勇者の冒険譚   作:ソト

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第13話 勇者計画①

「…正気の沙汰とは思えんな」

顔を顰めた財務官は手に持っていた資料を投げ、吐き捨てる。

「わざわざ会議などをする題材でもあるまい…予算も下りまいよ。こんなものより襲撃の後処理をしてる方がよほど有意義だと思うが?」

「私も同じ意見だ。倒壊した建物、死傷者、兵の配置…襲撃なら既に2週間も経ち、迅速な対応が求められる今、…こんな戯言に付き合う身にもなって欲しい」

会議を開いた宰相に冷たい視線が集まる中、彼は意に介さず、話し始めた。

「今だからこそ、だ。数ヶ月前より祈祷師より挙げられた光の兆し。その報告を受け、国内に目と耳を張り巡らせ、情報を集めていた」

「ふん。そんな正確かどうかも怪しい予言に金を注ぎ込むとはな」

「…まさか、何かしら掴んだと?」

軍務官がジロリと祈祷師を睨む。

「…候補らしき者はこれまでにいくつか。兆しが何を示すか分からぬ故に断定は出来ませんでしたが…」

「先日の襲撃にて。とある若者が有力候補者だと報告が上がった」

「…誰だ?」

「アカデミー在学のアルド・グリフィス」

しん、と部屋が静まりかえる。

1人の官僚がため息をついた。

「馬鹿馬鹿しい。現実を見てくれたまえ宰相殿。

貴殿が配った資料に書かれた少数選抜魔王討伐案…通称『勇者計画』。ただでさえ夢物語の計画…そんな少数からわざわざアカデミー生を抜擢する気かね?」

「いや、正面から現実を見ているからだ。

我々は8年前は大国の中でも強国と数えられるほどだったが、『竜人事変』にて国力は半減以下。今では予算も兵もなく、困窮している現状だ」

「だからこそ予算も下りんと言っている‼︎ ただでさえ先の襲撃で更に消耗した上で、また予算を捻出しろと? 破綻しているだろう⁉︎」

「同感だな。我々軍部もギリギリ。攻勢に出る余力も数もおらず、防衛に手一杯。少数ならば、何とかなるという話でもない」

財務官、軍務官の立て続けの反論を受け、宰相は切り返す。

「その通りだ。

我々は既に余力は無い。魔王に抗う術も無ければ、国を持続させうる体力も残されていない。

しかし、魔王は待ってくれんのだ。

遅かれ早かれ、アレストルは滅ぶだろう。

…ならば、我々は突飛と言われようと何かしらの手を打つしかない。

例え、名もなき若者1人に国の未来を賭けることになろうともだ。

……気に食わぬなら、代案を示せ」

…ちっ、と舌打ちを鳴らしながら、財務官は黙り込む。

「…言いたいことは分かった。だが、しかし…その若造に託す根拠を寄越せ。アレスナの騎士などではなく、…わざわざ無名のアカデミーの学生を選んだ理由を…‼︎」

軍務官の要望を聞き、宰相は情報部を一瞥する。

「調査結果を」

「はっ。報告致します。

アルド・グリフィス、18歳。

剣術の高い適正と評価されており、攻撃、回復呪文も習得しており、対人関係も良好。

……更に、襲撃時、魔物数体を単独で撃破。救援に向かった騎士団からは雷撃を扱った、と報告を受けています」

「雷撃……デイン系か? かなり珍しい素質だが…全くいない訳でもない……が、祈祷師殿もそれを根拠にするには弱いと思うが?」

魔道監理官が祈祷師に問う。

「いいえ、古より伝わりし予言には、魔を討ち取りし者は天の光を宿す、と記されています」

「…いいや、まだ弱い。確かにその若さで、そのレベルの魔物を単独で討伐は優秀だ。だが、あくまで優秀だ‼︎ 命運を託すには軽い…‼︎」

軍務官は更なる根拠を要求する。

「……彼は、かつて騎士団だったオルダートの息子であり、母は魔道部隊の幹部だ。血筋は保証されている。君ならば知っているんじゃないか?」

「……オルダート、?………なんだとッ⁉︎ アイツの子供かッ⁉︎」

「ほう。私でも知っている。極めて優れた双剣の騎士と」

「強さはな‼︎ 命令違反常習犯のクソガキだッ‼︎ アイツの独断専行で何度煮湯を飲まされたか…‼︎」

情報部が淡々と告げる。

「……アルドの補足ですが。

襲撃時、彼もまた避難指示に逆らい、家屋から夫婦と叔父、計3名を救出しています。

更にリカント1体、オーク2体、そして兵士数名を殺害したと報告されているオークキング1体を単独で撃破しております。」

「クソッ‼︎ 血は争えんな‼︎ 年齢の割に頭抜けた強さも暴走癖も…‼︎……だが、実績で言えば文句は言えん……‼︎」

「……以上が我々の判断材料だ。異論は?」

「……ねえよ…‼︎ チッ…狂っていやがる」

「他の者は?」

宰相が周囲を見渡す。

イカれている。馬鹿げている。

だが、国を思うならば。

誰も反論を挙げられなかった。

 

「…いないようだな。…では、本件はこの方針で進める」

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