤー的な活躍を期待されているのかも知れない。

 

 

「まあ逃げる気もないけど。最低佐官、上手く行って准将になってから退役予定だったけども。うん、偉くなって恩給貰わないと」

「勉強、がんばろうエグザベ兄さん」

「ああ」

 

 

 そしてエグザベ大尉は、呟く様に言う。

 

 

「でもやっぱり、全部は話さなかったね」

「話せないよ」

「まあね。うかつに放送で、実はあの結果が、『強化人間の少女が洗脳から逃れられたために起きた出来事です』なんて話したら」

「アクシズにいるプルツーの姉妹が始末されかねない」

 

 

 うん、まあそう言う事だ。連邦軍首脳部は、エンツォ大佐の人となりや考え方を知らない。しかしああ言う事をやる人間だ。強化人間の洗脳が不安定だなどと放送されたら、始末しかねないと思うのは仕方ない事だ。

 ここでレビル将軍に代わり、ゴップ大将が語り出す。

 

 

『そしてもう1つ、連邦軍から発表がある。なおこれは地球連邦政府とも共同歩調を取っており、あちらでも近日中に正式発表がある。

 我々は、今後公式に『ニュータイプ能力者』という表現を用いない。理由は能力者である彼ら自身が言っていた事だ。今そう呼ばれている者たちは本当の意味での、ジオン・ダイクンが提唱したニュータイプとは似て非なる者である。彼らは戦場のストレスなどで発現した、いわば先祖返りに近い超能力者(スキャナー)であり、戦場の犠牲者だ』

『……それが今後の正式見解、ですか』

『そうだ。彼らが獲得した能力は、戦場で生き残る事には有利だが、日常生活では害になる部分も多い。彼らをニュータイプと混同し、ニュータイプだと持ち上げる事は、そのような非道は許されない。宇宙に適応した、人類の進化形? 適応するぐらいならば、この短い時間でもなんとかなるだろう。だが宇宙世紀0087、たかだか100年にも満たない時間で進化? ふざけた事としか思えんね。短くて千年単位、普通に考えて数十万年待て。これも彼ら自身が言っている表現だ。

 今後我々連邦軍は、そして後日の発表にはなってしまうが連邦政府も、彼らを『超能力者(スキャナーズ)』と呼称する。我々は『新人類(ニュータイプ)』という夢から覚めたのだ。無論、出て来たならばそれはそれで、だ。だがそうそう出て来るものでもないソレと、超能力者(スキャナーズ)を混同し、超能力者(スキャナーズ)を苦しめる様な事は、してはならないのだ』

 

 

 幾つものフラッシュとシャッター音。そうして記者会見とその放送は終了する。エグザベ大尉もニャアン中尉も、なんとなく安堵の息を吐いた。

 

 

 

*

 

 

 

 他の3艦に先んじて、一足先にジャブロー基地に帰還していたペガサス最終型強襲揚陸艦タイコンデロガのブライト艦長は、何時ものようにゴップ大将の執務室で、いつもの密談をしていた。

 

 

「やれやれだ。どうにかこの段階は、切り抜けたな」

「はい、閣下。ですがやはり、『例の事』については話されませんでしたな。いえ当然なのですが」

「強化人間の少女たちの洗脳が、怪しい事かね?」

「お戯れを……。まあプルツーという少女に関連した事ではあるのですが……」

「ん。まあ仕方の無い事だ」

 

 

 そしてゴップ大将は、(かぶり)を振って溜息を吐く。

 

 

「公式発表で言えるわけが無い。アクシズ指導者エンツォ・ベルニーニ大佐のつい溢した独り言の内容など」

「……確か、『アクシズをぶつける目標は、ア・バオア・クーにするか、ソロモンにするか。ルナ2とかでも面白そうだな。いやジオン共和国のコロニー密集地域に放り込むのも一興か』でしたな」

「ジオン共和国とは、ガルマ議員を通じて協議に入った。だが向こうも事の大きさにより、発表自体は控えるらしい。……テロリストめ」

 

 

 ゴップ大将がこの様に、他人の前で怒り憤りを表に出す事は珍しい。相当にトサカに来ている証拠だ。

 

 

「小惑星要塞アクシズを質量兵器としてぶつけるならば。地球圏へ到達するための減速は、微調整程度でさほど必要ないかも知れません。その場合、地球圏への到達自体はあと6ヶ月よりも早まる可能性が」

「わかっておるよ。というか軌道計算の専門家に相談したときに、その危険性を告げられた。……レビルとも語らって、対策を練らねばならん。無論ワイアット君、ティアンム君も交えてだ。ジャミトフ君とブレックス君も、この際呼ぼう。実務にあたってくれている彼らの意見は、重要だ。

 プルツー君が到着したなら、ジャブローの軍病院で健康状態のチェックだな。その後は丁重に扱わねばならん。なにせ、貴重すぎる情報をもたらしてくれた、連邦軍の、いや地球連邦の救世主だ」

「はっ。ヘカーテ艦内でも、丁重に扱われている様です。なんと言うのか……。健康面では、地球連邦の旧ムラサメ研製強化人間よりも安定している様ですな。複雑な気分ですが」

 

 

 2人は少々嫌な気分になりつつも、対アクシズ勢力への策を練る。これより連邦軍は、裏で静かに進めていたアクシズ勢力への戦いの準備を、大っぴらに大車輪で進める事となった。

 

 

 

*

 

 

 

 地球連邦軍宇宙要塞ルナ2司令官ワッケイン大佐は、軍工廠で大至急製造中の大型ブースターを見遣り、頷いた。

 

 

(……地球からの軌道上への艦艇打ち上げ用ブースターを再設計しての、3段式大型ブースター。これの1段目を使っての大加速、更に月を用いてのスイング・バイで艦隊を送り込み、迫りくるアクシズへ早急に到達する。到達直前で2段目をフルに噴射して、ブレーキングとアクシズとの速度同調。

 アクシズと速度同調が叶ったならば。この『殴り込み艦隊』はアクシズの核パルスエンジンやその他の軌道微修正用のエンジンを破壊する事を最優先にする。これが成功するならば、宇宙要塞アクシズは地球圏の圏内を通り抜けはするが、どこにも衝突せずにすり抜けて行く事になるだろう。その後、艦隊は3段目エンジンで地球圏へ帰還する)

 

 

 そこまで考えたワッケインは、しかしふと思いついた。

 

 

(……まて。我々であれば、アクシズ要塞を何らかの目標にぶつけるのであれば、アクシズ勢力の軍勢そのものはアクシズの周囲に遊弋させて、ぶつける直前までの防衛にあたらせるだろう。だが、ジオン残党が戦術の常道を採択するか? これは奇策とかそういうレベルの話ではない。あやつらはそういう、『思い付き』で軍事を動かす傾向があるのは、一年戦争からの『非常識』な『常識』だ。

 まさかとは思うが、『どうせぶつけるのだから』とアクシズ勢力の全戦力をアクシズとは別個に動かして、そして地球圏のジオン残党を糾合し、アクシズ衝突による混乱に乗じて、とか考えていたりはしないか?)

 

 

 馬鹿な、とか思ったものの、ワッケイン大佐はこの考えを振り払えなかった。そして彼は急ぎ通信室へ駆け込むと、自身の危惧についてゴップ大将やティアンム提督に上申したのである。




プルツーさんの活躍により、ゴップやレビルはアクシズ特攻作戦について知る事ができました。まあエンツォ大佐の事だから……。まあいくらプルツーが面従腹背で必死に演義してたとしても、子供だし……。小者だけど海千山千のエンツォ大佐だし……。
まあそのエンツォ大佐だから、『ついうっかり』ポロっと考えを漏らしちゃっても、仕方がない、よね?

そしてニュータイプ能力者、呼称変更です。今後、連邦内部(とジオン共和国でもこの宣言に賛同しますので、共和国内でも)では、超能力者(スキャナーズ)と呼ばれます。いや、長かった。ゴップさんも、『本当にニュータイプ現れたら現れたで』ってスタンス取ってますから。
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