転生者が往くブルーアーカイブ ソロversion!   作:よっしぃぃぃい

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はじめましての方ははじめまして。
よっしぃぃぃいと申します。

別バージョンで転生者複数verを登校していたのですが、それとは別に転生者単独verを投稿しようと思い立ちましたので。

では、本編どうぞ。なお、一部言い回しが異なるだけでもう一つの方のプロローグとほぼ同じです。


プロローグ
「プロローグは転生者エディションで」


…我々は望む、七つの嘆きを。

…我々は覚えている、ジェリコの古則を。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私のミスでした。」

 

声が聞こえる。

 

「私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかった事を悟るだなんて…」

 

いつのまにか電車にいた。外は見覚えのない光景。朝日なのか夕日なのか分からないが、外はまだ少し暗い。目の前には、左胸から血を流している見知らぬ女性がいる。

 

「…今更図々しいですが、お願いします。…先生。きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから。」

 

声を上げようとしてみても声は出ず、それどころか指の一つも動かせない。ただ記憶を見ているだけなのか?しかし、こんな状況に立ち会った覚えは無い。そもそも先生と呼ばれた事も一度も無い。

 

「ですから…大事なのは経験ではなく、選択。あなたにしか出来ない選択の数々。」

 

経験ではなく、選択…つまり、記憶なしでのループものということか…?

 

「責任を負う者について、話した事がありましたね。あの時の私には分かりませんでしたが…今なら理解できます。大人としての責任と義務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択。それが意味する心延えも。」

 

この女性は…何かを間違ったのか?それも、重要な何かを。

 

「…ですから、先生。私が信じられる大人であるあなたになら。この捻れて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を…。そこにつながる選択肢はきっと見つかるはずです。」

 

大人であるあなたになら…?どういう事だ?

 

「だから先生。どうか…」

 

そこでふっ、と意識が遠くなる。待て、まだ気になる事が…!

 

 

 

 

 

 

 

 

「……い。」

 

何か聞こえる。

 

「…先生、起きてください。」

「先生!!!」

 

目を開けると、眼鏡をかけた長髪の女性がいた。頭には天使の輪のような謎の何かを浮かび上がらせている。

 

「………???」

「…少々待っていて下さいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。なかなか起きないほど熟睡されるとは。」

 

何を言っているんだ?

 

「…夢でも見られていたようですね。ちゃんと目を覚まして、集中して下さい。」

 

見覚えの無い場所、見覚えの無い女性。それに、先生という呼び名。

まずは少し整理しよう。

 

俺の名前は勇凪理玖。転生者であり、同じ転生者仲間+αでFGOの世界に転生し、色々活動してきた。転生特典はゼルダの伝説の主人公リンクの能力。

ここまでは思い出せる。

 

だが、ここに来た経緯、直前の記憶。それが全く無いのだ。

 

「もう一度、改めて今の状況を説明します。私は七神リン。学園都市『キヴォトス』の連邦生徒会所属の幹部です。そしてあなたはおそらく、私たちがここに呼び出した先生…のようですが。」

「よう、とは?随分と自身なさげだが。」

「ああ、推測形でお話したのは、私も先生がここに来た経緯を詳しく知らないからです。」

「は、はぁ?」

「…混乱されてますよね。分かります。こんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でも今はとりあえず、私についてきて下さい。どうしても、先生にやっていただかなくてはいけない事があります。」

「…どうしても、か。それが何か聞いていいか?」

「…学園都市の命運をかけた大事なこと…ということにしておきましょう。」

 

そう言うとリンはエレベーターの方へと歩いていく。

 

「…命運と言われちゃ、放っておくわけにはいかないな。文脈から察するに、俺以外には出来ないんだろ?」

「…助かります。」

 

エレベーターに乗ると、さらに上の階へと上がっていく。その最中、都市の様子が目に入る。学園都市という名の通り、少し見渡すだけで学園が点在しているのが分かる。

 

「『キヴォトス』へようこそ、先生。キヴォトスは数千の学園が集まってできている巨大な学園都市です。これから先生が働くところでもあります。きっと、先生がいらっしゃったところとは色々な事が違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが…でも、先生ならそれほど心配しなくてもいいでしょう。あの連邦生徒会長がお選びになった方ですからね。」

「…これは思ったより面倒な事を引き受けてしまったらしいな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

上階に着き、レセプションルームに案内される。そこには4人の女子生徒がいた。

 

「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!…うん?隣の大人の方は?」

「主席行政官。お待ちしておりました。」

「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています。」

 

全員の頭上に天使の輪のようなものがある事にも気になるが一番のポイントは。

 

全員、大小問わず銃のような…というか、銃を持っている事だ。銃に詳しいわけではないが、偽物ではないことは察することが出来た。

 

「あぁ…面倒な人たちに捕まってしまいましたね。」

「面倒って…」

「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん。こんな暇そ…大事な方々がここを訪ねてきた理由はよく分かっています。今、学園都市に起きてる混乱の責任を問うために…でしょう?」

「そこまで分かってるなら何とかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!数千もの学園自治区が混乱に陥ってるのよ!この前なんかうちの学校の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」

 

風力発電所…学校単体で持っているのか。それはすごいな。

 

「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したという情報がありました。」

 

停学中の生徒が脱走ねぇ…これはもしや。

 

「スケバンのような不良たちが登校中のうちの生徒たちを襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています。」

「戦車やヘリコプターなど出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます。」

 

…戦車やヘリコプター。これで確信した。この都市はただの学園都市ではない。世紀末系の学園都市ではないか…!内心で俺は頭を抱えた。

 

「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ会わせて!」

 

リンは小さくため息を吐くとこう言った。

 

「連邦生徒会長は今、先におりません。正直に言いますと、行方不明になりました。」

 

それを聞いた全員に動揺が広がる。

 

「…え!?」

「…!!」

「やはりあの噂は…」

 

というか、連邦生徒会長って俺を呼んだ…らしき人物だよな。何してるんだ連邦生徒会長…

 

「結論から言うと、『サンクトゥムタワー』の最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。認証を迂回できる方法を探していましたが…先ほどまで、そのような方法は見つかっていませんでした。」

「それでは、今は方法があるということですか、主席行政官?」

「はい。この先生こそが、フィクサーになってくれるはずです。」

 

……………。

 

「え、俺ェ!?」

「…この方が?」

「ちょっと待って。そういえばこの先生はいったいどなた?どうしてここにいるの?」

「キヴォトスではないところから来た方のようですが…先生だったのですね。」

「はい。こちらの理玖先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です。」

「行方不明になった連邦生徒会長が指名…?ますますこんがらがってきたじゃないの…」

 

誰だってそう思う、俺もそう思う。何?結局俺は教員免許なんかねぇけど先生やらされんの?

 

「はぁ…とりあえず俺だって混乱してるが一応挨拶だけしておく。俺の名前は勇凪理玖。どうやら先生になるらしい。」

「こ、こんにちは先生。私はミレニアムサイエンススクールの…い、いや、挨拶なんて今はどうでもよくて…!」

「それはそう。」

 

それはそう。

 

「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと…」

「誰がうるさいって!?わ、私は早瀬ユウカ!覚えておいて下さい、先生!」

 

この調子だと先が思いやられるな。

 

「先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました。」

「あっ、そういう感じなのか。」

 

授業を教える方の先生じゃなくて良かったと、そう思った。

(この時の俺はまだ補修授業部の担当先生になる事を知らない。)

 

「連邦捜査部『シャーレ』。単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒たちを制限なく加入させることすら可能で、各学園の自治区で、制約無しに戦闘活動を行うことも可能です。なぜこれだけの権限を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかは分かりませんが…」

「説明だけで頭が痛くなりそうだ…」

「シャーレの部室はここから30km離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に『とある物』を持ち込んでいます。先生をそこにお連れしなければなりません。…モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど…」

「…ヘリかぁ。」

 

気軽に言えるくらい身近なものなんだろうな…

 

すると突然、ホログラムの人間が浮かび上がる。ポテトチップスを片手に何か作業している。

 

「シャーレの部室?…あぁ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?」

「大騒ぎ…?」

「矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ。」

 

…本当にこんな世紀末地域でやっていけるのか、俺…?

 

 

 

 

 

 

 

 

ドドドド。ドカーン。

銃声や建物の破壊音が聞こえる。

 

「クッソ…ほんっとうに最悪だぜ…!」

 

こうなった経緯を説明しようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ。」

「………うん?」

「連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?」

「巡航戦車…!?」

 

戦車については詳しくないのでよく知らないがとりあえずヤバそうだって事は理解した。

 

「…ふむ。」

 

確かに外に視線を向けると、遠くで暴動が起きている。

 

「とりあえず…」

 

腰に手を添える。相棒と言っても過言ではない道具『シーカーストーン』がある。

 

シーカーストーンはブレワイにおいて主人公リンクが使う道具である。遠隔起動できるリモコンバクダン、磁力を使って引き寄せるマグナキャッチや物体の時を止める事ができるビタロック。それに、カメラ機能やストレージ機能など多彩で便利な能力をいくつも持っている道具である。

 

そして、もう一つ、『プルアパッド』。ティアキンで登場したシーカーストーンとよく似ているが少し違う物である。目のようなモジュールがあったり…今は置いておこう。

 

「それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。」

「…あー。とりあえずそいつらをボコボコにすればいいのか?」

「…先生、冗談を言わないでください。キヴォトスの外から来た、ヘイローすら持たないあなたでは命の危険に陥ります。」

「まぁでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大した事な…あっ、先輩、お昼ご飯のデリバリーが来たから、また連絡するね!」

 

そう言うとブツッ、という音とともにモモカと呼ばれる少女のホログラムは消えた。

 

そばに居たので分かったが、リンの機嫌がとても悪くなっている事に気付いた。

 

「…あー、えっと。リン?」

「…だ、大丈夫です。…少々問題が発生しましたが、大したことではありません。」

「十分に大した事なのでは…?」

 

リンは抗議に来ていた4人を見ると、こう言った。

 

「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです。」

「…えっ?」

 

えっ。

 

「もしや、この子達に暴動鎮圧に向かわせると?流石に無理じゃないのか?」

「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう。」

 

そう言うや否や、リンは去っていく。

 

「ちょ、ちょっと待って!?ど、どこに行くのよ!?」

 

ユウカがそれを追いかける。

 

「…俺の事無視かよ!」

 

とりあえず着いていく事にするが…一応先生(の予定)だぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、現在。

D.U.外郭地区、シャーレの部室付近。

 

ドカアアァァン。ダダダダ。

 

「な、何これ!?」

「これはひどいな…」

 

「なんで私たちが不良たちと戦わなければいけないの!?」

「そこなのか?」

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから…」

「それは聞いたけど…!私これでもうちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど!なんで私が…!」

 

その瞬間、ユウカに不良たちの弾が当たる。

 

「いっ、痛っ!痛いってば!あいつら違法JHP弾を使ってるじゃない!?」

 

…生きてる!?

 

「…早瀬ユウカお前…人間じゃなかったのか…!?」

「違います!キヴォトスにいる人間はヘイローによって…ってそれは今はどうでも良くて!なんで先生がここにいるんですか!?」

「だってあそこに俺の勤務予定場所あるし…」

「伏せて下さい二人とも。それに、ホローポイント弾は違法指定されてはいません。」

「うちの学校ではこれから違法になるの!傷跡が残るでしょ!?」

「今は先生が一緒なので、その点に気を付けましょう。先生を守る事が最優先。あの建物の奪還はその次です。」

「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスではないところから来た方ですので…」

「なんだかよく分からんが、キヴォトスの人間はとても丈夫って事なんだな?」

「はい。私たちとは違い、弾丸一つでも生命の危機にさらされる可能性があります。その点ご注意を。」

「分かってるわ。先生、先生は戦場に出ないでください!私たちが戦ってる間、この安全な場所にいてくださいね!」

「あ、はい…」

 

そう言うと、4人は不良たちの方に突っ込んでいった。

 

「…だからと言ってじっとしてられる性格じゃあ無いんだよなぁ。」

 

たまに流れ弾が飛んでくる。その弾速を見る。

 

「…ふむ、避けられないほどじゃないな。…よし、出るか。」

 

看板を盾に戦場に出る。

 

「よし!みんな、俺の指示に従ってくれ。簡易的だがマスター…じゃなかった。指揮官として出る。」

「ちょっ!?先生!?安全なところにいて下さいと…!」

 

飛んでくる銃弾を兵士の剣で斬る。

 

「俺なら、大丈夫だ。今から指揮に従って欲しい。頼む。」

「え、ええっ?戦術指揮ですか?まぁ…それは良いですが、今度こそ安全な場所にいて下さいね!!!」

「分かりました。これより先生の指揮に従います。」

「OK、では簡単に名前と何が出来るかだけ教えてくれ。」

 

それぞれ、ユウカ、チナツ、ハスミ、スズミ。よし、覚えた。

 

「よし、スズミは青い看板の近くに閃光弾、その後撃破。ユウカは落ちてる看板を盾にして先行。ユウカはバリアを貼って前に。ハスミは遠くから狙撃。チナツも後方支援だ。」

 

指揮のおかげか、有象無象の不良たちをいとも簡単に倒す事ができた。

 

「なんだか、戦闘がいつもよりやりやすかった気がします…」

「…やっぱりそうよね?」

「先生の指揮のおかげで、普段よりずっと戦いやすかったです。」

「なるほど、これが先生の力…まぁ、連邦生徒会長が選んだ方だから当たり前か…」

「それに、一年くらいマスターの指揮の仕方を見ていたからな。」

「マスター?」

「いや、こちらの話だ。」

「それでは、次の戦闘もよろしくお願いします、先生。」

「あぁ、分かった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も指揮を取り、シャーレまであと少しというところまできた。

 

「もうシャーレの部室は目の前よ!」

 

その時、ホログラムでリンが現れた。

 

「今、この騒ぎを起こした生徒の正体が判明しました。…ワカモ。百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です。」

「なかなかワイルドだな…」

「似たような前科がいくつもある危険な生徒なので、気を付けてください。」

 

シャーレの目の前に行くと、和服を着た仮面の生徒とその他モブ不良がいた。

 

「騒動の中心人物を発見!対処します!」

「フフ、連邦生徒会の子犬たちが現れましたか。お可愛らしいこと。」

 

CVが玉藻!つまり実質コヤンスカヤって事か!(違います)

 

ワカモはリンから聞いた通り、なかなか強い存在だった。

 

「チッ、こっちにも弾が飛んできやがる。ろくに指揮を取れやしないな。はぁ、仕方ない…」

 

リモコンバクダンを取り出す。そして、弓矢も取り出す。矢の先端にリモコンバクダンをスクラビルドし、ワカモのいるあたりに向けて射抜く。

 

「あら、これは…」

「少しでもダメージになりゃいいんだがな!起爆!」

 

時間差で爆風を起こす。

しかし、ワカモは避けていたのかとくに傷を負った様子はない。

 

「私はここまで、後は任せます。」

 

しかし、なぜか退却していった。

 

「逃げられてるじゃない!?追うわよ!」

「待て、ユウカ。それこそ向こうの作戦だろう。」

「その通りです。私たちの目的はあくまでもシャーレの奪還。このままシャーレのビルまで前進すべきです。」

「…まぁいいわ。あいつを追うのは私たちの役目じゃないってことね。」

「はい。建物の奪還を優先で。このまま引き続き進むとしましょう。」

 

その後もシャーレまで向かう。道中巡航戦車まで現れたがとくに苦戦する事なく撃破し、ついにシャーレまでたどり着いた。

 

「着いた!」

 

またもやホログラムのリンが現れる。

 

「『シャーレ』部室の奪還完了。私ももうすぐ到着予定です。建物の地下で会いましょう。」

「OK、地下だな。了解した。」

 

改めてシャーレのビルを見上げる。

先ほどまで暴動があったにもかかわらず、建物には少しの傷しかなく、耐久性が高い事が伺える。

 

一応、戦ってくれていた4人に礼を告げて、シャーレの地下へと向かう。

 

地下には、本棚や謎の物質など置かれており、部屋の中央には先程まで戦っていたワカモがいた。

 

「うーん…これが一体なんなのか、全く分かりませんね。これでは壊そうにも……あら?」

「やぁ、どうも。一応聞くがあんたがワカモだな?俺は勇凪理玖。ここで新しく先生をするものだが…どうしてこんな騒ぎを…」

「あら、あららら…」

「……聞いてるか?」

「…。」

「…おい、大丈夫か?」

 

ワカモはこちらを見ると、静止した。その後少しずつ動き始める。

 

「あ、ああ…」

「お、おい。本当に大丈…」

「し、し…」

「…し?」

 

「失礼いたしましたー!!!」

 

そう言うなりものすごいスピードで地下から出ていった。

 

「な、なんだったんだ…?」

 

ワカモが出ていって数分後、リンが入れ替わるようにしてシャーレの地下に訪れた。

 

「お待たせしました。」

「ん、あぁ、いやそんなに待ってないから大丈夫だ。それで…」

「ここに、連邦生徒会長の残したものが保管されています。」

 

リンは『それ』を手に取ると、傷が付いていないか確認した。

 

「…幸い、数一つなく無事ですね。…受け取って下さい。」

「これは…タブレット?」

「はい。これが連邦生徒会長が先生に残した物。『シッテムの箱』です。」

「シッテムの箱…」

「一見普通のタブレットのように見えますが、実のところ全く正体の分からない物です。製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組みの全てが不明。」

「なんだそれ…」

 

シッテムの箱をまじまじと見つめる。…ただのタブレット端末にしか見えない。

 

「連邦生徒会長はこのシッテムの箱は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました。私たちでは起動すらできなかった物ですが、先生ならこれを起動させられるのでしょうか。それとも…」

「ふむ…」

「…では、私はここまでです。ここから先は全て、先生にかかっています。邪魔にならないよう、離れています。」

「了解っと…」

 

見た目は本当にタブレット端末である。とりあえず、電源ボタンや音量ボタンなど普通のタブレットと同じである事を確認する。

 

「これが見た目通りなら…」

 

電源ボタンを押す。すると、水色の電子画面が現れる。

 

『・・・

Connecting To Crate of Shittim…』

 

その後、

 

『システム接続パスワードをご入力ください。』

 

という文章が現れる。

 

「えっと…。……パスワード…」

 

ふと、脳裏に浮かんだ文章を入力する。

 

…我々は望む、七つの嘆きを。

…我々は覚えている。ジェリコの古則を。

 

その言葉を入力すると、パスワードは合っていたのか、

 

『接続パスワード承認。

現在の接続者情報は勇凪理玖、確認できました。』

 

という文章とともに機械音声が流れる。

 

『シッテムの箱へようこそ、リク先生。生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します。』

 

やがて、システマチックな画面から半壊した教室へと切り替わる。瞬間、目の前の景色が切り替わった。いや、正確には景色が二つ見えていると言うべきか。

教室の床は水面のように青白く、教室の外には海が広がっており、天気の良い空が広がっている。その反面、机や椅子の一部がガラクタのように無造作に積まれているが、まだ無事な机や椅子もある。

その机と椅子の一つに、水色の髪の少女がうつ伏せで居眠りをしている。

 

「おい、起きろ。朝だぞー。」

「むにゃ…んもう…ありゃ?え、あれ?あれれ?せ、先生!?」

「おう、不本意ながら急に先生へと指名された者だ。」

「この空間に入ってきたという事は、ま、ま、まさかリク先生!?」

「そうだが…」

「う、うわああ!?そ、そうですね!もうこんな時間!?」

「落ち着け落ち着け。まずは深呼吸をするんだ。」

「…すう…はぁ…。まずは自己紹介からしましょう。私はアロナ。このシッテムの箱に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!」

 

秘書、ねぇ。連邦生徒会長とやらが直々に指名しただけあるのか、ただの先生とは違うようだな。ま、そこもおいおい聞いていくか。

 

「やっと会う事ができました!私はここで先生をずっと、ずーっと待っていました!」

「その割には居眠りしていたけどな。」

「あ、あうう…も、もちろんたまに居眠りしたりしたこともありますけど…」

「まぁ、俺も高校時代は居眠りばっかりしてたからとやかく言える立場じゃないんだがな…とりあえず、よろしくな。」

「はい!よろしくお願いします!まだ身体のバージョンが低い状態でして、特に声帯周りの調整が必要なのですが…」

 

確かに声が機械音声…近いのはボーカロイドやボイスロイドか。そのような声になっている。

 

「これから先、頑張って色々な面で先生のことをサポートしていきますね!」

「ありがとう。まず、…えーと、このなんとかタワーの権限を戻したいのだけれど…」

「分かりました!では、形式的ではありますが生体認証を行います。」

 

アロナと指と指を合わせる。

 

「これで大丈夫か?」

「うふふ、まるで指切りして約束するみたいでしょう?」

「どちらかというと、あの映画のやつみたいだが…」

「え?宇宙人の映画のワンシーンみたいですって?実はこれで生体情報の指紋を確認するんです!残った指紋を目視で確認するのですが…すぐに終わります!こう見えて目は良いので。」

「そういうところは機械的だよな。」

「どれどれ…」

 

アロナは指をじっと見つめている。

 

「………。おい、本当に大丈夫なのか?」

「…まぁ、これでいいですかね?」

「本当かなぁ…」

「…はい、確認終わりました!」

「こう、すぐに確認出来ないのか?前に持ってたスマホなら1秒ほどで認証出来てたが。」

「え、1秒もかからないんですか?わ、私にはそんな最先端の機能はないですが…そ、そんな能力無くてもアロナは役に立ちますから!目でも十分確認出来ますから!」

 

指紋を目視できそうな奴に数人ばかり心当たりあるが言わないでおく。

 

「…全然信じてないって顔ですね……」

 

流石にからかいすぎたのか、アロナの目が潤んでくる。

 

「だったらその最先端のナントカさんのところに行ってしまったらどうですか!」

「あ、アロナごめん冗談、冗談だから!」

 

泣かせる手前までからかってしまったので必死に慰めることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なるほど、先生の事情は大体分かりました。連邦生徒会長が行方不明になって、そのせいでキヴォトスのタワーを制御する手段が無くなった、と…」

「聞いた限りではおおよそそんな感じだな。あ、ついでなんだが連邦生徒会長について知ってる事はあるか?俺を先生として指名するだけして失踪したからな…」

「私はキヴォトスの情報の多くを知ってはいますが、連邦生徒会長についてはほとんど知りません。彼女が何者なのか、どうしていなくなったのかも…お役に立てずすみません。」

「まぁ駄目元できいただけだしな。それより、タワーの方は…」

「はい、サンクトゥムタワーについては私が何とか解決できそうです!」

「お、それは良かった。アロナ、頼む、やってくれ。」

「はい!分かりました。それでは、サンクトゥムタワーのアクセス権を修復します!少々お待ちください!」

「そんな簡単に言うが…」

 

俺が言葉を言い終わる前に地下室の明かりが復旧する。

 

「…おお。」

「サンクトゥムタワーのadmin権限を取得完了…。先生、制御権を無事に回収出来ました。今、サンクトゥムタワーは私、アロナの統制下にあります。つまり、今のキヴォトスは先生の支配下にあるも同然です。」

「…間違ってはいないのか。言い方がアレだけどな。」

「先生が承認さえしてくだされば、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管出来ます。でも…大丈夫ですか?連邦生徒会に制御権を渡しても…」

「正直言って制御権なんぞ持ったところで俺の手に余る。そういうのは行政機関にさっさと渡すのが良いってものだ。餅は餅屋ってな。連邦生徒会に移しておいてくれ。」

「分かりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します。」

「OK、なら俺は一回リン…えーとなんだっけ。とりあえずなんか立場が上っぽい人に連絡する。」

 

 

 

リンにサンクトゥムタワーの制御権を復旧できたこと、その制御権を連邦生徒会に移管した事を伝えた。

 

「…はい、分かりました。」

「どうだった?」

「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認出来ました。これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように、行政管理を進められますね。」

「それは良かった。」

「お疲れ様でした、先生。キヴォトスの混乱を防いでくれた事に、連邦生徒会を代表して深く感謝いたします。ここを攻撃した不良たちと停学中の生徒たちについては、これから追跡して討伐いたしますのでご心配なく。」

「…とりあえずは、一件落着か。」

「はい。それではシッテムの箱は渡しましたし、私の役目は終わったようですね。」

 

と、そこまで言って、リンはふと思い出したかのように言った。

 

「…あ、もう一つありました。」

「ん?まだ何かあるのか?」

「いえ、連邦捜査部シャーレをご紹介しようと思って。ついてきて下さい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

案内されたのは、扉の前に「近々始業予定」という貼り紙がある部屋だった。

 

「ここがシャーレのメインロビーです。長い間空っぽでしたけど、ようやく主人を迎える事になりましたね。」

「ここが…」

 

部屋の中には、ホワイトボードやパソコンデスク、その他棚や段ボール箱が置かれていた。

 

「ここがシャーレの部室です。ここで先生よお仕事を始めると良いでしょう。」

「…ところで、俺はこれから何をすればいいんだ?」

「…シャーレは、権限だけはありますが目標のない組織ですので、特に何かをやらなきゃいけない…という強制力は存在しません。」

「へぇ…」

「キヴォトスのどんな学園の自治区にも自由に出入りでき、所属に関係なく、先生の希望する生徒たちを部員として加入させることも可能です。…面白いですよね。捜査部とは呼んでいますが、その部分に関しては、連邦生徒会長も特に触れていませんでした。つまり、何でも先生がやりたいことをやって良い…ということですね。」

「それはそれは…」

「…本人に聞いてみたくても、連邦生徒会長は相変わらず行方不明のまま。私たちは彼女を探すのに全力を尽くしているため、キヴォトスのあちこちで起きる問題に対応できるほどの余力はありません。今も連邦生徒会に寄せられるあらゆる苦情…支援物資の要請、環境改善、落第生への特別授業、部の支援要請などなど…」

「特別授業に関しては各学校でやりゃあいいのに…」

「…もしかしたら、時間が有り余っているシャーレなら、この面倒な苦情の数々を解決できるかもしれませんね。」

「あ、そういう感じですか。まぁ、俺でも解決できそうな案件なら回してもらって構わないが…」

「その辺りに関する書類は、先生の机の上にたくさん置いておきました。気が向いたらお読みください。」

「げ、既に手を回されていたか…どうせ気が向いたら、とか言ってもやらなきゃ怒られるんでしょ?」

「すべては、先生の自由、ですので。」

 

そう言ってニコッ、と微笑むリンに何か怖いものを感じた。

 

「それではごゆっくり。必要な時には、またご連絡いたします。」

 

 

 

 

 

 

 

 

外に出ると、先ほどまで一緒に戦ってくれていた4人がそれぞれの学校に連絡をしていた。

 

「あ、先生。お疲れ様でした。先生の活躍はキヴォトス全域に広がるでしょう。すぐにSNSで話題になってしまうかもしれませんね?」

「ははは…っと、みんなお疲れ。心強かったぜ。」

「ありがとうございます。これでお別れですが、近いうちにぜひ、トリニティ総合学園に立ち寄って下さい、先生。」

「私も、風紀委員長に今日のことを報告しに戻ります。ゲヘナ学院にいらっしゃった時は、ぜひ訪ねてください。」

「ミレニアムサイエンススクールに来てくだされば、またすぐにご会いできるかも…?先生、ではまた!」

 

それそれがそれぞれの学園に戻っていった。

 

「よし、じゃあとりあえず、オフィスに戻るか。」

 

ところで風紀委員会が来てたの?生徒会じゃなくて???

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかのビルの屋上。ワカモはシャーレのビルを見ていた。

 

「ああ…これは困りましたね…。フフ…フフフ。」

「……ウフフフフ♡」

 

 

 

 

 

 

 

 

オフィスに戻ると、改めてアロナと話す事にした。

 

「あはは…なんだか慌ただしい感じでしたが、ある程度落ち着いたみたいですね。お疲れ様でした。」

「ありがとう。アロナもお疲れ。」

「はい!でも、本当に大変なのは、これからですよ?」

「ああ…書類仕事…」

「それもそうですが…これから先生と一緒に、キヴォトスの生徒たちが直面している問題を解決していくのです!」

「…ああ。」

「単純に見えても決して簡単ではない。とっても重要なことです。」

「よし、気合い入れて頑張るか!」

「それではキヴォトスを、シャーレをよろしくお願いします、先生!」

「こちらこそ。どんどん頼るかもしれないが構わないね?」

「はい!それではこれより、連邦捜査部シャーレとして、最初の任務を始めましょう!」

 

 

 

「い、いや今日は色々と疲れたから休むわ…」

「せ、先生…色々と締まらないです。」

 

 

 




そのうち更新します。ではまた。
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