刃尾少女に装い有らず~億年の素振りに我流で張り合ってみた~ 作:阿久間嬉嬉(新)
出番は少ないですがいよいよ原作主人公が登場します。
……才能無い、才能無い言われている原作主人公だって魂装は会得可能。
なのに才能ある、才能ある言われている今作主人公は会得不可能。
「異世界転移者」なので仕方が無いんですがとても残酷な気がします。
それでは本編をどうぞ。
大五聖祭までの学院生活。
入学式の波乱を経た、そこからのムウの人狼学院での毎日。
「今日こそぶっ殺してやんぞクソガキィ!!」
「ん」
「うおっ!?」
「『ほらほらどうしたぁ!! そのクソガキにモツぶちまけられんぞ!』」
それは1言で現すとほぼ『激動』に近しかった。
「ん!」
「ぐほへっ……!」
「『よーっし今回もC組筆頭・ムウ=マジャクゥの完勝だーっ!』」
「5秒差だからあたしの勝ちな! ほら寄こせ!」
「くっそー! しゃあねぇ……」
まず単純にほぼ毎日、やれ同級生から上級生から体格大小や男女も問わず、挑まれるわ挑まれるわ模擬戦に決闘。
生徒達が野次馬で参加しまくるのでムードも盛り上がりまくり、騒がしくない日など無い。
教師もヤバくならないと止めてくれないので必然的に恒常の行事と化している。
「もはや秒数の賭けになってんなぁ! ウハハハ!!」
「食らい付けてはいんだよ! 次はもっとだぜ!」
「チビっこちゃんおつかれ~。はいチョコ」
「ん」
無駄話が始まるなどで先生が由来か、立ち歩いたりで生徒が由来か、どちらにせよ授業が成り立ってない時間もちょいちょい存在 “してしまっていた” せいで、そして決闘を受諾する受付も半ばあきらめムードでそれを了承していたせいで、余計に勉学どころでは無かったのだ。
ガロウやカイデルも似た状況らしいが流石にムウよりはマシなので本当に彼女が悪目立ちしていると言える。
時には昼食の時間も丸々無かったほどだ。
これは、元より食事の習慣が未だ戻っていないムウだからこそ問題が少なかったものの、裏を返すと四六時中決闘や模擬戦をやってもさして諸々問題ない……という事にも繋がってしまった。
ゆえ普通に学ぼうとしていた筈のムウはこれまたがっつり巻き込まれた、というわけである。
もうトータルで見れば不良同級生たちとほぼ同じ単位しかもらっていないような有様。
「予約取りぃっと! じゃ、アタシと
「ん……」
「一挙手一投足身になるとは言えリサもよくやる」
「オイ! 終わったらオレだかンな!!」
相対的に微笑ましいやり取りがあったりするもののそれもまた人狼流。
加え、ぶっちゃけムウは断るのが下手という事もあり、それに火種が消えかかる感触を怖く思っているのもあって、受けられるものはヘルガが介入した場合を除いて大体受けていたりもする。
けれども、じゃあ勉学をしたくないのか、それで良いと思うのかと言えば当然違い、なのでどうにも四苦八苦。
クノンにお守りとしてもらう木の剣も既に2桁へ移行し、それでも律儀に抱える日々。
孤児院長の“貴女らしく”との言葉に従ってどうしたいか考え続ける毎日。
潰れる、と言う概念からは程遠く、しかして困る、と言う概念とはとても近しく。
その小さな果てに本気でどうにもならないのを予感しクノンに「べん、きょう、おしえ、て」と頼み込み、彼女が内心狂喜乱舞するという一幕が挟まったほど。
頼ってねと言った手前、本当に嬉しかったのだろう。そしてムウにしてみればつっかえも無く進んだため、まあWINーWINと言うべきか。
……なお毎日始業時にはちゃんと席に付いている事や真っ当に出席している事から、実のところちゃんと単位は取れていたりする。
どれだけ人狼学院が勉学においてダメダメなのか、偏差値がすこぶる揮わないのかがここで伺えよう。と言うか一部のまじめな生徒を除き、容易い類の単位すら
「うぎぎぎぎ……! 重、いんだよ、おまえの剣……!」
「知っ、て、る」
「おわぁっつ!? いきなり喋ん……ドハァ!!」
「蹴られてやんのー」
地味に、A組と別ながらガロウとも決闘を数回ばかり重ねていたりもする。やはり入学式の彼女を見て思うところ、再出発したい気持ちがあったのだろう。
ちなみにクラス分けはA~Dまであるが特に法則性はないとの事。
五学院は実力別だが他の学院まで一緒なのか、と言うとこれこの通り違うのである。
「まだまだ甘いわぁ!」
「クソッタレが、そのドタマァいつか土付けたるぞ!」
「ん……」
「カイデルの奴に賭けてたみてぇだぞ、ガキンチョは!」
「ぬぐぅ、複雑じゃのぉ……!」
まあ苦難や苦悩あれども馴染んでいたりするのも事実なので、それなりに楽しかったりするのかもしれない。
ただ、勉強はちゃんとしたいな……と言うのがいまいち叶えられないだけの話で。
それが1番大事で無視出来ないだけで。
「そうだよ、その調子! ……ところでさ、ムウちゃん」
「ん?」
「賭け事したりしてないよね?」
「…………」
「ムウちゃん!?」
―――やはり大問題な気がするが解決策は既に講ぜられているから問題ないとしておこう。
……そうして。
受付を通す以外で取り決めの曖昧な決闘を続け、模擬戦を繰り返し。
クノンとマンツーマンで学び。稀に絡まれかかっているのを助けて。
ヘルガ指導の元で個人授業として
珍しくイグゼ学院長とはち合って何でもない、本当に雑談としか言いようがない会話を紡いで。
やたらと濃い学校生活で日を跨ぎ。
あれよあれよと言う間に……。
「ここが会場だね、ほんと人いっぱい……!」
「……ん……」
件の、大五聖祭の日がやってきた。
如何にも『歴史的な建造物』といった壮大な雰囲気を放つ、大闘技場の前。
少し場違いなテックウェア風の服に身を包んだムウと、チェックスカートとブレザーに似た私服を着こなすクノンは、そこに居た。
どこを見ても人、人、人の群れ。
それを狙った露店、屋台、少し遠間のキッチンカー。
中々のお祭り騒ぎ。
千刃がいくら都落ちしようと、氷王がいくら落ち目であろうと、実質的に皇・炎帝・白百合にのみ注目が集まって居ようとも。
学生たちによる剣術の祭典、そこで見られよう青臭いからこそできる本気のぶつかり合い。
ただそれだけで人の心を魅了することには何の変わりもないのだ……と、如実に伝えてきていた。
「ここまでになると逸れるのが怖いな……魔剣士組合のパス持ってるし、それと一緒にチケットみせて来るね。だからここに居ててくれる?」
「う、ん……」
「わ……うん、ありがと! じゃあ、待ってて!」
落とさないようにかここで慌てて取り出すことはせず、されども念のためにか手で固定しながら雑踏の波をかき分け、クノンは向こうへと消えていく。
本来小さな子供を1人にする方が危ないのだが、ここに居るのは
もはや手を出す方が危ないと言っても過言ではあるまい。
「はっ、不用心だな……おい可愛子ちゃんよ、悪いが大人しあぎゃぱああああぁぁ!?」
それこそこれこの様に。
腕をギュリッ! と握られ捻られぶん投げられた男は、騒ぎを聞きつけた警邏の聖騎士―――警察にあたる組織の剣士達に発見されそのまま連れていかれる。
次いで聖騎士はムウにも声を掛けようと……したのだが巻き込まれない内にさっと離れてしまった上、そもそも姿をちゃんと確認する前に逃げられている為、ついぞ追うことは出来なかった。
……ちなみに声を掛けられた瞬間に騒ぎが起こると確信したムウは、犯人をあらぬ方へと投げてクノンの約束の場所から離しており、合流にはさして支障無い事を追記しておく。
そこからまた少し経ち。
流石に時間がかかるのか、手持無沙汰になってきたムウ。
すると。
「あんのインケン氷王めぇ!」
「…………?」
途轍もない怒気を含んだ、遠くからでも聞こえるレベルの声が届き、暇の影響でふと意識を取られたのかそちらを向く。
見ればスーツで決めた黒髪ロングの女性が発しているらしく、スタイルの良い美人が台無しになるほどの大股でズンズン音を立てて歩き、いっそ『悪鬼』と言っても差し支えない表情で歯ぎしりまでしていた。
何があったのだろうか。
「ちょっとレイア! いい加減何があったか教えってああもう!」
「本当に何があったのだろうな。あの形相は」
「レイア先生が怒ったところとか始めて見たな、俺……」
女性の後に続くように、白と黒がバランスよく使われ、肩に剣をクロスしたかのような文様が刻まれた制服に身を包む、3人の生徒らしき者たちが続く。
その制服が五学院が1つ、『千刃学院』の物であることを既に知っていたゆえなのか、ムウは視界の端で3人を眺め出す。
1人は金髪をツインテールに結ったとてもかわいらしい女子生徒。
スタイルも豊満であり、同級生たちからアイドル扱いされても不思議ではないレベルで容姿が整っている。
続く2人目は桜色がかった銀髪ロングの女子生徒。
こちらもまた目を引くほどの美貌を持ち、クールビューティーと言う表現がとてもよく似合う。
そして3人目は黒髪の男子生徒なのだが……なんだろうか、いまいち特徴が無い。
本当にパッとしない。それこそ、不意に他所を見たら似たのが居そうなぐらいには平々凡々であった。
「…………」
だがしかし。
今のムウの目線は正にその3人目、実に平凡極まりない男子生徒の方へ向いている様子。
いったい何を感じ取ったのか。先に大闘技場内へ入っていった女性を追うその3つの影が消えるまでムウは、直接的にではないものの、じーっと彼のことを見続けていた。
やがて偶然か、彼女らや彼と入れ替わる形でクノンがようやく戻ってくる。
「お待たせ! じゃあ行こっか!」
「…………」
「あれ……ムウちゃん、どうしたの?」
「…ん」
「何でもないの? 無理はしないでね?」
「ん」
少し不可解ながらも軽いやり取りを交わし、ムウたちもまた闘技場内へと足を踏み入れた。
(戦力、判定、測定……こちら、の、勝率、は…………別記、事項、極め、て、奇妙……)
―――内心のそれが、それこそ先の男子生徒にすらも伝わることなく、ムウの内から湧き出て内へと消えていくのを誰も知らぬまま。
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指定された場所に座ったムウとクノンは、まず周囲をぐるっと見渡す。
「生徒さん達もいっぱい居るんだねー」
西と東で違う制服の生徒達が、それこそ見て分かるレベルでずらーっと居る事からも分かるように、どうやらそこが各楽員の応援席らしかった。
比率半々な白と黒の制服が先に見た3人及び女性教師の属する千刃学院、反対側の白ベースの衣装にマントを思わせる装飾のある制服が氷王学院なのだろう。
その下には入退場ゲートが存在しているので恐らくそこから両陣営代表が見えるに違いない。
確認を終え、クノンはムウにも見えるようにしてパンフレットを開いた。
「さてと、出場選手は……えっ!?」
「……ん?」
途端、クノンは驚愕しムウすらも同調するように首をかしげる。
なぜなら……まず千刃学院の方は実に普通で。
『先鋒:アレン=ロードル』 『中堅:ローズ=バレンシア』 『大将:リア=ヴェステリア』
と書かれておりセオリー通り3人ちゃんと揃えているのが分かる。
未だ姿は知れないが、もしかすると先の3人組かもしれない。
元より教師らしき女性1人に少数だけ連れられていた不自然さは、しかし出場選手であり後から入場した、と見るのならば納得と言える。
……名前からして恐らくは先にムウがまじまじ見ていた男子生徒がアレン=ロードルなのだろう。覇気の無さから予測は出来るが、順当に先鋒へ置かれていた。
それはさておき、問題は相手である氷王学園側の出場選手。
パンフレットに書かれた選手欄にはなんと。
『先鋒:カイン=マテリアル』『中堅:未登録』『大将:シドー=ユークリウス』
と堂々書かれている。
お分かりだろう……氷王学院はどういうつもりか1試合丸々捨てているのだ。
大五聖祭は高等部に挙がった1年生たちの成果の披露の場であり、同時に優秀な1年へ実戦を経験させて鍛える場でもある。
元より五学院の交流試合でもあるこの場でそんな、ともすれば侮辱でもあろう事をやってのけるこの大胆さ。
氷王学院の理事長は食えない人物なのか、或いは千刃を単純に舐め腐っているのだろうか。
それとも余程の自信があるのか。
「千刃側、ほんと凄い人ばっかりなのに、何でこんな事やってるんだろうね……」
「……ん……」
「ローズ=バレンシアさんとか指名手配犯や魔獣を倒し続けてる『賞金狩り』で有名だし、リア=ヴェステリア様は隣国の王女様だもん、しかも魂装持ち! ……先鋒の人は知らないけど……」
「…………」
最後で躓いたのは兎も角、今年の千刃は本腰を入れてきているのが分かる。それに対して氷王は上の通り、尚且つ出場者2人も現在のところ特に著名では無いと見えた。
何がやりたくてこんな采配にしたのか、詳しくはそれこそ氷王学院へ直接聞くしかあるまい。
そして先の黒髪の女性がどうしてあんなに憤っていたのかも合点がいこう。
そりゃそうだ。こんな挑発行為をされておいて怒らない剣士など居るまいて、である。
初っ端から疑問が生じる大五聖祭となってしまったものの、そこへ追い打ちをかけるかのように、続く別学院の選手紹介でクノンはがっくりを肩を落とした。
「イドラ=ルクスマリアさん、まさかの未出場……私この人の試合、本当に見てみたくって……」
「……ん」
地面に沈みそうなぐらいのクノン、慰めるかのように肩をポンポンするムウ。
―――こんな事で摩耗し、擦り切れかかった元人間の感情が、ひとかけら戻っても良いのだろうか……本当に良いものなのだろうか。
閑話休題。
『え~、会場にお集まりの皆々様……大変! 長らく!お待たせいたしました! これより第1試合を開始いたします!!』
紆余曲折あったものの。
多少長めな開会式を得てから待つこと暫し、実況席から高らかに宣言が上がり、大五聖祭の幕が本格的に上がる。
「パンフの時点で波乱だらけだねぇ……試合もとんでもない事になるのかなぁ」
「ん~……」
一見すれば気弱になった影響での世迷言にも聞こえるソレ。
しかしてムウは否定せず、加えて何となくそんな予感を覚えているのか、少しばかり上の空とも取れるリアクションを返した。
『では千刃学院、先鋒! 氷王学院、先鋒! 入場をお願いします!!』
様々な思惑の交わり、混ざるその中で、とうとう今年の大五聖祭、その記念すべき初戦が始まろうとしていた。
そして。
この戦いと、その次の戦い。
2度、2種。
観客に息をのませるとんでもない事態が発生すると。
この時はまだ、誰も知らなかった。
Q6.「相手の技によって的確に対応を変える」
「多種多様な戦闘経験と技術の集積体」
ってことはつまりリサ達が言っていた「剣術して無いからこそ」ってそういう事?
A.そういう事ですね。他二人の我流との違いの一つはそこです。
ムウは本人にその気が無くとも「育てる」立ち回りが可能な訳ですね。
どんだけおかしな方法を取ろうが相手に合わせてますし、
その方法も技を使ったりねじ伏せたりばかりではないので割と分かりやすい訳です。