翌日、トウジと先生はアビドス市街地…砂漠化を免れている地域の探索をすることにしていた。砂漠化を免れているとは言ったものの所々には砂が溜まっているのが見える。
また、流石に校舎に泊まるのもどうかと思った二人は、まだインフラ等が生きている地域のホテルに泊まった。慣れない場所での活動で疲れた体を癒し、万全の状態で歩いていたところ、前に人影が現れた。
「うっ……、な、何っ…!?」
"おはよう、セリカ"
「な、何がおはようよ!馴れ馴れしくしないでくれる?私は二人のことまだ認めてないから!」
かなりツンケンした態度をとってはいるが、セリカの態度にも若干の申し訳なさが滲み出ている。恐らく何か思うところはあるのだろう、これがツンデレか…
「それでセリカはどこに行くんだ?学校か?」
「今日は自由登校日だから学校には行かなくていいの!」
"それじゃあどこに行くの?"
「そ、そんなの教えるわけないでしょ!私は忙しいの!じゃあね、バイバイ!」
風のようにセリカは去っていった
"セリカ、どこに行くんだろうね?"
「心当たりはあるぞ、多分バイトだ」
“なるほどね…あ、そうだ”
先生が不適な笑みを浮かべる
“あとでみんなを誘ってさ…”
・
・
・
・
・
・
「いらっしゃいませ、柴関ラーメンです!何名様ですか?」
普段のアビドス制服とは違い、三角巾に前掛けをした姿で元気に接客をするセリカ。場所は柴関ラーメン、今となっては数少ないアビドス自治区で営業中のラーメン店だ。
「三名様ですね、こちらのお席にどうぞ!」
「ご注文は…はい、醤油と塩の並、一杯ずつですね!大将!!」
「はい、替え玉ですね!少々お待ちください!」
慌ただしく働く中、店のドアが開く音がし、セリカはそちらに笑顔を向ける
「いらっしゃいませ、柴関ラーメンです!何名ーーー」
「六人でお願いしま~す☆」
扉から入ってきたのは、見知った顔のアビドスの仲間たち、そして先生とトウジだった。あまりの出来事にフリーズしたセリカだったが、正気を取り戻す。そしてそれと同時に激しく赤面した。
「え、ちょ、え!?な、なんで!?」
「ん、お疲れ様、セリカ」
"バイト、頑張ってるようで何よりだね"
「な、なんでみんなここに…!?わたし、どこでバイトしてるかなんて…」
セリカが先生たちはよもや、アビドスの面々にも言った覚えのないバイト先に『全員集合!!』していることに困惑していた。そして、その疑問に対する答えを最後に入ってきた少女…ホシノが答える。
「うへ~、やっぱりここしかないと思ったよ~」
「ホシノ先輩!?」
「まぁ、セリカちゃんのバイトのことを聞いたのは先生からなんだけどね~」
セリカが先生をキッと睨むと、先生は光のスピードでそっぽを向いた。吹けてない口笛をしながら。…因みにトウジは持ち前の感を生かし、セリカのヘイトを避けるためノノミの後方に避難していた。
そして厨房でせっせとラーメンを作っていた店主…柴大将が顔を出した。
「お、アビドスの生徒さんかい?あとの二人は…お!兄ちゃんじゃねえか、久しぶりだな!」
「久しぶりだな、大将。覚えてくれてて嬉しいよ」
「た、大将!?アイツと知り合いなの!?」
「ん?あぁ、彼ね、一か月くらい前までよく来てくれたんだ、良い食いっぷりだったりしたんでよく覚えてるよ、あとセリカちゃん、お客さんを『アイツ』呼びはだめだぞ!あとお喋りもそれくらいにして、注文頼むよ!」
「あぅ…こ、こちらのお席にどうぞ…」
柴大将に注意されてしまったセリカ、目に見えて落ち込みながらトボトボと楽しそうな一同を席に案内した。案内されたのは広い六人のテーブル席、奥にホシノとアヤネが座り、その横にそれぞれシロコとノノミが座る。と、不意にホシノとノノミが男性陣のほうを向いた。
「ん、先生、トウジ、私の隣空いてる」
「私の隣も空いてますよ~☆」
「…どうするんだ?せんせ…い?」
トウジの目線の先、そこには今まで見たことないような苦悶の表情を浮かべる先生がいた、それはもう厳しい表情だった。何度か呼びかけるも全く聞こえていない様子の先生、痺れを切らしたトウジは近いほうにいたシロコの隣に座る。
「ん、トウジは私を選んだ」
謎にシロコがドヤっている中、ようやく先生が正気を取り戻しノノミの隣に座る。
"くッ…みんなごめん…私は、私には選べなかった…、どちらも魅力的過ぎて…"
本気で後悔している先生にホシノは呆れ、アヤネとトウジは苦笑いをし、シロコとノノミは頬を赤らめた
「ん、悪い気はしない」
「先生…私たちのことをそんなにも…」
「ちょ、ちょっと、そろそろ注文取りたいんだけど!?」
もう我慢の限界だと顔に書いてあるセリカが、注文を取ろうとタブレット端末を取り出す。それを見たホシノがニヤニヤしながらセリカに話しかける。
「ちょっとセリカちゃ~ん、御注文はお決まりですか?でしょ?お客様には丁寧に接しないと、でしょ?」
「うぐっ…あぅぅ………ご、御注文はお決まりですか…?」
トウジはまるでおじさんの店員へのダルがらみだな…とか失礼なことを考えていたが、当の本人である
「私はね~、特製味噌ラーメンの炙りチャーシュートッピング付きで!」
「私は、チャーシュー麵をお願いします!」
「塩ラーメンを一つ」
「えっと……そうですね、私は味噌ラーメンで」
「俺も味噌で、それとチャーシュー、味玉トッピングを」
先生以外の五人がメニュー表も見ずにサッと注文する。一方先生はメニュー表をじっと眺めながらかなり悩んでいる様子だ。そんな先生にシロコが声をかける。
「ん、ここのラーメンはどれもとてもおいしい、だから好きなのを選んだらいい。…ちなみに私のおすすめは塩ラーメン」
"じゃあシロコのおすすめ通り、私も塩ラーメンにしようかな"
セリカは端末で注文を取り、厨房のほうへ消えていった
「…ところでみなさん、財布のほうは大丈夫ですか…?」
アヤネの現実を思い出させる発言に、一気にみんなの顔つきが厳しくなった…ただ一人を除いて
「私が払いますよ~☆、任せてください!」
そういいながらノノミが取り出したのはゴールドカード、あまりのまぶしさにアヤネは目を閉じてしまっている。しかしそこにホシノが口をはさむ。
「いや~ノノミちゃん、ここには先生がいるんだよ~!きっとおごってくれるはず…、だよね?先生?」
ニヤニヤしているホシノにとんでも爆弾発言をされた先生は、激しい焦りを覚えた。なんせ今の先生の財布は…しかし大人としてのプライド、先生としての責務、そして可愛い生徒たち
……それらは天秤にかけた先生は引きつる笑みでこう答えた
"ま、任せなさい!"
生徒たちから大きな歓声が上がる中、先生は来月のもやし生活に想いをはせていた。そこに小さな声がかかる。
「先生、これでこっそり払っといてください」
耳元で囁くノノミの手には数枚の札が握られていた、が先生はその手をやさしく押し戻す。
"ありがとう、でも大丈夫だよ"
「で、でも…」
"このくらいで傾く財布じゃないさ"
先生は笑って、そしてノノミのやさしさに感謝しながら丁重に断った。大人として受け取るわけにはいかないし、なによりかっこ悪い。先生だって格好はつけたいのだ、そう、自らの財布を犠牲にしてでも…
文字数は3000前後を目安に行こうと思います。