シャーレの先生がポケモントレーナーである場合にありがちなこと   作:子々(ネネ)

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特にオチもヤマも無いお話です。




ポケモンと触れ合う生徒達にありがちなこと(小鳥遊ホシノ編)

連邦捜査部シャーレは生徒の悩みを解決することを信条とする、連邦生徒会の直属の組織である。

お堅い雰囲気と思われがちだが、居住区や休憩スペース、カフェテリア、コンビニなど、やって来た生徒達の憩いの場として開放されている施設もある。

 

それらの管理も先生に一任されており、先生が生徒のための存在として見られる理由付けの一つともなっている。

 

……先生がアビドスから戻ってきてはや数日。

そんな居住区を利用したいと事前の連絡があり、先生はその準備をしているのだが……、

 

「――クロバット、そっち行ったぞ!」

「クロバッ」

 

音のない羽ばたきで休憩スペースを不規則に飛び回るクロバット。

超音波を撒き散らしながら、辺りを見渡して合図を送る。

 

「クロー!」

「よし、イエッサン!」

「エーッサン!!」

 

ぷりぷりと怒っているイエッサンはサイコパワーを高めて、休憩スペース全体へと放出する。

 

すると、部屋の中が不思議な光を発する壁で覆われて、

 

「……ンネ〜!?」

 

……と、悲鳴が上がる。

パタパタ、と藻掻く音が小さく響き、それを聞いたイエッサンが腕を伸ばして、

 

「フィ〜、サンッ!」

 

瞳が一瞬青白く光り、家具の隙間からフワフワと小さなオレンジの生き物が浮き上がってきた。

先生はそれに近寄り、首根っこをつまみ上げる。

 

「……ったく、ようやく捕まえたぞデデンネ」

「サンッ、サンッ! イエ〜ッサン!!!」

 

イエッサンは頬を膨らませ、齧られた跡のあるきのみをデデンネに突きつけて興奮したように鳴く。

 

「デネ、デーンネ〜……」

「お前な、今日乾電池も与えただろ? まだ食べ足りなかったのか?」

「ンネェ〜……」

 

デデンネは困ったようにお腹に手を置いて、フルフルと首を振った。

 

(参ったな……)

 

頭をガシガシと掻いて、先生はため息をつく。

 

キヴォトスに来る前よりデデンネの胃が大きくなっている。

そしてそれは、何もデデンネに限った話ではなく、連れてきたポケモン達が以前より若干食事量が増えている事は先生も察していた。

ただデデンネがあまりにも食いしん坊だったが為に、今回の事態が起きてしまったのだ。

 

(ミレニアムに行く用事が増えたな……)

 

ミレニアム自治区に行く目的を思い出しながら、なぜポケモン達の胃が大きくなったのかを推測する。

キヴォトスにはポケモンフーズが無いので、現時点では育てたきのみを食べさせているのだが……。

 

(きのみに原因があるのか?)

 

一度調べてもらったほうがいいかもしれない。

ゲヘナで農園を管理している生徒を思い出して、ひとまず新たに軽食を作ろうと、休憩スペースを出ていこうとする。

 

すると、

 

「………………、うへ」

「あっ」

 

今のドタバタを見られていたのだろう。

微妙な面持ちのホシノを筆頭とする【アビドス対策委員会】の面々が、出入り口に立っていた。

 

 

 

 

 

「騒がしくて申し訳ない……」

「いや、別に頭を下げるほどじゃないと思うけど……」

 

気まずい表情で頭を下げる先生を、やんわりとセリカが宥める。

 

「何かあったんですか?」

「前々からつまみ食いの証拠があったんだけど、その犯人がようやく尻尾を出してね……」

 

先生はチラリ、とデデンネを一瞥する。

 

「デデンネちゃんって言うんですね〜。ちっちゃくてとっても可愛いです〜☆」

「ん、何処かのテーマパークでも通用しそうな見た目」

「ンネェ〜」

 

ノノミの掌に乗って、指の腹で撫でられているデデンネ。

大人しくされるがままの彼女を、ノノミは嬉しそうにして眺めている。

そんなデデンネの姿を興味深そうに、四方八方と視点を変えてシロコは観察している。

 

「大人しそうですけど……」

「体格に反してよく食べるんだ。今日はいつもより少し多めに用意してたんだけどな……」

「ポケモンって何食べるの?」

「人間が食べるものは大抵ポケモンも食べられるよ。ポケモンによって食事量は変わるけれどね」

 

ただ、カロリーや栄養を考えると何でも食べさせて良い、というわけでもない。

ポケモンによっては好きに何でも食べさせてしまうと、すぐ肥満体型になったり、生活のトラブルが起こり得る。

 

デデンネの主食は電気だ。

野生のデデンネは電気を求めて民家の電気を盗み食いするほどなのである。

なので、定期的に電気を摂取できる乾電池を与えているのである。

 

「ポケモンって育てるの難しそう……」

「まあ、ポケモンを育てる『ポケモンブリーダー』って職業もあるくらいだし、簡単ではないかな。私の友人にも一流のポケモンブリーダーを目指していた人がいるし」

「なるほど、そういう需要もある、と」

 

ふむふむ、とアヤネとセリカが頷く。

すると、パタンと自習室のドアを開けてイエッサンが姿を現した。

 

「エッサン」

「ぅわっ……」

 

ちょうどイエッサンの目の前で席に座っていたホシノは、イエッサンに驚いてビクリと肩が跳ねた。

続いてホシノは、イエッサンの顔の横あたりで宙に浮いているお盆を見て更に肩が跳ねる。

 

「ええ……??」

「ああ、イエッサン。悪いな、お茶の用意してもらって」

「イエッサンッ」

 

イエッサンはホシノ達を見渡して、その場でお辞儀をする。

腰を低くして、両腕を下に向けて恭しく頭を下げる。

 

「まあ、カーテシーだなんて。使用人さんみたいなお辞儀をされるんですね」

「先生が教えたんですか?」

「いいや? 私が初めて会った頃からこういう事が出来る奴だよ」

「ええ??」

「ん、妙な生態。それとも誰かに飼われてた?」

「イエッサンは元々そういうポケモンさ。野生のイエッサンは人間を見ても、まずは人間みたいな挨拶のジェスチャーをするし」

 

へえ、と感心するノノミ達。

 

「……いやいやいや」

 

そこでようやく、ホシノは口を挟んだ。

 

「みんな他にツッコむ所あるよね?」

「えっ」

「何でお盆が浮いてるのさ……? 何で誰も気にならないの?」

 

私がおかしいの?

思わずホシノは素で呟いた。

 

「……そういや、ホシノ先輩ってポケモンを見るの、今日が初めてだっけ」

「アビドスで先生が事後処理をお手伝いしてくださったときも、先生はポケモン出してなかったしね」

「……まあ、驚くのも無理はない。でもフライゴンと比べればまだ常識的な大きさだと思うけど」

「そうですねぇ。デデンネちゃんもあの子も可愛いですし♧ まあ可愛さで言えばフライゴンちゃんも可愛いですけど」

「ごめんノノミ先輩。あの大きさ見て可愛いって感想は、私には出てこないわ……」

「というかフライゴンちゃんって……、フライゴンさんはちゃん付けで呼ぶような雰囲気の生き物ではないと思いますが……」

 

「………………………」

 

ホシノは置いてけぼりにされ、後輩達は姦しく喋り出す。

 

「エッサン」

「…………ああ、どうも」

 

イエッサンのサイコパワーによって、ホシノの目の前にコップが置かれる。

店員が配膳するように、イエッサンはコップを配る動作をしながら、お盆から浮かせて皆の前にコップを置いていく。

 

「わぁ、すごいです〜♧」

「デーネッ!」

 

その一連の動作を見て特に気に入ったのか、ノノミはデデンネを机の上に置いて拍手をする。

デデンネもそれに釣られてパチパチと手を叩く。

 

「イエッサン……」

 

お盆を手に持って、脇に抱えてお辞儀をする。

そのまま自習室を出ていこうとして、先生に呼び止められた。

 

「ああ、待ったイエッサン。折角だから皆にお前を紹介させてくれ」

「エッサン」

 

イエッサンは踵を返し、トテトテと足音を立てて先生の隣に立つ。

 

「ホシノはポケモン自体初めましてになるけれど、他の皆はお察しの通り、こいつもポケモンさ。イエッサンって言うんだ」

 

先生の紹介を受けて、再びイエッサンはカーテシーを取る。

 

「イエッサンちゃんって言うんですね」

「うへ、皆からは聞いてたけど、これがポケモンかぁ」

 

ホシノは興味深そうにイエッサンを観察する。

 

「……なんていうか、そっちのデデンネって子と比べて、何か人間っぽい感じがするね」

「まあ、向こうじゃポケモンセンター……病院とか喫茶店で働いてるのを見たことがあるし、人間っぽいっていう感想もあながち的外れとは言えないね」

「確かに、何か女の子っぽい感じよね」

「そりゃ、私のイエッサンはメスだからね。ちなみにデデンネとフライゴンもメスだよ」

「えっ」

「フライゴンもメスなの?」

「身体が大きいですし、てっきりオスだと……」

「ええ?? でも、先生に甘えるあの姿は女の子っぽい感じがしましたよ?」

「甘えるって……」

 

ノノミとセリカの言葉に反応したのか、先生の背後からポンッ、と弾ける音がして、大きな影が現れる。

 

「フゥ〜!!」

「うぉわっ!? 勝手に出てくるなっ。袖を噛むな!」

「…………!??!?」

 

フライゴンはボールから出てきて、ホシノ達に顔を見せたあと、カプリと先生のコートの袖に噛み付く。

そのまま戯れるように首を振り、リードを引っ張られるように先生の腕がブンブンと揺れる。

 

「ちょ、な、だ、大丈夫なの先生!?」

 

いきなり先生より背の高い生物が先生の隣に現れて、先生の腕に噛み付く姿を見て、ホシノはギョッとする。

 

「大丈夫大丈夫、服を噛まれてるだけだから……っ。昔は普通に腕とか脚に噛み付いてきたし、あの頃と比べれば大分矯正した方だよ」

「うふふっ、フライゴンちゃんは先生が大好きなんですねぇ♧」

「フラァゴ」

「だからって愛情表現パワフル過ぎでしょ……」

「私だったらそのまま体まで振り回されてるかも……」

 

ノノミを除いて、先生とフライゴンが戯れる姿を生暖かい目で見る一同。

何とかフライゴンを振りほどいた先生は、噛みつかれた場所を見て内心で嘆く。

 

(穴が空いてる……。ルージュラもまだ来てないのに……)

 

衣類の損傷も“リサイクル”で直せるポケモンを思い浮かべ、早く残りのポケモンも来て欲しいと先生は強く思うのだった。

 

 

 

 

 

その後。

ホシノ達は先生のポケモン達と触れ合いながら、アビドスの廃校対策会議を始めた。

今日のアビドスはとりわけ酷暑であり、暑さに慣れているホシノ達でも校舎にいられない程だったようだ。

そのため避暑を求めてシャーレの居住区を利用させてもらえないか、アヤネから申請が来たので、冒頭の話へと戻るのである。

 

……そして、日が暮れた頃。

アビドス自治区へと戻っていくホシノ達を見送り、先生は居住区の休憩室で夕食にありつけていた。

 

「……途端に静かになったな」

「グルオゥ」

 

先生と一緒に絨毯に腰を下ろす、尻尾に炎を灯すドラゴンのようなポケモン――リザードン。

彼と一緒にサンドイッチを頬張りながら、誰もいなくなった居住区の沈黙に、先生はそう呟いた。

 

……正確には、コンビニ(エンジェル24)で働いている娘がいるのだが、シャーレに用事のない人は基本的に利用しないので、あの場所も静かなのは間違いない。

 

それはさておき、先生は元気そうにしている対策委員会の皆を見て、一安心だと息を吐いた。

 

「まだ予断を許さない状況ではあるが、【カイザーPMC】に直接睨まれている状況よりはずっとマシか……」

 

借金額は半減したとはいえ、まだ数億の負債を抱えている事には変わりない。

そして、ああも吊るし上げた以上、必ず報復に出るだろう。

今は火消しでそんな暇はないだけで、いずれはその矛先は先生にも向く。

 

「プレジデントか……」

 

逮捕されたカイザーPMCの理事を巡って、【公安局】に【カイザーコーポレーション】社長のプレジデントと名乗る男が接触してきた日を思い出す。

その場にいた先生は、あれやこれやと長話をするプレジデントを見て、ある種の確信に至ったのである。

 

「本当に、みっともない大人だ……」

 

彼の長話を要約するとこうだ。

 

①カイザーコーポレーションはカイザーPMC理事の犯行に一切関与していない。

②カイザーコーポレーションは、カイザーPMCの犯行について責任を取る気はない。

③カイザーPMCの犯行をどうにかして無かったことにしたい。

④ヴァルキューレによって公的に処分するのでなく、カイザーグループの内々で処分したい。

⑤カイザーPMCに責任を取らせるつもりだが、解体だけは絶対にさせない。

 

……勿論、直接的に言及したわけではない。

ただ、カンナに対してあれこれと長話をするプレジデントの態度には、以上の思惑が透けて見えた。

 

だから、先生はこんな子供の我儘じみた事を言う大人に、こう言い放ったのだ。

 

――カイザーPMCに責任を取らせたいのなら、アビドスに慰謝料を支払わせろ。あそこは“自治区”に明確な被害が出ている。自治区の復興には相当な金がかかるぞ、下手すればカイザーPMCが傾くくらいのな。

 

――それが嫌なら親会社が直々に慰謝料を支払うんだな。元より、アレをカイザーPMCの理事に置く判断をしたのは親会社だろう? カイザーコーポレーションにも責任の一端はあるぞ。

 

……先生は選択肢を2つちらつかせた。

一つはカイザーPMCが最悪倒産するのも覚悟で、自腹を切らせること。

もう一つは、カイザーコーポレーションが責任を取ってアビドス自治区復興の補填をすること。

責任を取らないなんて選択を、先生は許さなかった。

だからこそ、先生はカイザーPMCの暴挙を生配信という形で晒したのだ。

 

プレジデントは沈黙した。

故に折衷案として、アビドスの借金について先生は言及した。

その結果が、アビドスが抱える負債の半減である。

 

「5億弱で無かったことに出来るわけないだろうが……」

 

負債の半分を免除することによって、カイザーコーポレーションは示談が成立したと思っているのだろう。

だが、復興資金が入ったわけでもない。

滅茶苦茶にされた自治区はそのままだ。

攻撃された自治区の住民は、怪我したままだ。

これらの被害が「5億弱程度」で済むと本気で判断したプレジデントに、先生は苛立ちを覚えた。

 

だが、先生がそれ以上突っつくことをしなかったのは、ひとえにカイザーグループの影響力が計り知れないからである。

長い戦いになる予感を覚えながらも、先生はそれくらいで引き下がることにしたのだった。

 

「……仕事に戻るか」

「ルォ」

 

頭を振って、先生はリザードンを連れてシャーレオフィスに戻る。

 

オフィスに戻ると、ソファーに座っている小さな影があり、そこに目を向けると、

 

「ホシノ?」

「やあ、先生。夜遅くにごめんね」

 

後輩達と一緒に帰ったはずのホシノが、ふにゃりとした笑顔を先生に向ける。

 

「忘れ物かい?」

「……まあ、強いて言えば忘れ物かな……」

 

ホシノはそう言って、先生の隣にいるリザードンに目を向けた。

 

「昼間の子達とは違うポケモン……」

「リザードンっていうポケモンさ。幼い頃からの長い付き合いでね」

「へえ、“相棒”ってやつ?」

「そうだね。どんな時でもずっと一緒だった。今もね」

「グルォ」

 

先生とリザードンは顔を合わせて、同じタイミングで頷く。

ホシノはふふ、と微笑み、ソファーから腰を上げてリザードンを見上げる。

 

「フライゴン程じゃないにしろ、リザードンもおっきなポケモンだね〜」

「今でこそこの大きさだけど、昔は私の膝丈くらいの大きさだったんだよ。翼も生えてなかったし」

「ええ?? どういう事?」

「“しんか”と言って、ある一定の条件を満たしたポケモンは姿が大きく変化するんだ。今のリザードンはそれを経た最終的な姿なんだよ」

「それ、進化じゃなくて“変態”って言うんじゃ……」

 

ことごとく常識が通用しないポケモンに、ホシノは苦笑いを浮かべる。

 

「でも、そんな常識が通用しないポケモンに、アビドスは助けてもらったんだよね」

「ルゥオ?」

「ありがとね、……本当に」

 

ホシノは見上げて、リザードンに礼を言う。

どんな反応をすれば良いのだろうか。

リザードンは顔だけを先生に向けて、視線で伺う。

 

受け取ってやればいい。

それを受けた先生は、目を閉じてうんうん、と何度か首を縦に振った。

 

「フウ……」

「うへっ」

 

ポンポン、とリザードンはホシノの頭に手を置く。

リザードンの眼差しは、とても穏やかなものだった。

 

「その目、先生とそっくりだね」

「そう?」

「うん、すっごい目つきが悪いのに、じんわり熱を感じるような、蝋燭に灯った火みたいな、優しい感じ」

「……えっと??」

 

目つきが悪い自覚はある。

リザードンと目つきがそっくり、と言われたこともある。

だが、その後の例えは先生とリザードンにはよく分からず、顔を見合わせて首を傾げた。

 

その動きが見事にシンクロした事で、ホシノはプッと吹き出した。

 

「…………、ああ、そっか。そういうことか」

 

そして、ホシノはある合点がいった。

 

「えっ?」

「ううん、こっちの話。ただ……先生が羨ましいな、って思っただけ」

「羨ましい?」

「ほら、おじさんの後輩たちって2年と1年で二人ずついるからさ。偶に話に混ざれなくてね〜。先生とリザードンみたいな、対等な関係の……、同級生が羨ましいな、ってさ」

「ああ……」

 

ホシノが何かをぼかしてそう言った事を、先生は察した。

それをあえて穿り返そうとはせずに、先生は思った事を口にした。

 

「……さっきも言ったけど、私とリザードンはどんな時も一緒だった。雨の日も、野生ポケモンに襲われた時も、事件に巻き込まれた時も、つらい時も、いつも隣にいてくれた」

「…………」

「でも、別に運命的な出会いをしたわけじゃない。ポケモントレーナーになった日に、初心者用のポケモンとして譲り受けた。言葉にすればそれだけさ」

 

だから、と先生は続ける。

 

「大事なのは、その出会いを経てどう時を分かち合うか、じゃないかな?」

「時を分かち合う……?」

「一期一会なんて言葉があるけれど、出会いよりもどう過ごすかじゃないかな、って私は思うんだ。だからきっと、ホシノにも現れるよ」

「……!」

「もしかしたら、もう出会ってるのかもね――」

 

 

 

 

 

――ホシノにとって、将来“相棒”と呼べる存在が、さ。

 

 

 


 

 

 

「もう出会ってるのかも、かぁ」

 

夜も耽る頃。

アビドスへの帰路を歩くホシノは、その言葉が深く心に落ち込んでいた。

 

「…………先輩」

 

ふと、そんな言葉が泳いだ。

 

あの人は、よくホシノに構ってくれていた。

憎まれ口を叩いたことは何度もあるけれど、距離を縮められること自体を鬱陶しく思ったことは無かった。

けれど、

 

「あの人は、隣に立つって感じじゃないよね……」

 

折りたたんで肩から提げている盾に触れる。

元々これは、その先輩が使っていたものだった。

それ故に、彼女は真っ先に前に立っていた。

隣ではない。

 

「先生とリザードンとは違う」

 

ポケモンバトル、という概念が先生の世界にはあるらしい。

ポケモン同士を戦わせて、最もバトルに優れたトレーナーを目指す――チャンピオンロードという物を先生も目指していたとか。

 

ポケモン同士を戦わせている、ということはつまり、リザードンは先生より前に立って戦うということ。

しかしどうしてか、ホシノには先生とリザードンが隣り合って一緒に戦うイメージに納得してしまった。

 

「羨ましいな……」

 

自身が突出している自覚はある。

だからこそ先生や、この間出会ったヒナのような実力者であれば隣を任せても良いと思えた。

……しかし、少なくとも先生はその隣には既に相棒がいるし、ヒナに至っては他校の生徒。

 

「気になるようなこと言ってくれちゃったよ、本当に……」

 

 

 

 

 

……果たして、ホシノの隣に立つ存在とは。

少なくとも、今は誰にも分からない。




大体3行で分かる! 登場人物紹介

シャーレの先生
・サンクトゥムタワー内の居住フロア(居住区とは別)で寝泊まりしている
・ポケモンを知ってる生徒が来るのを分かっている時は、ポケモンがボールの外に出てきているのを咎めない
・後日、【エンジニア部】にポロックメーカーの製作を依頼しようと考えている

小鳥遊ホシノ
・ポケモンの事は事前に後輩達から聞いていたが、最初に見たのがデデンネなので思っていたのと違った……かと思ったら、フライゴンのデカさに腰を抜かすところだった
・リザードンを見て、先生から感じる異質さに納得した
・先生にはリザードンがいるので、今後先生を相棒と呼ぶことはない

十六夜ノノミ
・デデンネをお持ち帰りしようとしてホシノに咎められた
・イエッサンを見て実家の使用人を思い出したが、イエッサンの方が可愛いからこっちが良いと思った
・モモフレンズのファンっぽいし、フライゴンを可愛いと言うと解釈してます by作者

リザードン(♂)
・アビドスでは何もしてないが、それを主張するなんて野暮なことをしない程度には空気が読める
・先生と仕草がよくシンクロする
・ホシノを見て、当時の先生より背が高いな、なんて呑気なことを考えていた



お久しぶりです。
第二部から新キャラが続々登場したことで、キャラの把握が追いつきません。
ただそれとは関係なく、原作メインストーリーの都合上オデュッセイアの生徒が先取りで登場することは現時点ではありません。
いないからね、陸上に。

それとまたアンケートを設けております。
レトロチック・ロマン編のとあるシーンで、その描写をどうするべきか悩んでいるので、よろしければご協力お願いいたします。

オリキャラの名前、いる?(名前は既に決めてあります)

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