シャーレの先生がポケモントレーナーである場合にありがちなこと 作:子々(ネネ)
ここでコノカがどういうキャラか分かれば、カンナと一緒に先行登場させられるかもしれません。
その翌日。
ホシノの心中は穏やかではなかった。
今日はバイトではない、と昨日セリカから確認を取っている。
なのにセリカが登校してこない。
「おはようみんな、ってどうしたの?」
「先生!」
先生が部室に顔を出し、空気を察したのか怪訝な表情をする。
アヤネが先生に駆け寄り、
「セリカちゃんと会っていませんか?」
「セリカ? ……まだ来てないの? 今日は登校するんでしょ?」
「それが、さっきから連絡が取れないんです!」
「ん、家にも行ったけどもぬけの殻」
「……!」
「…………っ?」
先生の纏う空気が変わったように、ホシノには見えた。
いつもの柔和な笑みが引っ込み、刃のような鋭い雰囲気になる。
「バイト先の柴大将さんにも連絡しましたが、昨日バイトを上がってから会っていないと……」
「…………」
先生は宙に視線を置いて、コートからタブレット端末を取り出した。
ちょっと待ってて、と先生はこちらに背を向けて、ボソボソと聞き取れないほどの声で何かを呟く。
「アロナちゃん、セリカのGPSを探知できる?」
『えっ、出来ますけど……。ただ、キヴォトスの電波通信網は行政制御権の範疇ですので、連邦生徒会のサーバーにハッキングすることになりますが……』
「状況が状況だから仕方がない。どっちにしろ今夜リンには私から連絡するつもりだったからね、その時に言い訳するさ。とにかく急いで」
『はいっ! 少々お待ちください――』
ボソボソという声が聞こえなくなって数秒。
先生はこちらに向き直り、優しい笑みを浮かべた。
「もう大丈夫だよ。今セリカのGPSを探知してるから」
「た、探知ですか? そんなすぐに分かるものなのですか?」
「うん、今連邦生徒会にハッキングしてるからね」
先生の言葉に、全員がギョッとする。
「あ、あのそれって……」
「みんなは気にしなくていいよ。セリカの安全が最優先だし、連邦生徒会には私が独断でやったって必ず伝えるから」
「こ、これが大人のやり方……」
この思い切りは生徒の自分たちには真似できそうにない。
ホシノは先生の危険度をさらに引き上げた。
「……反応が出た。アビドス砂漠で動いている……?」
「……っ、見せてください!」
アヤネがシッテムの箱を覗き込む。
おおよその位置を把握した事で、アヤネが全員のスマホに位置情報を送る。
「装甲車を出します。先生は私と一緒に――」
「なら二手に分かれよう。私とアヤネは別ルートで先回りする。ホシノ達は追いついてセリカを助け出して」
「助け出す?」
「これは多分――誘拐だ。それもヘルメット団と似たような目的の、ね」
装甲車の助手席に乗った先生は、アヤネのスマホからグループ通話で推測を語る。
「――まだ推測の域を出ないけど、ヘルメット団の攻撃といい、今回の件といい、どうやら黒幕はアビドスに打撃を与えるのが目的だと思う」
『打撃を与えるって言うのは?』
「ほぼほぼ言葉通りだよ。君達に攻撃することが目的なんだ」
『どういう事ですか?』
「倉庫を根城にしていたのもそうだけど、黒幕のしていることは外交問題になり得る行為だ。やっている事が強気すぎる。それなのにこんな事を続けるのは、君達に脅威をちらつかせて、何かを成そうとしているのかもしれない……」
問題はその「何か」に、先生は全く見当がついていないということ。
隣で運転しているアヤネをチラリ、と横目で見ると、何かが腑に落ちないように口角が力んでいる。
「……あれは」
そうしている内に、砂漠を堂々と突っ切っている一団が見えてきた。
その中心にいるのは……。
「護送車? それも、治安維持組織が使うタイプの、かなり大型の物です! どこであんな物を……」
信じられないと、アヤネの声が荒げる。
「アヤネ、もっとスピード上げて」
「はい!」
装甲車が急加速し、一団を遠くから追い抜いていく。
走行ルートの先で停止させると、先生は装甲車から降りる。
「先生?」
「ホシノ達に合流して。私はこのまま足止めする」
「何を言ってるんですか! 危険すぎます!!!」
「大丈夫、作戦は考えてある」
先生は懐からあるものを取り出し、それをアヤネに見せつけた。
「それは……!」
「さあ、早く行って!」
「……本当に大丈夫なんですよね?」
「私もみんなの役に立ちたいからね。色々無神経なこと言っちゃったし、少しは取り返させてよ」
「そ、そんな事……」
アヤネは逡巡の後に、直ぐに戻ります、と言って来た道を逆戻りしていった。
「さて……」
先生はその場で空を見上げ、合図を送った。
そして、手にある物を――思い切り上に投げた。
アヤネが離れて暫くし、一団が先生の所まで近づいてくる。
護送車の傍にいたのは――ヘルメット団員。どうやら哨戒しているみたいだ。
哨戒役の団員が先生を視界に捉えると、仲間に指示して止まらせる。
「誰だあんた。何でこんなところに……」
「邪魔だよ。退かないと轢き潰すぞ!」
「いや、待て。こいつ、例のシャーレの先生だぞ!!」
ヘルメット団員の一人がそう答えると、一団に困惑が走る。
「例の、ねぇ。私も有名人になったものだ」
「なおさらどけよ。死ぬぞ?」
「いや、全員構えろ!」
リーダー格と思しき団員が銃口を先生に向ける。
「こいつは確か、最優先警戒対象って言っていたはずだ。見かけたら問答無用で撃てって!」
「へえ……」
迂闊にも機密情報を話したヘルメット団に、先生は薄く笑みを浮かべる。
「い、良いのかな、そんな事したら……」
「躊躇うな、やらないと報酬がパーになるかもなんだぞ!?」
「問答無用か……、だったら――」
先生が口を開いた途端、お互いの間に何かが降ってくる。
「私を見かけた時に、ノータイムで撃つべきだったね」
「それは、スタングレネード――」
降ってきた閃光弾が炸裂し、辺りに強烈な光が放たれる。
「まさかスズミに貰ったのがここで活きるとはね……っ」
瞬時に顔を腕で隠した先生は、怯んで動けなくなっているヘルメット団をよそに、護送車の後ろ側に回る。
ドアを開いて中を見やると、拘束されたセリカが眩しそうに目を細めていた。
「あ、アンタ――」
「話は後、行くよ!」
「きゃっ、ちょ、ちょっと……!」
先生はセリカを横抱きにして、護送車から脱出し、そのままヘルメット団がやって来た方向へと駆ける。
「な、に、逃がすな! 追え!!」
「……っ、もう動けるのか……!」
上手く不意打ちが決まった筈だが、目眩から復帰するのが想定より早い。
こんなところでも身体スペックの差があるのかと、先生は内心愕然とした。
「ちょ、ちょっと大丈夫なの? アンタって撃たれたら……」
「…………ッ、大丈夫。セリカは絶対に守るさ」
「何言ってるのよ! 自分の心配しなさいよ!!」
バンッ! と発砲音が何度も炸裂する。
ヒュンヒュンと弾が周りに逸れて跳んで行くが、それもいつまで続くか分からない。
先生はもっとスピードを上げようとして、突如足を踏み外した。
「うあっ!?」
「きゃあっ! ちょっと!!」
何とかセリカを下敷きにしないように腕を前に出して、胸で滑るように倒れる。
どうやら砂漠の傾斜に気づかずバランスを崩してしまった様だ。
そして、そんな隙を見逃すはずも無く――
「ようやく追い詰めたぞ……!」
「足早すぎでしょ! アイツ本当にキヴォトスの外から来たの!?」
(足早すぎ、はこっちの台詞だよ……!)
先生は全速力で走っていたのに、彼女達は銃火器なんていう重そうな物を持ってほぼ同じスピードで走ってきた。
しかも先生と違って余力を残している。
「……っ」
「な、何してるのよアンタ!」
先生は立ち上がり、セリカを庇うようにヘルメット団に立ち塞がる。
「今すぐ逃げて! ホシノ先輩達も近くまで来てるんでしょ!?」
「…………」
「ちょっと、聞いてるの!?」
先生はその場から動かない。
「潔いやつだな」
「やっちまえ!!」
再びヘルメット団は構えて、こちらに銃口を向ける。
先生はそれを見て覚悟を決め――
(気は進まないが――)
――空を見上げ、合図を送ろうとして、黒く大きな質量が先生とセリカの頭上を飛んでいった。
「「えっ」」
「ちょ――!?」
黒い質量、というか装甲車はヘルメット団達を巻き込むように突進する。
当然、いきなりの事かつ先生に意識が向いていたため、ヘルメット団は反応が遅れ、呆気なく吹き飛ばされる。
「あのドライビングテクニック、絶対アヤネちゃんだ……」
「え、ええ……??」
聞き捨てならない言葉をセリカが呟き、先生はドン引きした。
(いくら何でも容赦無さすぎだろ……! 生きてるよな?)
「セリカちゃん、先生!!」
ヘルメット団の安否を心配していると、装甲車からアヤネ達が降りてくる。
「や、やあアヤネ。早かったね……」
「ん、酔うかと思った……」
「うへぇ、おじさんにはきっつい車旅だったよ〜……」
「鬼気迫るハンドルテクニックでした……」
他三人はグロッキーな表情をしてる中、アヤネはセリカに駆け寄り、その拘束を引き千切っていた。
「セリカちゃん大丈夫? 何かされてない?」
「わ、私は大丈夫。……せ、先生を見てあげて。逃げる時こっちに向けて発砲されたから……」
「……っ、やっぱり危険だったじゃないですか!」
「あ、あはは……。もっと早く走れると思ったんだけどなぁ……」
本当は別の手段もあったのだが……。
(あいつらの力は自衛で借りるには強すぎる……)
生徒達にそれを向けるのはあまり気は進まないというのもあったが、最悪過剰防衛にもなりかねないと思い、中々踏ん切りがつかなかったのもあった。
そんな事を考えながら、ペタペタと服の上から触られているのをじっと我慢している先生。
「……幸い怪我は無さそうですね」
「……私よりもヘルメット団達がずっと重傷な気がするけど……」
「それは自業自得。セリカを誘拐したんだから」
「セリカちゃん怖かったよね〜。おじさんの胸で泣いても良いんだよ?」
「誰が泣くか!」
(泣き跡が残ってるのは言わない方が良さそうだな……)
もう余計な事は口にしない。
セリカの目元には泣き跡と赤みが残っている。
ホシノもそれに気づいたからこそからかっているのだろう。
「も、もう私の事は良いだろう? 今はヘルメット団を――」
「危ない!!」
「ぐえっ」
コートを後ろから引っ張られ、誰かに覆いかぶされる。
それと同時に乾いた破裂音が強く響いた。
「先生、大丈夫!?」
「セリカ……?」
セリカの後ろには、傾斜の上でボロボロになりながらも銃をこちらに構えるヘルメット団。
彼女が撃ったのか、銃口からは僅かに煙が立っている。
彼女はさっき、先生に撃てと指示を出していたリーダー格だ。
どうやら先生は狙われて、セリカがそれを庇ってくれたみたいだ。
「よ、よくもふざけた真似をしてくれたな……! お前だけでも始末しないと、報酬が貰えなくなるだろ……っ!!」
「……ッ!!!」
ギリリ、と歯軋りの音が鈍く響く。
「ふざけた真似、はこっちのセリフよ……!」
セリカは立ち上がり、アサルトライフルを構える。
「人を誘拐して、先生に問答無用で発砲して、好き放題やるのも大概にしなさいよ!!!」
「うるさい! 引っ込んでろッ!!」
再び発砲される。
しかし、
「ふんッッッ!!」
「――はあ!?」
セリカはそれを避けようともせず、虫を振り払うように腕を振って、銃弾を払い落とす。
先生はそれを見て人間業ではない、と若干ドン引きしたが、周りの生徒達を見ると、セリカがかなりとんでもないことをしたのは、キヴォトスの人間でも共通認識らしく、驚愕の表情を浮かべていた。
「…………ッ!」
「ひっ、く、来るな!」
「私、今本気で怒ってるのよ……」
力強く駆け出す。
その瞬間に、セリカの真後ろで砂が大きく舞い上がった。
「う、あああああッ!」
狙いの定まらない銃撃が砂漠に吸収され、砂が噴き上がる。
セリカはサイドステップを組み合わせながら、攻撃を回避しつつ相手に接近していく。
「く、来るなーーー!」
今更ヘルメット団員は逃げ出すが、慌てているのか、それとも元々歩きづらそうにしていたのかセリカと比べると全くスピードが出ていない。
「砂漠での走り方も分からないやつが――」
セリカはあっさりと追いつき、その懐に強く蹴りを入れる。
そして、無防備になったところを――
「私たちのアビドスで、デカい顔してんじゃないわよッ!!!!!」
セリカの渾身の一発が、ヘルメットを粉砕した。
「ひゅ〜〜っ、セリカちゃんやる〜♪」
その後、意識を取り戻した他のヘルメット団が撤退を判断して、脱兎のごとくアビドス砂漠を去っていった。
出来れば捕まえたかったが、今は全員が無事に校舎に戻ることを最優先にしよう、と先生は切り替えるのだった。
「先生、ケガしてない?」
「大丈夫。セリカが守ってくれたからね」
戻ってきたセリカはいち早く先生へと駆け寄る。
問題ない、と先生が答えるとセリカはほぅ、と息を吐いた。
「ありがとう、セリカ」
「べ、別に……。先生だって、私のこと助けてくれたし……」
顔を真っ赤にして先生から顔をそらす。
「だから、その……。あ、ありがとう……」
「ふふ。それこそ、礼には及ばないよ。むしろ私はセリカに謝らないと」
「え?」
「何度も無神経なこと言って、本当にごめん」
先生は頭を下げる。
それを見てセリカは慌てて声を掛ける。
「ちょ、ちょっと止めてよ! 何で先生が謝るのよ!?」
「だって、みんな苦しんでいるのに、いきなり外から来た私が知った風にあれこれ言うなんて、そりゃ気分悪いだろう。そんな事にすら頭が回らないなんて、先生として情けないったらないよ」
「そ、それは、確かにちょっとイラッとはしたけどさ……?」
セリカは一昨日と昨日の、先生の発言を思い出す。
連邦生徒会から聞いただの、借金がどうこうだの、アビドスに金が無いだの、と歯に衣着せない物言いが見受けられたが……。
「でも、アビドスの問題のことを真剣に考えてくれたからこそじゃないの、ああいう言葉が出てきたのはさ?」
「それは……、うん、勿論だよ」
「なら、良いわよ。私だって、冷たい態度ばかりとって……ごめんなさい」
セリカも頭を下げる。
こうして、先生とセリカの蟠りは解けるのだった。
「――いやぁ、良かった良かった。雨降って地固まる、とはよく言ったものだねぇ」
見計らったように、ホシノの気の抜けるような言葉が投げかけられる。
「ん、これで本当に先生もアビドスの仲間入り」
「対策委員会も改めて活動再開ですねっ♧」
「ふふ、ありがとうみんな。一先ず校舎に戻ろうか」
「そうですね、では――」
ガシリ、と先生の肩が横から掴まれる。
「先生は帰りも助手席ですよ?」
「えっ、あ、アヤネ?」
先生は、とても素敵な笑みを浮かべているアヤネを見て、笑みが引きつった。
(っていうか、全然動けない!?)
物凄い力が込められているのか、先生は身動き一つ取れない。
「あ、あの……」
「何ですか。作戦は考えてある、とか言っておきながら結局危険な目に遭っていた先生?」
「………………………」
「人の気も知らずに、セリカちゃんをお姫様抱っこして逃げていた気分は如何でしたか?」
(見えてたのかよ……)
その言葉には怒気が込められていた。
「うへ〜、アヤネちゃん滅茶苦茶にカンカン、だねぇ」
「ん、ああなったアヤネはもう誰にも止められない」
「先生ったら、もうそこまでアヤネちゃんの好感度稼いでいたんですね」
「あ〜あ、アヤネちゃん怒ると長引くのよね……、っていうか見られてた!?」
背中から聞こえる声が少しずつ遠ざかる。
どうやらホシノ達は一足早く走って帰るらしい。
助けてはくれない様だ。
「さあ、私達も帰りましょう。グズグズしてたら日が暮れちゃいますから、安全運転には期待しないでくださいね?」
「……はい」
「言いたいことがたくさんありますので、話は校舎に戻ってからです……。良いですよね?」
「…………はい」
その後、車内は沈黙に押しつぶされ、ジェットコースターもかくやの乗り心地を味わうことになった先生。
そして戻った後で先生は空き教室で正座させられて、アヤネから雷を落とされるのだった。
解放された時には、空は既に黄昏時だった。
「ぁ〜〜、脚が痺れる……」
『大丈夫ですか、先生?』
「ちょっと、椅子借りようかな……」
使われていない空き教室の椅子を取り、そこに腰を下ろす。
先生は懐からシッテムの箱を取り出し、液晶に映っているアロナに声を掛ける。
「アロナちゃん、リンに電話を掛けてくれる?」
『昼間の件ですね。少々お待ちください……』
画面が切り替わり、呼び出し中の文字が出る。
何コールかの後、相手の顔が映し出された。
「こんばんは、リン。遅い時間にごめんね」
『いえ、こちらから連絡するつもりでしたので、手間が省けました』
糸を張った様な堅い雰囲気の少女――七神リン。
メガネの位置を指で上げながら、鋭い目つきを先生へ向ける。
『単刀直入にお伺いしますが、アビドスは現在どのような状況でしょうか?』
「ううん、どこから話せばいいやら……」
言葉を選びながらも、先生は初日からの出来事を話していく。
アビドスの現状。
およそ天文学的な数字の借金。
アビドスを狙う黒幕。
誘拐騒動。
以上の事を聞き終えたリンは、頭を抱えながらも努めて冷静に口を開く。
『日中のハッキングの形跡は先生の仕業でしたか……』
「ごめんね、事後報告になって……」
『本来であればかなりの問題行為です。しかし、それ以上にアビドスの問題も調査してくださっていますので、必要経費と割り切っておきます』
「あ、あはは……」
乾いた笑い声しか絞り出せなかった先生は、軽く咳払いをして一番気になっていることを尋ねる。
「今のうちに聞いておきたいんだけど、アビドスって……このままだとどうなる?」
『SRT特殊学園とほぼ同じです。学園を管理、運営する方や組織が無いのであれば、いずれ廃校になる……そう話が纏ってしまうかと』
「………………」
『……ただ、SRTと明確に違う点は、管理する組織が学園内部に出来得るかどうかです。お話を聞いた限りでは、その【アビドス廃校対策委員会】が現在のアビドスを運営しているとか』
「でもちゃんとした手続きが行われていない、非公認の組織だ。生徒会じゃない」
キヴォトスの学園は、生徒会によって校舎や学区を自治して運営する事が認められる事で、初めて学園と呼べる。
だが、アビドスには現在生徒会と認められている組織が無くなっている。
『そうですね、このままでは連邦生徒会での審議で、廃校を通達する事となるでしょう』
「挽回できる方法は?」
『アビドス生徒会の後任組織を公式で設立する事もそうですが、今のアビドスの事を考えると、今後も自治区を運営出来るという、明確な“実績”が必要になるかと』
「具体的には?」
『あくまで一例ですが、現在のアビドスには治安維持に欠陥があるように思います。ですので、少ない生徒数でも治安維持は可能であるという目に見える実証等があれば、直ちに廃校とはならなくなるでしょう』
そこまでしても、廃校の危機は完全にはなくならない。
あくまでこれは一例なので、治安維持を是正しても他にも問題は山ほどある。
『つきましては、後任の生徒会を設立するところから手を付けてみてはいかがでしょうか? よろしければテンプレートをお送りしますが』
「お願い。早めに書かせるよ」
『可能であれば実績の証拠と一緒に提出されるのがよろしいかと。設立の手続きだけでは難しくなるかと思いますので』
その後、書類の書き方等の確認を終えて、通話が終了する。
画面が暗転したのを見て、ふう、と先生は大きく息を吐いた。
「今までで一番の大仕事になりそうだな……」
ふと、そう呟いた。
その後、
――コッ、コッ、コッ……。
……と、小さく床を叩く音が廊下から聞こえた気がした。
「…………」
会話を聞かれていたことを確信した先生は、腰に手を伸ばしながら、ガラガラ、と空き教室のドアを開ける。
そこには誰もいない。
だが……。
「…………っ」
先生はふと見下ろして、
そして思わず呟いた。
「一先ず、私は仲間と認められたって解釈で良いのかな――」
――ホシノ以外には。
最後の言葉は声に出さないように飲み込んだ。
先生の視線の先には、僅かな砂でうっすらと出来上がっていた、小さな足跡が暗闇へと伸びていた。
大体3行で分かる! 登場人物紹介
シャーレの先生
・マサラ人
・眼鏡を外したらかなり目つきが怖くなるかも
・利用できるものは有効活用していくタイプ
小鳥遊ホシノ
・連邦生徒会を信用していない
・当然直轄組織のシャーレも信用していない
・チョロいセリカに複雑な心境
黒見セリカ
・警戒心の強い犬猫が命がけで守ってくれた人間に懐く時のあれ(比喩)
・原作通りにバイト帰りに襲われた
・お姫様呼びはされてないけどお姫様抱っこはされた少女
砂狼シロコ
・運動しているだけあって三半規管は強い
・危険を顧みず後輩を助け出してくれた先生を信頼する
・登校中、砂漠で何か聞こえた……?
十六夜ノノミ
・シビアな考えをしつつも、アビドスのために真剣に考えてくれる先生を受け入れたいと考えている
・ガトリングなんてデカいもの持ってホシノやシロコに追走出来る少女
・ホシノの先生に対する態度が気がかり
奥空アヤネ
・自分とは全く違う観点から意見をくれる先生が、やっぱり自分達には必要な存在だと確信している
・恋愛感情はないよ、今のところはね
・誰よりも早く先生を無意識に仲間認定してるので、危険な目に遭ったら気が気でない
七神リン
・【連邦生徒会】首席行政官兼、連邦生徒会長代行
・イラッと来ると煽ってくる
・アビドス編は今回限り登場
アロナ
・シッテムの箱の演算能力で、相手からの射線をずらす
・傍から見えないバリアで守ってくれるようなもの
・燃費が悪く、ここぞという時以外は先生が止めている
Who is that Pokemon?
・地上からじゃ簡単には見えないくらい高いところを飛んでるよ
・砂漠の環境が好きで、外に出てからはアビドス砂漠ではしゃいでるよ
・素早さ種族値は100以上あるよ
次回はあのキャラ達が登場予定です。
地味に先生に対するリアクションに困ってるんですよね……。
一応、先生を第一印象で無条件に警戒する生徒のラインは決めてあるのですが、彼女達は多分そのラインを越えてないと解釈しているんですよね。
そのラインとは、一体何だと思いますか?
答えは例のマックロクロスケが出てきた時にでも。