偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第54話 戦いを、前にして

 マゼラン改級の戦艦を主軸にした、巨大なブースターを接続した艦隊が出撃して行く。マゼラン改が3隻、サラミス改が10隻、補給艦としてネルソン級MS軽空母が3隻というけっこうな艦隊だ。ちなみにネルソン級はMS(モビルスーツ)運用艦としても用いる事はできるのだが、今回はその積載量を活かして予備の推進剤などを腐るほど積み込んでいる。

 ちなみにサラミス改級もマゼラン改級もMS(モビルスーツ)運用能力を持たせた強力な艦艇だ。本当なら1~2隻のアレキサンドリア級重巡洋艦も行かせたかったらしいが、建造したブースターの規格が合わなかったのだ。マゼランやサラミスなどの艦艇用打ち上げブースターを改造した構造であって最新の類の艦に合わせるのは、いかに連邦軍の生産力が高いとは言っても、難しかったのである。

 

 

「……『殴り込み艦隊』が()く、か」

「ブライト艦長……。ブライトさん。本当はアレに僕らの第49独立戦隊が加わるはず、だったんですよね」

「アムロか。ああ、だが『上』はぎりぎりで、宇宙要塞アクシズ本体よりも、最前線……。もっとも厳しい戦線は、地球圏内部になる、と見切った」

「それならそれで理解できるけども……。だけどどうしても心配よね」

 

 

 シイコ少佐の声に、ブライト艦長は笑う。

 

 

「何、大丈夫だ。あちらにはシン大尉の部隊が参加している。我々には練度と兵の質で多少は見劣りするが、事実上連邦軍No.2部隊だ。大半の敵が相手なら、問題無いさ」

「あら、うちがNo.1なの?」

「気付いて無かったんですか? シイコさん」

「ゴップ大将の泰然自若っぷりから、他にも同等なのが2~3居るのかと」

大将閣下(ちちうえ)のアレは、我々に対する過剰な期待だろうな」

「「笑って言う事じゃないです」」

 

 

 ゴップ大将のソレが過剰な期待なら、ブライト艦長のソレは自分の部隊隊員に対する過剰な信頼だろう。もっともソレが、本当に『過剰』かどうかは誰が聞いても『?』マークを頭に浮かべるであろうが。もうそれぐらい、彼らの実力は恐ろしいレベルに達している。

 何はともあれ、『殴り込み艦隊』は月でスイング・バイを行い、遥か彼方の宇宙要塞アクシズ目掛けて()ぶのであった。

 

 

 

*

 

 

 

 ゴップ大将、レビル将軍、ティアンム提督、ワイアット大将の、いつもの密談メンバー4名はゴップ大将の執務室で、歓談と言う名の悪企みをしていた。

 

 

「……と言うわけで、アクシズ勢力の地球圏への侵入度合は諜報部で掴めておるよ」

「助かるよ、レビル。今まで対アクシズ勢力への諜報が難しかったのは、距離の壁があったからだからな」

「とは言っても、距離の壁があったとは言え、先遣隊が潜入していた事を捕捉できなかったのは遺憾の極みではあるな」

「レビル将軍、さしもの情報部とは言えど手がかりの無いところから結果を出すのは、情報士官の仕事ではなくマジシャンの手腕かと」

「中々ティアンム君も、シャレの利いた事を言う。む、さすがゴップ大将ですな、この紅茶は」

 

 

 4人は和気藹々(わきあいあい)としている様に見えるが、瞳は笑っていない。

 

 

「此度奴らの動きを掴めたのは、見張っておったギレン親衛隊残党と、キシリアの特殊部隊の残骸どもの動きが、アクシズ勢力を見つける切っ掛けになったからだ。そやつらを始め、ジオン残党勢力が集結を開始しておる。そしてその方向に軌道上の反射望遠鏡や電波望遠鏡を向けたところ、な」

「近年の反射望遠鏡は凄いらしいな。わずかな光でもコンピューター解析で異常を察知できる」

「電波望遠鏡とて、確かにミノフスキー粒子を撒かれれば電波そのものは捕捉できぬが。ミノフスキー粒子のせいで電波障害が起きている宙域を特定する事ならば、大規模な電波望遠鏡には難しくは無い、な」

「と、なれば。おおまかなアクシズ勢力の規模も、それに合力しているジオン残党勢力の規模も。まるわかり、と言う事ですかな」

 

 

 鋭い瞳が、互いに目礼を交わす。

 

 

「終結予定宙域は、現状ならばおそらく……」

「「「……」」」

(ラグランジュ)5方面、サイド1(ザーン)サイド4(ムーア)が再建中の場所……。だが奴らの狙いは」

 

 

 レビル将軍が(おもむろ)に語った。

 

 

「地球連邦軍宇宙要塞コンペイトウ……。かつて、ジオン公国軍宇宙要塞ソロモンと呼ばれていた場所、だ」

 

 

 それを聞いた3人の将官は、にやりと笑った。

 

 

 

*

 

 

 

 『宇宙要塞ソロモン』を彼方に臨む宙域にて、宇宙要塞アクシズを脱して先日ようやくこの場にたどり着いた、グワジン級宇宙戦艦ギドルが僚艦数隻と共に浮遊していた。このギドルは、あのアサクラ大佐がアクシズに合流した際乗って来た艦であるが、アサクラ大佐がアクシズを追放された際に没収され、現在ではエンツォ大佐の座乗艦となっている。

 そして今、その周囲にはザンジバル級やムサイ級など旧ジオン公国軍の艦が何隻も集まって来ており、その数は徐々に増加傾向にある。またアクシズ勢力の艦も同じく時間とともに集まりつつあり、数は少しずつ増えて行った。

 

 そんな中、ギドル艦橋(ブリッジ)では提督席に座すエンツォ大佐の前に、2人の人物が立っている。一方はギレン親衛隊のヴィリィ・グラードル少佐で、一方はキシリア派の重鎮であったバロム大佐だ。双方は目も合わせようとしない。

 

 

(フン……)

 

 

 エンツォ大佐は内心で嘲笑(あざわら)いつつも、双方の懐柔を試みる。

 

 

「貴官らは、何のために戦っている」

「む?」

「その様な事、言われるまでも」

「ギレン総帥も、キシリア少将閣下も。結果として仲違いはしたが。最終目標は『ジオン公国の地球圏における覇権』であった事は間違いがあるまい」

「む……」

「ぐ……」

 

 

 そしてエンツォ大佐は2人を馬鹿にしつつ、表面を取り繕って語る。

 

 

「現状我々の戦力は、地球連邦軍のそれに著しく劣る。宇宙の果てで力を蓄えていた我らですらも、質は凌駕しておるか量で足りぬのだ。だがな、今この時。連邦軍はエゥーゴ内戦からまだ立ち直っておらぬ。それどころか、背後から撃って来るエゥーゴシンパどものせいで、総力を落として行く一方よ。

 今しか、今しか無いのだ。地球連邦を叩き、裏切者たるサイド3ムンゾ、卑しくもジオン『共和国』を名乗り連邦に尻尾を振る者どもを抹殺し。本当のジオン『公国』を復活させるのは。だがザビ家の血筋は、もはやいらぬ。その思想さえ、あれば良い。今残るザビ家の血筋こそ、ギレン総帥閣下とキシリア少将閣下を裏切った者どもだ」

「「!!」」

「ギレン総帥とキシリア少将閣下は、残念ながら仲違いの末に互いを討った。生き残ったギレン総帥さえも、あの暗殺未遂さえなくば連邦に討たれる事は、と思う気持ちは理解する。だが!」

 

 

 ここでエンツォ大佐は、言葉を荒げる。

 

 

「今だけで良いのだ! 一時的に仇敵と! 手を組めぬか!? 怨敵たる地球連邦を討ち、ジオン公国を復活させて覇権を握った後に! そのときこそ貴官らは決着をつければ良いではないか! 今ここで貴官らが互いに争えば! 怨敵地球連邦を利するだけぞ!」

「「……」」

「今だけ、左手で、握手を交わしてくれぬか。今だけでいい……。勝利する、その時までで良いのだ」

 

 

 ……おずおずと、グラードル少佐が左手を差し出す。バロム大佐も、苦虫を噛み潰した表情で、その手を左手で握り返す。エンツォ大佐は満面の笑顔で、それを祝福した。

 

 

(ふふふ、愚か者共が。まあ、万に一つも勝ち目は無い。わかっている。地球圏に来た事で、なおさら理解したわ。地球連邦は、再生と再建を始めている! ……地球連邦のためではない。ジオン共和国を含む、地球圏そのもののため、なのだ! 死出の旅に、付き合ってもらうぞ……)

 

 

 内心では、こんな事を考えていたが。そして船窓から外の宇宙を眺めたエンツォ大佐は、数瞬後瞑目する。

 

 

(地球圏に来る際に、行方不明になった艦と人員は、おおよそ30%……。おそらくジオン共和国へ逃げたのであろう。それでいい。それでいいのだ)

「エンツォ大佐?」

「どうなされた?」

「……今、アクシズはどの辺かと思ってな。宇宙要塞アクシズは、あとしばらくすれば宇宙航行中の速度のままで、サイド3ムンゾの恥知らずども、ジオン共和国へと突っ込む。あと、何日になるか。30日は無いと思うが。それまでミノフスキー粒子と岩礁宙域に隠れ潜み、ひたすら時を待つぞ。

 アクシズ突入が成ったなら、一気に宇宙要塞ソロモンを奪還し、資源資材と生産ラインを奪取しつつ周辺のサイド1とサイド4、再建中のコロニー群を一気に制圧する。そして次の目標はルナ2だ。コロニーではなく、連邦軍の宇宙要塞であるルナ2をジャブローに落としてくれるわ。その後は頭を失った連邦をけん制しつつ、ソロモンを中心に機材の生産と戦力の拡充をはかるのだ」

「「おお!」」

 

 

 形だけの戦争計画を語りつつ、エンツォ大佐は暗い、暗い宇宙空間を見つめ続けた。

 

 

 

*

 

 

 

 地球連邦軍から通達を受け、木星船団は超大型輸送船ジュピトリス級ジュピトリスを、戦闘予想宙域から離れたサイド7ノアに寄港させた。そしてジュピトリス艦長たるパプテマス・シロッコ大尉は、シャトルでジャブロー基地に降下していた。

 

 

「君がシロッコ大尉か。君の設計図は見せてもらった。……素晴らしい。個人でここまでの物が生み出せるとは」

「ありがとうございます、テム技術大佐。貴方の作品群も素晴らしい。わたしは今、ジ・Oと言うオリジナルのMS(モビルスーツ)を設計、建造しようと思っていたのですが……」

「これだね?」

「ええ。ですが現状断念いたしましたよ。ガンダムMk-Ⅲ……。数年前の時点で、ジ・Oの推定性能にほぼ匹敵する機体まで造られてしまっていては。しかもワンオフ機に近いとは言え、事実上の少数生産機」

「いや、わたしだけではない。皆の力を結集したが故だよ」

 

 

 シロッコ大尉は、舌を巻く。このテム・レイ技術大佐は、ある意味化け物だ。自身では気付いていないが、彼もニュータイ……いや、地球圏では超能力者(スキャナーズ)であったか。精神感応能力はほとんど無いに等しい。相性のいい相手とのみ、無意識の感応を為せる程度だろう。

 だが、頭脳の回転が異様なレベルだ。テム技術大佐のその手の能力は、そちら方面にほぼ全てが割り振られているのだろう。なんて反則だ。しかも他人の成果に対して、まったくと言っていいほど嫉妬が無い。それを取り入れる事も、そしてその成果を分かち合う事も、まったく躊躇が無い。

 

 

(いや……。頭脳どうこうでは無いのかも知れん。頭脳の回転は超能力による物かも知れん。まあ素質も十二分にあるが。だがそうではない。他者を認め、取り込み、成果を分かち合う。その技術者としての性格。……いや、まだ違うか。その『全て』だ。『全て』が上手くかみ合って、芸術的なレベルでバランスしている)

「ああ、シロッコ大尉。この守秘義務宣誓書にサインしてくれるかね? 君に見せたいものがあるんだが、サインしてもらわんと出せん代物なのだ」

「はい、了解です」

 

 

 そしてサインをしたシロッコ大尉の前に出された物は、連邦製バイオセンサーの仕様書と設計書だった。

 

 

「これは! 見せていただけるとは」

「いや君の私製バイオセンサーだがね。非常に見るべきものがある。両者の設計を統合すれば、まだおそらく、というレベルだがね。性能をまったく落とさずに操縦者(パイロット)への負担をずっとずっと軽くできる!」

(そしてこの人柄、か。操縦者(パイロット)、つまり使い手の人間の事を思いやる姿勢……)

 

 

 更にテム技術大佐は語り続ける。

 

 

「まだ時間はあるかね? 君に紹介したい人物がいるんだ。フランクリン・ビダン技術大尉と、超能力者(スキャナーズ)関連のシステム研究で名をはせているシムス・アル・ハバロフ女史、そして連邦軍超能力者(スキャナーズ)研究所でテストパイロットをしているシャリア・ブル氏だ」

「いずれの方も聞いた事がありますな。木星圏ですらも技術者の仲間内では話題に上がります。そう言えば、フランクリン技術大尉は、最近離婚なさったとか……」

「あ、ああ。うん。彼が来たら、あまり触れないでやって欲しい。恋人を作るなら、子供の事を想ってきちんと離婚してからだ、と説教したんだが。いざ離婚したら、逆に恋人と上手くいかずに、ね……。まあ子供、息子さんとは若干関係性は回復したらしいのだが……」

 

 

 そしてパプテマス・シロッコ大尉は、ジュピトリス艦長からの異動を心に決めた。さっそくテム・レイ技術大佐のところへ転属できる様に、レビル将軍かその周辺に働きかけねばならない、と。




って言いますか、テムさんってもしかしたら原作でのニュータイプ(本作で言う超能力者(スキャナーズ))の素質っていうか能力、ありますよね。たぶん間違いないレベルで。
だって酸素欠乏症でサイド6に居た時。アムロと街中で出会って、そのときガンダムの操縦士(パイロット)がアムロだって最初から分かってる感じで話してたじゃないですか。アムロから何も言ってないし、テムさんが当時の連邦関係の情報を軍に復帰もしてないのに調べられるわけないし。

というわけで、エンツォ大佐大車輪で働くの巻。来る前は、あわよくば万一あるなら勝とうって小さく思ってました。でも、来たら「ああやっぱ駄目じゃん。うん、いさぎよく散ろう」になりましたです。小者ですから。

あと、アクシズ勢力軍の質が連邦軍を凌駕してるっての、真っ赤な嘘。逆に凌駕されてるはずです。サイコミュ誘導兵器と強化人間技術以外は。ああ、強化人間の治療に関する技術なら、やっぱり連邦の方が上かな。あとファンネルはこの前に、プルツーが最後まで温存してた1基と、あとGM-NEXT横流し品に組み込ませたアクシズ製サイコミュが連邦の手に渡ったんで。

結局アクシズ突っ込ませるのはサイド3に。でも阻止はされると思ってる。というか、勝手に確信してる。連邦軍の4将官、ブチ切れ。

そして最後の最後で気付いてしまいました。今回エグザベ君たち出てない(核爆)。
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