刃尾少女に装い有らず~億年の素振りに我流で張り合ってみた~   作:阿久間嬉嬉(新)

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実はムウの能力(固有の異能、一億年ボタンで言う魂装の方)の設定は全部出来上がっています。
なので後はそこまでの話を書くだけだったりします。

そこが一番の難所かつ最も続く長丁場と言えばそうなんですが。

それはそれとして本編をどうぞ。


黒き組織

 祭りの喧騒からやや離れた場所。

 路地裏や建物の内部、影の濃い場所に……彼らは居た。

 

 フード付きのローブから、その下のシャツからズボンから、剣の鞘に至るまで黒づくめ

 

 誰に見られている訳でも無かろうにフードを目深に被り、複数人で固まったままじっとして居るその様。

 もし誰かが目撃していたのなら、警邏の聖騎士へ一発通報されるだろう。

 仮装グループにしたって準備している場所がおかしい。ちゃんとしたステージはあるし、位置は彼らが隠れている複数のどの地点より先。

 

 どう見ても何かを企んでいる怪しい集団だ。

 

 

 そして―――事実、良からぬ事を企んでいる集団である(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 彼らが今目を向けているのは《大同商館》と呼ばれる、現代で言うビルにも似た背の高い建物。

 

 そこの最上階では『五豪商』と呼ばれる、この国・リーンガード皇国における大商人達がそれぞれの事業の動きや成果、今後の運営について話している最中でもある。

 

 彼らの持つ権力、財力は筆舌に尽くしがたいほど。

 そして取り扱っている物の幅や流通、諸々のコネクションの違いこそあれど、互いが互いを下手に失脚させようとしても損害の方が大きくなり。

 「ならば国益の為にも足並みを揃えるべき所は確り揃えよう」……という事でこの会議は例年行われ、分かりやすく成果を見せるための、各メーカーおよび小売業などから新作を発表する場にもなっている。

 

 元々祭りとは別個だったのだが会議自体がそうかからない事、有数の権力者が顔を何度も何度も合わせる『危険性』を加味し、今のような形になったとかなんとか……。

 

 なおあくまで足の引っ張り合い、儲け話逃しの共倒れをしすぎない(・・・・・)ようにと言うだけ。中では現在、腹の探り合いでバチバチなのは言うまでもあるまい。

 

 また当然ながら建物の周囲には厳めしい顔つきの護衛達がずらりと構えており、聖騎士の隊服を着ていない――聖騎士には制服がある――所からも豪商達の私兵と分かる。

 確かに外部の介入を容易く許せない立場でもある上で、そもそも金を持っているのなら私兵を雇ったり舞台を個人で立ち上げた方が早い、という事なのだろう。

 

 

 ――そんな警戒厳重な所へこの黒づくめの、あからさまに良からぬ者達が目を向けている

 周囲の建物や路地裏、物陰に潜みながらに。

 ……穏やかでは無いことが起きようとしているのは、もはや自明の理だ。

 

 目当ては十中八九で五豪商。

 

 分かりやすく誘拐しての身代金目当てか、それとも裏で誰かが糸を引き人数を“減らして”何かしようとしているのか。

 仔細読み取れはしないものの、邪まな考えで潜伏しているのだけはハッキリしていると言えよう。

 

 3日にわたって行われる大きな祭りの最中ならば確かに1回限りでも隠れやすくはある。人の眼も行動する案で欺きやすい。

 

 しかして警備を突破できるかどうかは話が別だ。

 正面からはもちろん、周囲の建物からも少し離れているため飛び移るのは至難の業。

 それができる剣士だらけならそもそも配置は屋上だ。こんな所で潜み続ける道理などあるまい。

 

 まさか……何かを仕掛けているのだろうか……?

 

「予定時刻までもうすぐか」

「ああ。聞こえたら(・・・・・)駆けろ、準備をしておけ」

「「「了解」」」

 

 それを匂わせるように確認を取り、剣の柄に手をやって、じっ…と大同商館のとある一点、半端な階層を全員が睨んでいる。

 

 何が起こるのか、何を起こそうとしているのか。

 

 

 邪な考えの行く果ては何か―――。

 

 

「開始まで残り」

 

       ガ ウ ン ッ ! !

 

じんびっ

「は?」

「……えっ」

 

 ―――集団、その全体の事こそ分からないが。

 少なくともここに集うた彼らの果ては。

 

「なんだ!? おごぺ!

がぶぁ!?

 

 聖騎士たちが迎えてくれよう刑務所であろう。

 

…………

 

 そして意外や意外。

 数人を登場と同時にのした人物は、驚くほどに小柄であった。

 

 フードで人相は分からないが明らかに頼りない。

 

「何だこのチビぃ……!」

「魂装か、何かを飛ばしてきやがった」

「こちらに歯向ぼびばべらっ?!

 

 お前らの事など知った事かと言わんばかりに1人が中距離から仰け反らされ、小柄な人物がの姿がブレ、追加の打撃をバチボコを受けまくる。

 

 見えない。

 いったい何をした?

 

 それらを見て流石に警戒したか後ろに跳んだ2人が剣を構え。

 

「がべぇっ!」

「は? さ、さっきまで前に……ア゛ギ!?」

 

 そこに一瞬で回り込まれ、背後から殴り倒され。

 驚いているもう1人は振り向こうとしてそのまま剣を折られながら(・・・・・・・・)蹴り倒され。

 

「奢ったな゜っ、がふ……っ!」

 

 斬りかかった1人は謎の歪みに顔面を打たれ、同時に何かを撃たれ引っ繰り返され。

 

「――――」

 

 最後の1人はろくに喋れないまま ガウンッ! と再びふっ飛ばされて壁に叩きつけられた。

 

 そのまま小柄な人物は彼らの剣を圧し折り、既に損壊させている物も含めて粗くも粉々にして、念には念をとまとめてロープ……もとい何処からか拝借してきたらしい太いワイヤーで縛って繋ぐ。

 

 黒衣の謎の集団は結局、何も出来ぬどころか表に存在すら気取られず、制圧された。

 戦闘だけなら時間にして30秒もかかってはいまい。

 

 そんな早業を行った小さな人影。それは。

 

「……次」

 

 なんと、と言うべきか。

 やはり、と言うべきか。

 

 テックウェアのデザインこそフード付きなのを除いてガラリと変わっているが……。

 

 飛び級特待生・ムウであった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

   ここで、ムウの持つ【眼】について改めて説明しよう。

 

 

 先にも言ったがムウ、及び彼女が属する尖塔群へ住まう“者共”の共通機能が件の【眼】。

 

 戦闘力に関する総合的な彼我の差を測定したり、対象の状態を読み取ることで戦闘不能か否か、一件何もしていない様に見えるものが《本当は何をしているのか》と言う情報を得られたりもする優れもの。

 

 また広域レーダーの代わりにもなり、特定個体や個人を読み取るには一度で会う必要こそあるものの、種族や大雑把な強弱なら初見でも分かると便利な要素には事欠かない。

 

 さらには戦意や怒気、邪心などと言った感情を察知することすら可能。果てはレーダーの応用と状態の観測を始めとした情報の随時測定、そこに戦闘経験を加えて簡易的な動作の予測すらもやってのける。

 

 

 ―――しかしこの【眼】。何でもかんでも読み取れる万能なのかと言うと、実はそうでは無い。

 

 

 まず単純にサイコメトリーは不可能であったりする。

 大五聖祭の例が1番分かりやすく、ムウはアレンから得た情報とその表情と口にした言葉で大体を割り出して『ダメな人を見る眼』を浮かべている。

 つまり思考や内心を読み取るような芸当は流石に【眼】でも出来ないのだ。

 

 既に言ったが動きの予測も読心ではなく、勘と比べるまでもなく正確ではあれど経験則ありきに、プラス機械的な演算を加えたものなのだから。

 

 また戦意や邪心などを知覚することは可能なのだが、反面そう言った “戦いに繋がる” だろう感情以外については鈍感と同義な有様。

 そして分かるのはどこに向けられているのかまで。結局は自分の眼で見ないと詳細が分からない。

 

 間接的に戦え、闘え、タタカエと急かされているかのようだ。

 

 要するにどこまでいっても、どんなに便利に見えても、ちゃんと目視してから追加で【眼】を使った上で、戦いを重ねなければ分からない事の方がやはり多いと言えよう。

 経験則から割り出す事もできようが、それだって直接的闘争あるいは逃走があるゆえ。

 

 『戦うことこそ支えても、戦わぬことは許さない』――あたかもそう言われてるかの如く。

 

 

「西方……あの、建物……」

 

 だが欠点があれども、少なくとも今は何の問題も無い。

 ……なにせ見て分かるほど(・・・・・・・)怪しい奴らが、神様通りを満たす雰囲気に不似合いかつ不釣り合いな邪心(・・・・・・・・・・・・・・)を蓄えているのだから。

 

「死角、算出……発見……突貫」

 

 先ほどムウがクノンに「ここに居て欲しい」と一言断って駆けだした理由は即ち『これ』。

 原因が原因だ、駆けだすだろうとしか言えなかろう。

 

 楽しいお祭りの中、怠惰やら嫌悪やらを通り越したまっ黒な気配を内に溜めた奴らが複数人、そして複数個所へ不自然に固まっており、それだけでも訝しむにはこと足りる上で。

 ムウの様に直で感じ取れるとくればそりゃあ誰だって怪しむというもの。

 

 大同商館と五豪商の存在もあり狙いもあまりに分かりやすい。

 

 

 ゆえにムウは自身の分かる範囲で事前に防ごうと動いたのだろう事が容易に伺えた。

 

「フ……ッ!」

 

 テックウェアの機能なのかまた色彩はまたやや違うものへ、意匠も細部が異なる類へ変化させながら走るムウ。

 

 なるほど。

 フードを被って居ようと背格好は同じだろうに、サバイバルナイフを取り出すまでシドーがムウにいまいちピンと来ていなかったのは、デザインが普段とは違ったから結びつかなったゆえだったのだ。

 

 今回も身バレを出来る限り防ぐためにやっているのだろう。

 

 

 そして……音を立てぬまま気配も無きまま、人混みを外れて疾走するムウは……この後の商館襲撃の為にか開いていた窓からヌルリ 、音もなく忍び込む。

 

 脚から飛び込んだのを活かし、同時に蹴りバージョン<飛影(ひえい)>をガガウン! と射出。それは【眼】で確認していた対象達の後頭部へと綺麗に命中。

 

 祭りの喧騒にギリギリ紛れるかぐらいの轟音を立てて壁面に激突させ、まずは悲鳴も出させずに2人、否巻き込んでいたのか3人を無力化。

 

「なんだゴオ!

「聖騎士にバレたのゔッ……ア゛!?」

 

 刹那の内に近寄って瞬間2連撃で殴り飛ばした1人と、殴りぬいた勢いで数回転しながらソバットをくり出し追い打ちで振りぬいた手刀<飛影>で1人、計2人を無力化させる。

 

 一見すると軽い攻撃に見えるが、大の男をも軽々投げ飛ばすムウの膂力をもって、かつ急所や弱所を狙った重撃。行動不能や気絶は免れまい。また暗がりゆえに<飛影>も見えづらい。

 

 相手からするとただ2連撃で吹き飛んだようにしか見えないだろう。

 

「くそォッ!!」

「…………」

 

 次に狙いを定めた地点(ここ)に居た集団は先よりも少なく、あと1人しかいない。

 

 背後から襲い掛かったその黒衣の斬撃もサーチと戦闘経験の合算による予測回避で見ないままスルリ かわされて<八咫烏(やたがらす)>応用の同時5連裏拳で正中線をぶち抜かれ、吹っ飛び、そのまま戦闘不能となった。

 

「ん……」

 

 やはり剣を使わない方がスムーズで強くアレンの技も出しやすく、そして恐らくは応用もしやすいことに複雑な想いを抱いているのか、一瞬ながらムウの顔が僅かにだけ歪む。

 

 しかして今優先すべきは謎の集団の単純だが不可解な企みを阻止する事。

 

 

 彼女も即座に切り替え、集団を再びワイヤーで縛り終えると少し離れた場所に居る3つ目の黒衣の集団へと襲撃をかけるべく、走る。

 

(やや、南、方……)

 

 どれ程の規模で展開する予定であれど、余程でもないかぎり凡そ1/3でも削ってしまえば襲撃失敗のリスク―――商館側にとっては護衛成功の確率は上がる筈だ。

 

 ムウとてそれは理解しているらしく感知した範囲でも近場に絞って、即時制圧を主として強襲している様子。

 

 ここまでは順調。けれどもここからどうなるかは分からない。

 

(闘争、戦意増だ……戦意、確認。目的、貫徹……戦闘続行……じゃ、ない、断続)

 

 己を戒めるかのように。

 

 あるいは……闘争衝動や『日常(にちじょう)』の残滓と目を反らさず向き合い、されど呑まず溶かしながら。

 長めの跳躍から宙返りで上下反転しつつゆっくり瞬きをして。

 

 直後、ムウは眼下の広めな路地にいる更なる集団目がけ、即時発動式・応用<朧月(おぼろづき)>で文字通り空中を蹴って急降下した。

 

(波長、から、推察……魂装、習得者、を、確認)

 

 【眼】による観測と判定から逃れられるものはおらず、次なる目標の彼らの中には1人、図抜けている者が居るとムウは即座に見抜く。

 

 だからか壁スレスレの足が付くような、不意の先制に備えた軌道で迫っている。

 

 

 ―――目標総数:6人

 

 ―――魂装持ち:1人

 

 ―――武器種:剣・両刃直刃・刃渡り83㎝・例外なし

 

 

「…………!」

 

 そのまま壁を足場に走るようにして再加速。瞬で接近すると1番近しい黒衣をガツン! と殴り落とし。

 

 有無を言わせず、次に近いもう1人を2連蹴り<飛影>……蹴りに重ねてはなったからか、勢い余って回転しうつ伏せにさせられ。

 

「なん゛っ?!!?!

 

 声を上げた1人は拳<飛影>の着弾とほぼ同時に急接近し放った肘鉄で壁に叩きつけて。

 

「この……ってうわ!?」

「危ねぇ!?」

 

 更に2人へ、いつの間に抜き取ったのか剣を投げて牽制。その隙に近寄ってきた1人の唐竹割りを避けながらに顎を蹴り飛ばし、足を戻しながら拳を振りぬく。

 飛んで行った先には、体勢を立て直しきれていない黒衣がいる。

 

「ガべへぇッ」

「まっ、服が縫い付けおぶっ……!!

 

 人1人がぶつかってもなお止まらぬ水平移動。当然ながら威力はすさまじく、壁に打ち付けられた巻き込まれもそのままダウンした。

 

(……商館、その中腹、目線は、そこに……物品……1つ)

 

 ムウはそこで彼らの目線から何かを紐解き、次いで何かを【眼】で発見するのだが、まだ優先順位は違えないのか偶々残った1人へ目を向ける。

 

 いや……よく見るとどうやらこちらも縫い付ける気で投げたのか、ローブの1部がムウの投げた剣で切り裂かれていた。

 そうなるとただの撃ちもらしではなく、実力あってこそなのか。

 

 つまりこの残った黒衣の男こそが。

 

影の支配者(シャドウ・ルーラー)ァァァァッ!」

 

 魂装使いだ。

 

「せっかくの襲撃が台無しじゃないかああぁ!? どうしてくれるのかな、君は、ねえ君はさあ!!!」

「…………」

 

 狂ったように剣を振りたくる男は不意にピタッと止まり、かと思えば恐るべき速度で弾かれたようにムウへと飛んできた。

 

 放たれるのは……豪速の突き。

 

時雨(しぐれ)流―叢雨(むらさめ)ぇ!!」

 

 しかしムウにとってはあまりにも遅い類だったか、僅かに体を揺らす程度であっさり回避。そして少しフラついた男の背後を取ると、これまたいつのまに握られていた愛用の剣を横に薙ぎ払う。

 

 順当に男の身体へと吸い込まれていき。

 

 

 すり抜けた(・・・・・)

 

 

「あはぁっ!! 無駄無駄無駄だよぉ!」

 

 男は分かっていたのかそのまま蹴りをくり出す。

 

「は?」

「…………」

 

 ……それを普通に掴まれて地へとメンコの如く投げつけられた。

 

「ちょ、ま――ぐほぉ!

 

 ムウは分かっていたのだろう。

 【眼】もってして『ああ、避けられるな。これは』と。

 

 もしくは単純に、反射的に受け止めたのだろう。

 来たから、掴んで、投げつけた。

 

「おおい……おいおいおいおい!! バカな、馬鹿でしょ、おかしいだろそれ、ねえ!! 少しはさぁ!!!」

「…………」

アホみたいに面食らっとけよ僕が馬鹿みたいだろうがよぉぉぉぉぉ!!!!

 

 ものの1発、たった1回、初見も初見のやり取りで自分の魂装を実質無力化されたせいか怒り出す男だが、常に狂っては居れど太刀筋は努めて冷静。

 

 親指で弾き撃った高速の石を叩き落すという先の黒衣共とは一線を画する実力を見せつつ接近してきた。

 

「時雨流ー篠突(しのつ)く雨っ!!」

 

 袈裟切り、切り上げ、切り下ろし、突き。

 雨のような連撃がムウへと襲い掛かるがこれも難なく、回避と剣の受け流しをもって対処され、再びムウの剣が閃く。

 

 だがそれもすりぬけ……。

 

「あは―――あぇ?」

 

 今度はムウの上半身と下半身が異なる生き物かの様に、振り切った筈の体勢のまま脚が疾走を開始し、相手の身体と重なって。

 

 瞬間、条件が合わなかったかすり抜けきれなかったのか、男の方が吹っ飛んだ。

 

「ごばっ!?」

「…………」

「い、でえ……だからぁ……だからだからだからさあああぁぁぁぁ!!!!!!!

 

 とうとう本当にキレだした男が踏み出した足から、少し大げさに距離を取るムウ。

 その目線が向いているのは、相手の脚の向かう先と、自分の“影”。

 

 なるほど。

 彼の能力はどうやら影に関するものらしく、すり抜けたのは恐らく《自身が影となったから》。発動条件は相手の影を踏む事なのだろう。

 

 本体を陰に潜ませ、影と本体の立ち位置を逆転させる回避能力。中々の初見殺しだ。

 

 ……まさか通じない相手がこんな所にいるとは思うまいて。

 

「時雨流ぅぅっ!!」

 

 焦ったのか男はムウの影を踏むことも忘れてそのまま突っ込んでくる。

 

 時雨流はどうも突きが主体なのかこれまた腕を引いており、難なく避けられるだろう。そして避けるだけでなく反撃も容易いという事であり。

 

「…………!」

「は―――しまっ」

 

 ようやく男が気付いた時には、ムウの剣はもう振り出した直後。

 

 避けるすべなど、無いのである……!

 

 

 

“ グ キ ン ”

 

「……!」

「ありゃぁ?」

 

 いや、あった。1つだけ、あったのだ。

 

 依頼続きで交換を忘れていたのだろう―――ムウの剣の柄の摩耗と言う、今まで散々意識してきたはずの、当たり前だった裏切りの事象が……!

 

「おやおやおやおやぁ! 粗悪な武うぎゃあああぁ!?

 

 ……いや、訂正しよう。甘かった。

 

 折れたと見るや否やムウは躊躇なく刀身をキック。凄まじい勢いで飛ばしてきたのである。

 それだけに留まらず、ムウはひん曲がった柄を男が隙をさらした足目がけ指で弾いて。

 

「どわっ!?」

 

 勘が良いのか避けようとしたが、ホップしてきて余計派手に回転させられた彼を見据えたまま。

 

 追撃をしようと身構えて。

 

 

 

 

 ズ ド オ オ ォ ォ ン ! ! ! 

 

 

 

「……!」

「ぐ……は、ははっ……始まったねぇ!?」

 

 その轟音に、止められた。

 

 大同商館から上がる火の手に、停められた。




Q11.やっぱりムウちゃんの【眼】ズルいって!?

A.それは否定しません。

一応弁明するなら一重に彼女の経験則ありきではあります。
例えば「まず右から攻撃する可能性大」「左方辺りに何かを仕込んでる動き」は分かりますが、
他は別の情報から自分で考える必要があるので。

ただやはりというか初見殺し“殺し”なのは正にだと思います。
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