シャーレの先生がポケモントレーナーである場合にありがちなこと   作:子々(ネネ)

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まだ小説を立ち上げて1週間程度なのに沢山の方が見てくださっててとてもありがたいです。

正直浮き沈みが激しい方ですが、ブルアカがメイン軸のつもりなのでそこはブレずに書いていきたいと思います。


市販薬の重要性を知った火宮チナツにありがちなこと

「おげぇ……っ」

 

シャーレに戻ってきた先生は、早速あるポケモンに薬を調合してもらうのだった。

その薬を飲んだ先生はあまりの苦味と渋味に吐きそうになった。

 

「ヤァン……」

 

唸るような低い声で、頭の巻貝から液体をグラスに注ぐ毒々しい見た目の生物。

顔半分が巻貝に覆われており、首元の襟巻が高貴な身分のそれに見えてくる、怪獣のようなポケモン。

 

ガラルヤドキングは毒々しい液体が注がれたグラスを先生に手渡す。

 

「お、お前、今日ネコブのみ、食べただろ……っ!」

 

ガラルヤドキングは自身の体内にある毒素と、食べたきのみなどを体内で調合し、頭の発射口から薬を噴き出す。

当然味や効果はガラルヤドキングが食べたもので変わり、今回先生が頼んだのは体に巡った毒を中和する薬なのだが……。

 

「ラムのみの甘さと、ネコブのみの苦味と渋味が最悪な混ざり方してる……っ!」

 

先生は薬を調合してもらう前に、ガラルヤドキングにラムのみを食べさせた。

ラムのみは体の痺れや毒などを中和する効果があり、薬の調合にうってつけだったのだが……。

 

「ヤド……」

「うぐぅ……」

 

一杯分では足りないと判断したのか、ガラルヤドキングは二杯目を用意した。

明日の仕事に係わるので、飲まないわけにはいかない。

 

「う……ぅ……、おえ……」

 

ついでに言うと、効果の有無に関わらず、毒素を調合に使っているので飲むと身体が痺れる。

 

『せ、先生……顔が真っ青です……』

「ふ、ふふ……アロナちゃんは風邪ひいちゃ駄目だよ……。ヤドキングの薬、飲むことになるからね……」

『はいっ、絶対嫌です!!!』

 

AIなのでそんな事にはならない筈だが、二度と風邪はひくまいと誓ったアロナなのだった。

 

「うぐぅ、早くみんな、連れてこないと……、保たない……っ」

 

 

 


 

 

 

「アコ行政官は困りものです……」

 

シャーレへの道中、前日に言われた天雨(あまう)アコからの指示に悩まされていた。

 

――良いですかチナツ。先のアビドスの一件でシャーレの先生は我々【風紀委員会】に借りがある筈なのです。

――にも関わらず図々しくヒナ委員長に接触してくるなど、本当に油断ならない男ですよ、あの人は!

――明日はシャーレ当番の様ですが、何か我々が優位に立てる情報を必ず掴み取って下さい。

――間違っても【万魔殿(パンデモニウムソサエティー)】に取り込まれるような事はあってはならないのですよ、あの立場の存在は!

 

眦を釣り上げ癇癪を起こしたように、迫真の態度で畳み掛けてきた風紀委員会のナンバー2に、チナツは一先ず頷くことしか出来なかった。

 

ゲヘナ学園。

トリニティに負けず劣らずの規模と歴史を持っているマンモス校であり、長年の間トリニティとは犬猿の仲である。

その中でも最も影響力の大きい存在と言っても過言ではないのが、火宮(ひのみや)チナツが所属する風紀委員会のトップ――空崎ヒナである。

 

ゲヘナで彼女を恐ろしいと思っていない生徒などほとんどいない。それほどまでの存在のヒナだが、風紀委員会の上司である【万魔殿】には疎ましく思われている、主に生徒会長に。

 

なので生徒会に出し抜かれることはあってはならない――これが、普段からアコが口にしていることなのだ。

 

「先生にはお世話になっている以上、不義理は働きたくないのですが……」

 

所詮自分は医療班の一員。

実働部隊やブレインの指示に逆らったところで何かが変わることはない。

虚しい上下関係である。

 

そんな事を考えながら、チナツはシャーレオフィスまでやって来た。

 

「おはようございます、先生」

 

中へ入ると、そこには誰もいなかった。

 

「留守にしているのでしょうか……?」

 

キョロキョロとチナツはオフィス内を見渡すと、デスクの上に不審なものが見つかった。

 

「これは……?」

 

一見するとそれはただのグラス。

だがそのグラスにこびりついている何かに顔を顰める。

 

毒々しい液体の跡が残っており、よく観察しようと顔を近づけると……、

 

「……ぅ、これは……!?」

 

嗅覚が拒絶するほどの酷い刺激臭を感じ、チナツは勢いよくその場から離れた。

これは一体何の匂いか。

元【救急医学部】の部員として、過去に嗅いだことがあるかどうかを思い出し、

 

「生野菜のような匂いに……、……毒薬!?」

 

信じられないような答えが頭に思い浮かび、チナツは絶句する。

シャーレオフィスで毒薬の痕跡が見つかるなど前代未聞である。

 

ヒナの話では、先生はキヴォトスの各地で汚職を働いた企業や飲食店を摘発し、ヴァルキューレに逮捕してもらっているらしい。

それだけでなく、先のアビドスの一件でカイザーグループの子会社【カイザーPMC】の理事を筆頭に全員がヴァルキューレに逮捕されたというニュースが流れた日は、キヴォトスで阿鼻叫喚が巻き起こったとか。

 

つまり、先生を毒殺しようと画策するくらい、先生を憎んでいる者は大勢いる。

 

「先生! 何処ですか!?」

 

姿が見えないのなら誘拐されたのか。

証拠を探すべく改めてオフィス内を見渡すと、ソファーがある床に何かが落ちていた。

 

……いや、落ちていたのではない。

こびりついているのだ、グラスと同じ毒薬が。

 

「先生はソファーにいる時に飲まされた……?」

 

真面目に事件の考察をしているチナツは集中し過ぎて気付かなかった。

ドスドスドス、と足音が近づいてくることに。

 

近づくにつれて床の揺れを感じたことで、初めてチナツは何者かが後ろに立っていることに気がついた。

 

「え――」

 

風紀委員会としての癖でホルスターから拳銃を抜き、構えを取りながら振り向いて、

 

「う、動けないっ……?」

 

指先すら全く動かせない事に、チナツは言い知れぬ恐怖が湧き上がる。

そんなチナツの眼前に居るのは。

 

「ぃ……――」

 

全身が毒々しい見た目の、頭に巻貝を被った怪獣がこちらをじっと見つめる姿だった。

 

「いやああああああッ!!?!?」

 

 

 

 

 

一方先生はその頃シャワーを浴びていた。

 

あの後気絶した先生は、朝起きて自身の身体から、ガラルヤドキングの薬の匂いがして顔を顰め、急いで身体を洗うことにした。

 

「体のダルさや痺れも消えたし、効果は絶大なんだけどな……」

 

先生は、昨日飲んだ薬の後味と痺れを思い出す。

体内の毒素をそのまま用いているので、毒に侵されたりはしないにせよやはり気分が悪くなるのだ。

そればかりは仕方がないにしても、ガラルヤドキングが食べたきのみの味によって薬の味も変わるのは何とかしてほしい。

 

「あいつ、カビゴン程ではないにせよ色々口にするんだよなあ……」

 

その上知能が高いので、わざとそうして酷い味の薬を飲ませたのかもしれない。

 

「あと、きのみの苦味とかも強まってるのも原因かも……」

 

タワー内の一角を借りてきのみの栽培を始めたのだが、明らかにきのみの糖度や辛味、酸味などが強まっている。

ゲヘナ【給食部】で農園を管理している牛牧(うしまき)ジュリに何が原因か調べてもらったのだが、結局何も分からなかった。

 

「……そろそろ戻るか」

 

シャワーを浴び終えた先生はシャワールームから出ようとして、ある事を思い出す。

 

「換気はしたけど、掃除してない……」

 

昨日薬を飲んだ時に、ほんの少しだけ薬を床に溢したかもしれない。

今日のシャーレ当番はチナツ。

彼女は元養護組織の部員であり、薬の痕跡を見られようものなら、「シャーレは毒物を扱っているのではないか」とあらぬ誤解がゲヘナに蔓延しかねない。

……あながち否定できないが。

 

「やばい、早くオフィスに戻らないと……」

 

そう思った瞬間――

 

「――いやああああああッ!!?!?」

 

「――……ッ!?」

 

悲鳴が響き渡った。

 

「今の声、まさかチナツかッ!?」

 

先生は急いで駆けつける。

執務室に入ると、拳銃を下段で構えたまま恐怖に塗れた表情で固まっているチナツと、そんなチナツの目の前で棒立ちしているガラルヤドキングの姿だった。

 

「ヤドキング、何やってるんだ!」

「ヤド……?」

「早く“サイコキネシス”を解け!」

「………………」

 

ガラルヤドキングはじっと先生を見つめた後、纏っていた力場のようなものが霧散する。

恐怖で身体から力が抜けたのか、チナツはその場に両膝をついて崩れる。

 

「チナツ、大丈夫かい?」

「……ぁ、せ、せんせ……」

 

先生はチナツの容体を確認すべく、傍へと駆け寄る。

チナツは縋るような目つきで先生を見上げ、ふとその視線が下へと泳ぐ。

 

「き、きゃああああぁッ!!?!?」

「えっ、な、何で!?」

 

いきなり人を見て悲鳴を上げられ、先生は後ずさる。

チナツは顔をそらし両手で顔を覆う。何か見てはいけないものを見てしまったかのように。

そして先生も視線が下へと向かい――自身が一糸纏わぬ姿であることに、今更気づいたのだった。

 

「ご、ごめんっ!!」

 

ギョッとした先生は急いでシャワールームに戻り、着替えてくる。

その時、

 

「ヤドキン……」

 

呆れたようなガラルヤドキングの鳴き声が、先生の背中を突き刺すのだった。

 

 

 

「えっと、その、本当にごめんね、見苦しいもの見せて……」

「い、いえ、むしろ、助けていただいてありがとうございます……」

 

そう言ったチナツはこちらからずっと顔を背けたまま。

気まずいのだろうか、彼女の尖った耳は真っ赤である。

 

「助けたっていうか、ヤドキングが変なことしたみたいで……」

「……その、ヤドキングと言うのは……」

 

チナツの視線が、距離を取ってこちらをじっと見つめているガラルヤドキングに向けられる。

先生は少しの間逡巡して、諦めてユウカの時のように話すことにした。

 

「――なるほど、先生の世界ではありふれた生き物なのですね」

 

ひとまずは納得してくれたチナツ。

 

「しかし、私は一体何をされたのでしょうか? 指先すら全く動かせなかったのですが……」

「“サイコキネシス”だね。見られたら困るものをチナツが見ちゃったと判断したから、ヤドキングがチナツの動きを止めたんだろう」

念動力(サイコキネシス)?」

 

あまり聞き慣れない単語が飛び出てきて、チナツは“オウムがえし”をする。

 

「実際に見て貰ったほうが早いかな。……ヤドキング、ちょっとやってくれ」

「ヤァン……」

 

先生がガラルヤドキングに指示を出すと、ガラルヤドキングの目が一瞬、青白く光る。

その刹那、先生の身体がその場からふわり、と宙に浮く。

 

「ぇ……!?」

 

非現実的な光景に絶句するチナツ。

もういい、と先生が指示を出すと、ゆっくりと下りてくる。

 

「……と、まあこんな感じだよ」

「え、ええと…………」

 

考えが纏まらないのか、チナツはモゴモゴと口を開閉させる。

そして、話題を変えるように、別の質問を口にした。

 

「み、見られたら困るというのは……」

「……ヤドキングが作った薬、だね」

「薬?」

 

チナツは聞き捨てならない言葉を聞き、同時に引っかかりを覚える。

それは、さっき見た不審な痕跡――デスクの上のグラスである。

 

「薬とはやっぱりあのグラスの……」

「うん、そうだよ」

「何かの暗喩ですか? あれからは毒薬の匂いがしたんですが……」

「ど、毒薬……」

 

歯に衣着せない言葉に、先生は苦笑した。

そして、恐れていたことは現実になるところだった、と肝を冷やした。

 

「えっとね、まずヤドキングが作る薬なんだけど、それにはまずヤドキングの毒素が使われるんだ」

「はい?」

「ヤドキングの毒素とヤドキングが食べたものを体内で混ぜ合わせて、ヤドキングが色々する事で頭の発射口から薬を――」

「待ってください待ってください!」

 

聞き捨てならない言葉を何度も浴びせられたチナツは、さっきとんでもないモノを見てしまったことも忘れ、ガジリ、と先生の肩を掴んで顔を合わせる。

 

「そ、それって、つまり毒薬ではないのですかっ?」

「確かに飲むと痺れるけど、命に係わることはないし――」

「そんなの関係ありませんっ!!」

 

大声でチナツは咎める。

 

「ただでさえシャーレは激務なのに、なぜそんな危険な物を飲用しているのですか!」

「いや、それは……」

「過労が祟って倒れたこともありましたよね? なのに身体を労るどころか、かえってストレスが溜まるようなことしないでください!!!」

「はい、すみませんでした……」

 

生徒にお説教されるなんていつぶりだろうか、と項垂れる先生。

まったく、とチナツは大きくため息をついて、質問を続ける。

 

「それで、なんでそのような薬を服用したのですか? 健康優良であるなら薬など飲む必要はありませんよね」

「うぐ、……話さなきゃダメかな?」

「実は私、昨日アコ行政官より先生の弱みを握るよう命令を受けておりまして。話してくれないのであればポケモンと薬の事を話すしかありません」

 

既にチナツは先生の弱みを握っている。

暗にそう言われたのだと理解した先生は、観念して昨夜の出来事を詳らかに話すことにした。

 

「緩衝地帯でそんな事が……!」

「エデン条約だっけ。アコも話してたよね。ご破算になるのは絶対に避けたかったから、ゲヘナとトリニティでここ数日の間情報収集してたんだ」

「ヒナ委員長と連絡を取り合っていたのはそういう事だったんですね……」

 

確かに、それは迂闊に外部に漏れれば外交問題だ。

弱みどころの話ではなくなったことに、チナツは頭を抱えた。

 

「ですが危険すぎます! なぜ風紀委員会か正義実現委員会に協力を申し出なかったのですか!? シャーレの超法規的権限であれば不可能ではなかった筈です! 現に毒まで嗅がされて……!」

「だからだよ」

 

きっぱり、と先生は否定する。

 

「違法薬物なんて危険なものが、生徒達に向けられるのは看過できない」

「ですが先生よりは――」

「それと、」

 

ここで一拍おいて、先生の語気がほんの少しだけ強くなる。

 

「チナツ、君の立場であれば今のは『風紀委員会()正義実現委員会を』ではなく、『風紀委員会()正義実現委員会を』と言うべきだった」

「…………っ!?」

「あそこはゲヘナとトリニティの緩衝地帯。どちらか一方のみを連れていけば、もう一方は黙っちゃいない。それはシャーレの強権なんて関係ない」

「そ、それ、は…………」

 

痛いところを突かれたように、チナツは表情が歪む。

 

「それは、私の立場では、口が裂けても言えません……。そんなこと……ヒナ委員長でもなければっ……」

「いいや、違うね。たとえヒナでもそれは軽々しく言わない。……いや、言えない、が正しいか」

「なっ――!」

 

さっきと言う事がまるっきり逆である事に、チナツは絶句する。

しかし、と先生は続ける。

 

「しかし、それでも言わなきゃいけなかった。……それが出来ないのは、今のゲヘナとトリニティが険悪であることの何よりの証拠だ」

「……っ」

 

確かに、とチナツは納得する。

風紀委員会でもアコを筆頭に、トリニティによい感情を持っていない生徒は数多く居る。

和平条約など本当に結ぶ必要があるのか。

口にこそ出すものは居らずとも、そんな空気はひしひしと感じる。

 

「ゲヘナとトリニティが昔から険悪である事は聞いている。だが、昔は昔。今は今だ。昔仲が悪かったからと言って今を生きている子たちも険悪でなければならないなんて、道理が通らない」

「……!」

「だから、和平条約は必要なんだろうね」

「先生……」

 

そこでようやく、先生の表情に笑みが戻った。

 

「すぐには仲良くなれるとは思っていないよ。人には合う、合わない、がどうしてもあるからね」

「確かにアコ行政官とハスミ副委員長はとても仲が悪いです。あれは、ゲヘナとトリニティというだけでなく、性格も合わないと思います」

「ああ、そうなんだ……。まあでも、時間をかければ君たちは協力し合えると思うよ。あの日、チナツがハスミ、スズミと協力して戦闘していたようにね」

「ぁ…………」

 

シャーレ発足日。

サンクトゥムタワーまでの戦闘で、険悪である筈の風紀委員(チナツ)正義実現委員(ハスミ)達は肩を並べて不良生徒の鎮圧を行っていた。

あの時は行政制御権の再確立もあってそれどころではなかったというのもあるかもしれないが、少なくともチナツと彼女達は顔を合わせて早々口汚く罵り合った、なんてことはなかった。

 

「実現出来るはずだよ。君達が何よりの生き証人さ」

「せん、せい……っ」

「だから私も、エデン条約の締結に協力するよ。……私という変数を無視出来ない人が居るならそう伝えるといい」

「……! はいっ」

 

この人は自分たちの事をちゃんと見て、そして理解してくれている。

チナツは改めて心からそう思えたのだった。

 

 

 

当番の仕事が終わり、チナツが帰る頃。

 

「ヤァド……」

「あら……?」

「ヤドキング、どうした?」

 

居住区の方へ引っ込んでいたガラルヤドキングが、ビニール袋を持ってチナツを見送りに来た。

ガラルヤドキングはそれをチナツに差し出し、チナツは思わずそのまま受け取った。

 

「なんだ、それ? 何が入ってるの?」

「これは……」

 

チナツは袋に入っている物を一つ掴んで、外に取り出す。

それは、全体的に斑点の様な模様が付いた黄色い果物みたいだった。

 

「果物、でしょうか……。ザボンに少し似ていますが」

「オボンのみじゃないか。わざわざ採ってきたのか?」

「ヤド……」

 

動きが鈍いヤドキングがスッと素早く顔を背ける。

どうやら怖がらせてしまったことをヤドキングも申し訳なく思っているようだ。

 

「他にも色々果物や野菜みたいな物が入っていますね。貰ってもよろしいのですか?」

「……他の人に渡さないって約束してくれたら、そのままあげるよ。私が栽培してるきのみなんだ。ヤドキングもお詫びの印で渡したんだと思うし」

「そういう事でしたら……、ありがたくいただきます」

 

チナツはきのみが沢山入った袋を持って帰るのだった。

 

 

 

その晩、先生はふと思い出す。

 

「チナツ、テンパってたのか知らないけど、これに気がつかなかったな……」

 

先生は袖をまくり上げる。

露出した腕には大小様々な傷跡が薄く残っており、腕だけでなく体中こんな傷跡ばかり付いている。

過去にポケモンバトルなどで付いてしまった傷跡は簡単には無くならず、先生はこれで色々不便を感じたこともあった。

 

「そのまま忘れてくれたらいいけど……」

「ヤァン……」

 

ガラルヤドキングは一服つくように、ソファーに腰を下ろしてきのみを食べていた。

そのきのみは――

 

「お前、それマトマのみじゃないか……」

「モグモグ……」

 

刺々しいトマトの様な形のきのみを何事もないように咀嚼するガラルヤドキング。

咎めるような先生の声にも意に介さず、黙々と食べ続けていた。

 

「そういえばヤドキング、お前チナツにどのきのみ渡したんだ? 結局中身確認しなかったけど……」

「ヤドキン……」

 

 

 

「ぅ、ぅぅ……っ」

 

夜食に貰ったきのみを使って食べることにしたチナツ。

彼女は早速外側がトゲトゲした真っ赤なトマトみたいなきのみを切り分け、サラダに盛り付けた。

そして一口食べた瞬間、

 

「か、から……し、しぶ……っ!」

 

口の中で異次元級の辛味と渋味が押し寄せ、口を押さえながらその場に蹲る。

吐き出しそうになったが、先生から貰った食材を、口に合わなかったからと言って吐き出すのは憚られた。

 

そして同時に先生のある発言を思い出す。

 

――ヤドキングの毒素とヤドキングが食べたものを体内で混ぜ合わせて、ヤドキングが色々する事で頭の発射口から薬を――

 

つまり、ガラルヤドキングはこれを食べて、先生に薬を飲ませたこともあるのだとチナツは解釈してしまった。

 

(せ、先生の世界では、そういう風に薬が作られているのでしょうか……)

 

キヴォトスには様々な効果の市販薬が売られていることに感謝するとは思わなかった。

 

 

 

 

 

―――――後日、チナツからきのみの味の感想を聞いた先生は、その場でチナツに土下座するのだった。




大体3行で分かる! 登場人物紹介

シャーレの先生
・甘党なので【放課後スイーツ部】とは話がよく合う
・過去にマフィアとの無法なポケモンバトルで直接ポケモンの技を受けたことがあった
・ポケモン世界からゲットしたポケモンを順次通信転送させており、現在先生のポケモンは18体連れて来られている

火宮チナツ
・ゲヘナ学園高等部1年、【風紀委員会】所属の医療班
・元々は【救急医学部】所属だったが、戦闘が絶えない風紀委員会で医療のサポートをするべく転部
・最終章組以外で先生の全裸を見てしまった娘

ヤドキング(ガラルのすがた)(♂)
・先生がブルーベリー学園でゲットしたガラルヤドンが進化したポケモン、サイズはS
・モモンのみやクラボのみなど、毒消しや麻痺直しの効果のあるきのみを食べればその効果のある薬を作れるようになった
・きのみなら何でも美味しく食べられる悪食、ただし腐っているものは食べない

アロナ
・好きなものはいちごミルク、先生と一緒によく飲む
・青の教室に入れば先生のポケモンもアロナを認識でき、アロナもポケモンと触れ合える
・先生は常にモンスターボールを6個持ち歩いており、残りのボールはアロナが預かっている、つまり青の教室はポケモン預かりボックス



ガラルヤドキングが食べたきのみの効果で薬の効果を定められる、というのはこのヤドキングの設定です。
実際は食べたもので薬の効果は変わるが、それはガラルヤドキング自身にも分からない様です。

後、ZAをプレイしている方で、「そのきのみにそんな味無くないか?」と思った方がいらっしゃるかも知れませんが、そんな方に一言。
キヴォトスはポケモン世界とは別次元なので育ち方が全く違うみたいですよ?



ちなみに現在先生はポケモンを18体連れてきていますが、各タイプ1体ずつとして、こんな感じです。

ノーマル:イエッサン(メス)
ほのお:????ン
みず:???ド?
くさ:????ト
でんき:??ン?
ひこう:???リ?
むし:デンチュラ
いわ:???ド?
じめん:??イ??
かくとう:????ー
エスパー:ガラルヤドキング
ゴースト:?ン??
こおり:?プ??
どく:クロバット
ドラゴン:???ュ?
はがね:?ガ???
あく:?ン???
フェアリー:?レ???

「?」は文字で、それぞれそこに入る名前の文字を一箇所だけ開示しています。
ポケモンに詳しい方はこれで誰か分かるかもしれません。
良ければ当ててみてください。

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