刃尾少女に装い有らず~億年の素振りに我流で張り合ってみた~   作:阿久間嬉嬉(新)

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章を分けて、今話から改めてクラス対抗戦編の開始です。


波乱の対抗戦
新・人狼(ワルガキ)の日常


 1年生時特別単位『魔剣士お仕事体験』、全日程終了。

 

 

 支部(ごと)にむらがあるらしく意外にも1日遅れでドベだった(・・・・・・・・・・)ムウが戻った事で晴れて全生徒が全課程を終えた事となり、月前半の大イベントはこれにて幕を下ろす。

 余談だが1人でお仕事体験を熟したのもムウのみだったと言う事がここで明かされたとか。まあ強さを買われている証とも取れるし、クノンが居る事を知っているがゆえだったのかもしれない。

 

 ……地味にイヤ~な特別感が漂っている(ムウ視点)ことはこの際置いておこう。

 

 ――閑話休題。

 はてさてそこから少し経ち――。

 

 この約半月ほどの実戦型な職場体験、並びに現場での実質的な鍛錬を得たことによってムウ達の人狼学院に、特に1年生達に大きな、いくつかの変化が起きていた。

 

 

 

 1つは全体的なレベルの向上だ。

 

 名前こそ『お仕事体験』ではあるものの実態は“魔剣士としての実戦修行”に近しいこたびの特別単位。日々の鍛錬では得られぬ成果、異なる環境での経験を積めたとあれば、大なり小なり地力が向上していることこそむしろ自然。

 

「なんだテメェ、癖が直ってやがるな……?」

「あったりまえじゃん? ほら、今度こそ埋めてやんよ!」

「はっ、抜かせ! そっちこそぶちまけろやぁ!」

「アイツも踏み込み良くなったんじゃね?」

「つうか全員面白れぇ事になってんぜ」

 

 同じ流派の魔剣士に出会い、短期の手ほどきを受けた生徒。

 人狼と魔剣士、互いに血の気が多いゆえぶつかった生徒。

 鈍麻な低級魔獣であっても、人型だからか「試し」を得て成長した生徒。十人十色に皆々がレベルアップしたのである。

 

 そしてそこにも掛かる2つ目となるのが上級生の本格的な参入

 

「おいおいおい! また上級生から決闘を申し込まれたとよ!」

「特待のチビはともかく、とうとうこっちにもかよ。こっから本番って感じだぜ……!」

 

 ムウこそリサ、ダン、ザハックらと度々模擬戦をしていたし、何度も決闘を挑まれたように全く関わっていなかった訳ではない。何より乱闘騒ぎはムウの関与外でしょっちゅう起きていた……のだが、人狼学院の方針や、単純に見極める目的で、そこまで多くの2~3年が首を突っ込んでいた訳でも無かった。

 だが今回の特別単位での実力向上、『見回り』で先輩達自ら目撃した1年生達の個々の腕前、様子見期間を過ぎ実質的なGOサインが出たことなど諸々が影響して本格参戦。

 

「流石に負けるかぁ……まあ、魂装あったししゃーねえわな!」

「次だ次! 次こそ捻り上げてぶち折れ!」

「舐めんな1年坊! 何度こようが上から踏み潰したる!」

 

「ちょっと、チーム戦だって! 足りないし誰か呼ばないと!」

「ガロウ……いや決闘の届け受理したばっかって聞いたな」

「じゃあカイデルとムウの奴呼べよ! こっちも全部だ! どたまカチ割ったれ!」

 

 次々潰すだけ潰しても面白くない、イグゼ学院長や教職員たちの目もあるという事から、致命的な事態はほぼほぼ無い。とはいえ無いと言うだけで、怪我人は毎度あとを絶たない。

 けれど、それでも魂装の会得者も当然ながら多いので“刺激”には事欠かず、入学当初からの喧騒が余計にバージョンアップしていた。

 

 

 次に3つ目。ムウ=マジャクゥが正式に荒天流として認められたというもの。

 

 誇らしさをメインに複雑な感情を混ぜた不可思議な表情こそしていたが、お仕事体験の期間中に同門の先輩と出会っていたらしいヘルガがきちんとした場を設け、そのうえで晴れて荒天流の同門の認定を与えたのである。

 

 ……一見すると個人の変化の範疇に収まる程度のことなのだが、飛び級の特待生であり同級生も上級生も叩きのめしてきたムウだからこそ、そんな彼女が『我流ではなくなった』という件は瞬く間に学院中を駆け巡り、波紋を呼んだ。

 

「ク、クソがッ! ガチであの先公と同じ……どぅおわ!?

「……ハッ

うご!

「我流と一瞬で切り替えて、組み替えてる。え、マジ? マジやってる?」

「捨てたかと思ったがよ、余計厄介になりおったわこりゃ」

 

 当然ながらそれ目当てで挑むものも増え、血の気の多さからこれまで通り戦いたがる生徒も居れば、マイナーな派閥を一目見たいその知的好奇心由来な生徒も居ると千差万別。その結果どうなったかは生徒ごとに異なるのでムウ本人の気まぐれありきで現在最長約1分という共通項だけ記しておこう。

 

 ――ちなみにヘルガの表情の理由はもうお分かりの通り。

 

「自分を荒れ風そのものとして、しなりや躍動の方を意識しつつ剣技のモーションの形に切りぬく、そしたら会得出来ました……か」

「ん」

「見た感じだと木剣が今んとこ1番やりやすくて、普通の剣だとまだ未熟だけど最低保証ラインは満たしてます、だな」

「ん!」

「ああ、よく分かったぜ! ……本当に何なのおまえ?

 

 ――これである。お決まりの言葉と共に飛び出した、ムウの鍛錬模様である。

 

 『アクセルが無い車でアクセルを踏み込み最高速を出す』などと、本来ない機能を要求されたに等しいのが今回のムウ。その答えが じゃあ1からそう言うのを作ればいいじゃん! なのは理に適ってこそいれ狂気の所業に他ならなかろう。

 ……プリセットを1から組み直すとは確かにムウ自身も考えてはいたこと。

 されど組み直すための材料に “小分けにした仕組み” を。骨子に “1種の自己暗示を用いた理念の本気の体現” を用いるという、元と異なる材料で元と同じものを組み立てた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)ような行いに関しては別。

 

 ある程度の指向性を持たせた風を用い、嵐の如く吹き抜けし奇想天外な剣術を会得する。その為に剣の存在を半分ぐらい無いモノとして『自分がガチで嵐になります』などと、もはや目的と手段が逆転しているような有様だ。……会得してくれたことが嬉しいのも本当であり、そりゃあ複雑な顔もするだろう。

 

 また他にも理由はあるのだがそれは後述するとして、とにもかくにもヘルガの内心には嵐が吹き荒れっぱなしである。

 

「ちなみにそれって他のにも応用できるか? (うな)りの刃風(じんぷう)とか」

「風主体、でないと、今は、難し、です。けど、コツ、と、方法、は、掴んだ」

「なるほど……つまり遠からず出来そうなんですね、で良いんだな?」

「ん!」

「そっか、そっかぁ」

 

 ―――私の1番弟子が外れ値すぎるんだが―――

 

 暫くものすんごい顔をしていたヘルガはしかし、ほとんど鉄面皮ないつものムウを見やって。

 

(だけど飛び級ちゃんがお仕事体験を経て成長して、自分で掴んだってのも事実だ。あまりにも喜ばしいじゃないですか、だな……!)

 

 驚くよりも呆けるよりも……初手で大きく躓きかけていた彼女がスランプとなる前に脱出した事をまずは喜ぼうと、そちらもまた偽らざる本心である笑顔を浮かべた。

 

「これからも、よろしく、おねが、します」

「ああ、こちらこそ宜しくお願いします、だぜ! 飛び級ちゃん」

 

 もう一度言おう。

 いかな変則技であろうと、いかなイレギュラーなアンノウンだろうとも、教え子が荒天流を受け継いだのは事実であり。

 ヘルガにとっての初の弟子且つ実質的な妹弟子の成長が嬉しいのは、そちらの感情も大きいのは決して強がりでも逃避でもない、心に温度が広がる真実なのだから。

 

「むしろ逆に楽しみになってきたぜ」

「うぃー」

「え…………おまえそんなもんまで会得してきたの?」

「いぇあー」

「サインまで……いやぁ順当にガラ悪く染まってきていますね、だなぁ」

 

 その後のムウとの日々の鍛錬でヘルガもまた知らず変化が起きるのだが、それはまた別の話

 

 

 続く4つ目は、ムウ自身の行動規範の変容である

 

 実の所これまでの彼女は決闘も模擬戦も、相手の誘いや挑戦を受けるか否か問わず画一的でもあった。それはさながら分刻みスケジュールよろしく、或いはいっそ反復運動の如く、承諾・拒否がどこかシステマチックを思わせる巡り方をしていたのだ。

 しかし魔剣士お仕事体験にて得た『どう向き合い、どう戦いを捉え、闘い方をどう変えるのか』を実践し始めたのだろう。傍目でも薄っすらではあるが個人目的あり&自主的に、すなわち特定のサイクルは捨てて承諾と拒否を使い分けるようになったのである。

 

「挑み方と、断り方、を教え、て」

「ん? ……ちょっと待って! それすら知らなかったの!?」

「質実剛健の様相と思っていたが、まさか抜けている面もあろうとは……」

 

 何かと縁のある先輩(リサやダン)にそんなことを教わる始末ではあったが、まあそれはそれとして。

 

 ……言ってしまえばやって当然でもあるソレすら出来ていなかったと考えると、 “摩耗” を筆頭とする尖塔群がムウへ刻んだ影響は、振り切ろうとしても足を引くほど途轍もなく大きいことが伺えよう。そう言う面では外見通り、まだまだ発展途上なのかもしれない。

 

 なにあれともあれ。

 そんな訳で同じ相手の短期間の挑戦含めて全てを受けていた1stを過ぎ、システマチックサイクルだった2ndを超え、気分と好みでランダムに組み替えた3nd仕様に進むことができたムウ。

 

ようお前が1ーC組のチビスケだなぁ? ……最近我流を脱却したらしいなぁ? ドサンピンが持ち上げられてたんかどうかはっきりさせようじゃねぇかぁ!!

「ん」

 

 そうは言えどもムウ自身の認識と動き方が変わっただけ。周囲は相も変わらずで日に最低2回は戦っていたりもするのだが、これはもう人狼学院ゆえ仕方ないとしか言いようがあるまい。

 

 また何気に今まではスルーしていた乱闘にも、乱戦や1対多などを経験したがったのか参加するようになり。

 

「うぃー」

「イェーイ、チビちゃんウィー! しけつさんがー!」

「すっげぇ……! 壁が現代アートだぜもう」

 

「どうだ! ハハッ、生き残ってみせたぜ!!」

「なにおう! ワシとて数合と幾度も打ち合って見せちょるわ!」

「ガロウとカイデルの奴いつの間に……」

「そりゃ~悔しかったんしょ、天才なのは事実だし」

「両方AとDの筆頭だかんな! それに漢にゃプライドっつう奴があんのよ!」

 

 何がとは言わないが壁に前衛的で独創的な芸術が一時的に刻まれたり、乱闘会場となった箇所の1角に山と積まれるようになったらしい。

 

 ―――受けるばかりでしかなかったC組筆頭が自ら動き始めた―――

 模擬戦・決闘もそうなのだが、あくまで受動的のみを主動としていたこれまでと比べればだいぶ能動的になったと言えよう。荒天流を会得したこともあろうが……こちらもより大きく波紋を呼んだ理由なのだろう。

 

 多様な方面から鋭く張り詰めた空気が強化され、日々吹く血風に事欠かぬ。ムウほどではなくとも鳴り物入りの生徒が波を呼び、魔剣士お仕事体験や様子見期間を含め、これを例年繰り返してきているのか。

 なれば、なるほど強豪である理由が解せようと言うものである。

 

 

 

 そうして5つ目……最後の変化

 魔剣士見習いとして実戦を得たからこそ起きた、1年生たちの大きな変化

 それこそが―――。

 

「今日こそお前に勝つぜ、ガキ。今のおれは以前と一味違うっ!」

「……会得……」

痺れやがれ――<射伸電針(エレクトロレイピア)>!!」

 

 ―――1年生内における新たな魂装会得者の出現、そして増加

 実戦経験に加えて、人数制限ありとは言え霊晶剣の使用……すなわち魂装の授業を受けて切っ掛けを掴んだのもあるのか、既に己の魂装を発現させる天才・秀才たちが現れたのだ。

 

「雷電系……」

「どうだ、おれはもう持ってんだぜ?」

 

 少し前にも説明したが、この世界における魂装の重要性は傍目の印象を遥かに超える。それは剣士の強さの基準が技量ではなく魂装に寄って左右され、【剣士の強さは魂装の強さ】とまで言われている程。

 

 それ自体は決して間違いではないぐらい、魂装の有無それ1つで剣士の、総合的な実力も評価も大きく変わる。仮に相手より剣の技量が上だろうとも、未収得者というだけでワンランクもツーランクも水をあけられ追い越された、などと言ったこともざら。

 

 聖騎士(ようしょく)の階級の上下にも特に拘わり、それほどまでに重要視されている……だがそれも自然。

 

 僅かでも切り付けられただけで100年閉じこめられ文字通り剣士として終わらされる、カインの<百年の地獄(ヘルハンドレッド)>然り。

 低体温症を誘発する副次的な効果まで持ち遠近・攻防において隙が無い氷雪系である、シドーの<孤高の氷狼(ヴァナルガンド)>然り。剣技で成し得ない力はそれだけでアドバンテージとなる。

 

「追いついたなぁ!? 差はないも同然だっ!」

「…………」

 

 特にシドーは直前までアレンが剣術では明らかに上手(・・・・・・・・・・)だったのを覆したのだ、なおさら疑うべくもない。効果が非常に特異であったり偏りが過ぎる極一部の例外を除けば、先の大五聖祭におけるアレンVSシドーのそれと同じ結末になるのがオチ。

 

 そして人狼学院でもまた、ムウ=マジャクゥという“かつての強者” の懐を目がけ。

 才能という絶対的な差を突き付ける雷の刃が、牙をむこうとしていた。

 

 

 その残酷な、一部始終を余すことなく、ここに記そう……。

 

 

「おらよっ、伸び射貫く電撃(エレキニードル)!!」

 

・ムウ、遠間まで貫く電撃の刺突を届くか届かないかの内にさっと回避。同時に接近。

 

えっはや、おい、まっ……こんのやろ!!!」

 

・伸び射貫く電撃の連続発動。

 ムウ、先までの加速が嘘か幻のように急停止。

 今度は体を揺らすようにステップを踏み、緩やかに避けつつ近寄ってくる。

 

「! よし、剣に当たっ」

 

・何発目かを避けた拍子に、左肩へ担いでいた剣の峰に命中。

 電撃であるため体に伝わる……かと思いきやよく見るとそれはいつの間にか抜かれた木剣。

 ムウ、どうやらわざと当てたらしく威力で左手が躍動。

 

ごばぁ!?

 

・ムウ、木剣を投擲。豪速の弾丸が突き刺さる。

 更に右脚だけ単独の生物が如く地を蹴っており、木剣命中から間断なく右の剣を振り上げ一閃。

 

「……荒天流(こうてんりゅう)猛牙(もうが)(はやて)

 

・爆風により壁にめり込む。

 ムウ、相手が気絶したのと同時に技をポツリ、口にする。

 

 

 ――……ああ、あまりに残酷だろう。

 魂装を得たのに何ひとつ差が埋まっていないというこの現実が

 

 

 他にも、他にも。

 

乱れ舞う礫(ダンシングペブル)ッ!」

 

 ある時は土石系統の魂装持ちによる、高速で放たれた無数の石の前に。

 

「…………」

「いぎっ! あ゛だっ! ちょっ、跳ね返し……いだぁ!? 止まって止まって!」

 

 避けるに留まらず バギギギギギン! としれっと弾いて相手へ逆に命中させ。

 自ら止めざるを得なくして、言い切る前にまずひとつ踏み込み。

 

「フゥッ」

 

 石のいくつかを、あえて地に向けて返していたことを利用し。

 吹き上がった粗い破片を荒天流の風で叩き付け。

 

「あたたたたたた!? ……あれっ。チビっこ、どこ……」

てい

「はふん」

 

 煙に隠れて跳躍し姿をくらませ、上から剣の腹で一発かまして終了させたり……。

 

かっきれや――<溶解の刃(メルトソード)>!」

「ん……!」

「おいおい正面から来てくれるのかよ? うはは!」

 

 ある時は相手が魂装を出してから一拍置き、突撃を敢行して。

 

「ごちそうさん!」

 

 振りぬかれた魂装の刃が剣をすり抜け。

 ムウもすり抜け(・・・・・・・)

 

「はっ?」

 

 それが『剣を僅かに放りつつ手放して屈んだ』際の残像だと気付く間もなく。

 腹部に拳が連続で叩きつけられて。

 

「おごぼっごぼごぼぼぼぼぼぼぼぼ……!?」

うぃーあー

「ごっはぁ……っ!」

 

 ものの見事にボッコボコにして壁へとぶっ飛ばしたり……。

 

「漸くだな、1年坊のC組筆頭! 楽しみにしてたんだよ、這いつくばらせるのをよ!」

「ん」

 

 ある時は上級生を相手にして。

 

穿(うが)ちの塵風(じんぷう)

「その技…うぶ!?(あの先公よか早、鋭……!)」

 

 魂装を手にするや否や発動を待たずに接近しつつの遠間攻撃。

 

「シィッ」

「おまっ魂装っ!?」

 

 ほんの僅かな隙でもムウにとっては大きな暇であり。

 瞬間、肉薄。手を蹴っ飛ばし、手放させ、宙に居るまま剣を振り下ろし。

 

「猛牙・(あかしま)

どぐわああぁぁぁ!?!!?!?

 

 偶々、直前で、唐突に約束が出来たのが災いしたか、かなりの速攻さで宙を舞わせたり……。

 

 

 まあ大同商祭の影使いの件からして殆ど分かってはいたが。

 魂装1つ発現したり持っている程度でどうにかなるようなムウではなく。“アレンから盗った剣技” を使うのも、弱めたり隠したりした上で―――になるぐらいで、要するにかつての位置から何も動いてなどいなかった

 

「チビちゃん、あれで魂装ないんだよねぇ」

「あれで魂装得たらどうなんだよ、誰も勝てねえんじゃねえの?」

「まーサポート系で応用利かなくてとかならワンチャン……」

「それ自分にかけられない奴じゃないとダメそうだし」

「案外よ、七聖剣いけたりしてな」

 

 彼ら、彼女らの認識とは異なるものの、実際実力をフルに発揮していない時点でこれだ。ムウのパワーに耐えきれる剣が造られるか、単純にアレンの剣技を解放するか、それだけでもう止められる者など出るまい。

 

 しかして。いや、だからこそと言うべきか。

 

「でもさぁ、やっぱさ?」

「……だよな? 思うよな?」

「味方っつーのがほんとヤバげみたいな」

「クラス対抗戦は月のギリのギリって焦らすなぁオイ」

「待ちきれねぇ……!」

 

 C組のクラスメイト達は今月もう1つの大イベントに心を躍らせる。

 

ムウ=マジャクゥ(ミニ・モンスター)をどうすっかだわ、課題は」

「ガロウ、いけちゃう~?」

「流石にきっちぃぜ。相性あったとはいえパイセン爆速でやられてんだぞ?」

「だよなぁ。けど作戦っつってもなぁ」

 

「封じ込める手はイケんじゃないかい?」

「うむ、何人かで釘付けにしちゃるべきか」

「戦いの形式次第では魂装持ちをそっちに当てようや!」

 

「ウチがやるんスかァ? 不意打ちしても厳しそーなんスけど」

「でもアンタが筆頭じゃん。アンタがどうにか出来なきゃ無理寄りの無理だって」

「じゃーやるしかねーっスか。気張らないと」

「1人だけに背負わせん、単独ではやらせん、それ前提だ」

 

 A・B・Dの他の組はこの上ない最大の障害について頭を悩ませる。

 

 そんな四組四葉な色を見せながら、今日も今日とて変わりに変わった人狼学院の毎日は、大イベントを控えたまま続いていくのだった。

 

 

 

「クラス対抗戦……この形式に、するのですか?」

「いやはやなんとも! これまたマッチョりびっくりですな!」

「ま、お試しやな。……きっとドギモ抜くで? ムウ=マジャクゥもな」

(いやぁ、飛び級ちゃんにまたしても試練だなぁ)

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