シャーレの先生がポケモントレーナーである場合にありがちなこと   作:子々(ネネ)

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めちゃくちゃ閲覧数伸びてて怖いんですけど。
まだ6話しか投稿してないんですけど。
評価数も想定より多いんですけど。

閲覧数に対して面白いお話書けているかめちゃくちゃ不安なんですけど。(内海アオバ並みの感想)


定位置に収まる奥空アヤネにありがちなこと(前編)

セリカが戻ってきて、その翌日。

対策委員会の活動が本格再開され、借金返済のために1人ずつ案を出していくのだが……。

 

(何だかな〜〜……)

 

一通り意見を聞いて、先生は内心辟易とするのだった。

 

①金運アイテム(発案者は騙された)

②ん、銀行を襲う(論外)

③他校の生徒を強制勧誘(誘拐)

④スクールアイドル(なおユニット名)

 

(なんでこの中で一番合法なのがアイドルなんだよ……)

 

そのアイドル活動も、軌道に乗るまで上手くいくかどうかも分からない。

先生の世界であれば、ビジュアルが極めて高いアビドス生徒であれば誰でもトップアイドルを目指せそうだが、この世界はキヴォトス。

先生の世界とは社会の仕組みも、常識も、流行も違う。

 

「――いい加減にしてくださいッッッ!!!」

 

堪忍袋の緒が切れたアヤネがテーブルをちゃぶ台返しのごとく、天井へと吹き飛ばすのだった。

またしてもアヤネを怒らせてしまい、ご機嫌をとるために食事を奢ろうという話になった。

 

「だからってなんで柴関ラーメンなのよ……」

 

やって来たのは柴関ラーメン。

セリカはバイトの制服に袖を通し、テーブル席を見やる。

プリプリ、と頬を膨らませてそっぽを向くアヤネを、隣に座る先生が宥めている。

 

「ま、まあまあ。こんな日もあるさ。いったん食事して落ち着けば、何かいいアイデアも浮かぶよ」

「だからって、先生も参加してくださっているのに、あんなふざけた提案ばかりなんて……!」

(う〜ん、正直そこだけは否定できない……)

 

口にこそ出さなかったが、先生はどれも推す気にはなれなかった。

犯罪は論外として、分の悪い賭けも先生として賛同するわけにはいかない。

 

「そういえば、結局先生はさっきの会議で全然意見を提案しなかったね〜。何か案とかないの?」

「……情けないことに、何か劇的に改善出来るような事は思いつかなかったよ」

 

先生自身も意見を出せなかったので、文句を言う立場ではない。

なので苦笑を浮かべてずっと黙っていたのもある。

そんな言葉に、シロコが真剣な目つきで口を開く。

 

「……この際何でもいい。些細なことでも借金返済に繋がるなら、私達はアイデアが欲しい」

「何でもは良くないと思うけど……」

 

とはいえ、臨時担当顧問としてアドバイスの一つもできないのは不甲斐ない。

先生は思案して、ふと窓の外に視線が泳ぐ。

そしてあることを思いついた。

 

「アビドスの砂を有効活用できないものかな……」

「砂、ですか?」

 

釣られて、ノノミが視線を追う。

アビドス自治区には見飽きるほどそこかしこに積もる砂漠の砂。

 

「例えば、リゾートを作ったり、公園や保育園に砂場を用意したりと、砂が必要なケースは必ずある筈だよ。そういう層に砂を売ることが出来れば、借金返済に充てられるんじゃないかな」

「それは……、盲点でしたね」

「うへ、アビドスの砂なんて砂嵐が起きるたびに沢山増えるからね〜。手をつけようなんて発想すら出てこなかったよ」

 

ヘソを曲げるのを止めて、アヤネが真剣に今の先生の発言をメモに記している。

ホシノもフニャッとした表情に対して、真剣の眼差しだ。

 

「それに、仮に借金が完済出来たとして、砂嵐の被害は消えない。自治区に溢れた砂はいずれ解決する必要がある」

「ん、実際砂に埋もれて、使えなくなった旧校舎もある。取り除けば、ホシノ先輩が言ったように生徒数を増やせるかも」

「だからって誘拐はしちゃダメだよ?」

 

ただ、これには問題がある、と先生は注釈する。

 

確かにアビドスには砂が腐るほど存在するが、運送手段がアビドスには限られている。

アビドスにはアヤネが管理しているヘリコプターがあるそうだが、輸送用ではないため、一度に運べる砂の量に限度がある。

陸送だとしても、少なくとも砂を大量に運ぶならかなりのコストが掛かる。

これ以上負債が増えるようなことはさせたくはない。

 

「いい案だと思ったんだけど、そんな上手い話は無いのね……」

 

接客しながら話を聞いていたセリカは、憂鬱そうにため息をついた。

 

「でも、砂を活用するという意見には賛成です。なにも砂場だけでなくとも、ガラスに加工するなど他にも活用方法は沢山あると思います」

 

すっかり機嫌が良くなったアヤネは、メモを取り終えて笑顔を浮かべる。

何とか役目を果たせたか、と先生は内心で一息つくと、店の出入り口が何か騒がしくなっていた。

 

聞き耳を立てていると、1人分のラーメンを4人で食べ分けて良いかどうかセリカと交渉している様だ。

なんでそんなひもじい食べ方をするのやら、先生は気になってそちらに目を向けると、紫髪の少女の後から3人、店内に入ってくる。

 

「……っ?」

 

先生はその紫髪のオドオドとしている少女に先生の目が留まった。

彼女が着ている服に付いている、あのギザギザした校章は……。

 

(ゲヘナ?)

 

見覚えのある校章が目につき、先生の表情は一転して鋭いものに変わる。

対面に座っていたホシノもその変化にいち早く気づき、出入り口へと顔を向けると、うへ、と鳴き声を上げた。

 

「また随分と遠くから来たお客さんだね〜」

「お客さん……?」

 

ホシノも気づいたらしく、その声音には若干険が混じる。

ノノミ達は気づいてないのか、見ているだけで特に反応もなかった。

 

 

 

 

 

結論から言うと、陸八魔(りくはちま)アルという少女を筆頭とした4人組は仕事前の腹ごしらえに来たようだ。

入り用で散財してしまい、貧しい思いでここまで来たらしい。

仕事という単語を聞いて、先生は嫌な予感が頭によぎる。

 

「まさかこんなにもいい人達がいるなんて……、渡る世間に鬼はないとはよく言ったものだわ……」

 

しみじみとした顔をしながら山盛りになったラーメンをすするアルを見て、先生は頭が痛くなる。

一見そんな後ろ暗い事に手を出さなさそうだが……。

 

(いくら安価で食べるためとはいえ、アビドスまで来るか……?)

 

アビドスの外から来た先生から見て、用事がなければ来るような場所ではない。

ならば、ここ連日の出来事を考えると彼女達も()()()()()()なのだろう。

 

そこまで考えて、アルと意気投合しているセリカ達を見て、さらに頭が痛くなる。

 

「大将が言ったように、気にせず食べていいからね!」

「ふふ、沢山食べて英気を養ってくださいね〜☆」

「ごめんなさいごめんなさい……。わ、私が護衛対象に怪我させなければ、もっとお金が手元に……」

「は、ハルカは悪くないわよ! 遠慮なくやりなさいって言ったのは私なんだからっ」

「そうそう、そもそもアルちゃんが食事代を勘定に入れてないのが一番の問題なんだから」

「ちょっとムツキ!?」

「ん、やるなら徹底的にやるべき。あなた達は間違ってない」

「悪い方向に背中押すのは止めてくださいねシロコ先輩」

 

女三人寄れば姦しい。

ならばその倍以上が集まれば男の先生が口を挟む余地などない。

 

「あれが全部計算ずくなら、大したものだが……」

「うへぇ、多分あのアルちゃんって娘、物凄い天然さんなんだろうねぇ……」

 

隣に来て一緒に遠巻きに見るホシノは、反応に困るように肩を竦める。

 

「それで、どうする?」

「……まあ、十中八九標的にされてるし、今回はちょっと違ったアプローチにしようか」

「ふ〜ん……」

 

ホシノの相槌から、彼女が何を考えているのか先生には分からない。

少なくともホシノには、先生はまだ受け入れられていないはず。

それならそれで構わない、と若干の諦観を交えつつ、作戦を考えていると、

 

「作戦指揮に関しては、先生の右に出る人はいないからね。頼りにしてるよ」

「……ふふ、責任重大だね――」

「だから、あんまり無鉄砲なことしないでね」

「……っ」

 

先生のホシノの視線が交わる。

その黄と青の瞳が、まっすぐに先生を捉えている。

 

「みんな、先生の事頼りにしてるんだからさ〜。また勝手に無茶してアヤネちゃんに怒られたくないでしょ?」

「…………肝に命じておくよ」

 

今はそれだけしか言えなかった。

 

作戦を共有せずに単身でセリカを護送車から助け出したことについて、勝手なことをするな、と釘を差しているのだろう。

 

(とはいえ、本当に責任重大なんだよな……)

 

アル達の仕事が黒幕の手引きであれば、間違いなく彼女達も先生を狙ってくる。

先生は自身がホシノ達の足手まといにならないか、ウィークポイントにならないか心配なのだ。

 

(…………っ?)

 

その証拠に。

セリカ達とアル達の談笑を先生達と同様に遠巻きに見ている白髪の少女と、先生の目が合う。

 

「……っ」

 

確か、カヨコと呼ばれていた少女。

彼女は先生を一瞥すると、表情が一瞬だけ引きつり、その視線が鋭くなる。

 

(最優先の標的だと気づかれたか……)

 

そして、おそらく先生が察しているのにも勘づいたはず。

この後に起こる事でセリカ達がどういう反応をするのか、先生には容易に想像がつくのだった。

 

 

 


 

 

 

「うぅ、気が進まないけど……」

 

アルの表情はとても引きつっていた。

ひもじい思いをしながらやって来たアビドスで、とても優しくしてくれたアビドスの人達に弓を引く行為をこれからしなければならないことに、良心の呵責に苛まれる。

 

「切り替えて、社長。上手く行けば成功報酬も貰えるんでしょ?」

「くふふ、どうせやるんだから派手にやっちゃおうよ♪」

 

冷静にアルを諭す鬼方(おにかた)カヨコと、キャッキャと笑う浅黄(あさぎ)ムツキ。

そして、前方からパタパタと足音を立てて戻ってきた伊草(いぐさ)ハルカは、自信なさげにアルに報告する。

 

「あ、アル様。爆弾の設置、か、完了しました……」

「ご苦労さま、ハルカ。……でも必要なの? まだ戦い始めてもいないのに、あんなに大量の……」

「さっきも話したでしょ、向こうは私達が襲撃してくることを多分察してる」

「ホントかなぁ? 少なくともあのメガネっ娘ちゃんと猫耳ちゃんは全然気づいてなさそうだったけど……」

 

ムツキは柴関ラーメンでアル達と和気藹々と話していた、アビドス生徒達を思い出す。

依頼人の話では、かなりの脅威であるが故に、確実に叩き潰すように、との事だった。

しかし実際には外からやって来たアル達に対して、ろくに警戒もせず気安く話しかけてきただけ。

警戒する程のことではない様に、ムツキには感じた。

 

「そっちじゃない。……例の“シャーレの先生”がいた。アイツは私達に気づいてる」

「……えっ、そんな人いた?」

「アルちゃんアルちゃん、たぶんあの背の高い男の人がそうじゃないかな?」

「白のロングコート、緑の眼鏡。特徴は一致してた」

 

カヨコから見て油断できない人だと感じた。

気づかれないように一瞥したのに、先生は目ざとくこちらに気づいた。

しかも、その後ニコニコとわざとらしい笑顔でこちらに軽く手を振っていた。

 

「……ふふ、そう。ついにこの日が来たのね」

「アル様?」

 

アルは最大限悪ぶった顔で、不敵に笑う。

 

「いつかこんな日が来ると思っていたわ。彗星のごとくキヴォトスに現れ、色んな犯罪を取り締まった、まさに()()()()()()! 私たち【便利屋68(シックスティーエイト)】の宿敵となる連邦捜査部【シャーレ】との対決が始まるのね……!」

 

背中に炎を纏い、握り拳を作ってやる気になるアル。

おお、とハルカはパチパチ手を叩くが、対してカヨコとムツキの反応は冷めている。

 

「……なんか勝手にシャーレが因縁の相手みたいになってるんだけど」

「前に【美食研究会】が飲食店で出会って一目散に逃げ出した、って噂を聞いたことあるんだけど、それってつまりシャーレの先生はヒナレベルってことじゃないの、カヨコっち?」

「どうだろ……。流石にヒナが比較対象になるのは話盛りすぎだと思うけど」

 

呆れたようにため息をついて、一転カヨコの表情は真剣なものに変わる。

 

「でも、念には念を入れておいた。向こうは襲撃を察知して、先手を仕掛けてくるはず。だったらあえて……」

「待ちの戦法ってことね。正直私好みじゃないけど……」

 

そのために、ハルカに爆弾を仕掛けてもらった。

後はこのまま陣取っていれば向こうから出てくるはず。

 

「……ふふ、それじゃああなた達、手筈通りにやりなさい」

 

アルはあらかじめ大金はたいて雇った大勢のバイトに指示を出し、前方に陣形を作らせる。

何処から攻めてこられても良いように、扇形の一団が出来上がった。

 

「さあ、仕事を始めるわよ――!」

 

髪を靡かせ、アルは高らかに銃を上に構え、宣言する。

それを合図にして――、

 

「ぇ……」

 

ふと、ハルカが見上げる。

 

「ハルカ、どうしたの――」

 

アルが喋り終える前に、

 

――バババババッ!!

――ドガァァァァァンッ!!!

 

アル達の上空から爆風が襲いかかった。

突然のことだ。その場にいた全員の反応が遅れ、何も出来ずに後方へと吹き飛ばされた。

 

「…………っ、今のは」

 

後方にいたカヨコが真っ先に立ち上がり、何が起こったのかを思い出す。

頭上で爆発が起きる前に見えたもの。それは、

 

「あれは、ハルカに設置してもらったクレイモア……? なんで……」

 

 

 

『――それは、貴女達の手口を事前に調べたからですよ』

 

 

 

「……ッ!」

 

カヨコはハッとして、その場から跳んで後方へと下がる。

その場所に発砲音と銃痕が地面に出来上がる。

 

「ん、流石に反応がいい」

「アビドス……!」

 

家屋の上から、銃を構えてカヨコを睨むシロコ。

 

「シロコちゃんだけじゃありませんよ〜♧」

「うわっとっと!」

 

側面からノノミがガトリングを乱射して、ムツキがそれに爆弾を投げて追撃を阻止する。

 

「ちょ、ど、どういう事よ!?」

「こういう事に決まってんでしょ!!!」

 

未だに状況をはっきりと把握していないアルは、自身の後方からセリカが襲いかかるのに気付かなった。

 

「いだっ!」

「よくもアル様を……!!」

「は〜い、君はおじさんが相手するからねぇ」

 

アルが攻撃を受けて激昂したハルカに、ホシノが足止めするように盾で殴る。

壁に激突したハルカはそれでも立ち上がり、ホシノにショットガンを乱射する。

 

完全に乱戦状態。

雇ったバイトは前方にいたせいで爆発をもろに食らい、みんなダウンしてしまった。

 

「いくら何でも対応が早すぎる……! こっちの手の内を全て予期しなきゃ、こんな事……」

『その通りです』

 

便利屋68の面々の前に、アヤネの姿が映ったホログラムが出現する。

 

「あっ、メガネっ娘ちゃんだ! さっきぶりだね〜」

『メガネっ娘ちゃんではありません! 私の名前は奥空アヤネですっ!』

 

この期に及んでからかう態度を見せるムツキに、アヤネが眦を釣り上げる。

その横でまあまあ、とアヤネを宥める先生の姿も映る。

 

「シャーレの先生……」

『悪いね、この姿で。私も一緒に出るつもりだったんだけど……』

『まだ言っているんですか? 相手はゲヘナで指名手配になっている不良生徒ですよ? もう危険なことはしないでください!』

「誰が不良生徒よ! ヘルメット団やスケバンと一緒にしないでちょうだい!!」

「いや、世間的には間違ってないでしょ……」

 

不良生徒呼ばわりに、アルは食い気味に否定するが、カヨコは肩を竦めてため息をつく。

 

「……やっぱり、これはアンタの策?」

『奇襲への対応策は敷いていると思ったからね。こっちも裏をかかせてもらったよ』

「一体どうやってハルカが設置した爆弾を……。見てなければ、こんなに早く回収なんてできるはずが……」

「ん、その通り」

 

その問いに、先生ではなくシロコが答えた。

 

「全部上から見てた」

「上!?」

 

便利屋が全員空を見上げる。

そこには、小型だが戦闘用のドローンが浮かんでおり、その前方にはカメラが付いている。

 

「やられた……! あんな手段で……」

『先生のおっしゃっていたように、貴女が今回の作戦立案者の様ですね、鬼方カヨコさん』

 

ビクリ、とカヨコの肩が震える。

普段アルが鶴の一声のごとく作戦立案をするが、彼女が困っている時はカヨコが積極的に作戦の提案をする。

今回もその例に漏れなかった。

だが、

 

(そんな所まで読んでいるっていうの……?)

 

まだ出会って間もないのに、ほぼ的確にプロファイリングしている事に、カヨコは丸裸にされた気分になった。

 

『後は貴女達の犯行の手口を調べたら、必ず爆弾を用いて現場を爆破するようでしたので、爆弾の設置場所は優先的に調べ上げました。アビドスであんな大量の爆弾を使わせはしません!』

「……先生とアヤネちゃんが教えてくれた時、半信半疑だったわ」

 

ギリリ、とセリカが歯軋りを立てる。

 

「でも、まさか本当にアンタ達が襲撃者だったなんて……!」

「う、うぐ……」

「この恩知らずども!! よくも大将の厚意を踏みにじったわね!!!」

「う、うぅ、それは……その……」

 

セリカの激昂に、アルは二の句が告げなくなり、オロオロと視線が泳ぐ。

 

(そこで言い淀むのか……)

 

罪悪感に苛まれて言葉が出ないアルに、先生は声にこそ出さなかったが呆れてしまう。

つくづく()()()()()()性格のアルのその将来が心配になってしまった。

 

「くふふ、ラーメン屋ではありがとね。でもそれはそれ、これはこれ」

「うちは『情け容赦なし』『金さえ貰えればどんなこともやる』がモットーの会社だからね」

「あ、アル様のために……、全員殺す覚悟でやりますっ!」

 

だが他の3人はしっかり切り替えているようだ。

 

「なら続ける? やるなら徹底的にやる。私たちは容赦しない」

「うへ、次は爆弾だけじゃ済まないかもね〜」

「お仕置きですよ〜☆」

『……ということなんだけれど、まだ続けるかい?』

 

やる気になっているシロコ達に対して、先生は提案するように声を掛ける。

 

「……どういう意味?」

『尻尾巻いて逃げるなら、()()()()見逃してあげる、ってことだよ』

「な、なんですってぇ……??」

『ちょ、先生何を言ってるんですか!? この人達も黒幕の……!』

『そうだね。でも彼女達は同時に“ゲヘナの生徒”でもある』

「……っ、まさか」

 

この状況でその言い回しをした先生に対して、カヨコは嫌な予感がする。

 

『彼女達を拘束すれば、いずれゲヘナにも耳に入る。そうしたら【風紀委員会】がやって来るね』

「ひ、ヒナが来るかも、ってこと!?」

「うげっ……」

 

アル達の表情に恐怖が浮かぶ。

思い通りの反応になった事に内心ホッとした先生は、畳み掛ける事にした。

 

『先に言っておくけれど、このまま君達を制圧することは容易いよ。さっき君達に送り返した爆弾は、あれで全部じゃない。もう一度同じことだって出来る』

「わ、私達を脅してるの!?」

『さあ、どうする? 君達次第だ』

 

先生の表情から笑みは消えている。

それだけで大真面目に言っていることは、その場にいる全員が察した。

 

「……ハルカ、バイト達を起こして」

「か、カヨコ課長?」

「この場は完全に分が悪い。引き際ならここ。……社長はどうする?」

「ぐ、ぐぐぐぅ……っ」

 

苦悶の表情を浮かべ、プルプルとアルは肩を震わせる。

そして、わなわなと口を開いた。

 

「な、何なのよ……。思ってたのと全然違うわ……っ」

『……?』

「シャーレと戦うことになるって言うから、捜査官らしい正攻法で挑んでくると思ってたのに! 正道の組織とアウトローの抗争になると思ったのに!! 奇襲って何? おまけに脅迫!? 貴方本当に()()()()()()って呼ばれてる人なの!?」

『―――――――――』

 

アルの目尻には涙が浮かんでいた。

もはや刑事モノのドラマみたいな青臭く情熱的な戦いのイメージは、完全にアルの中で粉々に砕け散っていた。

全員がそのアルの吐露に呆れた表情を浮かべて、視線を集中させるが、ただ一人。

 

「先生…………?」

 

無表情で目を見開いたまま閉口する先生を、ホシノだけが見ていた。

その声が聞こえた先生はハッとして、苦笑を浮かべる。

だがその笑顔は。

 

『そうか、そういう風に見ていたのか……。それは、期待に添えなくて申し訳ないね』

 

ホシノにはぎこちなく見えた。

それに気付かないアルは唸り声をあげて、吠えるように叫んだ。

 

「こ、これで勝ったと思わないでちょうだい! 次に会ったときは、絶対真っ向から白黒つけるんだからね! こんな決着絶対認めないわよ〜〜〜〜!!!」

「アルちゃん、それ三下の捨て台詞みたいだよ?」

「うるさいわよ! 早くみんな起こして逃げるわよ!!」

 

捨て台詞にしか聞こえない負け惜しみを最後まで言いながら、アルを筆頭に一団は逃げ帰っていった。

 

それを最後まで見届けるように指示した先生は、彼女達の背中が見えなくなった後で生徒達から詰問されるのだった。




大体3行で分かる! 登場人物紹介

シャーレの先生
・5年前、カロス地方で英雄と持て囃された黒歴史を持つ
・「正義の味方」「英雄」と呼ばれるのを嫌い、キヴォトスでもそんな風に見られている事に嫌悪している
・若干とはいえ生徒達の前で怒りを露わにして自己嫌悪

奥空アヤネ
・怒るとへそ曲がりが中々直らない
・対策委員会のメイン進行役
・メガネをかけてるとキュートさが増し、メガネを外すと美人度が上がる

小鳥遊ホシノ
・先生の一挙手一投足をつぶさに観察することで、皮肉にも先生の一挙一動の機微が理解できるようになった
・他の学園生がやって来て、大きな問題に発展しないか心配
・アルが先生の逆鱗に触れたことに気づいて内心で合掌

砂狼シロコ
・遵法精神に乏しい少女
・戦闘用ドローンにカメラをつけて、アヤネに操作してもらってた
・回収したクレイモアをドローンで攻撃して起爆させた

黒見セリカ
・貧乏仲間と思ってた相手に手を噛まれた気分
・しかもその相手は割と夢見がちな人で、若干同族嫌悪を抱いた
・猫耳ちゃん呼ばわりは作中のオリジナル……のはず by作者

十六夜ノノミ
・ネーミングセンスに難有りの少女
・笑顔で怒るので逆鱗が分かりづらい
・ホシノがよく先生を見ていることに気づいているが、その感情が何なのかが読み切れない

陸八魔アル
・ペーパーカンパニー【便利屋68】の自称社長
・一流のアウトローを目指しながら、悪事を忌避する
・先生の逆鱗に触れたことに全く気づいていない

浅黄ムツキ
・ペーパーカンパニー【便利屋68】の他称(アル任命)室長
・カバンの中には何かが蠢く……?
・もっと正道で大真面目に挑んでくると思っていたばかりに、いい意味でイメージを崩された

鬼方カヨコ
・ペーパーカンパニー【便利屋68】の他称(アル任命)課長
・顔が怖い(?)
・最終章組の一人なのでめちゃくちゃインテリなキャラのはず by作者

伊草ハルカ
・ペーパーカンパニー【便利屋68】の他称(アル任命)平社員
・自身を救ってくれたアルを盲信
・一番手段を選ばない少女

今回ポケモンの影も形も無いので、もう少しポケモン要素を出しても良いかもしれません。
しかしメイン軸はブルアカのつもりなので、あんまり主張しすぎるとごちゃごちゃになってしまう。
クロスオーバーは塩梅が難しいですね。

長くなってしまったので、前後編に分けています。

ブルアカ×ポケモンのクロスオーバー作だけど、こういうポケモン要素が全くない話があるのはアリ、ナシ?

  • もっと要素出せ(ナシ)
  • たまになら良いと思う(アリ)
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