刃尾少女に装い有らず~億年の素振りに我流で張り合ってみた~   作:阿久間嬉嬉(新)

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ある種、人狼学院がメインとなっているこの作品。
せっかくなのでガロウの描写も多少なりともできればなぁと思ってます。
原作でもコミックでも魂装は不明なのでオリジナルになりますが。


それでは本編をどうぞ。


ド級の我流

 イグゼに呼ばれた新入生3名。ガロウ=ユンドラー(きざなロッカー)カイデル=ランデス(こふうなきょかん)ムウ=マジャクゥ(ザ・チビスケ)はまず舞台へと上がっていく。

 

 実はいや~に広い舞台であった為に何人か「無駄じゃね?」などと考えていたりしたのだが……なるほど、すぐにでも戦えるように設えられた屋内闘技場の内1つでもあったのだろう。

 一応は《体育館》なのだ、これもまた必要な設備の内一つと言うべきか。

 

『これまた傍目凸凹で個性的なメンツが揃ったもんやなぁ。ま、それはそれとして、ちゃっちゃと()ろか!』

 

 人狼学院の生徒にありがちな特色を芯まで知っているからか、それとも単純に本人の気質なのかは分からないものの、舞台傍の別席へ移動したイグゼは宣言通りに手早く場を進めていく。

 

 まず始まるのはガロウvs教師。

 舞台へと呼ばれた教師はこれまたなんの縁か、ムウの入学試験から今日ここに到るまで世話を担当しているヘルガ=ヒルシュベルガだった。

 

「百花繚乱流と荒天流の戦いじゃねえか」

「せんこーの方よく知らないんだけど凄いん?」

「マイナーだけど結構やべぇってよ」

 

 生徒達のざわめきを軽く裂くようにして続けられたイグゼの簡易説明曰く。

 

 

 ムウの孤児院を襲撃した強盗のリーダー格も使っていた百花繚乱(ひゃっかりょうらん)

 以前から語られつつも仔細不明な流派。

 その実態は……華乱れ咲くような鮮やかな一閃や連撃を重ねるというもの。一点から多方向へ、多方から一点へ振るうような軌道も特徴的だ。

 また【ある程度ながら似通っていれば多様な刀剣で行える】と幅も他の流派に比べ多少広い。

 

 現にガロウの剣とリーダーの剣は幅や長さが少し違い、他の流派ならここだけでも技の披露に躓くだろう。

 しかし百花繚乱流は技の源流そのままに調整して放てるのだ。

 それゆえに有名で、それゆえにすそ野は広く、しかしてそれゆえに皆伝を得るには並大抵の努力・才能では足りない。

 暴力事件さえ起こしていなければ五学院に入っていた、と言うのはフカシでもなく、単純な実力では実際それぐらいあるのだろう。

 

 

 一方の荒天(こうてん)、ヘルガの使う流派は今生徒達が話したようにマイナー寄りの流派。

 名を知らぬ生徒も多いからこそ対処策を知っている者も少なく、おまけにかなり独特でもあったりする。

 なんと【範囲外攻撃や風圧での範囲攻撃が行える】のだ。

 ……つまりマイナーなのは大本が広く門度を開いてはいない、という事以上に一重にその習得難度にもあるのが伺えた。

 

 流石に斬撃が飛んだりはしないものの、刃の切っ先よりも遠くに風圧の打撃や鋭い後追いの一閃が発生したり、振るわれた際の風圧で意図的に体勢を崩すことを目的としていたり、もはや剣術にあるまじき摩訶不思議さ。

 しかし再三言うがその分だけ難易度は頗る高く、要求される“読み”や技量や瞬発力などはもはや百花繚乱流以上に天性のもの頼りになる筈だ。

 ……地味に、『そんなゲキムズをムウに会得させようとしていたんですか?』と言う疑問が上がるのはさて置こう。

 

『あ、当然やが魂装は厳禁やで、出した瞬間蹴ったくったるわ。せやから術1本で気張りや』

 

 イグゼから念のために言うとくとばかりに注意が飛び、ヘルガとガロウの双方が特に不満の色も見せず頷く。

 表情を見るに、ヘルガの方は前々から納得済みだからに見えるが、ガロウの方は先のイグゼの威圧感にちょっと負けているのも影響しているらしかった。

 

『そんじゃあ両者準備はええな』

「いつでもどうぞ、ですよ」

「もちろん……!」

『―――はじめぇ!

 

 先に仕掛けたのは、ガロウ。

 

「百花繚乱流―一輪華(いちりんか)!」

 

 くり出したのは強盗リーダーも使ってきた、しかし滑らかさは段違いな縦一閃。途中から速度を変え、切っ先が美麗な弧を描いて放たれるそれは正に花咲くような剣線と言える。

 

 対するヘルガは斬り上げでなんとそれを真っ向から迎え打った。

 

「荒天流―(たけ)びの陣風(じんぷう)

「ぬぐおっ……!」

 

 ぶつかった拍子に吹き上がった風がガロウの顔面を直撃。それのダメージ自体は小さいが視界を塞がれ、下がらざるを得なくなった……ところにヘルガの追撃が迫る。

 

「まだまだ、荒天流―(うつろ)(おろし)!」

 

 脇をしめるように、コンパクトに放たれた横振りからの振り下ろしで発生した“鋭い打撃”はガロウの肩を強かに撃つも、その反動を利用してガロウは連撃へ移行。

 

「百花っ、繚乱流―九分裂き!」

 

 斜め下から唸りを挙げて剣が閃き、7つを超えた9つの刃線が乱れ咲き花開く…前に、花弁6つまで受けられた所でヘルガの迎撃が割り込んで来た。

 

「荒天流―穿(うが)ちの塵風(じんぷう)!」

「うお!?」

 

 最速最短で放たれた1突きはやはり見かけのリーチ以上に伸び、風圧がガロウの顔面をのけぞらせる。

 だがしかし。

 

「うおっ?」

「百花繚乱流―彩の芽吹きっ……だ!」

 

 ガロウの方も既に反撃の一発を放っており、ヘルガの攻撃はそこで止まった。

 ただの振り上げに見えてそこからいくらでも軌道を変えられ、別の技に繋げられそうな気配を敏感に受け取ったのだろう。

 

 少し距離を取ったヘルガは心地よさそうに笑いだす。

 

「割と、ここで決めるつもりでやったんだがなぁ。やるなやっぱり」

「そりゃあ俺は超天才の皆伝者なんでね」

 

 互いに軽口を交わす2人はそこで不意に黙り……どちらからではなく、ほぼ同時に踏み出して試合再開。

 

(はば)みの迅風(じんぷう)!」

菊花(きっか)五鱗(ごりん)!」

 

 あたかも壁でも作るかのような風圧と隠しの1太刀、その2斬。

 自身の周囲を舞う菊の花を思わせる軌道を描く、5連撃。

 

 その後も様々な技が、読み合いが、そして剣術がぶつかり合い火花を散らして。

 新入生たちの応援の声も増え、しかして声量は少し落ちて。

 そんな奇妙な流れを生み出してまだ止まらず。

 

「百花繚乱流―(すず)なりの蘭華(らんか)!」

「おっととっ、速い……!」

 

 ガロウが反撃の乱舞からどんどん調子を上げていき、ヘルガを押し込もうと目論み。

 そのまま、ジャスト3分に入った途端。

 

 ここで決めるべくかガロウが直線的な移動から急転換して弧を描いて近寄ろうと…したが。

 

「百花」

荒天流猛牙(もうが)(あかしま)!」

「りょ、う!? がっ!」

 

 経験の差が出たかタイミングを合わせられ、僅かな隙をついてくり出された思わぬ大技と風圧の牙にたまらずガロウは転がされ―――刃を突き付けられる。

 それでもガロウの刃は立ち直り、別の技をくり出しかけていた辺り、隙をついても本当にギリギリなのが伺える。

 

「ふぅ……いやぁ、流石に免許皆伝は一筋縄ではいきませんね、だな。だが、経験が足りず慢心が見えますよ、でもあるぜ」

「くっそ、好きかって言いやがって……ああ分かってんだよ、でも俺の負けだ!」

『よぉっし勝負ありやな!』

 

 本人が今口にした理由。加え、有名であるからこそ対策が取られ易い流派と、初見殺し的な面もある流派の組み合わせの妙もあり、この戦いではガロウの負けで終わった。

 

 ただし互いに魂装無し、そして特に覚悟を決めるでもない歓迎試合での戦いだ。場所が、シチュエーションが、装備が違えばまた異なる結果が出るかもしれない。

 

 そして2人の勝負に新入生席からも拍手―――の代わりにガラの悪いヤジだの声援だの笑い声だのが飛びまくった。

 

「だっせー!先公に負けんのかよ!」

「おいおい天才剣士はどこに行ったぁ!?」

言いやがったなコラ! 後で憶えてろ、ぶっ殺すぞ!

「……だってよ!」

「押し付けんじゃねぇぇぇよ!」

「ま、どう見ても先生側もヤバかったしなぁ、勝てんわ」

 

 中心に居るガロウが喧嘩でも買いそうなとんでもない顔をしてたのは、きっと気のせいではない。

 この後、決闘や模擬戦も挑まれそうだ。だが彼に勝てる者は恐らく早々居なかろう。

 

 そもそもが高速戦で見えていない生徒も多かったりするのだから……。

 

ほんじゃ次は新入生同士やな。ほれ、ちゃちゃっと並んでくれや!

 

 ヘルガとガロウが舞台から降りたとほとんど同じタイミング、ほぼ交代させるに近い形でイグゼはムウとカイデルへ交代で上に挙がるよう促した。

 

 ……いよいよ、と言うべきだろう。

 

 恐らく、鞘相撲の延長線上。ある意味で、リベンジマッチ。

 少しどころかあまりにもバカバカしい理由を発端とした、体格を筆頭に何から何まで異なると言う方面でもまたバカバカしい二人が舞台の上で向かい合う。

 

 文字通り大人と子供、いやそれ以上の差がある。ぱっと見ではあまりにもムウが可哀想な光景でしかない。

 

「おいおい弱いものイジメじゃねぇのか~!? ぎゃはは!」

「うーわ、かわいそ-」

「剣からして金剛流でも使うんか? どっちも」

「なら益々パワー不足だろ、クッソいほど比べ物にならねぇぜ?」

 

 けれども彼女の周囲に偶々座っていた者は、尋常ならざぬ膂力の一端をすでに目にしている。

 

「バカ握力あんだし意外と()れそうじゃない?」

「賭けられんなら俺ァ変わらずあのチビに賭けてるわ」

「くはっ! マジで結構いけたりしてなぁ!?」

 

 余裕が出てきたのか雑談を飛ばし始める生徒達ではあるが、このぐらいなら許容範囲とばかりにイグゼは特に取り合わずまたも簡易的な解説を始めた。

 

『でっかいの、カイデル=ランデスは金剛(こんごう)流や。言わずと知れた一撃必殺のパワー型、単純な分だけ熟練度にものごっつ差が出る。オマエはどんだけかここで見せてくれ』

「当然じゃ、ワシの実力見せつけたるわ!」

 

『そんでチビいの、ムウ=マジャクウは荒天流……のモノマネがちょいとできるだけな我流やね。ほな構えい』

「ん」

 

「「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ……………?」」」

 

 

 

「「「「「ちょっと待てやぁ!!!」」」」」」

 

 ……あまりにもサラッと言われたせいで流しかけた新入生たち、及びどうも実態を知らされていなかったらしい一部教師たちが異口同音でツッコミを入れた。

 皆で渡れば何とやら。イグゼが放つ重くも独特な威圧感すら、今なら押し流せそうなほどの息の合いようと迫力だ。

 

「学院長! 我流と言いましたか、今!?」

『言うたで』

「あのチビッコ我流なのか!? え、マジで言ってんの!?」

『マジやで』

「ド三流じゃねえっすかそんなん!!」

『その通りやね』

 

 めちゃくちゃ淡々と返すイグゼとは裏腹に周囲、特に血の気の多めな新入生達からは不満が湧き出てくる。

 

クソザコが何でここに居んだテメェ!

「もう引っこめやぁ!!!」

あーあ、せっかく人狼に来たのに冷めたじゃん!

なんだなんだ、まさか人狼って保育もやってんのかぁ?

「こいつも入れるとかゴミオブゴミだわ! バカにしやがってぇ!?」

 

 すっさまじいブーイングの嵐の中でもムウはずっと涼しい顔をしており、それが生徒達からは見えないのはある意味幸運とも言えた。間違いなく余計な燃料となっていたからだ。

 

 涼しい顔の理由が『目の前のカイデルの“戦意”と解析に集中しているから』と聞けば最早止まるまい。

 

そういや、あのクソチビが俺を差し置いての特待生……はぁ!? っざけんなよ……!?

 

 ガロウに至っては先のザハックの如く視線だけで人を殺せそうになっている。

 教師陣も大っぴらに騒がないだけで厳しい目線を向けており、もはやムウの評価は四面楚歌の八方手詰まりである。

 

 ―――一方で。

 

(あ、あわわわわわ……)

「なんつうか、知ってるとこんなにワクワクするんだなぁ」

 

 慌てている者も居れば、ヘルガのように分かっているゆえちょっぴり不謹慎なものも居たり、しかして心配で止める者は一人もおらず。カオスの真っただ中である。

 

 せめて何か言ってあげて欲しい……。

 

『おーおー言われとるわ』

 

 間接的な原因だろうイグゼはそれでも、ここまで来ても咎めることなく、何やら余裕をもってヘラヘラ笑いだす。学院長ゆえに既にヘルガから聞いているのだろうことは分かったが、ここで望んでこの状況を作り出した可能性すら浮かび上がった。

 

 やはり “イイ人” なのだろう。ここまでそのような印象しかないが、それに輪をかけて来たと言え、どこまで行っても人狼学院の所属と言うべきか。

 

 そしてもう1人の中心人物であるカイデルは……意外にも罵倒せずムウを真っ直ぐ見ていた。

 

(我流なんぞドサンピンの証。しかしじゃ、あの握力や膂力は無視出来ん。ならば能力任せに突っ込まれんよう、最初からブッパで決めちゃるわ!)

 

 色んな意味でヒートアップし続ける、場のテンションが最高潮に達するその前に、イグゼは手を振り上げ。

 それを受け、カイデルは大剣を引き抜くと背負うような構えを取って、ズッ…と腰を落とし。

 ムウは、いつものように剣をぶら下げるような形で持ったまま、佇む。

 

 

 2人の間へ流れる束の間の静寂、それとは程遠い悪罵の嵐の中で―――イグゼの声が響いた。

 

 

『はじめぃ!!!』

 

 

 と、ほぼ同時にカイデルが地を蹴り爆速で突撃して。

 

金剛流ー破岩斬(はがんざん)

 

 勢いそのままに振り下ろされた全体重の乗る剣。

 

 

 ―――その側面を肘を曲げたまま放つ、振りぬかぬ裏拳でムウがぶん殴り

 

おごっ!

 

 下がった顎を蹴り上げ。

 

はぶらっ!!

 

 足をズン! と下に戻しながら踏み込んで剣を斜めに振り下ろし、片手フルスイングでカイデルを豪快にぶっ叩く。

 

 ……が、やはり最初に警戒していたのは大きかったか。

 腕を付いて倒れるのを阻止すると彼は必死に起き上がり、負けてなるものかと片腕で上段斬りを放って。

 

金剛流ー裂岩一閃!

「んっ!」

 

 ムウは右肩に担いだ格好で体をひねりながらぐっと固定し、カイデルの縦振りをギャリッ! と斜めにした自身の刀身で受け流し回避

 

「ハ……!」

ダブラッ!!!

 

 刹那の接近。

 こん棒を振るっているに等しいフォームにて左から豪速で薙ぎ払い、刃の根元で、カイデルを痛快になるほどのスピードで吹っ飛ばした。

 

「ま、参った……なんちゅう、恐ろしいパワーじゃけぇ……」

 

 ダメージは大きくとも意地で彼がそう返事したのを受け、イグゼは何でもないかのように腕を掲げて宣言する。

 

『勝負ありやなぁ! ムウ=マジャクゥの勝ちや!!』

「イチチ、認めざるを得んわぁ……凄まじいのぉ」

「ん」

「「「……………」」」

 

 ぽかんとした新入生達に見守られながら、雨降って地固まるを体現しているムウとカイデル。

 そして。

 

「「「あのガキくっそ強ぇじゃねえかああぁぁぁ!?」」」」

 

「早く言ってくださいよ学院長!?」

「そりゃ特待だあ、そうじゃなきゃ駄目じゃあ」

「我流って、そういう……」

 

「ハハハハハハハ! 予想通り過ぎてヘソで茶が沸かせますよ、ってやつだなぁ!!」

(わーお……ムウちゃん、いつ見てもすごすぎて……)

 

 もはや何者何様かも分からないリアクションにイグゼは喉をくっくっと鳴らしながら本当におかしそうに笑い、実に意地悪そうな笑顔を皆の方へ向けていた。

 

『我が学院有数の実力者と、おれが認めたんやぞ? 弱いわけあるかい』

 

「我流であんなに強ぇとか……聞いた事ねぇ」

「何か伝説とかねぇのか?! 他の中等部を何人病院を送りにしたとかよ!」

「ややでっかい剣持ってる方が都合がよかったりすんの……!?」

 

『そんで話してるとこ悪いがなぁ……なんやったっけ、お前ら。人狼学院、なんて言うたっけなぁ……ん?

 

 つまりは、イグゼは持っている情報を利用してわざと、今の状況を作った訳で。

 

 いっそ殺気と言っても良いような圧を放ちながらの詰問に皆一様に黙ってしまい、そして改めて、この人の“怖さ”をよ~く思い知ることとなり。

 

(やは、り、熱が、灯る……ここ、で、ようやく、『日常』を……そこから、の、日常を……)

 

 戦いそのものにムウが確かな実感と、心の中に宿り続けてくれているものをにぎりしめて次を見やり。

 

 ある意味とってもガラの悪い学校らしい入学式は、この後の紆余曲折を得て、ようやく終わりを告げるのであった。




Q4.ムウってまさか今のところ技とか1個も無かったり……?

A.無いですね、1つも。
だから現状、その場その場で対応を変えて叩き返してるだけです。
そしてそれがアレンやシドーと言った他の我流使い達
彼らとの最大の違いとなっていきます。
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