偽書・ガンダム機動戦記   作:雑草弁士

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第6話 ガンダム2機掛かり

 ニャアンはフラウ・ボウと共に、カツ、レツ、キッカの世話を焼いていた。ニャアンもカツ、レツ、キッカも前回マチルダ中尉が連れて行った避難民の中には入らず、ホワイトベースに残留していたのだ。まあニャアンはエグザベと離れ離れになるつもりは更々無かった事もある。カツ、レツ、キッカについては本人たちが望まなかった事もあるが、ミデアの居住区画が満杯どころかちょっとばかり傷病人でキャパオーバーしている状態だったので、子供とは言え元気いっぱいな彼らは除外されたのだ。

 フラウの怒鳴り声が響く。

 

 

「ああもう! 服を脱ぎ散らかさないで! アムロだってここまで酷くなかったわよ!」

「アムロさんって、ここまでとは言わないけど酷かったんですね」

「え、ああ、うん」

 

 

 ニャアンの疑念に、誤魔化す様に頼りない相槌を打つフラウ。だがその時、ニャアンの『嗅覚』に何かが引っ掛かった。

 

 

(嫌な『臭い』……!!)

「ニャアン?」

「すいません!」

 

 

 ニャアンは壁のインターホンへ走る。そして左舷MS(モビルスーツ)デッキへと回線を繋げた。

 

 

「すみません! エグザベ兄さんか、テム技術大尉いませんか!?」

『あ、ニャアンちゃんか。エグザベさんは……プロトガンダムの操縦席(コクピット)だな。戦時で緊急か、艦橋(ブリッジ)の許可が無いと繋げないよ。テム技術大尉は……。ああ、こっちに来るよ、今代わる』

「ハヤトさん、ありがとう!」

 

 

 そしてテム技術大尉が、インターホンのモニターに映る。その表情は、厳しく(しか)められていた。

 

 

『ニャアン君、『また』、かね?』

「はい。『嫌な臭い』がします。……もうすぐ、『来ます』」

『そうか。すぐに上と皆に、話を通すよ』

「お願いします」

 

 

 そしてニャアンは子供らの世話に戻る。やがて緊急事態を告げる放送が鳴り響いた。

 

 

 

*

 

 

 

 ブライトは艦橋(ブリッジ)の艦長席で、オスカとマーカーが報告してくるセンサー情報を聞く。

 

 

「ザクⅡ、おそらくJ型が8機。そして機動力から、前回の新型が1機かと思われます。3個小隊です」

「いったん3方向に分れ、本艦の10時、2時、6時方向より包囲して来ます。新型は2時方向の隊」

「テム・レイ技術大尉の言った通りに、やって来た、か」

「ニャアンちゃん、本当にニュータイプなのかしら」

 

 

 ミライの言葉に、しかしブライトは眉をしかめる。

 

 

「どうかな。ジオン・ズム・ダイクンのニュータイプ諭は、宇宙に適応し、互いに誤解なく思いやれる宇宙時代の人類だ。異様な勘の鋭さは、少し違う気がするがね。それよりも今は、ニュータイプ諭よりも敵への対処が先決だ」

「そうね」

「モビルスーツ隊、順次発進だ。カイのガンキャノンとガンタンク、ジョブのコア・ファイターは10時からの敵に対処。ジョブは命中させなくていい。嫌がらせ(ハラスメント)攻撃で足止めし、そこをキャノンとタンクで叩け。

 シイコ少尉には済まんが、6時からの敵を1人で対処願いたい。白兵戦特化の例の新型とは、残念ながら相性が悪い。

 アムロとエグザベは、組んで2時方向の敵に対処を。アレに対処できるのは、ガンダムだけだ」

 

 

 そんな中、オスカがデータベースから情報を見つけ出す。

 

 

「ありました! 例の新型、最近更新されたデータベースに! MS-07Bグフ、白兵戦特化の局地戦用MS(モビルスーツ)、電磁(ムチ)はヒートロッドという武器で、その他シールドとヒートサーベル、左手のフィンガー・バルカンです」

「よく見つけてくれた! セイラ、アムロとエグザベに情報を送れ!」

「了解。アムロ、エグザベ、よく聞いて……」

 

 

 戦闘が、始まった。

 

 

 

*

 

 

 

 ガンキャノン1番機のシイコ少尉は、既に1機のザクⅡJ型を餌食にしていた。相手の射程距離圏外から、狙撃用ビームライフルで狙い撃ったのだ。

 

 

「1つ()とした! 次はどいつ!?」

 

 

 ギラついた瞳で叫ぶと、彼女は次の目標にガンキャノン両肩のキャノン砲の照準を合わせる。だが、まだ撃たない。そして敵機が跳躍して着地する寸前にトリガーを引き絞る。着弾。狙われたザクⅡJ型は爆散した。しかし残り1機のザクⅡが、フットミサイルを発射する。直撃は(かわ)したが、爆炎に紛れてザクⅡJ型は至近距離まで踏み込んで来ていた。ヒートホークが唸る。

 

 

「舐めるなァ!」

 

 

バギイィン!!

 

 

 ガンキャノンの重厚な装甲を施された左拳が、ヒートホークを持ったザクⅡの右腕を天頂方向に跳ね上げて、その勢いのまま顔面を殴りつける。モノアイレールのシールドが砕け散り、細片が周囲に散らばった。

 シイコ少尉はそのままガンキャノンの膝で、ザクⅡの胴体を蹴り上げる。胴体がひしゃげたザクⅡは、そのまま崩れ落ちたが、シイコ少尉はその上にガンキャノンの(かかと)を物凄い勢いで落とした。胸部パネルがクシャっと言う感じで潰れ、操縦席(コクピット)そのものが崩壊。

 

 

(ギャアアアァァァ!!)

五月蠅(うるさ)い!!」

 

 

 脳裏に響いたその叫びを、シイコ少尉は怒鳴り散らして黙殺した。彼女はこれが敵機からのオープン回線での通信ではなく、敵操縦士(パイロット)の断末魔を彼女自身が感じ取ったのである事を、認識していない。

 

 

「セイラ! あの新型の位置情報を教えて!」

『すいませんシイコ少尉。それよりカイとリュウ、ハヤト、ジョブをザザッ救援していただきたいんです。ザク2機は撃破したんですが、最後の1機が至近距離までザザザ来てしまって、ガンタンクが損傷を』

「ち、了解ッ!!」

 

 

 ガンキャノン1番機はシイコ少尉の操縦に従い、窮地のガンタンクとガンキャノン2番機を救うためにブーストダッシュした。

 

 

 

*

 

 

 

 エグザベとアムロは、あえてグフに随伴するザクⅡJ型2機を撃墜しなかった。3機対2機の乱戦にすることで、連携が取れていない敵、特にグフに実力を発揮させない作戦に出たのだ。アムロは可能であればグフと一対一で戦いたく思っていた様であるが、エグザベの説得に応じ、作戦を了承していた。なお歴戦であるはずのジオン軍の精鋭に対し、『何故か』実戦経験が浅いはずのエグザベとアムロの方が、格段にコンビネーションは上である。

 

 

(エグザベさん! ヒートロッドが!)

(わかった!)

 

 

 背後から迫るヒートロッドをぎりぎりで回避するプロトガンダム。そのヒートロッドはエグザベ機が相対していたザクⅡに命中し、あわててグフはヒートロッドを引き戻す。ザクⅡは尻もちをついた。

 そこへ割り込んで来る、アムロのガンダム。ビームライフルと60mmバルカンでけん制をし、腰のラッチにビームライフルを戻すとビームサーベルを抜きざま斬りつける。

 

 

(く、この白いMS(モビルスーツ)!! 前回たしか子供が乗っていたはずだが! 連邦軍は、あんな子供を!?)

 

 

 声が聞こえた気がしたが、エグザベはそれを黙殺してプロトガンダム頭部の60mmバルカンを撃ち放つ。そして冷静に、グフに向けてビームライフルを射撃した。だがそれを読んでいたグフの操縦士(パイロット)、『荒野の迅雷』ヴィッシュ・ドナヒューはぎりぎりで射線を回避。

 そしてグフの後ろに居たザクⅡが爆散した。エグザベは2機の敵機が重なった瞬間を狙い撃ったのだ。これでグフの操縦士(パイロット)は、うかつにこちらの射撃を回避できなくなる。少なくとも、心理的にプレッシャーが掛かるだろう。

 

 

(た、隊長おおおぉぉぉ!! ドナヒュー中尉ーーー!!)

(し、しまった! く、連邦軍のMS(モビルスーツ)、能力はこちらのMS(モビルスーツ)を超えている。だがそれ以上に、操縦士(パイロット)が! 技量だけなら大差は無いかもしれん、しかし連携と戦術面では!)

 

 

 アムロ機が、ビームサーベルをジャベリンに変形させて真正面からグフを突く。下手に(かわ)せばその後方のザクⅡが()ちる位置取りだ。しかしグフは全力で後方にブーストした。グフとザクⅡがぶつかり、双方とも後方に吹き飛ぶ。だがわざとぶつかったグフは即座に体勢を立て直し、ザクⅡに肩を貸すと更にバーニアを()かして後方へと跳躍した。

 そしてグフとザクⅡは撤退を開始する。モニターを見遣ると、ガンタンクとカイのガンキャノンを叩いていたザクⅡJ型も、必死になって後退して行くのがレーダー画面に映っていた。

 

 

「アムロ、大丈夫かい?」

『ザザッはい、どうにか』

「こちら側がガンダム2機がかりで、敵に足手まといがいるならば、グフにもどうにか拮抗できる、かな。技量はともかく、ザクは性能面でこちらにまったく追い付いて無いからね」

『同意します。ただザクの操縦士(パイロット)も、技量はけっこう大したものだと思います。ザザッれにグフは……。恐ろしい相手です。ヒヤリとした瞬間が幾つもザッ油断はザザザッ』

「ああ、油断するつもりは無いよ。というか、今回は相手の油断につけ込んだみたいな物だし」

 

 

 そして帰艦命令が出る。2人は各々の機体を操り、ホワイトベースに向かった。

 

 

 

*

 

 

 

 主要人員が、ホワイトベース艦橋(ブリッジ)へと招集された。いつものブリッジ要員、そしてシイコ少尉を始めとしたパイロット要員。銃座担当や主計課担当は呼ばれていないが、機関要員は機関長代理だけが呼ばれている。また整備班からは、テム技術大尉だけが呼ばれた。

 ブライトが口を開いた。

 

 

「皆の意見を聞きたい。特に戦闘要員の。スクリーンを見てくれ。現状我々は、オーストラリア大陸のこの位置、中央部やや東寄りに位置している。そしてジョブがコアファイターで偵察に出た結果と、ホワイトベースのパッシブセンサー群を全開にした結果を合わせて検討したのだが」

「「「「「「……」」」」」」

「インド方面マドラス基地に向かうには、オーストラリア大陸西海岸へ向かう必要がある。だがその途中に、敵の前線基地もしくは前進基地が複数存在している。……戦線を突破し、西海岸へ向かうためには、最低で1つを抜かなくてはならない」

 

 

 シイコ少尉が、問うた。

 

 

「どれを攻撃するか、意見を聞きたいのね?」

「ええ、少尉。ちなみに僕は、この目標Aを叩いて最短距離を、と思うのですが、いかがか」

「……待ってくださいブライト艦長代理」

「エグザベ?」

「目標Aですと、手間取れば目標BとCから増援があった場合、フクロになりませんか」

「む……」

 

 

 口ごもり、考え込むブライトに、アムロも意見を出す。

 

 

「僕もエグザベさんの危惧は妥当だと思います。ここは一見遠回りですけど、目標Dを叩いて山岳地に逃げ込み、そのまま隠れ潜んで進み、西海岸へ到達するのはどうでしょう」

「……それが、一番良さそうか?」

「だけど問題は、幾つかあるわね。目標A以外は、街に隣接している。攻撃をしくじれば、民間人に被害が出るかも」

「だけど目標Aは危険が大きすぎるわ。絶対に反対」

「ううむ……」

 

 

 その後、かなりの時間を使って侃々諤々(かんかんがくがく)の議論が繰り広げられた。そして結局は、アムロの提案した目標Dを叩いて山岳地に逃げ込む案が採用される。ただしそれは、戦術的にはかなり難しい選択であった。




とりあえず、ニャアンのニュータイプ能力に関しては、艦橋(ブリッジ)要員と左舷MS(モビルスーツ)デッキではかなり認識されて来てます。あくまでニュータイプではなくニュータイプ『能力』です。『宇宙に出てたかだか100年程度で人間が進化できるわけがない』のです。まあゾルたんに共感した、わたしの個人的な持論ですけど。
一方のパイロット連中、シイコ少尉、アムロ、カイ、エグザベあたり。彼らはほんのわずか~多少のレベルで『能力』に覚醒を始めてますが、当人たちは自覚ほとんどしてません。アムロとエグザベがパイロット連中では一番覚醒度高いですが、半信半疑です。でもエグザベはニャアンの様子を見てるので、多少は『アレ? もしかして僕も?』ぐらいは。
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