偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第55話 戦いは、なおも続いた!

 試作機どころか、まだ実験機レベルのあちらこちらがイエローで塗装されたスレンダーなMS(モビルスーツ)、乗り手であるラカン・ダカランとか言う少佐が、連邦軍を威嚇する目的なのかオープン回線で怒鳴っていたところによると、バウとか言う機体らしいのだが。この機体が、試作機や実験機という意味では無くイエローが制式カラーらしきミサイルポッドのカタマリっぽい集団の機体を護衛して『殴り込み艦隊』へと攻撃を仕掛けて来た。

 なので、かなり苦労はしたのだが、シン大尉が頑張ってそのバウを火球に変えた。ラカンとかいう少佐の断末魔が聞こえたので、確実に倒せただろう。だがそれに構っている暇は、あまり無い。

 

 

(あー、俺鈍くて良かった)

 

 

 そう思いつつ、シン大尉は続けて1機のミサイルポッド満載の機体を爆散させる。彼のガンダムMk-Ⅱは2機の硬直しているGM-NEXTに近寄り、思念で発破をかけた。

 

 

(おい、動け! 動かないと死ぬぞ!)

(あ、ああ)

(身体が、うまく)

(……これか。エグザベ大尉たちの居る第49独立戦隊にいったん配属されたが、仕方なしに異動、転属させられたってのは)

 

 

 彼らがシン大尉の部隊に配属されるにあたり、当時の表現でニュータイプ能力者、今の言い方で超能力者(スキャナーズ)であるけれど、そのせいか繊細(せんさい)すぎる面があるとの申し送りが付いて来ていた。できるだけ慎重に育てるべきと、その申し送りにはあったが……。その後の実戦任務、エゥーゴやジオンの残党勢力制圧の任務では、前面に出さずに済んでいた事もあり、表面化しなかったのだ。

 

 ……シン大尉は、思念で怒鳴った。同時に彼の肉体はガンダムMk-Ⅱを操作し、こともなげに黄色いミサイルポッド付きを3機、流れる様に撃破している。

 

 

(ジョージ・キムラ少尉! マクシミリアン・アーキン少尉! 動け! 動かんと死ぬぞ! お前らが死ねば、僚機が死ぬ! 僚機が死ねば、小隊全部死ぬ! 小隊が死ねば中隊全部死ぬ!)

(そ、それ、は)

(だけ、ど動か、ないんです、からだ、が)

 

 

 そしてガンダムMk-Ⅱは、黄色いミサイルポッド付き2機を、器用に手足と武装だけを丁寧に、爆散させない様に破壊する。シン大尉は、味方のためなら敵に対しては、いくらでも酷薄になれた。いくらでも非道になれた。いくらでも卑劣になれた。……まあそれに、ここまでやっても投降信号を出さない阿呆だし。

 

 

(撃て、ジョージ少尉! 撃て、マクシミリアン少尉! 撃たないと皆が死ぬ! 撃て、撃て、撃て!!)

((あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!))

 

 

 爆散する、黄色い機体2機。それを最後に、アクシズ要塞を護っていたMS(モビルスーツ)部隊は全滅する。おそらくMS(モビルスーツ)部隊の脱出用であったらしい艦も、他の味方により撃沈されていた。シン大尉は2人の少尉を励ます。

 

 

(よくやった。よく撃てた。もう後の心配はまあ無いから、お前ら母艦に帰還しろ)

(お、俺)

(自分たち、は)

(母艦には俺から連絡しとく。さっさと戻れ。そして今日はゆっくり寝てろ。デブリーフィングも、やむを得ない仕儀で欠席でいい。船医に睡眠導入剤処方してもらって、無理にでも寝ろ)

((は、はい))

 

 

 よろよろと、帰艦して行く2機のGM-NEXTを見遣りつつ母艦に通信を入れるシン大尉の脳裏には、一年戦争末期のあの日、ビグ・ザムの放ったビームに消える、同僚だったボール乗りが最期に、死に際に放った、あの絶叫が聞こえていた。もう、あの声を聞くのはつらい。敵の断末魔なら、慣れた。シン大尉は鈍いと自嘲していたし。でも味方の最期の絶叫は、嫌だった。とても、とても嫌だった。

 

 

 

*

 

 

 

 『殴り込み艦隊』の艦隊司令、ブレックス・フォーラ少将は、MS(モビルスーツ)戦が完了したとの報告を受けて、艦隊を前進させた。この艦隊は、3段式追加ブースターの3段目を、未だ艦尾にくっつけている。そのためダメージコントロール能力が極めて低い。ブースター3段目に直撃を食らえば、それだけで終わりだ。万一ぎりぎりで切り離せても、3段目ブースターが無いと帰還は非常に難しい。

 それ故に今回の戦闘では、シン大尉率いる中隊を先頭にして各MS(モビルスーツ)隊を先行させて、艦隊そのものは敵の抵抗力が無くなるまで前進させなかった。地球圏に集結しているアクシズ勢力の数と規模から、ほぼ宇宙要塞アクシズに残っている戦力は僅かであろうとも思われていた事だし。

 

 事実、宇宙要塞アクシズに残されていた戦力は、僅かだった。ラカン・ダカラン少佐とかいう軍法も軍規も無視して敵にオープン回線でがなり立てる、技量だけしか無い阿呆な軍人は残っていたが、まあ技量はあるから多少面倒、程度でしか無い。

 

 

「……無理を言って、シン大尉たちを借りて来てよかったな」

「は? 無理を言ったのですか?」

「本来、シン大尉たちはまだ部下の育成中だとかで、前面には立たせたくないとの仰せだったのだよ。だが他に使える部隊が少なかった。本命の第49独立戦隊は、既に使い道が決まっているとの事だったのでね。折れてもらったよ」

 

 

 そしてブレックス少将は通信士に命じ、アクシズへと通信を入れさせる。やがて艦のメインスクリーンに、アクシズ指令室の様子が映し出された。旗艦マゼラン改級ウィスコンシンの艦橋メンバーは、しかしその様子に驚愕する。慣性航行を続ける小惑星要塞アクシズの指令室には多数の死体が浮かび、あちらこちらに流れ出した血液が無重力空間で表面張力により、玉になって浮いていた。

 

 

『こちらジオン公国軍宇宙要塞アクシズ、動力部責任者ノリアキ・カサイ技術少佐です』

「こちらは地球連邦軍第17臨時編成艦隊、艦隊司令ブレックス・フォーラ少将だ。貴官がアクシズの司令官、か?」

『数分前からであれば、そうです。我々は、宇宙要塞アクシズを預かっていた司令部に対し、反乱を起こし、成功いたしました』

「!?」

 

 

 ブレックス少将は、しかし黙したまま小さく頷き、話の続きを促した。

 

 

『……我々は、地球連邦との、地球連邦軍との戦いであれば臆することも躊躇する事も無かった。しかし、ジオン共和国(サイド3)は、それでも……』

「……」

『それでも、故郷(ふるさと)です』

 

 

 ノリアキ技術少佐は、涙を流していた。涙が無重力で、表面張力で玉になって虚空に浮かぶ。彼はそれをハンカチで拭う。彼の背後では、作業服姿に小銃を下げた動力部要員が、真空用液体掃除機で、宙に浮かぶ血液の玉を掃除しているところだった。指令室の制御パネルに血の玉がしみ込んで、動作不良や誤動作を起こしたら、たまったものではない。

 

 

『我々は既にかなり以前、アクシズが小惑星帯に存在していた頃から、アクシズの軌道変更プログラムを用意しております。これを実行することで、アクシズはいったん地球圏外縁を巡る長円軌道に乗り、再度の核パルスエンジン噴射にてこれも地球圏の外縁を周回する安定軌道に乗ります。

 そうなればアクシズは、地球圏で必要とされる資源の採掘基地兼、地球圏以外の内惑星外惑星開発の基地として用いることが可能となるでしょう。……サイド3コロニー密集地域に突入させるよりも、ずっと有意義な使い方です』

「なるほど」

『我々が信用できないとあらば、そちらの陸戦隊員を上陸させて後ろで見張らせればよろしかろう。裏切ったなら、後ろから撃ってけっこう。もし悪意ある軌道にアクシズを乗せたとしても、我々を射殺してから再度のエンジン噴射を行えば、この軌道位置からならばアクシズを宇宙の彼方に放逐する軌道に乗せなおすのも容易でしょう』

「了解した。海兵隊員と、こちらの作業者、技術者、科学者チームをそちらに送る。受け入れ準備を願う」

『了解です』

 

 

 こうしてブレックス少将以下『殴り込み艦隊』は、その目的を120%達成した。アクシズの動力部技師たちの反乱という僥倖(ぎょうこう)にも恵まれたが、これにより地球連邦は地球圏外縁部に外宇宙への橋頭保をも得ることになったのである。

 

 

 

*

 

 

 

 アクシズの防衛を任せたラカン・ダカラン少佐からの連絡が途切れたのを聞き、エンツォ大佐は表向き眉根を寄せて不機嫌を装いつつも、内心では喝采を上げていた。

 

 

(アクシズのジオン共和国突入は、確実に防がれた、な。地球連邦軍も、まっとうにジオン共和国を『護る』腹積もりがあるのは間違いない。

 これで……。これで、心置きなく……。散る事ができる!)

 

 

 彼の両側では、バロム大佐とグラードル少佐が落ち着きない様子で、肩を揺らしたり

(かぶり)を振ったりしている。そこへ知らせが来た。

 

 

「エンツォ大佐! 周辺宙域をパトロールさせていたガザC小隊からの連絡が途絶えました!」

「!! それは危険だな。アクシズのサイド3宙域突入を支援させていたラカン少佐からの連絡が無いのも気にかかる! ……全方位に部隊を展開させろ! 仮に敵襲だとしたら、何処から来るかわからぬぞ!」

 

 

 そしてエンツォ大佐は、『わざと』戦力分散の愚を犯す。地球連邦政府がジオン共和国を護ろうとした事が確認できた以上、確実に連邦軍に勝ってもらわねばならないからだ。そこへバロム大佐とグラードル少佐が声を上げる。

 

 

「わ、我々の部隊も展開させよう!」

「我々はSフィールド、バロム大佐はNフィールドが良いだろうな!」

「いや、待たれよ」

 

 

 血気に逸った2人を、エンツォ大佐は制止する。

 

 

「貴官らの部隊は、悠然と中央部に座し、わたしの直属部隊と共に万が一に備え、ここで敵を迎え撃って欲しい。まあ、敵襲が本当で、そしてここまで来れる敵がいれば、の話だがな」

「む」

「ま、まあそう言われるのであれば」

(……貴様らの部隊は、ジオン公国軍の残り香の中でも、危険思想に凝り固まった連中だ。万が一にも逃亡が叶う場所に居てもらっては困るのだ。……それに、貴様ら自身が『表向き』和解した様に見えても……)

 

 

 そう、バロム大佐はキシリア配下の重鎮だった男であり、グラードル少佐はギレン親衛隊の中核人員だった男。いちおう『敵の敵は味方』理論で暫定的に和解してはいるが、その配下連中はやはり軍内で足の引っ張り合いをしている。

 であれば、そいつらを同一戦場に置くことで、戦いの結果は必敗となるのは確実だ。エンツォ大佐は確実な敗北に向けて、着々と足元を固めていた。

 

 

 

*

 

 

 

 最新型のスペースジャバー、その上面と下面の双方に1機ずつMS(モビルスーツ)を搭載した機体が、宇宙を飛翔する。その数18機。MS(モビルスーツ)数で言うならば36機の大隊編成だ。更にその後方からは、ペガサス最終型2隻と改ペガサス級2隻が追随している。言うまでもなく、第49独立戦隊であった。

 彼らの背後からは、地球連邦軍の大部隊が静々(しずしず)と進軍している。第49独立戦隊は最先鋒であり、刀の切っ先、矢の矢じりである。敵の最も戦力が厚い部分を叩き潰し、敵陣最奥までの道を切り開く役割を求められていた。

 

 隊の最前衛に立ち、カッ飛んでいるスペースジャバーに搭載されている機体は、本来あまりお勧めできる事では無いが大隊長のシイコ少佐、そして大隊副隊長のアムロ大尉での機体である。隊長格が最前衛というのは危険度から言ってあまり推奨されるべきではないのだが、実力というか戦闘力の面から言って、仕方のない事でもある。

 そして彼女らを護るかの様に追従しているのは、これまたヘカーテ隊中隊長のエグザベ大尉と、中隊副隊長のニャアン中尉の機体が搭載されたスペースジャバーだ。まあこの4人はその戦闘力からして大隊最強格の4人なので、もっとも先頭に立たねばならないのは仕方ないだろう。だが繰り返して言うが、普通なら隊長格が前衛は、あまり褒められた事では無い。

 それに追随して、ニコラ少尉とジャック・ベアード少尉の機体が搭載されたスペースジャバーや、カレン中尉とサンダース中尉、ゼロ中尉とゲーツ中尉の機体が載ったスペースジャバーが()んでいる。その他の機体群も、一糸乱れぬ編隊を組んで宇宙を()けていた。

 

 なお技量も彼らは物凄いが、機体もガンダムMk-Ⅲ、ガンダムMk-Ⅱ、GM-NEXTと強力機揃いだ。その上、ガンダムMk-Ⅲのバイオセンサーはテム技術大佐とパプテマス・シロッコ技術大尉の協力で生み出された最新型に変更されている。ガンダムMk-ⅡにもGM-NEXTにも、超能力者(スキャナーズ)の乗る機体には、その最新バイオセンサーは導入されていた。

 

 

(さっきガザCの小隊を撃破したときにも感じたけど、新しいバイオセンサーは、なんていうか馴染むのが早い)

(そうね、それになんて言うのか……)

(負担が、物凄く軽いよ。手足での操縦を邪魔しないって言うか、精神操縦を手足の操縦が邪魔しないのか)

(ものすごく、2種の操縦法の隙間というか継ぎ目というかが、シームレス。そして『軽い』)

 

 

 アムロ大尉、シイコ少佐、エグザベ大尉、ニャアン中尉の本部隊4大超能力者(スキャナーズ)は、感嘆の息を漏らす。

 

 

(しかも索敵も……『軽い』!!)

 

 

 『負担無く』敵気配を感じ取ったエグザベが、ニャアンが、ビームライフルを撃ち放つ。射線の向こうで飛来したばかりのズサ・ブースター(ズサブ)が合計4機、爆炎に消えた。

 

 

『ザッザザ発見された! 周囲からザザザ飛来を確認! 全機スペースジャバーから離脱、ザザ陣を敷け! スペースジャバーは自動操縦で艦に帰ザッザザザザ!!』

『『『『『『了解ザザッ!!』』』』』』

 

 

 一糸乱れぬ機動で、シイコ少佐を中心に魚鱗の陣を敷く第49独立戦隊MS(モビルスーツ)部隊。それを目掛けて、ズサ・ブースター(ズサブ)MA(モビルアーマー)形態のガザCと数少ないガザD、スペースジャバーに乗った量産確立したガルスJなどが攻め寄せて来た。




いやすみません。しばらく倒れてました。そして復活後にちょこっとリハビリ的に、短編の恋姫とか書いたり。そんなこんなで、こっち物凄く遅れました。

シン大尉、ラカンを撃墜しました。ラカンはドーベン・ウルフじゃなくてバウ実験機です。基本赤のあちこち黄色塗装。分離合体機構、無いわけじゃないですが実験機なので構造だけ残してその部分ボルト&溶接留め。

アクシズ指令室、最後まで動力や核パルスエンジンの様子を見るという名目で残ってた反乱者たちに制圧されました。というかエンツォ大佐、ジオン共和国潰しを発表した時点でこいつらが反乱を目論んだのを、情報こっそり掴んだ上で情報持ってきたスパイを自分の手で消したりして、見逃してます。万が一にもサイド3にアクシズ突っ込む事が無いように、って。あと、地球連邦がジオン共和国護るかどうかって試す意味も。

いよいよアクシズ軍相手に、エグザベ君たち切り込みました。性能高めのMS(モビルスーツ)群、それがけっこうな数あるので、かなり大変です。アムロたち4人はまあ心配いらんでしょうし、残りのホワイトベース組もまあ大丈夫でしょうけど、追加組が疲労度とか溜まったら心配かも。

シロッコ、第49独立戦隊から届いた最新バイオセンサーの高評価にニッコニコになりながら、テムさんといっしょにガンダムMk-Ⅲの次とGM-NEXTの次の開発を始めてます。楽しそうに。思いっきり。
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